産後パパ育休の期間は?育休中に利用できる給付金も紹介
更新日: 2024.11.15
公開日: 2024.10.16
OHSUGI
「産後パパ育休の期間や育児休業との違いがわからない」
「制度の詳しい内容がわからない」
このようなお悩みはありませんか。産後パパ育休は比較的新しい制度のため、労務担当者もまだあまり理解できていないケースが多いです。
産後パパ育休の期間は子どもの出生後最大4週間と定められています。2回まで分割して取得できるため、従業員の希望により柔軟に活用可能です。
本記事では、産後パパ育休の期間や内容、利用できる給付金について詳しく解説します。最後まで読むことで、従業員が産後パパ育休の期間を活用して育児と仕事を両立できるよう、会社としてサポートする知識が身につくでしょう。
目次
1. 産後パパ育休の期間はいつからいつまで?
産後パパ育休の期間は、子どもの出生後最大4週間です。出生後8週間以内で、分割して2回まで取得できます。例えば、以下のような取得が可能です。
- 出生直後に2週間休業し、3週間復職したあと再度2週間休業する
- 出生直後に3週間休業し、1週間復職したあと再度1週間休業する
- 出生直後に1週間休業し、4週間復職したあと再度3週間休業する
もちろん、分割せずまとめて4週間取得したり、4週間ではなく1週間だけ取得したりもできます。
産後パパ育休の利用には原則休業の2週間前までの申請が必要ですが、労使協定で定めている会社独自の取り組みが国の制度を上回っている場合は1ヵ月前までに変更可能です。
2. 男性の育休期間の現状
男性の育休取得率は、令和3年で13.97%でした。平成19年以降安定して約8割の女性が育休を取得していることに対し、男性の育休取得率は非常に低い数字です。
さらに、女性は9割以上の育休期間が6ヵ月以上なのに対し、男性は約5割が2週間未満で、なかでも25.0%が5日未満でした。
男性は女性と比較して育休期間が極端に短く、産後の母親のサポートや赤ちゃんのケアにあまり関われていない現状が見て取れます。こうした現状を改善すべく、政府は育児・介護休業法の改正により産後パパ育休を新設しました。
参考:育児休業取得率の推移 育児・介護休業法の改正について|厚生労働省
参考:男女の育児休業の取得期間の状況 育児・介護休業法の改正について|厚生労働省
3. 産後パパ育休(出生時育児休業)の内容
産後パパ育休は、男性の育児休業の取得を推進するため令和4年に施行された制度です。正式名称を「出生時育児休業」といいます。
産後パパ育休は、子どもが1歳になるまでの育児休業制度とは別に取得可能です。また、2回に分割して取得できるほか、会社と労働者が同意した範囲で休業中の就業も認められています。
これにより、例えばいったん復職して業務を片づけてから再度休業したり、休業中にリモートで会議に出席したりできるようになりました。柔軟な休業が認められているため、男性も仕事と育児の両立がしやすくなっています。
産後パパ育休と育児休業の違いを表でまとめました。
産後パパ育休 | 育児休業 | |
期間 | 子どもの出生後8週間以内に最大4週間まで | 原則子どもが1歳になるまで、最長2歳まで |
分割 | 2回に分割可能 | 2回に分割可能 |
休業中の就業 | 労使協定を締結している場合に限り労働者が合意した範囲で可能 | 原則不可 |
産後パパ育休と育児休業は別で取得できるため、それぞれ分割すれば最大で4回子育てのための休業が可能です。夫婦で育休期間をずらしながら働くことで、男女ともに仕事と子育ての両立をしやすくなります。
4. 産後パパ育休期間中に利用できる給付金
産後パパ育休期間中に利用できる給付金には、出生時育児休業給付金があります。また、給付金ではありませんが、社会保険料の免除も可能です。
ここでは、下記2点の詳しい内容についてそれぞれ解説します。
- 出生時育児休業給付金
- 社会保険料の免除
4-1. 出生時育児休業給付金
産後パパ育休期間中は、出生時育児休業給付金を受給できます。受給条件は以下の通りです。
- 雇用保険に加入している
- 休業開始日前2年間に賃金支払基礎日数が11日以上ある(ない場合は就業している時間数が80時間以上の)完全月が12ヵ月以上ある
- 休業期間中の就業日数が最大10日(10日を超える場合は就業している時間数が80時間)以下である
産後パパ育休期間中の出生時育児休業給付金の支給額は次の計算式で求められます。
休業開始時賃金日額(原則育児休業開始前6ヵ月間の賃金を180で除した額)×支給日数×67%
出生時育児休業給付金は会社を通してハローワークに申請します。申請には母子健康手帳のコピーや、医師による出産予定日証明書のコピーなど、出産日を確認できるものの準備が必要です。
4-2. 社会保険料の免除
産後パパ育休期間中は社会保険料も免除されます。社会保険料免除の条件は以下の通りです。
- その月の末日が育休期間中である場合
- 同一月内で14日以上育休取得した場合
- 賞与は連続して1ヵ月を超える育休を取得した場合
産後パパ育休は最大で4週間までと決まっているため、賞与は社会保険料免除の対象外です。
5. 産後パパ育休期間を十分確保するために企業がすべきこと
産後パパ育休期間を十分確保するために企業がすべきことは以下の6つです。
- 制度内容の周知
- 事例の提供
- 経営者からの発信
- 研修の実施
- 相談窓口の設置
- 業務の効率化
産後パパ育休を取得し、最大期間である4週間休業するには、企業側の努力が欠かせません。それぞれの内容を押さえることで、従業員をサポートできます。
5-1. 制度内容の周知
産後パパ育休の制度内容の周知に努めましょう。従業員のなかには制度の存在自体を知らない人や、育児休業とは別に取得できることを知らない人が多いはずです。詳しく知らない制度を活用することはできません。
産後パパ育休の内容の周知は、配偶者の出産が決まっている人や結婚している人だけに限らず、社員全員に向けておこないましょう。全員を対象に周知することでより理解が進み、育休を取得しやすくなります。
5-2. 事例の提供
社内外の産後パパ育休を活用した事例を提供しましょう。育休中の過ごし方や復職後の働き方について、不安を覚えている従業員もいるためです。
不安が産後パパ育休取得の妨げにならないよう、実際の事例を提供して具体的な制度の利用方法を示しましょう。先輩パパとこれからパパになる従業員の座談会を開催するのもおすすめです。
5-3. 経営者からの発信
産後パパ育休の取得促進に向けて、経営者から従業員へメッセージを発信しましょう。
産後パパ育休の取得が広まれば、従業員が家庭を大切にするために業務の効率化に励んだり、女性が働きやすくなり躍進できたりなどのメリットがあります。会社全体の成長のためにも、経営者が自ら積極的に産後パパ育休の取得の重要性について訴えることが大切です。
個人ではなく会社全体として取り組むべき制度であることをしっかり伝え、男性社員が休業しやすい雰囲気を作りましょう。
5-4. 研修の実施
育児と仕事の両立に関する理解が進むよう、企業内研修を実施しましょう。
産後パパ育休の取得の際に懸念されるのがハラスメントです。「そんなに長く仕事を休めるなんてうらやましい」「休んでいるだけでお金がもらえるなんていいね」のような考えや言動を企業内研修で予防しましょう。
男性が育児に参加する重要性や育児に関するさまざまな制度の内容を伝え、正しい理解を促してください。
5-5. 相談窓口の設置
産後パパ育休に関する疑問や悩みを含め、育休や復職後の働き方を相談できる窓口を設置しましょう。仕事と子育ての両立は簡単ではありません。復職して初めてぶつかる壁が多くあるでしょう。
従業員が1人で悩まずに済むよう、相談窓口を設置してバックアップすると安心です。
5-6. 業務の効率化
ITツールやクラウドサービスを使って業務をシステム化したり、外注を使ったりして業務を効率化しましょう。業務を効率化することで1人ひとりの負担が減り、引き継ぎの負担を軽減できます。
どうしても産後パパ育休を取得する本人にしかできない仕事がなるべくなくなるよう、業務内容と分担を見直してみてください。
6. 男性社員のパパ育休期間を整えよう
産後パパ育休では、子どもの出生後8週間以内に最大4週間休業できます。2回に分割できるため、仕事や家庭の状況にあわせて柔軟に取得可能です。
従業員が産後パパ育休を十分に活用するためには、企業が制度の概要や期間を示すことが重要といえます。制度内容を周知したり企業内研修を実施したりして、男性社員も育休期間をしっかり取れるよう環境を整えましょう。
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