【2025年12月最新版】労働施策総合推進法が改正!カスハラ対策の義務化や治療と仕事の両立支援を解説
更新日: 2026.1.20 公開日: 2026.1.20 jinjer Blog 編集部
2025年6月に、労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律が公布されました。本法律では労働施策総合推進法にカスタマーハラスメント対策や治療と仕事の両立支援の内容が追加されて、同時に、男女雇用機会均等法と女性活躍推進法の一部改正もおこなわれました。
特にカスタマーハラスメント対策は、最近まで企業が取り組むべき対策が明らかにされていませんでしたが、2025年11月17日に開催された労働施策審議会で指針の素案が公表されました。本記事では指針の素案の内容も含め、労働施策総合推進法の改正に関する最新情報をご提供します。
改正内容への対応は、法令を遵守するだけでなく、社会的に問題視されている労務課題への取り組みにも有効です。自社がより働きやすい職場となるよう、カスタマーハラスメント対策や治療と仕事の両立支援について正しく押さえましょう。
人事労務担当者の実務の中で、従業員情報の管理は入退社をはじめスムーズな情報の回収・更新が求められる一方で、管理する書類が多くミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
さらに、人事異動の履歴や評価・査定結果をはじめ、管理すべき従業員情報は多岐に渡り、管理方法とメンテナンスの工数にお困りの担当者の方もいらっしゃるのではないでしょうか。
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1. 【2025年6月改正】労働施策総合推進法の改正内容


- カスタマーハラスメント対策の義務化
- 治療と仕事の両立支援の推進
また、今回の改正では「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部改正」と称して、労働施策総合推進法とあわせて、男女雇用機会均等法と女性活躍推進法も一部改正されています。本記事では、労働施策総合推進法の改正内容に焦点をあてて、改正内容の概要を解説します。
1-1. カスタマーハラスメント対策の義務化
2025年6月の法改正で、最も注目すべき議題はカスタマーハラスメント対策の義務化です。
カスタマーハラスメントにより就業環境が害されないよう、企業は労働者の相談に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備や、その抑止のための措置など、雇用管理上必要な措置を講じることが義務付けられました。
カスタマーハラスメント対策の義務に違反した場合、行政による助言や指導、勧告の対象となり、改善されない場合は企業名が公表される場合もあります。
1-2. 治療と仕事の両立支援の推進(努力義務)
2つ目の改正内容は治療と仕事の両立支援の推進です。
疾病や負傷などによって治療を受ける労働者が、治療と就業を両立できるよう、企業は必要な措置を講じるよう努めなければいけません。厚生労働大臣は、企業が適切かつ有効な措置を実施するために必要な指針を定め、公表することとされています。
2. 労働施策総合推進法が改正された背景


2-1. カスタマーハラスメント対策義務化の背景
カスタマーハラスメント対策が義務化された理由は、顧客や取引先からの暴力、悪質なクレームなどの著しい迷惑行為が社会問題化しているためです。
「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査報告書」によると、過去3年間でハラスメント相談があった企業のうち、カスタマーハラスメントの相談があった企業の割合は27.9%でした。27.9%は、パワーハラスメント(64.2%)、セクシャルハラスメント(39.5%)に次ぐ3番目に高い数字です。
さらに報告書では、カスタマーハラスメントだけが、「ほかのハラスメントと比較して件数が減少している」より「ほかのハラスメントと比較して件数が増加している」の割合が高かったとされています。
カスタマーハラスメントが発生した場合、暴行や脅迫などであれば刑法で規制できますが、刑罰に該当しない迷惑な言動や過度な要求の場合、刑法では対応できず、ほかに規制できる法律もありませんでした。
そこでカスタマーハラスメント全般に対応できるよう、労働施策総合推進法の改正により対策の義務化が定められました。
参考:令和5年度 厚生労働省委託事業 職場のハラスメントに関する実態調査報告書|厚生労働省
2-2. 治療と仕事の両立支援対策の背景
治療と仕事の両立支援対策の努力義務化の背景は、疾病を抱える労働者の増加です。
厚生労働省が公表している「事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン」によると、疾病を理由に1ヵ月以上休業している労働者がいる企業の割合は、疾病の種類別に次のとおりです。
- メンタルヘルス:38%
- がん:21%
- 脳血管疾患:12%
ガイドラインでは、疾病を抱える割合は、労働者の年齢が上がるほど高くなる点も指摘されています。今後高齢化が進むことを考えると、治療と仕事の両立支援は企業にとって欠かせない取り組みになりつつあるといえるでしょう。
参考:事業場における治療と仕事の両立支援のためのガイドライン|厚生労働省
3. カスタマーハラスメントの定義


職場において行われる顧客、取引の相手方、施設の利用者その他の当該事業主の行う事業に関係を有する者の言動であって、その雇用する労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして、社会通念上許容される範囲を超えたものにより当該労働者の就業環境を害すること
引用:労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律について|厚生労働省
現在は案の段階ですが、2025年11月17日に労働政策審議会に提出された「職場におけるカスタマーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案」において、ポイントとなる用語が解説されています。詳しい内容を確認しましょう。
参考:職場におけるカスタマーハラスメントに関して雇用管理上講ずべき措置等に関する指針の素案|厚生労働省
3-1. 職場
職場とは、労働者が通常就業している場所はもちろん、取引先の事務所や打ち合わせで利用する飲食店、顧客の自宅など、業務を遂行する場所全般を指します。
3-2. 労働者
カスタマーハラスメントの定義における労働者とは、正社員だけでなく、パート・アルバイトや契約社員など、企業に雇用される方すべてです。
派遣労働者は派遣先の企業と雇用契約は結んでいませんが、カスタマーハラスメントの定義上は企業に雇用されるものとみなされ、労働者に含まれます。
3-3. 顧客等
「顧客等」とは、事業に関係する相手方を広く指します。具体的には次のとおりです。
- 顧客
- 取引の相手方
- 駅や公共施設などの利用者
- その他の事業主のおこなう事業に関係を有する者
現在事業で関係している人だけでなく、今後関係する可能性がある相手も「顧客等」に含まれます。
3-4. 社会通念上許容される範囲を超えた言動
カスタマーハラスメントに該当する言動とは「労働者が従事する業務の性質その他の事情に照らして社会通念上許容される範囲を超えたもの」です。
「社会通念上許容される範囲を超えた」かの判断は、言動の内容や手段・態様を中心に、総合的に判断する必要があります。カスタマーハラスメントに該当する言動の例は、次のとおりです。
- 商品に欠陥がないにもかかわらず、新しい商品への交換を要求する。
- 物を投げつけたり、唾を吐いたりする。
- 土下座を強要する。
- 必要以上に長時間にわたって厳しい叱責を繰り返す。
商品やサービスの改善を求める正当なクレームはカスタマーハラスメントに該当しません。
3-5. 就業環境が害されるもの
「就業環境が害される」とは、労働者が身体的または精神的に苦痛を与えられ、就業するうえで看過できない程度の支障が生じる状態を指します。
就業環境が害されているかの判断は、被害を受けた労働者の主観ではなく、平均的な労働者の感じ方が基準です。一般的な労働者が同様の状況で言動を受けた場合に、どの程度の影響が生じたかによって判断されます。
平均的な労働者の感じ方を基準とする考え方は、パワーハラスメントやセクシュアルハラスメントの定義でも採用されています。しかし明確な線引きができるものではないため、実務では専門家の意見なしに判断するのが難しいケースも多いでしょう。
4. 【2026年10月施行予定】労働施策総合推進法改正の今後のスケジュール


改正された労働施策総合推進法の規定の大部分は、公布の日から起算して1年6月を超えない範囲内で、政令で定める日から施行される予定です。
具体的な施行日はまだ未定ですが、2025年11月17日に実施された労働政策審議会で、カスタマーハラスメント対策の義務化は、2026年10月1日からの施行を検討している案が公表されました。
改正された労働政策総合推進法では、施行に先立ち、厚生労働大臣が必要な指針を定めることとされています。すでに指針の案が公表されており、施行までに企業の準備期間が必要な点を考えると、確定した指針も近いうちに公表されるかもしれません。
今後のスケジュールの動向はこまめに確認し、施行日までに適切な対応を取れるよう準備を進めましょう。
5. カスハラ対策の義務化に向けて企業が取るべき対応


5-1. カスハラ対策を推進するための体制整備
改正された労働施策総合推進法では、カスタマーハラスメントにより労働者の就業環境が害されないよう、雇用管理上の必要な措置が企業に義務付けられています。
必要な措置の具体的な内容は未確定ですが、指針の素案で示された項目は次のとおりです。
- 事業主の方針等の明確化およびその周知・啓発
- 相談・苦情に応じ、適切に対応するために必要な体制の整備
- カスタマーハラスメントに係る事後の迅速かつ適切な対応
- カスタマーハラスメントへの対応の実効性を確保するために必要なその抑止のための措置
- その他の講ずべき措置
指針に従って措置を講じるには、組織的にカスタマーハラスメント対策に取り組む必要があります。現時点で担当部署や検討チームを構築し、指針が確定したら速やかに対応できる体制を整えましょう。
5-2. 発生しやすいカスハラや原因の調査
業種や職場環境によって、発生しやすいカスタマーハラスメントや原因は異なります。実効性のある対策を取るには、自社の現状を把握する取り組みが欠かせません。
匿名のアンケートや労働者との1on1のヒアリングなど、実態調査を実施し、どういったカスタマーハラスメントが多いのか、発生の原因は何かを明らかにしましょう。実態調査では現場の労働者から幅広く意見を集めると対策の検討に役立ちます。
カスタマーハラスメントの状況が明らかになったら、類似する事例をまとめ類型化します。発生原因まで明らかになれば、対応方針も決めやすくなるでしょう。
自社の現状を把握できると、カスタマーハラスメント対策の義務化にもスムーズに対応しやすくなります。
5-3. ほかのハラスメント対策の徹底
カスタマーハラスメント以外に法律で対策が義務付けられているハラスメントは、次の4種類です。
- パワーハラスメント
- セクシャルハラスメント
- 妊娠・出産・育児などに対するハラスメント
- 就活におけるセクシャル・ハラスメント(※)
※カスタマーハラスメントと同様、対策が義務化されたものの、具体的な指針は定められていません。
指針の素案から分かる範囲では、カスタマーハラスメント対策は既存のハラスメント対策と類似している点も多くあります。ほかのハラスメント対策でノウハウが蓄積されていれば、カスタマーハラスメント対策も進めやすくなるでしょう。
6. 治療と仕事の両立支援対策に向けて企業が取るべき対策


法改正の対応だけでなく、働きやすい職場を実現するためにも、治療と仕事の両立支援対策に向けて企業が取るべき対応を解説します。
6-1. 相談窓口の設定
改正された労働施策総合推進法では、治療と仕事の両立支援の取り組みとして、企業に次の2点を求めています。
- 労働者からの相談に応じ、適切に対応すること
- 相談に対応するための必要な体制の整備などを講ずること
法律で相談対応が求められている以上、相談窓口の設置は欠かせません。担当部署を決めるうえでも、相談窓口となる部署や担当者をあらかじめ選定しておきましょう。
6-2. 安全衛生体制の見直し
安全衛生体制の見直しは、治療と仕事の両立支援の取り組みに直結する可能性が高いと考えられます。
厚生労働大臣が定める治療と仕事の両立支援に関する指針は、労働安全衛生法に規定される指針と調和が保たれた内容になる予定です。
労働安全衛生法に規定される指針は「健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針」や「職場における心の健康づくり〜労働者の心の健康の保持増進のための指針〜」など、治療と仕事の両立支援と関わりが深く、安全衛生の徹底で培った組織体制や取り組みが、治療と仕事の両立支援にも活きると予想されます。
安全衛生体制は労働者が安心して働くうえでも欠かせません。取り組みが不十分な場合は、治療と仕事の両立支援を機に安全衛生体制の整備も進めましょう。
参考:健康診断結果に基づき事業者が講ずべき措置に関する指針|厚生労働省
参考:職場における心の健康づくり〜労働者の心の健康の保持増進のための指針〜|厚生労働省
7. 改正労働施策総合推進法について今後の政府の発表に注意


カスタマーハラスメント対策や治療と仕事の両立支援は、単なる法令順守にとどまらず、労働者が安心して働ける職場環境を守るための重要な経営課題です。社内ルールの策定や周知、組織体制の構築など、本格施行の前に準備しておく内容は多岐にわたります。
施行直前に慌てないよう、今後の政府の発表を注視しつつ、計画的に準備を進めましょう。



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