男性の育児休暇に関する義務化はいつから?法改正の内容や企業がおこなうべき準備とは
更新日: 2025.6.21
公開日: 2025.6.21
jinjer Blog 編集部
「男性の育児休暇に関する義務化は2025年にどう変わる?」
「中小企業も義務化の対象に含まれる?」
上記のような疑問をお持ちではないでしょうか。
2025年4月からは、改正された育児・介護休業法が段階的に施行され、企業には就業規則の見直しや数値の公表など、新たな対応が求められます。
本記事では、男性の育休に関して義務化された内容や、会社がしておくべき事前準備などを解説します。男性の育休取得を促し、人材が定着しやすい環境の構築を目指す人事労務担当者の方は、ぜひ参考にしてください。
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会社として、育休や介護休業の制度導入には対応はしてはいるものの 「取得できる期間は?」「取得中の給与の正しい支給方法は?」このようなより具体的な内容を正しく理解できていますか?
働く環境に関する法律は改正も多く、最新情報をキャッチアップすることは人事労務担当者によって業務負担になりがちです。
そんな方に向けて、当サイトでは今更聞けない人事がおこなうべき手続きや、そもそもの育児・介護休業法の内容、2025年最新の法改正への対応方法をわかりやすくまとめた資料を無料で配布しております。
資料では、2022年4月より段階的におこなわれている法改正の内容に沿って解説しているため、法律に則って適切に従業員の育児・介護休業に対応したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 男性の育児休暇取得の義務化はいつから始まる?
2025年4月から、従業員数300人以上の企業に「男性労働者の育休取得状況を年1回公表すること」が義務付けられました
従来は「従業員数1,000人以上の企業」に限られていましたが、法改正により公表義務の適用範囲が拡大しています。
また、2025年10月には、さらに企業に求められる対応が追加される予定です。最新の法改正内容を正確に把握し、今後の対応に備えましょう。
2. 男性の育児休暇に関して義務化された通知・取得推進の内容
2025年4月1日から順次施行されている法改正において、男性の育休に関連して企業に求められる対応は、以下の4点です。
- 男性労働者の育休取得状況を年1回公表すること
- 両立支援の拡大にともない就業規則を見直すこと
- 育児中の従業員に対して、労働時間や勤務場所の柔軟な対応を図ること
- 仕事と育児の両立に関して本人の意向を個別に聴取し、業務上の配慮をおこなうこと
それぞれの詳細を解説します。
2-1. 男性労働者の育休取得状況を公表すること
2025年4月以降、常時雇用する労働者が300人以上の企業は、男性労働者の育休取得状況を年1回公表する義務があります。
公表する内容は、以下のいずれか一方の割合を選択して算出します。
1. 育児休業等の取得割合 | 育児休業等をした男性労働者の数÷配偶者が出産した男性労働者の数 |
2. 育児休業等と育児目的休暇の取得割合 | (育児休業等をした男性労働者の数+育児目的の休暇制度を利用した男性労働者の数)÷配偶者が出産した男性労働者の数 |
育児目的の休暇制度は、企業が独自に設けている制度です。制度がない場合は1の計算式を用います。
公表はインターネット上で実施し、対象となる事業年度が終了してから3ヵ月以内を目安におこないましょう。厚生労働省は、公表の場として12万社以上の企業が登録する「両立支援のひろば」を推奨しています。
参考:2025年4月から、男性労働者の育児休業取得率等の公表が従業員が300人超1,000人以下の企業にも義務化されます|厚生労働省
2-2. 両立支援の拡大にともない就業規則を見直すこと
2025年4月施行の法改正にともない、育児と仕事の両立を支援するための制度が見直されました。企業は、制度に応じて会社の就業規則を見直す必要があります。
主な変更点は以下のとおりです。
変更点 | 詳細 | |
子の看護休暇 | 対象となる子の範囲拡大 | 小学校3年生修了まで |
取得事由の追加 | ・感染症に伴う学級閉鎖等
・入園(入学)式、卒園式 |
|
除外労働者の規定撤廃 | 継続雇用期間6ヵ月未満 | |
所定外労働の制限
(残業免除) |
対象範囲の拡大 | 小学校入学前の子を養育する労働者 |
短時間勤務制度の代替措置 | 措置の追加 | テレワーク |
さらに、育児のためのテレワーク等の導入が「努力義務」とされました。
対象となるのは「現時点で育児休業をしておらず、3歳に満たない子を養育している労働者」です。
企業は、該当する従業員がテレワークを活用できるよう、勤務制度や設備面での環境整備を進めることが求められます。
参考:育児・介護休業法 令和6年(2024年)改正内容の解説|厚生労働省
2-3. 育児中の労働時間や勤務場所の自由度を高める措置を講じること
2025年10月1日からは「3歳〜小学校入学前の子」を養育する労働者に対し、以下の5つの措置のうち2つ以上を講じることが義務付けられます。
- 始業時刻等の変更
- テレワーク等(1ヵ月につき10日以上)
- 保育施設の設置運営等
- 養育両立支援休暇の付与(年間10日以上)
- 短時間勤務制度
企業は、上記で選択した措置について、該当する労働者への個別の周知・意向確認を個別に実施しなければなりません。
実施にあたっては、以下のタイミングや内容に沿って対応しましょう。
周知時期 | 労働者の子が1歳11ヵ月になる日の翌々日から2歳11ヵ月になる日の翌日まで |
周知事項 | ・企業が選択した措置の内容(2つ以上)
・措置の申出先 ・ 所定外労働・時間外労働・深夜業の制限に関する制度の概要 |
また、育休復帰時や時短勤務期間中など、状況が変化しやすいタイミングでは、定期的に面談の機会を設けることが望ましいとされています。
参考:育児・介護休業法 令和6年(2024年)改正内容の解説|厚生労働省
2-4. 仕事と育児の両立に関して個別に意向を聴取し、配慮すること
2025年10月1日以降、企業は仕事と育児の両立について、対象となる労働者の意向を個別にヒアリングする必要があります。
聴取時期 | ・労働者が当人または配偶者の妊娠出産を申し出たとき
・労働者の子が1歳11ヵ月になる日の翌々日から、2歳11ヵ月になる日の翌日まで |
聴取内容 | ・勤務時間帯
・勤務地 ・両立支援制度などの利用期間 ・就業に関する条件(勤務形態や制限の希望など) |
企業は労働者の意向について、自社の業務状況を踏まえたうえで、可能な範囲で配慮をしなければなりません。
具体的には、配置転換や業務量の調整などを通じて、労働者が安心して育児と仕事を両立できる環境づくりに努める必要があります。
参考:育児・介護休業法 令和6年(2024年)改正内容の解説|厚生労働省
3. 男性の育児休暇の通知・取得推進が義務化された背景
男性の育休取得を推進するために法改正がおこなわれた背景として、高齢化にともなう労働人口の減少が挙げられます。
特に、出産や育児を理由に離職する女性の多さが、労働力不足の大きな要因となっています。実際に、2021年10月〜2022年10月の1年間で、「出産・育児のため」に離職した女性の数は14万人を超えました。
厚生労働省の調査によると、夫の家事・育児時間が長いほど、妻の継続就業割合が高くなる傾向にあるとされています。企業が男性の育休取得を後押しすることで、男性の育児参加が進み、結果として女性の就労継続や復職を促せるでしょう。
男性の育休取得を促すことは、労働力の減少を最小限に抑え、企業の生産性を維持・向上させる重要な取り組みといえます。
4. 男性の育児休暇取得に向けて企業が準備すべきこと
男性の育休取得を推進するうえで、企業がおこなうべき事前準備は以下のとおりです。
- 育休中の経済的支援について労働者への周知徹底を図る
- 会社が利用できる助成金について理解を深める
それぞれ詳細を見ていきましょう。
4-1. 育休中の経済的支援について労働者への周知徹底を図る
男性の育休取得を促すためには、育休中に受けられる経済的支援についての情報を社内で共有することが重要です。
収入の減少を懸念して、育休の取得をためらう労働者も少なくありません。
厚生労働省の調査によると、男性が育休を利用しなかった理由は「収入を減らしたくなかったから」が最多でした。
育休中は、給与・賞与にかかる社会保険料が免除されるほか、育児休業給付金などの支援制度を利用できます。結果として、手取りベースでは休業前とほぼ同水準の収入を維持できるケースもあります。
制度を正しく理解してもらうことで、男性の育休取得に対する心理的ハードルを下げられるでしょう。日頃から労働者への情報共有や相談体制の整備に努め、不安や疑問を解消しておくことが重要です。
参考:育児休業、産後パパ育休や介護休業をする方を経済的に支援します|厚生労働省
4-2. 会社が利用できる助成金について理解を深める
男性が育休を取得した場合、企業は「両立支援等助成金(出生時両立支援コース)」を受給できる可能性があります。
出生児両立支援コースには、以下の2つの種別があります。
支給要件 | 支給額 |
第1種:男性の育休取得者が出た場合 | 1人目:20万円
2・3人目:10万円 |
第2種:男性の育休取得率が上昇した場合 | 60万円(1事業主につき1回限り) |
助成金を活用することで、企業は経済的な負担を軽減しつつ、男性の育休取得を後押しする環境づくりに専念できます。
ただし、支給要件や申請手続きはやや複雑なので、必要に応じて社会保険労務士など専門家への相談を検討すると安心です。
参考:2025(令和7)年度 両立支援等助成金のご案内|厚生労働省
5. 事前準備を整えて男性の育児休暇取得を推進しよう
男性の育児休暇に関する義務化は、2025年4月から順次施行されています。
今回の法改正は、制度そのものの整備に加えて「職場環境の構築」にも重点が置かれています。そのため、企業側には幅広い準備が求められるでしょう。
男性の育休取得率を高めるためには、制度の内容を正しく理解し、早期に運用の方向性を社内で定めることが重要です。
あわせて、助成金の活用も視野に入れることで、経済的負担を抑えながら実効性のある対応が可能になります。従業員の満足度向上につなげるためにも、育児と仕事を両立できる職場環境の構築を目指しましょう。
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