ジョブクラフティング研修のやり方は?研修の目的や得られる効果を解説
更新日: 2025.5.1
公開日: 2025.4.18
jinjer Blog 編集部
「ジョブクラフティング研修を自社で実施したい」
「どのように研修をおこなえばよいのだろう」と悩む担当者もいるでしょう。
ジョブクラフティングは、従業員が仕事に意味を見出し、主体的に業務を設計していくことで、モチベーションの向上やキャリア形成につながるとされている考え方です。
本記事では、ジョブクラフティング研修の概要や目的、効果を解説します。あわせて、具体的な実施方法も解説しているため、ぜひ参考にしてください。
目次
2023年から人的資本の情報開示が義務化されたことにより、人的資本経営に注目が高まっており今後はより一層、
人的資本への投資が必要になるでしょう。
こういった背景の一方で、人事担当者の皆さんの中には「人的資本投資にはどんな効果があるのかわからない」「実際に人的資本経営を取り入れるために何をしたらいいの?」とお悩みの方も多くいらっしゃるでしょう。
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1. ジョブクラフティング研修とは
ジョブクラフティング(Job Crafting)とは、従業員自身が仕事に対する認知や行動を主体的に調整し、充実感を得られるよう工夫するための取り組みです。
ジョブクラフティング研修を通して、従来の「与えられた仕事をこなす」という受動的な姿勢から「自分の仕事は自分で創り上げる」という能動的な姿勢への転換を促せるでしょう。
2. ジョブクラフティング研修の目的
ジョブクラフティング研修には、主に以下3つの目的があります。
- 従業員のエンゲージメントを向上させる
- イノベーションを促進させる
- 労働生産性をこうじょうさせる
それぞれ詳しく解説します。
2-1. 従業員のエンゲージメントを向上させる
ジョブクラフティング研修によって、従業員のエンゲージメント向上を目指せます。
従業員が主体性を持って自ら仕事内容や方法を工夫することで、業務の意義をより深く理解し、能動的に関われるようになります。
「与えられた仕事」から「自分でデザインした仕事」へと変わり、積極性と生産性の向上が期待できるでしょう。
2-2. イノベーションを促進させる
新しい視点や方法で仕事に取り組むことで、イノベーションが生まれやすい環境づくりを促進する目的もあります。
ジョブクラフティングを通じて、従業員自らがクリエイティブな業務や役割に挑戦できるようになるためです。自身の発想や個性を仕事に取り入れるチャンスが増えることで、革新的なアイデアの創出が促進されます。
従業員一人ひとりが仕事の改善点を考え実行することで、組織全体の創造性を高められるでしょう。
2-3. 労働生産性を向上させる
ジョブクラフティング研修の目的の一つは、生産性を向上させることです。
研修を通じて業務の無駄を自発的に削減し、効率化の方法を自ら考え実行できるように促します。
3. ジョブクラフティング研修から得られる効果
ジョブクラフティング研修の実施から得られる効果は、以下の2つです。
- 職場が活性化する
- 離職率低下が期待できる
それぞれ詳しく解説します。
3-1. 職場が活性化する
従業員一人ひとりが自分の仕事に情熱を持って取り組むようになると、職場全体の雰囲気が活性化します。
前向きな発言や提案が増え、組織全体のエネルギーが高まるでしょう。
3-2. 離職率低下が期待できる
ジョブクラフティング研修により離職率の低下が期待できます。
ジョブクラフティング研修を通して、従業員が自分なりに仕事をカスタマイズする方法を学べます。ワークライフバランスを実現し、仕事への充実感や満足感を生み出すことにつながるでしょう。
その結果、組織への帰属意識が高まり離職率が低下します。企業は人材流出を防げるため、組織の安定性と継続性を確保できるのもメリットの一つです。
4. ジョブクラフティング研修のやり方
ジョブクラフティング研修は、以下のステップで行いましょう。
- 事前準備
- ジョブクラフティングについての学習
- 現状の分析
- ジョブクラフティング計画の作成
- グループディスカッション
各ステップの内容を詳しく解説します。
4-1. 事前準備
まず、研修の目的や対象者を明確にしましょう。全従業員向けに実施するのか、特定の部署や階層に限定するのかを決定します。
研修の主宰者は、以下の準備も忘れないようにします。
・実施会場の手配
・パソコン
・プロジェクター
・配布する資料
・筆記用具
なお、研修は1グループ4人が目安です。
4-2. ジョブクラフティングについての学習
研修の最初に、ジョブクラフティングの概念や理論について説明しましょう。3つの側面(仕事のやり方への工夫・周りの人への工夫・考え方の工夫)について解説し、実際の事例を紹介することで理解を深めます。
4-3. 現状の分析
参加者に自分の仕事の現状を分析してもらいましょう。現在の業務内容や職場環境、人間関係などを書き出し、強み・弱み、好きな業務・苦手な業務などを整理します。
自分の価値観や大切にしていることなども明確にし、理想の働き方をイメージしてもらうことが重要です。
4-4. ジョブクラフティング計画の作成
分析の結果を踏まえて、具体的なジョブクラフティング計画を作成しましょう。
例えば、以下のように計画します。
・仕事が成功したら、自分で自分を褒める
・部下の成果を自分のことのように嬉しく感じる
仕事のやり方への工夫・周りの人への工夫・考え方の工夫のそれぞれに対して、実行可能な施策を考えてもらいましょう。
4-5. グループディスカッション
作成したプランをグループで共有し、互いにフィードバックをおこないます。異なる視点からのアドバイスを得ることで、より実効性の高いプランに改善できるかもしれません。
ほかの参加者のプランを聞くことで、新たなアイデアが生まれることが期待できるでしょう。
4-6. ジョブクラフティングの実行と振り返り
ジョブクラフティング計画に基づいて実行し、一定期間の経過後に振り返ることで成果を確認します。
例えば、1ヵ月間取り組んだあと計画通りに進められたかや、気持ちや業務にどのような変化があったかなどを振り返りましょう。
5. ジョブクラフティング研修のプログラム例
ジョブクラフティングの研修期間は、1日以内で完結する場合や1ヵ月以上かけてじっくりおこなう場合などさまざまです。ここでは、6週間の例をご紹介します。
全2回の研修を開催し、プログラムは以下のように設定しましょう。
- 研修1回目:講義/ワーク/計画作成/計画カード作成
- 研修2回目:計画の振り返り/改善版の計画作成/計画カード作成
それぞれ詳しく解説します。
5-1. ジョブクラフティング研修1回目のプログラム例
研修1回目のプログラム例は、以下の通りです。
研修1回目 | |
講義 | 20分 |
ワーク | 40分 |
計画作成 | 45分 |
計画カード作成 | 10分 |
講義では、ジョブクラフティングの基本概念や原理について解説するとともに、実務での適用例や成功事例を具体的に紹介しましょう。次に、参加者がモチベーション低下や停滞感を感じている状況を想定した架空事例を用いて、ワークをおこないます。
架空事例に対して、ジョブクラフティングに必要な3つのエッセンス(仕事のやり方への工夫・周りの人への工夫・考え方の工夫)を個人ワークで自由に考えてもらいましょう。その後、グループワークで共有します。
次におこなうのが、ジョブクラフティングの計画作成です。現在の業務内容を見つめ直し、3つのエッセンスそれぞれに対して自分ができるジョブクラフティングを探索します。
最後に計画カードを作成し、研修1回目は終了です。計画の実行期間として、1ヵ月間のインターバルを設けましょう。
参考:ジョブ・クラフティング研修プログラム|慶應義塾大学総合政策学部 島津明人研究室
5-2. ジョブクラフティング研修2回目のプログラム例
研修2回目のプログラム例は以下の通りです。
研修2回目 | |
計画の振り返り | 45分 |
改善版の計画作成 | 60分 |
計画カード作成 | 10分 |
1ヵ月間かけて実行したジョブクラフティングを経て、実行した回数や感じたこと、改善点などを個人ワークで振り返ります。個人ワークが終わったら、グループワークで共有しましょう。
次におこなうのが、改善版のジョブクラフティング計画作成です。実践しやすく、仕事へのモチベーション向上につながる具体的な方法を、個人ワークとグループワークで考えます。
1回目の研修と同様、最後にジョブクラフティングの計画カードを作成して終了です。
参考:ジョブ・クラフティング研修プログラム|慶應義塾大学総合政策学部 島津明人研究室
6. ジョブクラフティングを実施する際の注意点
ジョブクラフティングを効果的に実施するために、3つの注意点があります。
- 従業員の自主性を尊重する
- 業務の属人化を防ぐための工夫が必要になる
- 従業員が生み出した成果を共有する場を作る
それぞれ詳しく解説するので、担当者は参考にしてみてください。
6-1. 従業員の自主性を尊重する
ジョブクラフティングの成功には、従業員が自ら考え行動する姿勢が不可欠です。トップダウン型の指示や管理では、創造的な工夫や自発的な改善は生まれにくくなります。
従業員が義務だと感じると、形だけの取り組みになり、本来目指すべきやりがいの創出やモチベーション向上には結びつきません。会社側は基本的な枠組みや方向性を示しつつも、具体的な取り組み内容については従業員の自由な発想を尊重しましょう。
6-2. 業務の属人化を防ぐための工夫が必要になる
ジョブクラフティングでは、従業員が自分なりの工夫で業務に取り組むため、仕事の属人化が課題となります。属人化とは、特定の業務が「その人にしかできない状態」となることです。急な欠勤への対応が難しくなるほか、離職時のダメージが大きくなるなどのリスクをもたらします。
ジョブクラフティングを導入する際は、知識やノウハウが組織内で共有される仕組みづくりを意識します。例えば、グループワークによる定期的な意見交換や、フィードバックの機会を設けるなどしましょう。
6-3. 従業員が生み出した成果を共有する場を作る
PDCAサイクルを効果的に回すためには、取り組みの成果を共有する場の設定も欠かせません。
定期的な振り返りのためのミーティングや発表会を開催しましょう。お互いの経験から学び合うことで、従業員の成長と組織の発展を同時に実現できる可能性が高まります。
7. ジョブクラフティング研修を適切に実施し従業員の主体性を高めよう
ジョブクラフティング研修は、従業員が自らの仕事に意味を見出し、主体的に業務を設計していくためのスキルを身につける機会です。研修を適切におこなえば、スタッフの仕事に対する意欲が高まり、退職者数の減少や仕事の生産性が向上するなどのメリットが見込まれます。
ジョブクラフティングの実施にあたっては、従業員に無理やり押し付けないように意識するほか、業務が属人化しないように工夫するなどが重要です。
研修の適切な実施方法を理解し、従業員の主体性が高まる環境づくりをおこないましょう。
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