インセンティブとは?ビジネス上の意味や具体例を簡単に紹介
更新日: 2025.1.8
公開日: 2024.12.20
OHSUGI
「インセンティブとは?」
「インセンティブにはどのような種類がある?」
上記の疑問をお持ちではありませんか。
一般的にインセンティブ制度は、それぞれの従業員の出した成果に応じて報奨金を支給する制度です。インセンティブには、金銭以外にもさまざまな種類があることも知っておきましょう。
この記事では、インセンティブの基本的な知識と導入のメリット・デメリット、種類や具体例、計算方法を紹介しています。従業員のやる気を引き出し、業績アップを図りたい労務担当者はぜひ参考にしてください。
1. インセンティブとは|動機づけとなる報酬を意味する
インセンティブとは、動機づけとなる報酬を意味します。刺激・動機・誘因・奨励金・報酬物を意味する英単語、incentiveが語源です。
ビジネスの場面では、従業員への成功報酬として使われるケースが多く見られます。
実際に、企業で導入されているインセンティブ制度は、高い成果を出した従業員が報酬として金銭や物品、評価などを受け取れる制度です。金銭でインセンティブを支給する場合には、基本給に上乗せします。
2. インセンティブと混同しやすい用語の意味・使い方の違い
インセンティブと混同しやすい用語の意味・使い方の違いを以下の流れで解説します。
- インセンティブと賞与(ボーナス)の違い
- インセンティブと歩合制の違い
2-1. インセンティブと賞与(ボーナス)の違い
インセンティブと賞与(ボーナス)の違いは以下のとおりです。
インセンティブ | 賞与(ボーナス) | |
支給品 | 金銭、物品・評価など | 金銭 |
支給条件 | 従業員個人が企業が設定した条件をクリアした場合 | 個人の成果に関わらず支払われる場合が多い |
支給対象 | 企業が設定した条件をクリアした従業員のみ | 全従業員である場合が多い |
例 | ・1契約につき◯万円
・売上の◯%を給与に上乗せ |
・年に2回、従業員全員に基本給の◯ヵ月分を支給する
・年に1回、従業員全員に企業全体の業績に応じて支給する |
インセンティブで支給されるものが金銭、物品、評価などであることに対し、賞与は金銭のみで支給されます。
また、インセンティブを受け取れるのは、企業が設定した条件や目標をクリアした従業員のみですが、ボーナスは全従業員が受け取れる場合が多いです。
2-2. インセンティブと歩合制の違い
インセンティブと歩合制の違いは以下のとおりです。
インセンティブ | 歩合制 | |
支給品 | 金銭、物品・評価など | 金銭 |
支給条件 | 従業員個人が、企業が設定した条件をクリアする | 従業員個人が売上をあげたとき |
例 | ・1契約につき◯万円支給する
・売上が目標達成したら◯万円支給する |
・売上の◯%を支給する |
歩合制は、インセンティブのように目標をクリアしたときに企業が従業員へ支給するものではありません。歩合制は、売上金に対して定めた◯%を、毎月の給与で従業員が受け取れるものです。
歩合制には、固定給にプラスして歩合給が加算される固定給+歩合制と、固定給のない完全歩合制があります。
歩合制はインセンティブ制度よりも、業績が給与の金額に直接反映すると考えて良いでしょう。
3. インセンティブ制度が注目される背景
インセンティブ制度が注目されるようになった背景は、経済の低迷により終身雇用制度や年功序列制度の維持が難しくなったことです。昨今では、人件費の適正化をすべく、成果主義を重視する企業が増えつつあります。
雇用の形も、従来は採用してから業務を振り分ける「メンバーシップ型」が一般的でした。しかし現在では、一つの業務に対する専門的な知識を持った人材を採用する「ジョブ型」が広がりを見せています。
ジョブ型の雇用は、人材の実力によって報酬が決まる場合が多いです。このように、従業員の実力や成果で報酬が決まる考えの広まりが、インセンティブ制度に注目が集まるきっかけとなりました。
4. インセンティブ制度を導入するメリット
インセンティブ制度を導入するメリットは以下のとおりです。
- 従業員のモチベーションがアップする
- 従業員が目指すべきことが明確になる
- 従業員が出した成果を正当に評価できる
- 採用活動のアピールポイントとなる
実績に応じて報酬を受け取れることは、従業員のモチベーション向上につながるでしょう。また、達成目標が定められることにより、従業員は何に向けて努力すればよいかを明確に把握できるようになります。
各従業員の目標達成度がはっきりとわかるのがポイントです。上司のあいまいな基準で評価されることなく、だれもが納得できる正当な評価が可能となります。
加えて、採用活動においてインセンティブ制度を取り入れている企業は、待遇面を重視する求職者にとって魅力的に映るでしょう。
5. インセンティブ制度を導入するデメリット
インセンティブ制度を導入するデメリットは以下のとおりです。
- 従業員が個人の成果にばかり注目する
- 属人化のリスクが高まる
- 賃金格差により従業員の意欲が落ちる
インセンティブ制度を取り入れると、従業員が自分の成果ばかりに気を取られる可能性が高まります。ほかの従業員への競争心のあまり、自分が得たスキルや知識を共有することを避け属人化が進む場合もあるでしょう。
成果を出せない従業員や、成果が数字として現れない部門の従業員が不満を感じやすい点もインセンティブ制度のデメリットです。インセンティブを受け取っている従業員との格差により意欲が落ち、離職につながるケースもあります。
成果が出せない従業員のフォローや、インセンティブ制度を利用できない部門での適切な評価体制が重要なポイントとなるでしょう。
6. インセンティブの種類・具体例
インセンティブの種類や具体例は以下のとおりです。
種類 | 内容 | 具体例 |
物質的インセンティブ | 金銭や物品を支給する | ・金銭、旅行券、商品を支給する
・ポイント制福利厚生サービスのポイントを付与する |
評価的インセンティブ | 業績を評価する | ・昇進や昇格、社内表彰する |
人的インセンティブ | 良好な人間関係を提供する | ・社員旅行やスポーツイベントを開催する
・異動先の選択権を与える |
理念的インセンティブ | 企業の理念や社会貢献への取り組みが従業員の考え方とマッチする | ・SDGsや社会貢献へ積極的に取り組む |
自己実現的インセンティブ | 従業員のキャリア形成を応援する | ・資格取得をサポートする
・希望する業務を任せる ・外部研修に参加させる |
効果的な動機づけは、必ずしも金銭や物品の支給ではありません。自分の努力に対して正当な評価や、仲のよい先輩や同僚と働けることも働くための大きなモチベーションとなります。
積極的に社会貢献をしている会社で働き、自分が世の中の役に立っていると実感することもあるでしょう。なかには、自分の成長をモチベーションにする方もいます。
7. 金銭的インセンティブの計算方法
金銭的インセンティブの計算例は以下のとおりです。
条件 | 計算例 |
契約1件あたり◯円 | 契約件数1件あたり1万円を支給
(契約を10件取った場合) 1万円×10=インセンティブ報酬10万円 |
売上の◯% | 売上額200万円を超えた分の売上10%を支給
(300万円達成した場合) (300万円-200万円)×0.1=インセンティブ報酬10万円 |
計算例を参考に、自社に適したインセンティブの金額を決めましょう。
8. インセンティブ制度を活用して成果を高めよう
インセンティブの意味は「動機づけとなる報酬」です。金銭で支払う形でのインセンティブが一般的ですが、物や評価などの報酬もインセンティブと呼ばれます。
インセンティブをうまく活用できれば、従業員のモチベーション向上や、従業員の目標の明確化、正当な評価につながるでしょう。採用活動のアピールポイントともなるので、優秀な人材を採用できるチャンスが広がります。
一方で、従業員が個人の成果にばかり注目しやすい点や、属人化のリスクが高まる点には注意が必要です。
賃金格差により従業員の意欲が落ちないよう、成果が出せない従業員へのフォローも忘れてはなりません。数字として成果が見えにくい部門への正当な評価も必須です。各企業に合ったインセンティブ制度を設計し、企業全体の成果を高めてください。
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