労働契約法とは?その趣旨や押さえておくべき3つのポイント
更新日: 2023.9.1
公開日: 2021.10.2
MEGURO
労働契約法の内容を理解しないまま、労働者と不適切な労働契約を結んでしまうと、後々労働紛争に発展して会社が不利益を被る可能性があります。労働契約法とはどういった法律なのか、概要をきちんと押さえておくことで、労働者とのトラブルを回避できるようになるでしょう。
本記事では、労働契約法の概要と、改正後の押さえておくべきポイントについて詳しく解説します。
1.労働契約法とは?
労働契約法とは、雇用主が労働者を雇い入れる際に締結する労働契約に関して、基本的なルールを定めた法律です。この法律では、「総則(第1条~5条)」「労働契約の成立及び変更(第6条~13条)」、「労働契約の継続及び終了(第14条~16条)」、「期間の定めのある労働契約(第17~20条)」について明確にルールが整備されています。
この法律ができた背景には、就業形態の多様化にともない、労働契約に関する個別の労働紛争が増加したことが挙げられます。これらの労働紛争を解決するためには、労働契約に関する基本ルールが必要となり、労働契約法は平成20年3月より施行されました。
また、平成24年8月には、有期労働契約(契約社員やアルバイトなど)に関する新しいルールが追加されています。
1-1.労働基準法や労働安全衛生法との違い
労働契約法は雇用主と労働者の関係を規律する私法になりますが、労働基準法と労働安全衛生法は、国家と雇用主の関係を規律する公法になります。
労働基準法は、国が雇用主に課した必要最低限の労働条件を明示したものです。また、労働安全衛生法も同様に、国が雇用主に課した労働者の安全と衛生に関した基準を明示しています。
1-2.労働契約法に違反するとどうなる?
労働基準法や労働安全衛生法には罰則が設けられていますが、労働契約法は私法であるため罰則が設けられていません。しかし、罰則が課せられることはなくても、違反前の労働契約の内容は無効となります。
万が一、労働紛争に発展し、労働者から民事訴訟を起こされた場合には、損害賠償などを払わなくてはいけなくなる可能性もあります。
2.労働契約法に関する3つのポイント
平成24年8月に改定されたものでは、有期契約労働者の雇止めによる不安を解消する目的で、新たに3つのルールが追加されました。改正後のルールを知らないまま労働契約の手続きを行ってしまうと、労働契約法に違反する可能性もあります。そのため、以下3つのポイントは必ず押さえておきましょう。
2-1. 無期労働契約への転換
平成25年4月1日以降に締結された有期労働契約について、契約更新の期間が通算で5年を超える場合は、無期労働契約への転換を労働者が申し込みできるようになりました。
具体的に説明すると、たとえば平成30年4月1日に3年間の有期労働契約を締結した場合、令和3年3月31日に契約期間が満了します。その後、3年間の契約更新をすると、通算で契約期間が6年となりますので、令和3年4月1日以降に無期労働契約への転換への申し込みができます。
つまり、実際に5年を超えてからでなく、契約期間が5年を超えることが分かったタイミングで、労働者は無期労働契約への転換を申し込めるということです。
なお、有期労働契約とは、契約社員やアルバイト、パートタイムのことをいいます。また、期限を定めた雇用形態にある場合は、呼称に関係せず全て有期労働契約と見なされます。
無期労働契約の転換は、労働者から口頭での申し込みでも法律上は成立します。ただし、口頭で行った場合は、形が残らないため、後々トラブルになった場合に解決が難しくなります。こうしたリスクを回避するためにも、書面による申し込みの受け入れと承諾を行うようにした方がよいでしょう。
自社で書面の用意がなければ、厚生労働省の「無期労働契約転換申込書・受理通知書の様式例」[注1]を活用してもよいでしょう。
労働者から無期労働契約転換の申し込みがされた時点で、無期労働契約が成立します。なお、無期に転換されるのは、申し込み時点の有期労働契約が満了した翌日からとなります。注意したいのが、無期労働契約に転換されたからといって、正社員と同様の扱いになるという訳ではないことです。契約期間の期限がなくなっただけであって、労働条件は、有期労働契約時の内容と同様となります。
[注1]厚生労働省:無期労働契約転換申込書・受理通知書の様式例
2-2. 「雇止め法理」の法定化
「雇止め法理」の法定化とは、有期労働契約にある労働者の契約更新を雇用主が拒否する「雇止め」について、不当な理由で行使されないよう法律で制限したものです。これは、元々過去の最高裁の判例を元にした雇止めを無効とするルールはありましたが、法改正のタイミングで改めて労働契約法に追加されたものです。
具体的には、以下いずれかの条件を満たす場合であって、「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められないとき」は雇止めは無効となります。
- 過去に有期労働契約が反復更新されており、その雇止めが無期労働契約の解雇と同様であると認められるもの
- 有期労働契約の満了時に、契約更新がなされるものと期待することについて合理的な理由があると認められるもの
法律の適用にあたっては、労働者から有期契約期間の更新の申し込みが必要です。なお、契約期間が満了していた場合であっても、遅滞なく申し込みを行えば適用されることになっています。
2-3. 不合理な労働条件の禁止
同じ雇用主と労働契約を結んでいる有期契約労働者と無期契約労働者に、正当な理由なく異なる労働条件を適用させることを禁止しています。これは、給与や労働時間に限らず、労働契約に含まれている服務規程や教育訓練、福利厚生など一切の労働条件が適用となります。
異なる労働条件を適用した場合、それが不合理であるかどうかは、以下の観点で判断されます。
- 職務の内容(業務内容や、担当業務に伴う責任の程度)
- 当該職務の内容や配置の変更の範囲
- その他の事情(合理的な労使の慣行などの諸事情)
とくに、通勤手当や食堂の利用、安全管理などについては、特段の理由がない限り、労働条件を相違させることは不合理であると判断されます。
3.労働契約法改正における注意点
ここでは、労働契約法改正における注意点について見ていきましょう。
3-1.定年後の無期労働契約への転換に関する特例
定年後に有期契約労働者として引き続き雇用される場合は、無期労働契約の転換ルールが適用されます。しかし、有期雇用特別措置法により以下の条件を満たす場合は、無機労働契約の転換ルールは適用されない特例があります。
- 適切な雇用管理に関する計画書作成し、都道府県労働局長の認定を受けている事業者であること
- 定年後に引き続き有期雇用労働者として引き続き雇用されること
特例の適用には、事業主が本社・本店を管轄する都道府県労働局に認定申請をする必要があります。認定申請をしてから認定を受けるまでに一定の期間を要しますので、認定申請を検討される場合は、早めに申請をあげた方がよいでしょう。
4.労働契約法改正後のルールもしっかり押さえておこう
労働契約法は、雇用主が労働者と労働契約を結ぶ際に守らなけれなならないルールが記されています。平成24年8月に公布されたものは、有期労働者の契約更新に関する「無期労働契約への転換」、「雇止め法理の法定化」、「不合理な労働条件の禁止」の3点が追加されています。
改正後のルールもきっちり把握しておくことで、会社が不利益を被るリスクを減らすことができるでしょう。
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