【社員のやる気UPが可能】ジョブクラフティングとは何か、メリット・デメリットや導入の手順を解説
更新日: 2025.8.4 公開日: 2025.4.19 jinjer Blog 編集部

価値観の多様化や人材不足などに伴い、多くの企業がさまざまな施策に取り組んでいます。
仕事へのやりがいやモチベーションを高める「ジョブクラフティング」も、近年注目されている取り組みの1つです。
この記事は、ジョブクラフティングやメリット・デメリットについて解説し、導入手順と注意点もお伝えします。
目次
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1. ジョブクラフティングとは

ジョブクラフティングとは、社員が主体的に仕事に対する考え方・取り組み方を変え、やりがいのある仕事に再構築する方法です。
2001年にイェール大学経営大学院のエイミー・レズネスキー准教授とミシガン大学のジェーン・E・ダットン教授が提唱したことを機に、広く世界で知られるようになりました。本来の定義は「課題や対人関係における従業員個人の物理的または認知的変化」ですが、平たく言えば、冒頭で述べたとおりです。
ジョブクラフティングは、従業員満足度やワークエンゲージメント(働きがい)の向上に有効とされており、以下の3つの視点を中心にアプローチするのが特徴です。
- 作業クラフティング…作業に対する工夫
- 人間関係クラフティング…人との関わり方に対する工夫
- 認知クラフティング…仕事の捉え方や考え方に対する工夫
参照:コラム2ー6図 ジョブ・クラフティングについて|厚生労働省
1-1. ジョブクラフティングが求められる背景
ジョブクラフティングが注目される背景には、おもに価値観や働き方の多様化が挙げられます。顧客ニーズが多様化し、トレンドの移り変わりが激しい現代では、スピード感が重要です。しかし、従来のトップダウン方式では、対応に限界が生じます。
また、社員の価値観においても、やりがいやキャリアを重視する傾向がみられ、ライフスタイルに応じた働き方が求められています。社会変化への対応が必要になったことが、ジョブクラフティングが求められている背景です。
1-2. ジョブデザインとの違い
同じような取り組みに「ジョブデザイン」があります。ジョブクラフティングと同じように、やりがいやモチベーション向上を目的とした施策ですが、ジョブデザインで主体となるのは経営者や管理者などの企業側です。
ジョブデザインは、企業側が仕事を設計・割り振り、意義を浸透させる受動的な施策といえます。一方、ジョブクラフティングは、社員が主体的に意義を見出し、仕事を変えていく能動的な手法です。
1-3. ジョブクラフティングの事例
ジョブクラフティングの代表的な事例として知られているのが、テーマパークのキャストです。彼らの本来の業務は、園内の清掃や道案内といった裏方的なものですが、キャスト自身が主体的に工夫を加えています。
たとえば、ほうきでキャラクターの絵を描いたり、訪れたゲストに声をかけて写真撮影を手伝ったりと、業務の枠を超えて自分なりの価値を加えることで、清掃の仕事をゲストを喜ばせる役割へと再解釈しているのです。
こうした取り組みが、キャスト自身のやりがいや誇りを生み出すとともに、ゲストの体験価値向上にも寄与しています。
2. ジョブクラフティングに必要な3つの工夫とは

ジョブクラフティングを実践するには、「作業クラフティング」「人間関係クラフティング」「認知クラフティング」と呼ばれる3つの視点からの工夫が欠かせません。これらをバランスよく組み合わせることで、従業員の主体性ややりがいを引き出しやすくなります。
参照:第3節 「働きがい」をもって働ける環境の実現に向けた課題について|厚生労働省
2-1. 作業クラフティング
作業クラフティングは、仕事のやり方そのものに工夫を加えることを指します。自分の業務の進め方を見直したり、やりがいを感じられるようなアプローチを取り入れたりして、仕事の中身をより充実させることが目的です。
たとえば、スケジュール管理の方法を改善したり、新しいツールを導入して業務の効率を高めたりするような取り組みが該当します。
2-2 人間関係クラフティング
人間関係クラフティングは、職場で関わる人との接し方を工夫することを意味します。日々の仕事で関係する相手や関わり方を意識的に調整し、より良い人間関係を築くことで、やりがいや達成感を得やすくなります。
たとえば、部署を越えて他チームと交流を深めたり、先輩や上司に積極的にアドバイスを求めたりすることが人間関係クラフティングの具体例です。特にチームでの協働が重視される職場では、重要な取り組みのひとつと言えるでしょう。
2-3. 認知クラフティング
認知クラフティングは、仕事に対する考え方や捉え方に変化を加えることを指します。業務そのものは変えられなくても、その意味や目的を自分なりに再解釈することで、仕事への向き合い方がポジティブに変化します。
たとえば、自分の業務が社会にどのような価値を提供しているのかをあらためて考えたり、クライアントの立場に立って提供価値を見つめ直したりすることが挙げられます。こうした認知の変化が、主体性や誇りを育む土台となります。
3. ジョブクラフティングを導入するメリット

ジョブクラフティングを導入することで得られる、5つのメリットについて解説します。
- モチベーションの向上
- 生産性の向上
- 定着率の向上
- 社内コミュニケーションの活性化
- 新しいアイディアが生まれやすくなる
3-1. モチベーションの向上
1つは、モチベーションの向上です。ジョブクラフティングにより、社員自らが仕事を調整・工夫し、意義を考えることで「やらされている感」が軽減します。
仕事への責任感や当事者意識が高まり、自発的なおこないが増えれば、モチベーションが向上するだけでなく、社員の成長にもつながるでしょう。
3-2. 生産性の向上
ジョブクラフティングの導入は、生産性の向上も期待できます。モチベーションが高まり、作業効率が改善するためです。
また、社員自身が問題意識を持って仕事へ取り組むことで、スケジュールや業務フローの見直しなどがおこなわれます。組織改革も進めやすくなり、企業全体の労働環境の改善や業務効率化にもつながるでしょう。
3-3. 定着率の向上
定着率の向上もメリットの1つです。仕事へのやりがいを感じることで、企業への帰属意識や従業員満足度の高い社員が増え、離職率が低下します。
人材不足が深刻化するなかで、企業にとって人材流出は重要な課題です。定着率が向上すれば、採用活動や人材育成に対するコスト削減にもつながります。
3-4. 社内コミュニケーションの活性化
ジョブクラフティングでは、人間関係にも意識的にアプローチするため、社内コミュニケーションの活性化も期待できます。
コミュニケーションが活性化されることで、意思疎通がスムーズになり、チーム内での連携が強まるほか、業務上のミスや認識のズレを防ぎやすくなるといった効果も見込まれます。
3-5. 新しいアイディアが生まれやすくなる
ジョブクラフティングは、社員の主体性を育むだけでなく、自ら考え行動する力を引き出すことで、新しいアイデアの創出にもつながります。
こうした社員のアイデアに耳を傾ける企業風土が育てば、組織全体の生産性向上や、市場変化への柔軟な対応といった効果も期待できるでしょう。
4. ジョブクラフティングのデメリット

反対に、ジョブクラフティング導入のデメリットについても確認しておきましょう。
- 仕事が属人化する恐れがある
- 社員がストレスを感じる場合がある
- チームワークが必要な業務には効果が発揮されにくい
4-1. 仕事が属人化する恐れがある
業務が個人に依存しすぎて、属人化する可能性があります。ジョブクラフティングは、社員の主体性を尊重する取り組みです。
しかし、個人の専門性や興味をもとに作業を再構築することで、ブラックボックス化を引き起こし、仕事の引き継ぎに支障をきたす恐れがあります。属人化を防ぐためには、マニュアルの作成や情報共有の実施が望ましいでしょう。
4-2. 社員がストレスを感じる場合がある
ジョブクラフティングによって、社員がストレスを感じる場合があります。主体性を求められるジョブクラフティングですが、「自発的にやらなければならない」ことにプレッシャーを感じる社員もいるはずです。
ストレスがかかることで、作業効率の低下や離職につながる可能性もあります。サポート体制や相談できる環境を整えることが大切です。
4-3. チームワークが必要な業務には効果が発揮されにくい
チームワークが必要な業務では、対立や統制の乱れにつながる可能性があります。ジョブクラフティングは、個人の主体的な行動からやりがいを見出す取り組みです。
そのため主体性を尊重しすぎるとプロジェクトの方針がまとまらず、業務や進捗に支障をきたします。個人の専門性を活かすあまり、チーム内の業務負担が偏る場合もあるため、適切な活用が必要です。
5. ジョブクラフティングの導入手順・やり方

ここからは、ジョブクラフティング導入の手順について解説します。
- 業務内容を把握する
- 社員の強みやスキルを分析する
- 仕事の目的や意義を再確認する
- 仕事に対するアプローチ方法を見直す
5-1. 業務内容を把握する
まずは、日常業務をすべて書き出します。前述した「作業クラフティング」にあたりますが、すべての作業をリストアップし可視化することが大切です。
加えて、発生頻度や作業時間、関わるメンバーなども書き出しておくと、目標設定や優先順位をスムーズに設定できます。
5-2. 社員の強みやスキルを分析する
次に、これまでの仕事でうまくいった状況や成果を洗い出し、多角的な視点で強みを分析します。仕事には直接関係のない趣味や特技も書き出しましょう。
強みにつながる場合があります。自己分析は主観的になりやすいため、上司や同僚などからの客観的な視点を取り入れるのも大切です。
5-3. 仕事の目的や意義を再確認する
業務を主体的に捉え直すためのアプローチです。自分の仕事がどのように貢献しているかを理解・実感できると、「やらされている感」がなくなり、やりがいや意義を再確認できます。
単調な作業にも価値を見出せるでしょう。自己分析で明確になった強みやスキルを活かすことで、仕事に対する向き合い方も変えられます。
5-4. 仕事に対するアプローチ方法を見直す
仕事への取り組み方を見直します。自己分析と仕事への捉え方を踏まえて、業務内容や作業方法を再検討しましょう。例えば、スケジュール管理やToDoリストを作成すると、進捗を把握しやすくなります。
また、周囲との関わり方を見直すことも重要です。円滑な人間関係は、働きやすい職場環境につながります。積極的なコミュニケーションを心がけることで、情報共有や意見交換をしやすくなるでしょう。
6. ジョブクラフティング導入における注意点

ジョブクラフティングを導入における注意点について3つ解説します。
- 社員の自主性を尊重する
- サポート体制を整える
- 結果の共有・フィードバックする場を設ける
6-1. 社員の自主性を尊重する
ジョブクラフティングの目的は、社員自身が仕事に対する意義ややりがいを見出すことです。企業の考えを押し付けると、主体性が損なわれ、効果を発揮できない可能性があります。
やりがい搾取になる恐れもあるため、従業員の提案やアイデアに耳を傾けることが大切です。
6-2. サポート体制を整える
ジョブクラフティングを適切に進めるためには、上司や組織のサポートが不可欠です。サポートにより社員の主体性を引き出し、成果につながればさらなるモチベーションアップにもなります。
行動を見守りつつも、1人ひとりの能力を見極め、フォローや助言など必要なサポートをおこないましょう。
また、ジョブクラフティングを促進する研修プログラムやセミナーの実施、アイデア・工夫に対する支援なども有効です。
関連記事:ジョブクラフティング研修のやり方は?研修の目的や得られる効果を解説
6-3. 結果の共有・フィードバックする場を設ける
仕事の属人化や社員が間違った方向に向かうことを防ぐために、定期的に情報共有・フィードバックを実施します。
社員同士が取り組みについて話し合い、意見交換することで、業務フローが共有され、必要に応じて調整も可能です。ほかの社員の意見を反映させることもでき、さらなる改善が期待できるでしょう。
7. ジョブクラフティングを実践して社員のモチベーションを高めよう

ジョブクラフティングは、仕事の意義を再確認し、社員のやりがいやモチベーションを高めるための手法です。生産性や定着率の向上などのメリットがありますが、繰り返しおこなうことで企業全体の成長につながる取り組みといえます。
今回紹介した手順や注意点を参考に、適切なサポート体制を整えて、ジョブクラフティングを成功につなげましょう。
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