パート従業員にも休職手当を支給できる?支給条件や注意点を解説
更新日: 2025.6.17
公開日: 2025.6.17
jinjer Blog 編集部
「パート従業員にも休職手当を支給できる?」
「支給期間や金額の計算方法を知りたい」
上記のようなお悩みや疑問をお持ちのかたも多いのではないでしょうか。
多様な働き方が進む中で、企業は正社員だけでなく、パートやアルバイトなど非正規雇用者に対する適切な労務管理が求められています。
特に、病気やケガなどで就労困難になった際の「休職手当金(傷病手当金)」については、パート従業員も対象になるケースがあります。誤解などによるトラブルを防ぐためにも、制度の理解が不可欠です。
本記事では、パート従業員に対する休職手当金の支給可否や条件、支給期間、計算方法について解説します。制度を正しく理解し、トラブルのない労務対応につなげましょう。
目次
給与計算は「賃金支払いの5原則」に基づいて、本来ミスがあってはならない業務ですが、人の手で計算している場合、避けられないヒューマンエラーが発生する場合もあります。
当サイトでは、そのような給与計算ミスがあった場合に役立つ、ミス別・対応手順を解説した資料を無料配布しています。
資料では、ミス発覚時に参考になる基本の対応手順から、ミスを未然に防ぐための「起こりやすいミス」や「そもそも給与計算のミスを減らす方法」をわかりやすく解説しています。
- 給与計算でミスが頻発していてお困りの方
- 給与計算業務のチェックリストがほしい方
- 給与計算のミスを減らす方法を知りたい方
上記に当てはまるご担当者様は、「給与計算のミス別対応BOOK」をぜひお役立てください。
給与計算を手計算しているとミスが発生しやすいほか、従業員の人数が増えてくると対応しきれないという課題が発生します。 システムによって給与計算の内製化には、以下のメリットがあります。
・勤怠情報から給与を自動計算
・標準報酬月額の算定や月変にも対応しており、計算ミスを減らせる
・Web給与明細の発行で封入や郵送の工数を削減し、確実に明細を従業員へ渡せる
システムを利用した給与計算についてさらに詳しく知りたい方は、こちらからクラウド型給与計算システム「ジンジャー給与」の紹介ページをご覧ください。

1. パート従業員へ休職手当金を支給できる条件
休職手当金(正式名称:傷病手当金)は、健康保険法の被保険者が病気やケガで働けなくなった際に支給される給付金です。パート従業員でも、一定の要件を満たしていれば対象となります。
休職手当金の基本要件と、パート従業員の被保険者要件は以下のとおりです。
- 休職手当金の基本要件
- パート従業員の被保険者要件
1-1. 休職手当金の基本要件
パート従業員でも、健康保険の被保険者であれば、以下の条件を満たすことで傷病手当金の対象となります。
- 業務外の事由による病気やケガであること
- 医師の指示により働けない状態であること
- 連続して3日間仕事を休み、4日目以降も就労できないこと
- 休職期間中に給与の支払われていない、または支払われた金額が傷病金手当より少ないこと
なお、業務中や通勤中のケガや病気による休職は、「労災保険」の対象となるため、休職手当金の支給対象には含まれません。
1-2. パート従業員の被保険者要件
パート従業員でも、一定の条件を満たすことで健康保険の被保険者となります。
一般的には、1週間の所定労働時間および1ヵ月の所定労働日数が、同じ事業所のフルタイム従業員の4分の3以上であれば、社会保険の加入対象です。
ただし、労働時間や勤務日数が4分の3未満であっても、以下の5つの条件をすべて満たす場合は、被保険者として扱われます。
- 1週間あたりの所定労働時間が20時間以上である
- 2ヵ月を超えて継続して雇用されることが見込まれている
- 月額賃金が8万8,000円以上である
- 学生ではない
- 特定適用事業所に勤務している
パート従業員が休職手当金を受け取れるかどうかは、健康保険に加入しているかによって決まります。企業は対象となるパート従業員を正確に把握し、漏れのない対応をおこなうことが必要です。
2. パート従業員が休職手当を受け取れる期間
傷病手当金の支給開始日は、仕事を休んだ日数のうち、最初の3日間(待期期間)を除いた4日目以降からです。
待期期間は、連続して3日間休む必要があります。土日などの給与支給のない休日であっても、休業実態が確認できれば待期期間としてカウント可能です。
また休職手当の支給期間は、「支給開始日から起算して通算で最長1年6ヵ月」です。「通算」とは、実際の休職日数ではなく、カレンダー上の日数を基準とします。
そのため、一度復職したあと、同じ傷病で再び休職した場合は、最初の支給開始日から1年6ヵ月以内であれば、残りの期間しか支給されません。
こうした取扱いに備えるためにも企業は休職理由の診断書を都度確認し、休職の開始日や傷病の内容を正確に記録・管理することが重要です。
3. パート従業員の休職手当の計算方法
休職手当の支給額は、以下の計算式で求められます。
支給額=支給開始日前12ヵ月間の標準報酬月額の平均÷30日×2/3
「標準報酬月額」は、毎月の給与に基づき、社会保険で定められた等級表で決定される金額のことです。実際の給与支給額ではなく、保険上で固定化された報酬額をもとに計算されます。
パート従業員であっても、健康保険の被保険者であれば標準報酬月額が設定されており、正社員と同様の方法で支給額が算出されます。
なお、被保険者期間が12ヵ月に満たない場合は、例外的に以下のいずれか少ない方の金額を基準に計算しましょう。
- 継続して加入している期間の標準報酬月額の平均
- 健康保険法で定められた標準報酬月額の平均額
パート従業員の中には、標準報酬月額や支給金額の算出根拠について、疑問や不安を抱く人も少なくありません。そのため、企業があらかじめ制度の仕組みや計算について説明をおこない、不要な誤解や不信感を防ぐことが大切です。
4. 退職後のパート従業員への休職手当の取り扱い
パート従業員が退職し、健康保険の資格を喪失した場合は、原則として休職手当の支給対象外となります。休職手当は、「健康保険の被保険者」であることが受給条件の一つであるためです。
ただし、以下の条件を満たす場合は、退職後も支給が継続されるケースがあります。
- 退職日までに継続して1年以上、健康保険の被保険者であったこと
- 退職日時点で休職手当金の支給を受けている、または受給要件を満たしていること
「継続して1年」とは、健康保険の加入期間に一切の空白がない状態を指します。例えば、転職などによって健康保険の資格が一時的に途切れていた場合は、1年のカウントがリセットされるため注意が必要です。
また、退職日に出勤した場合は「就労可能」と見なされ、支給要件を満たさなくなる可能性があります。企業としては、出勤状況や退職日を慎重に確認することが重要です。
支給期間や支給金額は、退職後も在職中と同様の算定方法が適用されます。
5. パート従業員に休職手当を支給する際の注意点
パート従業員に休職手当を支給する際の注意点は、以下のとおりです。
- 休職中も社会保険料の支払いが発生する
- 社内制度との整合性を図る
- 休職手当支給期間中も適切な労務管理をおこなう
5-1. 休職中も社会保険料の支払いが発生する
パート従業員が休職して給与の支払いが止まっている場合でも、原則として社会保険料の納付義務は継続します。社会保険料は、実際の給与ではなく、過去の一定期間の報酬である「標準報酬月額」に基づいて決定されているためです。
そのため、休職によって報酬がゼロになったとしても、すぐに保険料が免除されるわけではありません。
通常、社会保険料は給与から天引きして企業が納付します。しかし、休職期間中は給与の支払いがないため、従業員が自己負担分を直接会社に支払う必要があります。
支払い方法としては、以下のような対応が考えられます。
- 会社から請求書を発行し、従業員が毎月銀行振込で納付する
- 復職後に未払い分を給与からまとめて控除する
こうした対応を事前に決めておかないと、休職者が社会保険料を支払えず未納状態になるリスクがあります。
最悪の場合、保険資格の喪失や各種手当の受給停止などのトラブルに発展するおそれがあるため、企業は休職前に明確な取り決めをしておくことが重要です。
5-2. 社内制度との整合性を図る
企業によっては、法定の休職手当とは別に、就業規則に基づいて「独自の休職手当制度」を設けている場合があります。
社内制度を導入している場合は、正社員だけでなくパート従業員にも適用されるかどうか、制度の対象範囲を明確にしておくことが重要です。
制度内容が不明瞭であったり、就業規則に明記されていなかったりする場合、「不公平な扱い」と受け取られ、労使間トラブルに発展するリスクがあるでしょう。
トラブルを避けるためにも、社内制度の対象者や支給条件、手続き方法については、就業規則や社内資料などで明文化し、事前に周知しておくことが大切です。
また、パート従業員の中には「自分は制度の対象外」と誤解していたり、休職手当を知らなかったりするケースもあります。
公平かつ透明性のある制度運用を実現するためにも、社内制度と法定給付の整合性を保ちましょう。パート従業員を含むすべての従業員に対して、適切な情報提供とルール整備をおこなうことが重要です。
5-3. 休職手当支給期間中も適切な労務管理をおこなう
パート従業員が休職し、休職手当金を受給している期間であっても、企業は引き続き適切な労務管理をおこなう責任があります。
労務管理の一環として、休職者には定期的に症状の経過や治療状況について報告してもらうことが重要です。
報告の頻度や内容については、通院のタイミングや診断内容などに応じて、無理のない範囲で合理的に設定する必要があります。適切に設計されたものであれば、休職期間中であっても、業務命令として報告を求められます。
企業は、従業員からの報告を通じて復職の見通しを立てやすくなり、業務の調整や人員配置の計画に役立てられるでしょう。また、従業員の健康状態を把握することは、企業に課された「安全配慮義務」を果たすためにも欠かせません。
パート従業員でも例外ではありません。全従業員を対象とした、一貫性のある対応を心がけることで、公平かつ健全な職場環境の維持につながるでしょう。
6. パート従業員の休職手当を正しく理解・運用しよう
休職手当金は、健康保険法に基づく公的給付制度であり、一定の条件を満たせばパート従業員も対象となります。企業としては、健康保険の適切な管理だけでなく、就業規則や社内制度の整備、休職者への体制構築をしなければなりません。
病気やケガによって働けなくなった従業員に対して、必要な手当を適切に支給し、丁寧なフォローをおこなうことは、従業員満足度や企業の信頼性向上に直結します。
「パートだから対象外」などの誤った認識を避けるためにも、休職手当制度の運用を正しく理解し、就業形態にかかわらず公平で透明性のある運用を目指しましょう。
給与計算は「賃金支払いの5原則」に基づいて、本来ミスがあってはならない業務ですが、人の手で計算している場合、避けられないヒューマンエラーが発生する場合もあります。
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