介護休暇の時間単位取得とは?法改正で変わったルールをおさらい
更新日: 2025.2.18
公開日: 2025.2.18
OHSUGI
「介護休暇の時間単位取得の仕組みがよくわからない」
「法改正で変わった点は?」
このような疑問を持つ人事・労務担当者も多いでしょう。
介護休暇の時間単位取得は、2021年1月の育児・介護休業法の改正により、時間単位ごとに取得できるようになりました。法改正に合わせ、企業側も従業員が介護休暇を活用しやすいよう、社内制度を整える必要があります。
本記事では、介護休暇の具体的な取得方法や申請手続きなど、制度を整えるために必要な情報を解説します。
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1. 介護休暇の時間単位取得とは
2021年1月の育児・介護休業法の改正により、介護休暇は1日または時間単位で取得できるようになりました。年間で最大5日(対象家族が2人以上の場合は10日)取得できます。
時間単位取得に制度が変更された背景には、高齢化社会の問題が挙げられるでしょう。高齢者介護を必要とする家族の増加に伴い、労働者が仕事を継続しながら介護に携わるための環境の整備が必要となったためです。
混同されやすい制度として、介護休業と子の看護休暇があります。各制度との違いについて以下の表にまとめました。
制度の名称 | 目的 | 休みの形式 |
介護休暇 | 労働者が短期的に仕事を休み、介護をおこなうための制度 |
|
介護休業 | 労働者が長期的に仕事を休み、介護をおこなうための制度 |
|
子の看護休暇 | 労働者が自身の子どもがけがや病気をした際に看護をおこなうための制度 |
|
介護休暇と介護休業は、休暇の取得期間や申請方法に違いがあるため、注意しなければなりません。短期的な介護の支援は介護休暇、長期的な介護の支援は介護休業と認識しておくとよいでしょう。
子の看護休暇は、子育て世帯の労働者が休みを取って子どもの看病や通院の付き添いなどをおこなうための制度です。
2. 介護休暇の時間単位取得の具体例
介護休暇の時間単位取得の具体例を以下の流れで解説します。
- 通院付き添いの時間単位取得例
- 介護サービス利用時の時間単位取得例
ここでお伝えする取得時間はあくまで目安となる参考例です。実際には各企業の就業規則や通勤距離などにより異なるため、状況に応じて従業員と相談し取得時間を調整してください。
2-1. 通院付き添いの時間単位取得例
通院付き添いの時間単位取得例について、以下のケースの具体例を解説します。
- 午前・午後の診察に付き添う
- 診察と薬の受け取りの両方に付き添う
2-1-1. 午前・午後の診察に付き添う
午前に診察の付き添いをする場合、始業から介護休暇を取得して付き添い、昼の休憩後などから出勤して残りの所定労働時間を働くかたちです。午後から診察の付き添いをする場合は、取得した介護休暇の時間帯から退勤となる時間までを取得するかたちになります。
午前・午後の例を表にしました。
診察のタイミング | 所定労働時間 | 介護休暇の取得時間 | その日の労働時間 |
午前 | 7時間30分の従業員(休憩は含めない) | 始業から3時間の介護休暇を取得 | 残りの労働時間4時間30分の勤務(午前・午後を跨ぐ場合あり) |
午後 | 8時間の従業員(休憩は含めない) | 午後2時から介護休暇を3時間取得 | 退勤となる午後5時まで介護休暇が継続 |
従業員の付き添いが必要な状況や自社の労働時間に応じて、適切な時間単位取得を検討しましょう。
2-1-2. 診察と薬の受け取りの両方に付き添う
診察と薬の受け取りの時間が違う場合は中抜けのかたちになるため注意が必要です。
例えば、午前10時から診察、午後3時から薬の受け取りが必要な場合、休暇を取得したのち一度会社に戻ってから再び休暇を取ることになります。中抜けが認められるかは企業によって異なるため、従業員と企業側が適宜相談してすり合わせしなければなりません。
就業規則や業務の都合で中抜けが認められない場合は、従業員は1日分の休暇を取得します。
2-2. 介護サービス利用時の時間単位取得例
介護サービス利用時の時間単位取得例について、以下のケースの具体例を解説します。
- デイサービスの送り出し・デイサービスからの迎え
- ケアマネージャーとの打ち合わせ
2-2-1. デイサービスの送り出し・デイサービスからの迎え
デイサービスへの送り出しの際は、準備のためまとまった時間が必要です。始業時刻から2~3時間の休暇を取得することで、着替えの手伝いや持ちものの準備、送迎車への付き添いまで対応できます。
夕方の迎えには、終業時刻の1~2時間前からの休暇の取得が目安です。
送り出し・迎えの両方で介護休暇を取得する場合は従業員と企業側で相談し、就業規則や業務に支障が出ない範囲で取得するよう調整しましょう。
2-2-2. ケアマネージャーとの打ち合わせ
介護プランの見直しなど、ケアマネージャーとの打ち合わせが必要な場合は、2時間程度の休暇取得が適しています。
同時に介護サービスの送り出し・迎えも必要な場合、中抜けまたは1日単位の介護休暇を取得する必要もあるため、従業員と企業側で相談してどのようなかたちで休暇を取得するか判断しましょう。
3. 2021年1月の育児・介護休業法の改正における変更点
2021年1月の育児・介護休業法の改正における変更点を以下の3つの観点から解説します。
- 1時間単位で取得できる
- 1日の所定労働時間に満たない範囲まで取得できる
- 申請手続きは口頭または書面に対応している
3-1. 1時間単位で取得できる
2021年1月からは1時間単位での取得が可能になり、従業員の介護事情に合わせて介護休暇を取得できます。
2020年12月までの介護休暇は、1日または半日単位での取得だったため、短時間の介護を必要とする労働者が利用しにくい状況がありました。
法改正により時間単位で取得できるようになったことで、ワークライフバランスを調整しやすくなっています。
3-2. 1日の所定労働時間に満たない範囲まで取得可
介護休暇として取得できる時間は、1日の所定労働時間に満たない範囲までです。
例えば、所定労働時間が7時間であった場合、最大で6時間までの介護休暇を取得できます。取得した時間の合計が1日の所定労働時間に達した場合は、1日分の休暇としてカウントされるため注意しましょう。
3-3. 申請手続きは口頭または書面でおこなう
申請手続きは口頭または書面でおこなえます。ただし、企業によって規定が異なるため、事前に確認するようにしましょう。
口頭での申し出は、直属の上司または人事部におこないます。企業によっては特定の担当者がいる場合もあるため、こちらも事前に確認しておく必要があります。
書面での申請には、企業が指定する書面に必要事項を記入し、直属の上司または人事部に提出します。書面での申請も当日申請が可能ですが、事前にわかっている場合は早めに申し出るようにしましょう。
4. 介護休暇の時間単位取得に関する企業の対応
介護休暇の時間単位取得に関する企業の対応は以下のとおりです。
- 就業規則の改定
- 勤怠管理システムの導入・改修
- 労使協定の締結
- 申請手続きの簡素化
- 従業員への説明
各対応を見ていきましょう。
4-1. 就業規則の改定
介護休暇の時間単位取得を明記するため、就業規則を改定しなければなりません。中抜けの有無や賃金の取り扱いについて、企業側の事情も考慮して就業規則の改定をおこないます。
4-2. 勤怠管理システムの導入・改修
企業の状況に応じて、勤怠管理システムの見直しも必要です。残日数や残時間の管理ができるようにし、従業員が介護休暇取得状況を把握できる仕組みを整備しましょう。
4-3. 労使協定の締結
時間単位取得が業務上困難な従業員については、労使協定の締結によって対象外にできます。
注意点として、従業員の権利を不当に制限することのないよう、労使協定の締結は慎重に適用する必要があります。従業員と協議した上で、時間単位取得の対象外とするようにしましょう。
4-4. 申請手続きの簡素化
介護休暇の申請手続きは、従業員が利用しやすい形式に簡素化することが望ましいといえます。高齢化社会であるため、急な介護ニーズにも対応できる体制づくりが企業に求められているためです。
口頭での申請や当日の申請を認めるなど柔軟に対応し、従業員が休暇取得を申請しやすい環境を整備しましょう。
4-5. 従業員への説明
従業員に対し、介護休暇制度についての説明をおこなうことも必要です。申請手続きの流れや利用可能なケースをわかりやすく説明することで、介護休暇の取得率の向上につながります。
「迷惑をかけたくない」「休暇を取りにくい」などの、従業員の心理的負担を軽減できるよう説明しましょう。
5. 介護休暇の時間単位取得を従業員に周知しよう
2021年1月の法改正により、介護休暇は時間単位取得ができるようになりました。年間最大で5日間(対象家族が2人以上の場合は10日)の取得が可能で、短期や突発的な介護に活用しやすい制度です。
高齢化が進む日本において、仕事と介護の両立は多くの労働者が避けて通れない課題であり、企業も対応しなければなりません。企業は介護休暇における時間単位取得への理解を深め、従業員が必要な時にすぐに活用できるよう制度を整えておくようにしましょう。
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