KPT(ケプト)とは?活用するメリット・やり方・具体例・注意点を解説
更新日: 2024.12.26
公開日: 2024.12.26
OHSUGI
「KPT法ってなに?」
「KPTの実践にはどのようなメリットがある?」
「具体的なKPTの進め方は?」
KPTについて、上記の疑問をもつ人事労務の担当者もいるのではないでしょうか。
KPT法はフレームワークの一種で、振り返りによって業務の効率化を図れます。しかし正しくKPTを進めるには、いくつかの注意点があるため、内容を把握したうえで適切に取り入れることが大切です。
本記事では、KPT法の概要やメリット、欠点などを解説します。具体的なやり方や注意点についてもあわせて解説するので、ぜひ最後までご覧ください。
1. KPT法とは|振り返りのフレームワーク
KPT法とは、振り返りを実践する際のフレームワークの一種です。業務を振り返り、評価すべき点や課題、今後の改善策などを整理し、プロジェクト運営をブラッシュアップします。
KPTの構成要素は以下の3つです。
KPTの要素 | 概要 |
Keep(継続) | ・うまくいったこと
・よかった点 ・継続すべき事項 |
Problem(問題) | ・トラブルになったこと
・悪かった点 ・今後は見直すべき事項 |
Try(挑戦) | ・上記の2要素から導かれる今後の改善策や挑戦すべき点
・Keepを向上させProblemを改善させるアイデア |
KPTの主な目的は、問題の見える化をはじめとした正しい現状把握です。社内でKPTを実践すれば、チームメンバー内で業務の課題や改善策を共有しやすくなり、業務の効率化に役立ちます。
KPTは、元来システム開発における振り返り手法でした。現在では、ビジネスやプライベートな場でも積極的に取り入れられています。
2. KPTとYWTの違い
同じ振り返りのフレームワークであるKPTとYWTの大きな違いは、重きを置く目的や活躍するシチュエーションです。具体的には、それぞれ以下の点が異なります。
KPT | YWT | |
目的 | 問題の解決 | 学びと成長促進 |
活躍するシチュエーション | チームやプロジェクトの課題発見と改善 | 個人の経験の振り返りと成長支援 |
構成要素 | ・K=Keep(継続)
・P=Problem(問題) ・T=Try(挑戦) |
・Y=やったこと(何を経験したか)
・W=わかったこと(経験をふまえ何がわかったか) ・T=次にやること(それらをふまえ次回にどう活かすか) |
YWTは、個人が経験した内容をもとに、その経験から個々が何を学び取り、どう成長していくかに重きを置いた手法です。それぞれの構成要素を独立してとらえるのではなく、一連の流れでとらえたうえで、行動と結果の因果関係にも着目します。
YWTは、従業員の自律的な成長サイクルの形成に有効です。チーム運営への利用も可能ですが、経験内容のボリュームが増大し整理が困難なため、YWTは一般的に従業員単位での導入に向いています。
3. KPT法を実践する3つのメリット
KPT法を実践する主なメリットは以下の3つです。
- 見える化による問題の早期解決が図れる
- 次に目指すべきゴールが明確化できる
- チーム力の活性化が図れる
具体的な内容を説明していきます。
3-1. 見える化による問題の早期解決が図れる
KPT法の実践で得られる大きなメリットは、見える化による問題の早期解決です。
KPTでは、継続すべき点や問題となった事項を洗い出します。現状把握が正確かつスムーズに進むことで、有効な改善策を講じやすくなるでしょう。
チームメンバーがそろって実践することで、主観を排除し、客観的な解決策を取りやすいのもメリットです。
3-2. 次に目指すべきゴールが明確化できる
次に目指すべきゴールの明確化が図れるのも、KPTで得られるメリットです。
KPTでは、Tryの要素で今後の改善策や挑戦すべき点を整理します。対策が必要な背景を理解したうえで、チーム内の共通認識として明確な目標設定がなされるため、足並みをそろえた対応が可能です。
メンバー間の認識や対応のブレも防ぎやすく、結果として余分な後戻り工数も発生しにくくなります。
3-3. チーム力の活性化が図れる
チーム力の活性化が図れるのも、KPTのメリットです。
KPTを実践する場を設ければ、チーム内の意見交換が活発になり、ナレッジの共有や蓄積に役立ちます。
またKPTは、ともすれば埋もれがちな「評価するべき点」にも着目するのが大きな特徴です。個人やチームを適切に評価することで前向きな雰囲気が生まれ、モチベーションアップも図れるでしょう。
相乗的にコミュニケーションが円滑化し、チームの一体感を高められます。
4. KPT法の2つの欠点
KPT法を実践する際には、以下の2つの欠点に注意が必要です。
- 各要素の切り離しと深掘りが困難な場合がある
- 単発の実践では十分な効果が得られない
具体的な内容は次のとおりです。
4-1. 各要素の切り離しと深掘りが困難な場合がある
いきなりKPT法を実践しようと思っても、各要素の切り離しと深掘りが困難な場合があります。切り離しと深掘りがうまく実現できないと、有効な問題解決手段として活かせません。
特にKeepの評価は、意識的におこなわないとおざなりになりがちです。Keepを深掘りできないままProblemにばかり焦点を当てると、議論の場の雰囲気が悪化することがあります。
また、各要素を出し切らない状態で次のフェーズへ移行することで、そのまま議論が終了してしまうことがあるのも懸念点です。Problemを出した流れでそのままTryに移行すると、問題点の見落としが起こり、KPTを有効活用できません。
4-2. 単発の実践では十分な効果が得られない
KPTは、思い立ったときに単発で実践しても十分な効果は得られません。
振り返りのサイクルを繰り返していくことで徐々に精度がアップし、効果を発揮していくのがKPTです。業務の効率化に活かすには、前回のTryで決定した事項を次回のKPTで適切に評価し、ブラッシュアップしていく必要があります。
定期的にKPTを実践する場を設けたうえで、効果が出るまで十分な時間を確保しておくのが肝要です。
5. KPTのやり方|具体例あり
KPTの実践手順は以下のとおりです。
- KPTを実践するためのツールやフォーマットを準備する
- KeepとProblemを洗い出す
- KeepとProblemを精査する
- Tryを決定する
- 再度振り返りのKPTをおこなう
それぞれの内容を、具体例をまじえながら説明します。
5-1. KPTを実践するためのツールやフォーマットを準備する
KPTを実践する際には、まずはKPTツールやフォーマットを準備しましょう。KPTをアナログ下でおこなうかデジタル下でおこなうかで、必要な準備が異なります。
アナログ下でKPTを実践する際には、ホワイトボードもしくは大き目の模造紙、付箋、筆記用具が必要です。ボードや紙のスペースを縦半分に区切り、さらに左の部分を横半分に区切りましょう。合計で3箇所できたパーツには、左上側にKeepの文字を、左下側にProblemの文字を、右半分にTryの文字を記載します。
PCを利用したデジタル下では、KPT実践ツールを導入すると便利にKPTを進められます。付箋形式で要素を付加できる「Trello(トレロ)」や、習慣化をサポートする「Wistant(ウィスタント)」がKPTツールの代表例です。
5-2. KeepとProblemを洗い出す
準備が整ったら、KeepとProblemを洗い出します。
アナログ形式の場合、付箋に内容を書き出しましょう。このときほかのメンバーとは相談せず、自分自身の率直な意見を記載する方が、忖度を避けて新たな発見につながる可能性が高まります。
洗い出し作業の具体例としては、それぞれ以下のような内容を書き出しましょう。
要素 | 具体例 |
Keep | アポイントが前回より20%アップした |
Problem | 売上が前回の90%にとどまった |
各項目を出しきったら、ホワイトボードの該当箇所に付箋を貼り付けていきます。
なお内容の洗い出しは、一般的にはKeepから先に進めますが、進めやすい方から先に取り組んでも問題ありません。
5-3. KeepとProblemを精査する
KeepとProblemを一通り洗い出したら、それぞれの内容を精査します。参加者全員でディスカッションをおこないましょう。
KeepもProblemも、単なる事実確認に終始するのではなく、そこに至った要因を深掘りしていくことが大切です。
前項で挙げた例をもとに説明すると、以下のような分析をおこないます。
要素 | 精査内容の例 |
Keep | (アポイントが前回より20%アップしたのは)広告を打ち出したことで露出が増え、商品へ興味をもった人が増加したため |
Problem | (売上が前回の90%にとどまったのは)商品の魅力を伝えきれなかったり、競合他社の製品に軍配があがったりしたため |
5-4. Tryを決定する
精査したKeepとProblemをもとに、具体的なTryの内容を決定します。「がんばる」「意識する」などの精神論にとどまらず、問題に対する具体性のある改善策に落とし込むまで十分議論を重ねましょう。
前項までに挙げた例をもとに説明すると、以下のようなTryの設定をおこないます。
Tryの具体例 | ・見込み客を正式な顧客に昇格できるよう、シーンごとに具体例をまじえながら商品の魅力をアピールしていく
・自社製品ならではの優れた箇所をピックアップして伝えていく |
日々の業務のなかで、設定したTryを意識し実践するよう努めましょう。
5-5. 再度振り返りのKPTをおこなう
一定期間が経過したら、再度振り返りのKPTを実施しましょう。定期的にブラッシュアップを続けることで、KPTの精度は高まります。
前回のTryで設定したもののうち効果が現れたものがあれば、Keepへ移動しましょう。反対に、効果がなかった不要な項目は削除します。
新たな問題が発生していないかどうかの確認も重要です。個人やチームの立場など、目線を変えて精査してみましょう。
短いスパンでKPTをおこなうよう習慣づければ、振り返りの精度があがります。
6. KPTを実践する際の2つの注意点
KPT法を実践する際の主な注意点としては、以下の2つが挙げられます。
- 各要素にかける時間配分に留意する
- テーマを設定する
以下のような内容に配慮するよう、現場にうながしましょう。
6-1. 各要素にかける時間配分に留意する
KPTを検討する会議時には、K・P・Tの各要素にかける時間配分に留意しましょう。特定の要素の議論に時間が偏りすぎると、KPTの効果が不十分になる可能性があります。
例えばProblemを重視しKeepがおろそかになると、ネガティブな雰囲気が蔓延し、チームのモチベーションの低下につながりかねません。はじめのうちは特に、Keepの評価にはしっかり時間をかけましょう。
会議をコントロールする担当者を設け、個人攻撃や発言中の遮り行為を防止しつつ、生産的な議論が進められるような配慮も有効です。
6-2. テーマを設定する
KPTを検討する会議においては、テーマの設定にも配慮しましょう。テーマの範囲が広すぎると検討すべき内容が増え、議論の効率が落ちる可能性があります。
結果的にKPTで十分な成果が得られにくくなるため、適宜テーマを絞ってKPTをおこなう方がかえって効率的です。設定したテーマがある場合には、事前にメンバーに共有しておけば、議論の時間を有効に使えます。
7. KPTを活用して業務の効率化に役立てよう
KPT法は、振り返りのフレームワークの一種です。問題の見える化によって速やかな現状把握と課題の解決が可能になり、チームの活性化やモチベーションアップにもつながります。
ぜひKPTを適切に活用するよう現場にうながし、業務の効率化に役立ててください。
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