仕事の属人化とは、会社の特定業務・作業について担当者に過度に依存している状態です。結果、業務内容を担当者しか理解していないため、担当者の不在や欠勤により業務・作業が滞ります。

仕事の属人化は、担当者や周囲の従業員のストレス原因になりえるため、企業は何らかの対策を講じなければなりません。

本記事では、仕事の属人化がストレス原因になる理由や、仕事の属人化によるストレスで生じる問題とストレス以外の悪影響を解説します。

そのほかに、ストレスを招く仕事の属人化の発生原因や対策の解説もあるため、ぜひ参考にしてください。

目次
1. 仕事の属人化はストレスになることがある
2. 仕事の属人化がストレス原因になる理由
3. 仕事の属人化によるストレスで生じる問題
4. 仕事の属人化によるストレス以外の悪影響
5. ストレスを招く仕事の属人化の発生原因
6. ストレスを招く仕事の属人化への対策
7. 仕事の属人化を解消して従業員のストレスを減らそう

1. 仕事の属人化はストレスになることがある

属人化とは特定の業務に関するノウハウや知識などが、担当者にだけ集中して該当する業務がブラックボックス化することを言います。

担当者以外はその業務について何もわからず、担当者が不在になると業務が停滞してしまい、ミスや不正が発覚しにくいという問題があります。

こうした属人化は、担当者にとって大きなストレスになることがあります。

とくに1人の担当者に仕事が属人化していると、その人は仕事量が多すぎても他の人に振ることができず、プレッシャーを抱え続けることになり、これがストレスになっていきます。

2. 仕事の属人化がストレス原因になる理由

仕事の属人化がストレス原因になる理由は、重責や長時間労働などから、担当者に心身ともに過度な負担がかかるためです。代表的なストレスの原因を見ていきましょう。

2-1. 長時間勤務が常態化する

属人化している仕事は、担当者以外は業務の内容ややり方を十分に把握できません。そのため、担当者だけでは対応しきれない仕事量になったときや、問題が発生したとしても、分担ができずに担当者は自分一人で処理することになります。

次々に入ってくる仕事もすべて担当者が背負うことになるため、長時間労働が常態化してしまうことがあります。

こうした状態では、休暇を取ることも困難になってしまうでしょう。長時間労働と休息不足はストレスの大きな原因になります。

2-2. 責任集中によるプレッシャーが大きい

属人的による「自分しかこの仕事はできない」「頼れる人がいない」というような思考は、大きなプレッシャーになります。

また、担当者だけが業務の内容を把握している状態では、自分一人の判断でさまざまな決断をすることになります。責任も重くなるため、こうした孤立化も担当者のプレッシャーになるでしょう。

周囲のサポートを受けられない、相談することもできない状態は、ストレスを抱え込む原因になります。

2-3. 自己成長の機会を失ってしまう

属人化している仕事を長期間担当していると、ほかの業務の知識を得ることや、成長する機会を失ってしまいます。担当している業務の練度は高まっていくかもしれませんが、キャリアは停滞してしまうでしょう。

また、属人化によって仕事が多くなり、勉強や自己研鑽に使う時間が取れなくなることでも自己成長ができなくなります。

キャリアアップや自己成長を実感できない状況は不安とストレスを増やし、モチベーションを低下させやすいです。

3. 仕事の属人化によるストレスで生じる問題

属人化によるストレスで起きる問題は、仕事の効率低下や担当者の不調などが挙げられます。具体的にどのようなリスクがあるのか、見ていきましょう。

3-1. 業務効率や品質の低下

仕事の属人化によるストレスで生じる問題の一つは、業務効率や品質の低下です。ストレスが以下のような状態を招き、担当者の業務水準が著しく下がります。

• 仕事速度の低下
• 仕事効率の低下
• 集中力の低下
• ミスの増加

担当者が本来の能力を発揮できない状態が続くと、業績悪化や成果物・サービスの品質低下につながります。属人化が増えれば、企業全体の生産性を低下させる原因になることも考えられます。

また、業績悪化や品質低下がストレス原因を増加させるため、悪循環に陥る可能性も否めません。

3-2. 過労やメンタルヘルスの不調

過労やメンタルヘルスの不調も、仕事の属人化によるストレスで生じる問題です。

担当者が仕事によるストレスにさらされ続けた場合、身体や心の健康を損なう可能性を否めません。担当者が慢性的な長時間労働を強いられているケースや、立場に見合わない大きな重責を背負っている状態などは大きなストレスになるでしょう。

ストレスによる体調不良により担当者が遅刻や欠勤を繰り返すと、業務停滞の機会が増えるため、周囲の従業員のストレスも増えていきます。。その結果、周囲からもストレス増加による心身不調者が出現する可能性を否めません。

3-3. 退職や休職による混乱

属人化によるストレスで過労による体調不良や、メンタルヘルスの不調が発生すると、そこから休職や退職につながる可能性があります。

属人化している業務の担当者が仕事に就けない状態になると、現場は大きく混乱するでしょう。担当者以外が業務の内容を把握できていなければ、何がどこまで進んでいるのか、どのように対応するべきか、などが一切わからないからです。

急な休職や退職の場合は、引き継ぎも十分におこなわれないでしょう。ノウハウが失われてしまい、業務が完全に滞り、関係部署にも影響を出す可能性があります。

4. 仕事の属人化によるストレス以外の悪影響

仕事の属人化はストレス以外の悪影響も発生させます。企業全体にまで影響が出る可能性があるため、どのような問題があるか広い視野で考えていきましょう。

4-1. 業務のブラックボックス化

仕事の属人化によるストレス以外の悪影響の一つは、ブラックボックス化です。ほかの従業員が業務内容を理解していないため、担当者のミスに気づかなかったり不具合を修正できなかったりします。

ブラックボックス化とは、属人化の影響により、ほかの従業員が担当者の仕事の過程や仕組みがわからない状態のことです。万一、担当者が不正行為をしても発見できません。

ブラックボックス化により、上司も仕事の進捗・品質の管理や業務プロセスの評価が難しいでしょう。

4-2. 組織力の低下

組織力の低下も、仕事の属人化によるストレス以外の悪影響です。各従業員の成長は組織力を高めますが、担当者に依存する属人化では、担当者が担う業務におけるほかの従業員の成長は望めません。

属人化により担当者が仕事を通じて得た知見やノウハウは、一般的にほかの従業員と情報共有されないでしょう。情報の活用機会がないため、情報共有した場合と比べると組織力は低いです。

4-3. 人材の流出

属人化はストレスの原因になるとここまでお話をしてきました。

ストレスをため込んだ担当者は、少しずつモチベーションが低下し、会社に対するエンゲージメントも下がっていきます。属人化が改善される見込みがなく、今後自己成長もできないと感じれば、担当者は転職を考え始める可能性があります。

近年は自分を正当に評価してくれる企業や、能力を活かせる業務に就ける企業へ転職することは決して珍しくありません。転職のハードルが下がったため、属人化によって従業員がストレスや不満をため込めば、人材流出につながってしまうでしょう。

5. ストレスを招く仕事の属人化の発生原因

ストレスを招く仕事の属人化の主な発生原因は、以下のとおりです。

• 業務多忙
• 人手不足
• 高い専門性を要する業務
• 情報共有の欠如

業務多忙や人手不足の企業では、だれもが自身の業務遂行に手一杯になりがちなため、属人化が発生しやすくなります。。成果が出ている場合は、属人化がストレスや組織力の低下を招く可能性に気づかない場合もあります。

また、高い専門性を要する業務は、業務遂行に専門知識や高い技術が必要なため、属人化が発生しやすいです。教育や採用の難易度も高いため、属人化が長引く可能性を否めません。

情報共有の欠如も、ほかの従業員が意見したり関与したりできなくなるため、属人化の発生原因です。とくに一人の担当者が業務を遂行している場合は、業務プロセスやノウハウなどの情報共有の必要性を感じにくいでしょう。

6. ストレスを招く仕事の属人化への対策

ストレスを招く仕事の属人化への対策は、以下のようなものが考えられます。

1. 業務フローの把握・見直し
2. マニュアルの作成
3. 情報共有の促進

各対策の詳細を解説します。

6-1. 業務フローの把握・見直し

ストレスを招く仕事の属人化への対策の一つは、業務フローの把握・見直しです。担当者以外も業務の流れを把握し、簡略化やマニュアル化できる工程があれば見直すことで、ほかの従業員も業務を担当できます。

業務フローとは作業の流れのことです。業務の流れの把握は、属人化の予防につながるだけでなく、周囲が担当者をフォローする際にも役立つでしょう。

6-2. マニュアルの作成

マニュアルの作成も、ストレスを招く仕事の属人化への対策です。ほかの従業員が担当する場合でも、マニュアルを見ながら仕事をすることで一定水準の質を期待できます。また、マニュアル化しておけば担当者が退職や休職をした場合でも、ノウハウが失われません。

作業手順をマニュアル化する際には、だれでも使いこなせるように、初心者が理解できるレベルを目指しましょう。マニュアルの使用開始後も、理解しにくい部分があれば必要に応じて改訂します。

6-3. 情報共有の促進

ストレスを招く仕事の属人化への対策には、情報共有の促進もあります。

上司や関連業務を担当する従業員との情報共有は、担当者の業務内容を知るきっかけとなるため、属人化の予防にも役立つでしょう。ほかの従業員が助言をくれる可能性もあるため、業務の負担軽減も期待できます。

情報共有を促進する方法は、以下のとおりです。

• 情報共有ツールの導入
• マニュアルの作成
• 担当者による研修の実施

情報漏洩防止対策についても検討しながら、情報共有のルールを決めてから運用しましょう。

7. 仕事の属人化を解消して従業員のストレスを減らそう

仕事の属人化は、担当者と周囲の従業員のストレス原因になりえます。担当者に過度な負担がかかったり、担当者の不在により業務が滞ったりするためです。

仕事の属人化によりストレスを抱えた従業員には、心身の不調や離職のリスクも考えられます。また、生産性や組織力の低下など、ストレス以外の悪影響の可能性も否めません。

属人化の防止策として、業務手順のマニュアルの作成や業務フローの把握・見直しなども有効です。自社の従業員のストレス原因になりえる仕事の属人化について、ぜひ対策を検討してください。