定性評価とは?定量評価との違いや評価方法を詳しく紹介
更新日: 2024.5.22
公開日: 2023.4.10
OHSUGI
人事評価の方法は、大きく定性評価と定量評価の2種類に分けられます。定性評価と定量評価には、どのような違いがあるのでしょうか。また、定性評価を採用する場合、具体的にどのような評価項目を設定すればよいのでしょうか。本記事では、企業の人事担当者向けに定性評価の意味や定量評価との違い、人事評価を実施するときのポイントや注意点をわかりやすく解説します。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. 定性評価とは?数字で表せない部分を評価すること
人事評価の手法のひとつに「定性評価」と呼ばれるものがあります。定性評価は、数値や数量では表しにくい項目を評価する方法です。例えば、社員のモチベーションやコミュニケーション能力は業務上重要な要素ですが、数字で測定するのが困難です。
人事評価の基準が数字(実績や成果)に偏りすぎると、社員が不満やストレスを感じる原因になります。社員の頑張りや仕事への取り組み方など、目に見えづらい部分も評価項目に取り入れ、より公平で納得感のある人事評価を行う手段が定性評価です。
1-1. 定性評価が用いられる職種例
定性評価が用いられる職種は主に次のとおりです。
- 事務職
- 看護師
- 保育士
上記のような職業は数字で評価を表わすのが難しい傾向にあります。そのため、定性評価によって評価する傾向にあります。対して、営業や販売といったように数字で表しやすい職種では定量評価が用いられるのが一般的です。
2. 定性評価と定量評価の違い
定性評価と対になる人事評価の手法が「定量評価」です。定性評価と定量評価の違いは以下の表のとおりです。
定性評価 | 数値や数量で表しにくい事柄を評価する |
定量評価 | 数値目標を設定し、その達成度を評価する |
数字で表しにくい部分を評価する定性評価に対し、定量評価では数値や数量で測定可能な部分のみを評価します。
例えば「1カ月の売上金額●●円」や「新規顧客の獲得件数●●件」など、数字で表せるものを評価するのが定量評価です。一方、定性評価では、「勤務態度」「仕事に取り組む姿勢」「思考力や判断力」など、数値化できない資質や能力を主に評価します。
3. 定性評価による評価方法や主な評価項目
ここでは、定性評価の代表的な手法や主な評価項目を詳しく説明していきます。
3-1. 定性評価の代表的な手法
定性評価の方法は、パフォーマンス目標とストレッチ目標の2つに分類できます。
- パフォーマンス目標
- ストレッチ目標
パフォーマンス目標は社員のスキルやノウハウに着目した目標設定の方法です。一方、ストレッチ目標は主にOKR(Objectives and Key Results)などの目標管理で使われます。簡単に達成できない適度な難易度の目標を設定し、社員のパフォーマンスを高めるのがストレッチ目標の狙いです。
パフォーマンス目標
パフォーマンス目標は、定性評価の際に使われる目標設定のひとつです。「営業スキルを高め、営業チームで売上ナンバーワンを目指す」「リーダーシップを学び、チームリーダーを目指す」など、自分の能力や資質(パフォーマンス)を証明するための目標を設定します。
ストレッチ目標
ストレッチ目標はストレッチゴールとも呼ばれ、簡単には達成できない適度な難易度の目標を指します。現状維持だけでは目標を達成できないため、社員の努力を促す効果が期待できます。
3-2. 定性評価の主な評価項目
定性評価の主な評価項目は以下の表のとおりです。
評価項目 | 概要 |
業務効率 | 業務をこなすスピードや、適切なやり方を見つける要領のよさなどを評価します。また、上司やほかの社員への報告・連絡・相談のスピードも評価項目に含まれます。 |
業務知識 | 業務をこなすために必要な知識が備わっているかをチェックします。顧客と関わる仕事の場合は、顧客からの質問や問い合わせに対し、適切に応答できているかも評価されます。 |
創意工夫 | 業務遂行にあたって、新しいアイデアを試したり、改善案を提案したりできているかを評価します。客観的な評価が難しく、上司が部下の仕事ぶりを直接チェックする必要がある評価項目です。 |
規律 | 身だしなみ、ビジネスマナー、無遅刻無欠勤、5S活動(整理・整頓・清掃・清潔・しつけ)など、社会人として最低限の規律があるかどうかを評価します。 |
チャレンジ精神 | 新しい仕事や苦手な仕事に対し、積極的にチャレンジできているかを評価します。仕事に対する前向きな姿勢や、スキルアップを目指す向上心なども評価項目の一部です。 |
チームワーク | チームメンバーと円滑にコミュニケーションを取っているか、チームに貢献できているかどうかを評価します。 |
業務効率、業務知識、創意工夫、規律、チャレンジ精神、チームワークの6つは、ほとんどの業種や職種で使われている評価項目です。定性評価を初めて取り入れる場合は、上記の6つの評価項目を使ってみましょう。
4. 定性評価を導入するメリット
定性評価を導入するメリットとして以下が挙げられます。
- 従業員のモチベーションを上げられる
- 数値化できない業務を評価できる
4-1. 従業員のモチベーションを上げられる
定性評価を導入することで従業員のモチベーション向上につなげられます。定性評価は定量評価では補えところまでも評価します。そのため、定性評価だけでは発生する可能性があった不公平感を解消し、従業員のモチベーションを向上させられます。
ほかにも従業員自身がどのような役割を担っているのかを、自分で判断しやすくなりモチベーションアップにつなげられます。
4-2. 数値化できない業務を評価できる
定性評価であれば、定量評価だけでは評価できない業務であっても、公平に判断可能です。例えば、数値化しづらい業種の評価だけでなく、経験の浅い従業員に対しての評価でも、定性評価は活用できます。
5. 定性評価のデメリット
定性評価はメリットだけでなく次のようなデメリットも挙げられます。
- 定量評価よりも評価の難易度が高い
- 評価に対しての不満が発生する恐れがある
5-1. 定量評価よりも評価の難易度が高い
定性評価は定量評価と異なり、評価の基準は数字に依存しません。定性評価では数字として表された結果だけでなく、結果が出るまでの過程までも評価します。そのため、定量評価よりも評価の難易度が高くなってしまいます。評価の難易度が高くなるため、評価者の経験や実績によって異なる結果になる可能性があります。評価者のスキルを向上させるためには、評価の書き方をはじめ、訓練を実施しましょう。
5-2. 評価に対しての不満が発生する恐れがある
定性評価は定量評価よりも、評価者のスキルや経験に依存します。そのため、評価の基準があいまいになり従業員によっては不満を抱く可能性があるでしょう。このような不満発生を防ぐには、定性評価の基準をある程度設けることが大切です。
6. 定性評価を行うときの注意点
定性評価を行うときの注意点は3つあります。
- 評価基準をなるべく統一する
- 多面評価を取り入れる
- 評価者訓練を実施する
定性評価には「評価基準が人事担当者によって異なる」「人事評価が人事担当者の価値観の影響を受ける」といった課題があります。定性評価の課題を解決するには、多面評価を取り入れたり、評価者訓練を実施したりする施策が効果的です。
6-1. 評価基準をなるべく統一する
定性評価の弱点のひとつが、客観的な人事評価が難しいという点です。定量評価と違って数値や数量で評価できないため、評価基準が人事担当者の価値観に左右されます。そのため、定性評価を取り入れる場合は評価基準をなるべく統一し、人事担当者ごとに差異が出づらい仕組みを作りましょう。
6-2. 多面評価を取り入れる
定性評価の客観性を高める施策として効果的なのが、多面評価と呼ばれる仕組みです。多面評価とは、人事担当者だけでなく、上司、同僚、本人の自己評価など、さまざまな視点から人事評価を行う仕組みを指します。複数人で多角的に人事評価を行うことで、「定性評価は客観的に評価しづらい」という欠点をある程度克服できます。
6-3. 評価者訓練を実施する
定性評価は、社員の働きぶりや仕事の進め方を評価する必要があるため、人事担当者の負担が大きい評価方法です。人事担当者が未熟な場合は、社員を適切に評価できず、人事評価エラー(実態とかけ離れた人事評価)を引き起こす可能性があります。そのため、定性評価を取り入れる場合は、評価者訓練を実施することが大切です。とくに人事評価の予行演習としてロールプレイングを実施することで、定性評価の進め方を体感できます。
定性評価はさまざまなメリットがある評価方法です。定性評価をより効果的に実施するため、多面評価の導入や評価者訓練の実施などの施策を取り入れましょう。
7. 定性評価の意味や定量評価との違いを知り、人事評価に取り入れよう
人事評価を行うときは、定性評価と定量評価という2つの評価軸を知っておくことが大切です。実績や成果など、数値化可能な部分を評価する定量評価に対し、社員の働きぶりや仕事の進め方、モチベーション、チームワークなど、数字で表すのが難しい部分を評価するのが定性評価です。定性評価の主な評価項目として、業務効率、業務知識、創意工夫、規律、チャレンジ精神、チームワークなどが挙げられます。定性評価を行う場合は注意点もあるため、「客観的な評価が難しい」「人事担当者の負担が大きい」といった弱点を補う工夫が必要です。
定性評価と定量評価は両立させることもできます。定性評価と定量評価の長所を組み合わせ、公平で納得感のある人事評価制度を構築しましょう。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
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