介護保険法とは?老人福祉法との違いや法改正のポイントを解説
更新日: 2024.11.15
公開日: 2024.10.10
OHSUGI
「介護保険法とは?」
「介護保険法と老人福祉法の違いは?」
「2024年の介護保険法改正のポイントは?」
労務・経理担当者の方の中には、上記の疑問を抱えている方も多いでしょう。
介護保険法は、介護や支援が必要となった人とその家族を支える法律です。介護サービスを提供したり、介護費用の一部を給付したりする制度を定めています。
本記事では、介護保険法の概要や老人福祉法との違いを解説したうえで、法改正のポイントを紹介します。介護保険法に関して企業の労務・経理担当者が押さえておきたい内容をまとめたので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
1. 介護保険法とは?
介護保険法とは、要介護者が適切に支援を受けられるように制定された法律です。40歳以上のすべての人が被保険者として介護保険料を支払い、介護が必要な状態になったときにサービスを利用できます。
介護保険法にもとづいて支援を受けるためには、要介護認定・要支援認定を受けることが条件です。認定を受けると、認定のレベルに応じた介護サービスを受けられ、費用の一部が給付されます。
介護は個人や家族の負担が大きいため、社会全体で分担することが目的です。社内の従業員も40歳以上になると介護保険料の支払い対象となるため、介護保険法の全体像を押さえておきましょう。
2. 介護保険法と老人福祉法の違い
介護保険法と老人福祉法の主な違いは、対象者と内容です。
介護保険法 | 40歳以上の要介護認定・要支援認定を受けた人 | 介護に関する法律 |
老人福祉法 | 65歳以上の高齢者 | 高齢者の福祉全般に関する法律 |
介護保険法は、40歳以上の要介護認定・要支援認定を受けた人を対象として介護・支援の費用を給付する制度(介護保険制度)について定めています。
一方で、老人福祉法は65歳以上の高齢者を対象とする福祉全般に関する法律です。
3. 介護保険法改正のポイント
介護保険法の2024年の法改正のポイントは以下の5つです。
- 介護事業者は財務諸表の公表を義務化
- 介護サービス・事業者の情報を電子管理化
- 訪問看護と小規模多機能型居宅介護の組み合わせを容認
- 介護予防支援を居宅介護支援事業所で提供
- 科学的介護情報システム(LIFE)の導入促進
介護保険法は3年に一度、法改正があります。直近の法改正のポイントを押さえておきましょう。
3-1. 介護事業者は財務諸表の公表を義務化
介護事業者は、財務諸表の公表が義務付けられました(第115条44の2第1・2項)。理由は、利用者が介護サービスを選ぶときに、事業者の経営状況を参考にできるようにするためです。
具体的には、介護事業者が会計年度ごとに、収益や費用などを都道府県知事に報告します。違反した事業者には罰則規定が適用される仕組みです。
介護業界では、財務状況が不透明な事業者も少なくありません。利用者保護の観点から、財務諸表の公表は重要であるといえます。
3-2. 介護サービス・事業者の情報を電子管理化
介護サービスや事業者の情報を電子管理する仕組みが導入されました(第115条44の2第3項)。理由は、オンライン上で事業者の情報を管理し、簡単にアクセスできるようにするためです。
デジタル化が進むと、行政や介護事業者の事務手続きにかかる負担が軽減され、介護サービスの業務に集中できます。また利用者が情報を確認できるため、自分に合ったサービスを利用しやすいことも利点です。
3-3. 訪問看護と小規模多機能型居宅介護の組み合わせを容認
訪問看護と小規模多機能型居宅介護を併用した「複合型サービス」が認められました(介護保険法第8条第23項)。理由は、在宅での看護サービスの需要が高まってきているためです。
「自宅で暮らし続けたい!」などの意見を持つ要介護者は、訪問看護が選択肢に加わります。
3-4. 介護予防支援を居宅介護支援事業所で提供
これまで地域包括支援センターの業務委託を受けていた介護予防支援の提供が、居宅介護支援事業所でも可能になりました(第115条22第1項)。そのため、自治体から指定された居宅介護支援事業所が利用者と直接契約できます。
予防支援を身近な場所で受けられるため、要介護状態になるリスクを減らすことが可能です。また、高齢者の健康寿命を伸ばす効果も期待されています。
3-5. 科学的介護情報システム(LIFE)の導入促進
科学的介護情報システム(LIFE|Long-term care Information System For Evidence)の導入が一層促進されました。LIFEとは、介護データを収集・分析し、エビデンスに基づいた介護サービスの提供を支援するシステムです。
例えば、LIFEの提出頻度を6ヵ月に1回から3ヵ月に1回に短縮しました。科学的根拠に基づいて、介護の質が向上することが期待されます。
参考:令和6年度介護報酬改定における改定事項について|厚生労働省
4. 介護保険制度の目的や内容
介護保険制度の目的として主に以下の3つが挙げられます。
- 家族や個人の介護負担を軽減するため
- 社会全体で経済的に要介護者を支えるため
- 高齢者が住み慣れた地域で安心して生活するため
上記のように、介護保険制度は急速に進む高齢化に対応するため、社会全体で介護を支える仕組みとして機能しています。
制度の内容は、介護保険制度の対象者が、介護保険給付などの経済的支援を受けられるというものです。
介護保険制度の対象者は以下の2種類があります。
第1号被保険者 | 65歳以上の介護保険加入者 |
第2号被保険者 | 40歳から64歳までの介護保険加入者 |
65歳以上の方が要介護者に該当する場合、認定を受けることで介護保険給付を受けられます。また、40歳から64歳までの方は、特定疾病による要介護者に該当する場合のみ、介護保険給付が給付される仕組みです。
なお、介護保険料の金額は、居住する自治体や加入する保険の種類によって異なります。所得に応じて保険料の負担は大きくなることが一般的です。
例えば、令和6年度から令和8年度までの東京都新宿区の基準月額保険料(第1号被保険者)は6,600円です。基準月額保険料に、所得による区分ごとの負担率を乗じて計算します。
最も低い第1段階の方の負担額は年間19,800円、最も高い第18段階の方は年間459,360円です。
計算する際は、事前に自治体の情報を確認しましょう。
5. 介護保険サービス・施設の仕組み
要介護者に提供される介護保険サービス・施設には3つの種類があります。
種類 | サービス・施設の例 |
居宅サービス | ・訪問介護
・訪問看護 ・通所介護 ・通所リハビリテーション ・短期入所生活介護 |
施設サービス | ・特別養護老人ホーム
・介護老人保健施設 ・介護医療院 |
地域密着型サービス | ・小規模多機能型居宅介護
・夜間対応型訪問介護 ・認知症対応型通所介護 ・地域密着型特定施設入居者生活介護 |
居宅サービスは、自宅で暮らしながら受けられる介護サービスです。施設サービスは、施設に入所することで受けられます。
地域密着型サービスは、住み慣れている地域でこれからも暮らしていくためのサービスです。介護保険制度を活用すると、1割から3割の自己負担で上記のサービスを受けられます。
6. 介護保険法の要介護認定を受けるまでの流れ
介護保険法の要介護認定を受けるまでの流れは、以下の4つのステップです。
- 要介護認定の申請
- 訪問調査・主治医意見書の作成
- 審査・判定
- 介護サービス計画書の作成
6-1. 要介護認定の申請
市区町村の窓口で要介護認定の申請をします。申請者は本人またはその家族であることが一般的です。
申請には以下の提示が必要となります。
- 介護保険被保険者証
- 医療保険証(40〜65歳までの方)
窓口の案内に沿って申請の手続きをしましょう。
6-2. 訪問調査・主治医意見書の作成
要介護認定の申請が済むと、調査員が自宅や施設を訪問して、生活状況や身体・認知機能の状態を確認します。訪問調査では全国共通の認定調査書が用いられ、一定の基準で判断される仕組みです。
さらに、市区町村の担当者が主治医に意見書の作成依頼をします。主治医がいない場合は、市区町村に指定された医療機関での診察が必要です。
6-3. 審査・判定
コンピューターによる一次審査、介護認定審査会による二次審査をします。介護認定審査会は福祉・医療の専門家が参加する組織です。
審査の結果から要介護度が判定されます。要介護度は以下の7段階です。
- 要支援1
- 要支援2
- 要介護1~5
不服がある場合は、再審査の申し立てができます。
6-4. 介護サービス計画書の作成
要介護認定の通知を受けたら、介護支援専門員が介護サービス計画書を作成します。介護支援専門員は、自治体指定の介護事業者に在籍しているスタッフです。
介護サービス計画書に沿って、要介護の認定に応じた支援を受けられます。
7. 介護保険法のサービスを活用しよう
介護保険法は、介護を必要とする方を支援する法律です。制度をうまく活用することで、要介護者の生活が支えられるだけではなく、家族の負担を軽減できます。
具体的な支援の内容として、訪問介護やデイサービス、施設入所などのサービスの費用の給付を受けることが可能です。
労務担当者や企業経営者の方は、従業員が介護保険法の対象者となった際に適切に介護保険料を納められるよう、理解を深めておきましょう。
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