賞与の査定期間とは?算定期間との違いや設定する際の注意点を解説
更新日: 2025.5.27
公開日: 2025.5.25
jinjer Blog 編集部
「賞与の査定期間とは?」
「賞与の査定期間を設定する際の注意点を知りたい」
上記のような疑問やお悩みをお持ちではないでしょうか。
「賞与(ボーナス)」は、企業が従業員のモチベーションを高めるうえで重要な制度の一つといえます。賞与の支給額を決める際に、重要な基準となるのが「査定期間」です。
査定期間を明確にし適切に運用することで、従業員の納得感を高められます。結果として、組織全体のエンゲージメント向上にもつながるでしょう。
本記事では、賞与の査定期間の概要や算定期間との違い、設定する際の注意点を解説します。賞与の査定期間を適切に設定し、従業員の納得度を高めましょう。
目次
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「人事評価制度に改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
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資料では、人事評価制度の基本となる種類の解説や、導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。自社の人事評価に課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。

1. 賞与の査定期間とは
賞与の査定期間とは、賞与支給額を決めるために、従業員の業績や勤務態度を評価する期間のことです。
企業は、査定期間中の勤務実績や目標の達成状況、チームへの貢献度などを評価し、賞与の金額を決定します。
査定期間を明確にすることで、従業員は「どの期間の評価がボーナスに影響するのか」を理解しやすくなります。従業員の仕事への取り組み方や、目標達成に向けた行動にも良い影響を与えるでしょう。
2. 賞与の査定期間と算定期間の違い
賞与に関連する「査定期間」と「算定期間」は役割が異なります。それぞれの違いは、以下のとおりです。
査定期間 | 業績・成果・勤務態度などを評価し、賞与の金額を決定するまでの期間 |
算定期間 | 賞与がどの勤務時間に対応しているのかを示す期間 |
なお、算定期間は「算定対象期間」や「支給対象期間」とも呼ばれます。賞与に対する社会保険料の算出や、源泉徴収税額の計算に用いられるなど、税務・保険処理の基準となる重要な期間であるといえます。
査定期間と算定期間の定め方は、原則として企業の自由です。
3. 賞与の一般的な査定期間の例
賞与の査定期間は、賞与の支給タイミングによって異なります。以下は、年2回支給する企業における一般的な例です。
■一般的な査定期間の例(年2回支給)
夏季賞与の場合 | 冬季賞与の場合 | |
賞与支給月 | 7月 | 12月 |
査定期間 | 前年10月~当月3月 | 当月4月~9月 |
多くの企業では、夏・冬それぞれの賞与について、半期(6ヵ月)ごとの査定期間を設けています。企業は査定期間中の評価結果をまとめ、賞与支給額を決定する必要があります。
なお、賞与支給月の実績は査定対象外となるため、原則として次回の評価に反映します。
年1回のみ賞与を支給する場合、前年度1年分の実績が査定対象となることが一般的です。
4. シーン別|賞与の査定期間の取り扱い
賞与の査定期間の取り扱いを、以下のシーンごとに解説します。
- 退職者・休職者
- 中途採用者
- 新入社員
- 年次有給休暇中
- 育児・介護休業中
- 特別休暇中
- 労災休業中
4-1. 退職者・休職者
賞与算定期間中に従業員が退職・休職した場合の対応は企業によって異なります。そのため、就業規則などに支給要件を明記しておかなければなりません。
例えば、賞与を支給しない場合は、「退職者および休職者は査定対象外とする」など、従業員にとって誤解がないよう明記します。
就業規則に賞与の有無を明記しておらず支給しなかった場合、不利益扱いとみなされる可能性があるため注意しましょう。
4-2. 中途採用者
査定期間中に入社した中途採用者の査定期間に対しては、在籍期間に応じて賞与を按分して支給するのが一般的です。
たとえば、入社月から査定期間末日までの勤務実績に応じて支給額を算出します。
満額支給すると不公平感が生じ、ほかの従業員の不満を生みかねません。そのため、在籍日数などに応じて調整し、公平に支給することが求められます。
4-3. 新入社員
4月に入社する新入社員は、査夏季賞与の査定期間(前年10月〜当年3月)に在籍していないため、初年度の夏季賞与は査定対象外となるのが一般的です。
賞与査定期間の対象者となるのは、入社1年目の冬季賞与、もしくは2年目からとなるケースが多く見られます。
新入社員への期待やモチベーション向上のために、初年度に限って少額の一時金を支給する企業もあります。
4-4. 年次有給休暇中
年次有給休暇の取得期間は、査定期間の評価対象となります。
有給休暇は法的に認められた正当な休暇であり、労働日として取り扱われるためです。
年次有給休暇取得を理由に、賞与査定を不利に扱うことは、労働基準法第136条で禁止されています。
4-5. 育児・介護休業中
育児・介護休暇中の従業員に対しても、賞与を不当に扱うことはできません。査定期間中に一度でも出勤している期間があれば、賞与の支給対象者となります。
ただし査定期間中の大半を休業していた場合は、ノーワーク・ノーペイの原則にもとづき、不就労となった期間の賞与を減額可能です。
ノーワーク・ノーペイの原則とは、従業員が労働していなければ賃金を支払う義務が発生しない給与計算のことで、労働基準法第24条で定められています。
ただし、以下のような極端な取り扱いは労使間トラブルに発展する可能性があるため注意が必要です。
- 賞与支給日までに復職していなければ支給しない
- 算定期間中の半数以上出勤しなければ支給しない
4-6. 特別休暇中
年末年始休暇や夏季休暇などの特別休暇は、企業が独自に設ける休暇です。とはいえ、特別休暇は全従業員に平等に付与することが一般的です。
そのため、賞与の査定において特別休暇を理由に支給額に差が出ることはほとんどなく、通常は勤務実績として扱われるケースが多く見られます。
4-7. 労災休業中
労災による休業の査定期間の取り扱いは、企業によって異なります。ただし、労災は従業員に過失がないケースも多いため、慎重な判断をしなければなりません。
たとえば、労災休業期間中を評価対象から除外する場合でも、賞与の一部を支給したり、復職後の実績とあわせて調整したりなどの柔軟な対応が求められます。
5. 賞与の査定期間を設定する際の注意点
賞与の査定期間を設定する際の注意点は、以下のとおりです。
- 社内規定に明記し周知する
- 柔軟な運用と公平性を両立させる
- 査定結果のフォローをおこなう
5-1. 社内規定に明記し周知する
査定期間を設定する際は、就業規則や賃金規定などの社内規定に明記し、従業員へ周知する必要があります。
これらが明記・開示されていない場合、「どの期間が評価対象だったのか」「なぜこの評価なのか」など、従業員の誤解や不満を生むリスクがあるためです。
あらかじめ査定期間や基準、運用方法について周知することで、従業員の納得感を得やすくなります。労使間トラブル防止や査定の透明性の確保にもつながるでしょう。
5-2. 柔軟な運用と公平性を両立させる
査定期間を設定する際は、柔軟な運用と公平性の両立が求められます。
査定期間は一律で設定することが一般的ですが、休職者や中途採用者など、一部の従業員には同じ基準を適用することが難しいケースもあるでしょう。
そのため、一定の柔軟性を持たせつつ、ほかの従業員と比較して不公平感が生じないよう配慮が必要です。
あらかじめ補足規定や判断基準を就業規則や評価マニュアル等に明記しておくことで、イレギュラーなケースにも適切に対応でき、トラブルの未然防止につながります。
5-3. 明確な評価基準の整備
賞与の査定期間を設定するうえで、評価基準を明確に整備しておくことも重要です。
基準が曖昧なままでは、評価者ごとの判断にばらつきが生じやすくなります。従業員間で「評価が不公平だ」と感じられる要因になりかねないでしょう。
例えば、「勤務態度」「業績」「協調性」「目標達成度」などの評価項目を具体的に設定し、それぞれに配点や評価基準を設けることで、客観性や納得感を高められます。
また、面談や評価コメントの共有など、評価結果について本人にフィードバックする仕組みを整えておくことで、査定制度の精度向上にもつながります。
6. 賞与の査定期間を適切に設定し従業員の納得度を高めよう
賞与の査定期間は、単なる評価のための期間ではなく、従業員の努力や成果を正当に評価し、報酬に反映させるための重要な仕組みです。
査定期間の設計が適切であれば、従業員のモチベーションやエンゲージメントを高め、組織全体の生産性向上にもつながります。
一方で、曖昧な運用や説明不足があると、不満や誤解が生じやすくなるでしょう。企業は、査定期間と算定期間の違いを正しく理解し、制度設計・運用において透明性と公平性を確保することが求められます。
賞与の査定期間を適切に設定し、従業員が納得できるルールの整備・運用をしましょう。
人事評価制度は、従業員のモチベーションに直結するため、適切に設計・見直し・改善をおこなわなければ、最悪の場合、従業員の退職に繋がるリスクもあります。
しかし「人事評価制度に改善したいが、いまの組織に合わせてどう変えるべきか悩んでいる」「前任者が設計した評価制度が古く、見直したいけど何から始めたらいいのかわからない」という方もいらっしゃるでしょう。
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