労働契約法5条による「労働者の安全への配慮」の意味や注意点
更新日: 2023.9.1
公開日: 2021.10.2
MEGURO
労働契約についての基本的なルールが定められた労働契約法は、労働紛争の解決をはかる法律として、平成20年3月に施行されました。
今回は、労働契約法5条で明文化されている「労働者の安全への配慮(安全配慮義務)」について解説します。
▼そもそも労働契約法とは?という方はこちらの記事をご覧ください。
労働契約法とは?その趣旨や押さえておくべき3つのポイント
目次
1.労働契約法5条による「労働者の安全への配慮」とは?
労働契約法では、労働契約に関するさまざまなルールが明記されています。とくに労働契約法5条「労働者の安全への配慮」では、労働者の事故防止や健康面の管理を行うため、企業が講じるべき措置について規定しています。
「労働者の安全への配慮」を実施するには、いくつかのポイントをおさえた対策が必要です。
1-1.「労働者の安全への配慮」を実施するために必要なこと
企業側が「労働者の安全への配慮」を実施するためには、労働環境や業務内容を加味し、具体的な対策を講じなければなりません。
労働者の安全を確保するためには、以下の2点に重点を置きましょう。
- 労働者の作業環境を整える
- 労働者の健康管理を行なう
以下、それぞれについて詳しく説明します。
1. 労働者の作業環境を整える
労働者が安全に作業可能となる環境の整備は、「労働者の安全への配慮」において最も重要な点となります。
具体的な対策として、日常的に利用される機器の整備や点検のほか、安全に配慮した作業手順の見直し、また、事故の要因となりうる作業環境の確認および対策などが挙げられます。
このほかにも、機器の使い方に関する指導や安全保護具についての知識共有、災害時の対応方法についての研修などの実施なども重要です。いずれも労働者の作業中のトラブル発生を未然に防ぎ、最適な作業環境を提供するために必要な要素となります。
2. 労働者の健康管理を行なう
労働者に安全な労働環境を提供するためには、労働者自身の健康管理を企業側で実施することも重要です。
労働者の健康管理とは、心と体、両面での管理のことを指します。もちろん、事故や怪我のほか、内蔵疾患の発見やメンタルの不調についても早期に発見し、対応していかなければなりません。
具体的な対策としては、以下のようなことが挙げられます。
- 産業医や産業保健スタッフといった専門知識をもった人材と連携を行い職場の巡回を実施する
- 健康診断やメンタルヘルスチェックを積極的に行い、早期に不調を発見する
- ハラスメントやいじめが発生することの無いよう、研修の実施や相談窓口を設置する
- 労働者の労働時間を企業側できちんと把握し、長時間労働をなくす努力をする
1-2.「労働者の安全への配慮」で配慮すべき対象者とは
「労働者の安全への配慮」で配慮すべき労働者とは、自社の正社員だけとは限りません。外部から自社へ出向き、働いている労働者についても同様に配慮が必要となりますので、注意が必要です。
「労働者の安全への配慮」で正社員のほかに配慮する労働者は、以下の通りです。
下請け企業の労働者
派遣労働者
これらの労働者については、自社と直接の労働契約はなくても、自社側で安全配慮義務を負わなければなりません。
2.労働契約法5条による「労働者の安全への配慮」の注意点
ここでは、労働契約法5条による「労働者の安全への配慮」の注意点について紹介します。
「労働者の安全への配慮」では、とくに以下2点を注意しなければなりません。
- 損害賠償請求に応じる必要がある
- 企業のイメージダウンは免れない
以下、それぞれについて詳しく説明します。
2-1. 損害賠償請求に応じる必要がある
「労働者の安全への配慮」に違反した場合、労働契約法の条文には罰則に関する記載はありません。しかし、労働者側から訴えがあった場合には、企業側が損害賠償請求に応じる必要があります。
2-2. 企業のイメージダウンは免れない
企業が「労働者の安全への配慮」に違反したことが報道などによって公になると、企業側のイメージダウンにつながる可能性も否定できません。イメージダウンから、業績不振へとつながっていくケースもあるでしょう。
3.労働契約法5条による「労働者の安全への配慮」を守るポイント
労働契約法第5条による、「労働者の安全への配慮」を守るためには、以下5つのポイントに重点をおいて対策を実施する必要があります。
- 労働時間に関する規定を作り、管理を徹底する
- 安全衛生管理の体制を整備する
- 積極的なメンタルヘルス対策を実施する
- 労働災害や事故防止対策を徹底させる
- いじめ・ハラスメントに対する適切な措置を実施する
以下、それぞれのポイントについて説明します。
3-1. 労働時間に関する規定を作り、管理を徹底する
長時間労働を抑制するためにも、労働時間に関する規定を作り、労働時間の管理を行うことが重要となります。たとえば、「残業の際には必ず上司への申請を行う」「承認を受けない限りは残業できない」といった対策などが有効です。
3-2. 安全衛生管理の体制を整備する
部署や現場ごとに、安全衛生管理の体制の整備を行いましょう。具体的には、「衛生管理者や安全衛生推奨者を設置する」「安全衛生教育の実施」などを行う必要があります。
また、労働者の健康管理のため、定期的な健康診断の実施も行いましょう。
3-3. 積極的なメンタルヘルス対策を実施する
労働者のメンタルヘルスに関する問題は、近年、企業側でも積極的に関わっていかなければならない課題のひとつとなっています。適切な対処を行っていくためにも、社内にカウンセラーを設置したり、労働者へのメンタルヘルスに関する情報の提供・教育などを行ったりという施策が必要です。
3-4. 労働災害や事故防止対策を徹底させる
作業中の事故は、企業側で未然に防止していかなければなりません。作業内容や危険性に応じて安全装置の設置を行ったり、安全確保の意識を高めるために定期的な研修を実施したりしましょう。
3-5. いじめ・ハラスメントに対する適切な措置を実施する
職場でのいじめやハラスメントに対しては、企業側で被害に関する報告や相談の窓口を設けるなど、適切な措置を講じる必要があります。どのような形であれ、いじめやハラスメントは許されないという毅然とした態度で臨みましょう。
このほかにも、企業側で定期的にいじめやハラスメントに対する教育を実施するなど、社内でも意識の共有をはかっていくとよいでしょう。
4.「労働者の安全への配慮」を意識して労働者へ安全な労働環境の提供を
今回は、労働契約法5条で規定されている「労働者の安全への配慮」の概要や注意点、法令遵守のためのポイントについてご紹介しました。
「労働者の安全への配慮」は、労働者へ安全な労働環境を提供するための企業側の責任でもあります。法令に応じなかった場合の企業側の罰則を理解し、遵守のためのポイントをおさえた対策を実施していくことが重要です。
自社の業務内容、作業の危険性などの状況をふまえ、最適な安全対策を行いましょう。
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