職務等級制度の意味や職能資格制度との違いをわかりやすく解説
更新日: 2026.4.24 公開日: 2023.5.10 jinjer Blog 編集部

職務等級制度は、従来の職能資格制度に代わる評価制度として、急速に普及しつつあります。職務等級制度とは、具体的にどのような評価制度で、職能資格制度との違いは何でしょうか。本記事では、職務等級制度のポイントや職能資格制度との違い、職務等級制度を導入するメリットとデメリットをわかりやすく解説します。
目次
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
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資料では、人事評価制度の基本となる種類の解説や、導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。自社の人事評価に課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 職務等級制度とは?

まずは職務等級制度がどのような制度なのか、基本的な部分を知っておきましょう。職務等級制度を運用するうえで欠かせない職務記述書とあわせて解説していきます。
1-1. 職務の重要度や困難度に応じて等級を決める制度
職務等級制度とは、社員一人ひとりの職務(仕事の内容)に着目し、職務の重要度や困難度に応じて等級(グレード)を決める評価制度です。厚生労働省は、職務等級制度を以下のとおり定義しています。
職務等級制度とは、従業員一人ひとりが担当している職務(役割)の重要度や困難度、つまりその「職務の大きさ」を共通の物差しで測り「等級」という区分で表したもので、達成された成果に応じて公正な報酬を実現するための基礎となる制度です。
職務等級制度は、社員が担当している仕事の重要性と、賃金などの待遇面が連動する点に特徴があります。とくにジョブ型雇用(職務内容に応じた雇用契約を結ぶシステム)を採用する企業や、人事評価制度の改革を目指す大手企業を中心として、職務等級制度の導入が進んでいます。
1-2. 職務等級制度に欠かせない職務記述書
職務等級制度では、社員の職務評価に当たって、職務記述書(ジョブ・ディスクリプション)と呼ばれる文書を基準にします。職務記述書とは、組織内で求められる職務ごとに、職務等級や主な職務内容、求められる知識、能力を整理したものです。
職務記述書を作成するときは、厚生労働省が職務別に作成した「職業能力評価基準(全56業種)」をベースとして、各企業の内情に合わせてカスタマイズします。
職務記述書の参考例を知りたい場合は、厚生労働省の「職業能力評価基準[活用事例集]」などを参照してください。
2. 職務等級制度とその他の制度との違い

職能資格制度やジョブ型雇用は、職務等級制度と混同されやすい制度です。どのような違いがあるのかを知り、自社の評価制度を検討しましょう。
2-1. 職能資格制度との違い
職務等級制度が普及する以前は、職能資格制度を採用する企業が一般的でした。職能資格制度とは、社員の職業遂行能力に着目して、役職とは別の資格を付与し、賃金テーブルを設定する評価制度です。厚生労働省は、職能資格制度を以下のように定義しています。
職能資格制度とは、従業員の能力の程度に応じて役職とは異なる“資格”を付与する制度です。これを導入している企業ではほとんどの場合、職能資格に基づいて給与が決定されます。年功序列およびローテーションを基礎とする日本型人事制度を根幹から支えてきたといっても過言ではない制度です。
職能資格制度では、勤続年数が長くなるほど職業遂行能力も上がることを前提にしています。そのため、職能資格制度は日本の年功序列制度や終身雇用制度を根幹から支えてきました。近年は、働き方改革にともなう同一労働同一賃金の義務化など、年齢や勤続年数ではなく、職務内容に基づく人事評価を求める動きが広がっていることから、職能資格制度を廃止する企業も増えています。
2-2. 役割等級制度との違い
職務等級制度に似た言葉として役割等級制度も挙げられます。職務等級制度は職務の重要度や困難度に応じて等級を付けるのに対して、役割等級制度は役割に応じて等級を設けます。「社員に課す役割の大きさに応じてランク付けする」と考えるとわかりやすいかもしれません。
課される役割が大きくなれば昇級し、小さくなれば降級するため、経営戦略や組織方針を職責や役割にそのまま設定しやすいです。この「役割」というのは、会社によって定義が異なります。単純に「どのような仕事をしているか」「どれくらい責任の大きい仕事をしているか」で決めるケースもあれば、仕事の進め方や対応の仕方などを加味して決定するケースもあります。
関連記事:役割等級制度のメリット・デメリットや導入方法を詳しく解説
2-3. ジョブ型雇用との違い
ジョブ型雇用とは、職務を基準として人を雇用する制度です。職務をジョブと表現することが多く、ジョブ型雇用でも職務記述書を利用することから、ジョブ型雇用と職務等級制度は混同されることがあります。
しかし、ジョブ型雇用は、雇用形態や採用のルールを指します。一方で職務等級制度は給与や待遇を決定する評価制度を指しています。どちらもジョブ(職務)を基準とした制度ですが、「ジョブ型雇用で採用した人を、職務等級制度で評価する」という表現をするように、実際はまったく異なるものです。
3. 職務等級制度のメリット

職務等級制度には、以下のようなメリットがあります。
- 賃金決定の根拠が明確になる
- 職務に長けたスペシャリストの育成につながる
- 人件費をコントロールしやすい
3-1. 賃金決定の根拠が明確になる
職務等級制度では、職務等級と賃金が対応しているため、賃金テーブルの根拠が明確です。賃金の金額が決められた理由がわかりやすいため、社員の不満が出にくい公平性と透明性が高い評価制度だとされています。また、規定の職務内容を果たしているかどうかは、職務記述書をもとに判断されるため、客観性が高い評価制度でもあります。
3-2. 職務に長けたスペシャリストの育成につながる
職務等級制度では、職務記述書で定義した職務と賃金が対応するため、社員が自分の職務に専念することができます。そのため、職務に長けたスペシャリストの育成に適した評価制度です。また、社員が昇給を目指し、スキルアップに取り組む効果も期待できます。
3-3. 人件費をコントロールしやすい
職務等級制度では、等級が上がらない限りは昇給しません。等級もルールに基づいて決定されるため、人件費の変動が少なく、コントロールしやすい点もメリットです。
また、職務等級制度を導入している場合、社員は自分が専門とする職務に専念します。配置換えや職務の変更による給与の変動も少なく、これも人件費をコントロールしやすい理由です。
4. 職務等級制度のデメリット

一方、職務等級制度にはデメリットもいくつかあります。メリットとデメリットを比較し、自社に合った評価制度かどうか検討することが大切です。
- 職務記述書の作成に手間がかかる
- 定着率が低下する恐れがある
- 評価対象外の職務に対する意欲が失われる
4-1. 職務記述書の作成に手間がかかる
職務等級制度では、厚生労働省の「職業能力評価基準」などを参考に、賃金テーブルの根拠となる職務記述書を作成する必要があります。自社の職務や職位ごとに職務記述書を作成する必要があるため、人事担当者の負担が増加するのがデメリットです。また、職務内容の変更があった場合は、職務記述書のメンテナンスをおこなう手間もかかります。
4-2. 定着率が低下する恐れがある
職務等級制度では、年齢や勤続年数にかかわらず、職務内容に応じて賃金が決まります。そのため、長期勤続のメリットが失われ、従来の年功序列制度に慣れたベテラン社員を中心として、人材の流出が加速する恐れがあります。優秀な人材を定着させるためには、事前に社員に対するアンケートをおこなったり、職務等級制度に関する社員説明会を実施したりして、社員の意見を取り入れながら制度設計に取り組むことが大切です。
4-3. 評価対象外の職務に対する意欲が失われる
職務等級制度では、職務記述書に記載された業務しか、賃金などの待遇面に影響しません。そのため、人事評価の対象外となる職務への意欲やモチベーションが失われるリスクがあります。職務等級制度はスペシャリストの育成には適していますが、ゼネラリストの育成にはあまり向いていません。例えば、部署横断でプロジェクトに取り組む場合に、任された業務しか取り組まない社員が増加し、組織の柔軟性が失われる可能性があります。
5. 職務等級制度の導入・評価の実施方法

職務等級制度を導入する場合、まずは職務を分析することから始まります。その後職務記述書を作成し、実際に評価をおこなっていきます。職務の分析方法や評価の方法などを見ていきましょう。
5-1. 職務の内容を分析する
職務等級制度のコアとなるのは職務の内容です。そのため、まずは職務を以下のような方法で徹底的に分析していきます。
記述法
記述法は記入用紙を作成し、職務の担当者に内容を記入してもらう方法です。質問形式や自由記述形式など、どのようなタイプでも問題ありません。しかし、記述法のみでは理解が深まらないため、別の方法と併用したほうがよいでしょう。
観察法
観察法は、職務の分析を担当した者が実際に職務の現場に出向いて分析する方法です。時間と手間がかかる方法ですが、現場の様子を目の当たりにすることで、より正確な情報を得やすいです。経験が豊富な人が担当すれば、多角度で精度の高い分析ができます。
面接法
面接法では、職務の担当者や監督者から職務の内容を聞き取る方法です。観察法と同様に手間と時間がかかります。また、面接時に主観や感情が入りやすいため、単独では採用せずほかの方式の事実確認や補助といった運用が望ましいです。
実験的分析法
実験的分析法は、分析担当者が職務を実際に体験し、ダイレクトな情報を元に分析する方法です。現場を体験することで正確性の高い分析ができますが、時間がかかる点や、分析担当者の体験だけでは見えない部分もあるという課題があります。
5-2. 職務記述書を作成する
分析が完了したら、組織内で求められる職務ごとに、職務等級や主な職務内容、求められる知識、能力を整理を整理します。それを元に職務記述書を作成し、等級や各等級の職務内容を決めます。
職務等級制度では、職務別に割り当てる仕事や責任の大きさを明確にすることが重要です。等級の数や決定方法にルールはありませんが、公平性を維持できるようにしましょう。
5-3. 評価の実施方法
最後に評価を実践していきます。職務等級制度における評価方法には、主に以下4つの方法が採用されています。
序列法
序列法では、職務の重要度順に等級をつけていきます。非常にシンプルでわかりやすく、手間も少ない方法です。しかし、職務を比較して重要度を決定していくため、根拠が明確でなく、基準があいまいになりやすいというデメリットがあります。不公平感が出るリスクを抱えているため、基準を明確にした評価が必要です。
分類法
分類法では、先に等級別に基準を設けておきます。職務分析の結果をその基準に当てはめ、等級を振り分けていく評価方法です。
例えば、等級ごとに必要となる能力や責任を定め、それを満たすかどうかで評価をしていきます。等級が上がるごとに求められる能力が高くなるため、目標設定がしやすく評価に対する納得感も出やすいです。
点数法
保有しているスキルや知識の量、職務の熟練度などに点数をつけ、その点数で評価をするのが点数法です。点数の基準を明確にしておけば、「何に対して何点がつけられたのか」を可視化できるため、公平性が維持できます。また、「何が評価されるのか」も明確になり、会社と従業員が同じ方向を向いて進みやすくなります。
要素比較法
要素比較法は、各職種の中で中間的な役職を選び、それを基準に順位付けしていく方法です。たとえば、飲食店やサービス業で、マネージャーを基準として設定したとしましょう。店長やフロアスタッフ、チーフなど、ほかの職位の人が担当する職務が、「マネージャーの職務と比べてどうか」という基準で順位を決めていきます。
6. 職務等級制度を活かせる企業とは

職務等級制度は、適している企業では効果を発揮しますが、そうでない場合は評価に対する不満の温床になってしまいます。自社に適しているか、十分に検討しましょう。職務等級制度が向いている企業は以下のような方針が決まっている企業です。
6-1. 専門的な人材が必須な企業
職務等級制度は、職務を基準とした評価です。評価を上げるためには、職務の専門性や熟練度を高め、知識を増やしていく必要があります。そのため、専門的な人材を多く抱えていたり、業務の中心にそういった人物がいる場合に適しています。
反対に汎用的な能力が評価される企業の場合は、職務等級制度では正確な評価がしにくくなってしまうでしょう。
6-2. 即戦力・中途採用を重視する企業
職務に合わせた人材を確保する必要があり、即戦力の採用や中途採用に力を入れている場合も、職務等級制度が適しています。職務記述書による分析で拡充が必要な能力が明確になっていれば、人員補充の際のミスマッチを防ぎやすくなるからです。
6-3. 役割や成果重視の報酬制度にしたい企業
日本ではこれまで年功序列の評価制度が多く、能力や成果よりも年齢と勤続年数が重視されてきました。そうした序列主義から、能力主義や成果主義の報酬制度に変える予定の企業にも職務等級制度が適しています。職務等級制度では、年齢や勤続年数、性別や学歴などは考えず、仕事の内容と成果で評価できるからです。
6-4. 組織構造が明確な企業
職務が明確に分かれており、組織構造がわかりやすい企業は、職務等級制度をスムーズに導入しやすいです。現行の職務や階級に職務等級制度を当てはめていけばよいため、制度の基本的な部分がすでにできた状態で導入できるでしょう。
従業員側もこれまでの評価と比べても大きな差がでないため、反発も起きにくいです。
6-5. グローバル化を進めている企業
グローバル化を進めていく場合、国境を越えた統一基準による評価が必要になります。職務の価値や責任の大きさなど、公平性のある基準で評価をしていれば、優秀な人材の獲得がしやすくなるからです。職務による評価と人材配置を適正におこなうことで、競争力の強化も可能になり、世界に対しても強い企業になっていくでしょう。
7. 職務等級制度を理解して自社に適した評価制度を導入しよう

職務等級制度は、職務の重要度や困難度に応じ、人事評価の等級を決める評価制度です。社員が取り組む仕事の内容がダイレクトに賃金などの待遇に反映されることから、公平性が高い評価制度だとされています。
また、2021年4月1日に同一労働同一賃金の導入が義務化されるなど、年齢や勤続年数にとらわれず、労働内容に応じた賃金を支給する制度を求める動きが広がっています。そのため、日本企業で長年導入されてきた職能資格制度に代わって、職務等級制度を取り入れる企業が増えてきました。職務等級制度のメリットやデメリットを知り、自社に合った制度設計をおこなうことが大切です。
関連記事:等級制度とは?制度の種類や活用するときのポイントを詳しく解説
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
当サイトではそのような企業のご担当者に向けて「人事評価の手引き」を無料配布しています。
資料では、人事評価制度の基本となる種類の解説や、導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。自社の人事評価に課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
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