退職者の住民税特別徴収の手続きは?会社がおこなうべき対応を解説
更新日: 2025.9.8 公開日: 2025.3.2 jinjer Blog 編集部

従業員が退職する際におこなう住民税特別徴収の手続きは、退職時期や退職後の就業状況など諸条件によって異なります。
しかし、条件が複数あるため、「どのように手続きすればよいのかわからない」と悩む方も多いのではないでしょうか。
本記事では、従業員の退職時におこなうべき住民税特別徴収の手続きを解説します。
人事労務担当者の実務の中で、従業員情報の管理は入退社をはじめスムーズな情報の回収・更新が求められる一方で、管理する書類が多くミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
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1. 退職者の住民税特別徴収の手続きは状況により異なる


退職者の住民税特別徴収の手続きは、退職時期や退職後の就業状況により、以下の3通りに分かれます。
- 退職後も特別徴収を継続する
- 退職時に一括徴収する
- 退職後に普通徴収へ切り替える
従業員の住民税は、会社が給与から住民税額を差し引き、従業員に代わって市町村に納める特別徴収で支払うことが一般的です。退職以降は会社からの給与の支払いがないため、従業員は特別徴収以外の方法で納める必要があります。
ただし、一定の要件を満たせば、特別徴収の継続が可能です。
退職者の住民税の手続きを怠ると、住民税を適切に納税できなくなります。場合によっては滞納と見なされ、督促状が送られてきたり、延滞税が課せられたりしかねません。
従業員が不利益を被らないようにするためにも、手続きを漏れなくおこなうことが重要です。
2. 【ケース別】退職者の住民税特別徴収方法


住民税の特別徴収をする方法は、退職者の転職先が決まっているかどうかや退職時期によって変わります。
ケース別に解説するので、確認しましょう。
2-1. 退職後も特別徴収を継続できるケース
退職者の転職先がすでに決まっている場合は、退職後も転職先で特別徴収を継続できます。ただし、退職してから再就職するまでに無給の月が発生しないことが条件です。
会社側は特別徴収の引継ぎが適切におこなわれるよう、何月分まで徴収済みであるのかを明確にしておく必要があります。
2-2. 退職時に一括徴収する必要があるケース
退職時期や退職後の就業状況が以下に当てはまる場合は、住民税の残額を最終給与または退職手当から一括徴収する必要があります。
- 1月1日~4月30日の間に退職する
- 退職者が再就職するまでに無給の月が発生する、または転職先が未定である
住民税は、前年の1月1日~12月31日に得た所得をもとに税額が算出され、翌年6月から次の年の5月に徴収される仕組みです。
6月に新しい年度の税額へと更新されるため、6月以前に退職した場合は、特別徴収ができません。例えば、従業員が3月に退職する場合は、3~5月分の残額を一括徴収することになります。
ただし、住民税の残額が最終給与額や退職手当額を上回る場合は、普通徴収に切り替えが可能です。
なお、5月1日~5月31日に退職する場合は給与の支払いがあるため、通常通り特別徴収をおこないます。
参考:個人住民税(区市町村民税・都民税)特別徴収の事務手引き|東京都主税局
2-3. 退職後に普通徴収へ切り替える必要があるケース
以下の状況に当てはまる場合は、原則として普通徴収への変更が必要です。
- 6月1日~12月31日の間に退職する
- 退職者が再就職するまでに無給の月が発生する、または転職先が未定である
住民税の納税方法を普通徴収に切り替えた場合、従業員は翌年5月までの住民税を自身で納めることになります。
ただし、退職者が希望する場合は、最終給与からの一括徴収が可能です。一括徴収をすると、1度にかかる金銭的負担が大きくなるため、従業員と相談してどちらの方法がよいかを選んでもらいましょう。
参考:個人住民税(区市町村民税・都民税)特別徴収の事務手引き|東京都主税局
3. 従業員の退職時に会社がおこなうべき住民税の手続き


従業員の退職時に会社がおこなうべき住民税の手続きを以下のケース別に解説します。
- 特別徴収を継続する場合
- 一括徴収する場合
- 普通徴収へ切り替える場合
従業員の退職や転職により、自社で住民税を徴収できなくなった場合は、給与所得者異動届出書の提出が必要です。様式や提出方法は、各市町村によって異なる場合があるため、従業員が住民税を納めている市町村のホームページを確認しましょう。
給与所得者異動届出書の提出期限は、退職月の翌月10日までです。
参考:個人住民税(区市町村民税・都民税)特別徴収の事務手引き|東京都主税局
3-1. 特別徴収を継続する場合
従業員の退職後も転職先で特別徴収を継続する場合は、会社が給与所得者異動届出書を作成し、退職者に交付します。給与所得者異動届出書の「特別徴収継続」を選択し、新しい職場の住所や連絡先などの必要事項を記入しましょう。
従業員が退職後、転職先に交付済みの給与所得者異動届出書を提出することで、特別徴収が継続できるようになります。
3-2. 一括徴収する場合
退職時に一括徴収する場合は、最終給与または退職手当から徴収対象となる月分の残額を差し引いて徴収します。その際、のちの労使間のトラブルを避けるため、給与から一括徴収することを従業員にしっかりと説明することが大切です。
給与明細には一括徴収されたことがわかるよう、差し引いた住民税額を明確に記載しましょう。
給与所得者異動届出書は「一括徴収」を選択し、徴収予定の日付や税額を記入して従業員の納税先である各市町村に直接提出します。
3-3. 普通徴収へ切り替える場合
従業員の退職後に普通徴収へ切り替える場合も、会社が納税先となる各市町村に給与所得者異動届出書を提出します。給与所得者異動届出書の「普通徴収」を選び、必要事項を記入しましょう。
なお、住民税の納税方法を普通徴収に切り替えると、今まで毎月住民税を納めていたところを4ヵ月分まとめて納めることになります。1回に納める住民税の額が大きくなるため、その点も退職者に説明しておきましょう。
4. 従業員の退職時に会社がおこなうべき住民税以外の手続き


従業員が退職する際は、住民税だけでなく、以下の手続きも必要です。
- 退職届の受理と離職票交付
- 健康保険証や備品の回収
- 雇用保険の手続き
- 社会保険の手続き
- 所得税の手続き
それぞれの内容を詳しく解説します。
4-1. 退職届の受理と離職票交付
退職届を受理したら雇用保険の資格喪失届と離職証明書をハローワークへ提出し、従業員が希望する場合は離職票を発行して郵送します。離職票は失業給付の手続きに必須であるため、目安として退職後10日以内に届くよう手配しましょう。また、退職理由欄の記載が失業給付日数や給付制限の有無に直結するため、自己都合か会社都合かを正確に記録します。
なお、退職者が59歳未満の場合、離職票の発行は本人が希望する場合に限られるものの、退職者が59歳以上の場合、本人の希望の有無にかかわらず、離職票の発行が必須となります。
4-2. 健康保険証や備品の回収
資格喪失日に合わせて健康保険・厚生年金の喪失届を電子申請し、被保険者証を必ず回収しましょう。従業員が退職後に医療機関を受診してしまうと、事業主に返納手続きや立替金の清算負担が生じかねません。
あわせて社用PC・スマートフォン・IDカードなどの貸与物をリスト化し、最終出社日までに返却を完了させます。備品未返却のまま離職すると情報漏えいリスクが高まるため、チェックシートを用いて部門横断で確認しましょう。
4-3. 雇用保険の手続き
従業員が退職する際、会社は以下の書類を管轄のハローワークに提出する必要があります。
- 雇用保険被保険者離職証明書
- 雇用保険被保険者資格喪失届
雇用保険被保険者離職証明書は、退職者が希望しない限り原則として発行する書類です。会社側が作成し、従業員が退職した日の翌々日から10日以内に管轄のハローワークへと提出します。
雇用保険被保険者離職証明書は、失業給付の受給に不可欠なため、従業員から申し出があったらすみやかに作成・提出しましょう。
なお、退職者が59歳以上の場合は、本人の希望の有無を問わず提出が必須です。
雇用保険被保険者資格喪失届は、離職票の要否にかかわらず提出する必要があります。提出期限は、雇用保険被保険者離職証明書と同様、従業員の退職日の翌々日から10日以内です。
4-4. 社会保険の手続き
従業員の退職時、会社は健康保険・厚生年金被保険者資格喪失届を健康保険組合、所轄の年金事務所の両方に提出する必要があります。提出期限は、従業員の退職日の翌日から5日以内です。
ただし、健康保険については、従業員が任意継続を希望すれば、退職後も最長で2年間加入し続けられます。任意継続の場合は、退職日の翌日から20日以内に任意継続被保険者資格取得申出書の提出が必要です。
参考:従業員が退職・死亡したとき(健康保険・厚生年金保険の資格喪失)の手続き|日本年金機構
4-5. 所得税の手続き
源泉徴収票を作成し、退職者へ交付します。年末調整前に退職した場合は、それまでの給与・控除額を記載した源泉徴収票を早急に発行し、従業員が確定申告で不足税額を精算できるよう案内します。年の途中で退職者に賞与を支給する場合は、最終給与と合わせて源泉徴収税額を再計算し、所得税過不足が生じないよう注意します。また、退職日に係る社会保険料の控除漏れがないか給与計算ソフトで検算し、法定調書合計表への反映を忘れないようにします。
5. 住民税特別徴収とその他の徴収方法の違いを理解して適切な退職手続きをおこなおう


退職者の住民税特別徴収の手続きは、退職時期や退職後の就業状況によって、以下のように異なることを押さえておきましょう。
| 退職後の就業状況 | 退職時期 | 住民税の徴収方法 |
| 転職先が決まっており、無給の月が発生しない | 退職時期を問わない | 転職先で特別徴収を継続 |
| 転職先が決まっていない
(または再就職まで無給の月が発生する) |
1月1日~4月30日 | 最終給与または退職手当から一括徴収 |
| 5月1日~5月31日 | 最終給与から特別徴収 | |
| 6月1日~12月31日 | 普通徴収または一括徴収を選択 |
住民税の手続きで、徴収方法が変わったり、一時的に従業員の経済的負担が増えたりする場合は、その旨も説明する必要があります。
退職者が退職後に住民税の支払いで困惑しないよう、特別徴収とその他の徴収方法の違いを理解し、適切な手続きをおこないましょう。



人事労務担当者の実務の中で、従業員情報の管理は入退社をはじめスムーズな情報の回収・更新が求められる一方で、管理する書類が多くミスや抜け漏れが発生しやすい業務です。
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