退職手続きにおける雇用保険の扱いとは?企業側のフローや注意点を解説
更新日: 2025.9.25 公開日: 2025.7.12 jinjer Blog 編集部
「退職手続きにおいて雇用保険はどのように扱うのか」
「企業側ではどのような手続きが必要だろう」
従業員の退職に際して、上記のように悩む人事労務担当の方は多いでしょう。
従業員が退職する際には、退職者からの情報収集やハローワークへの書類提出など、雇用保険に関わるさまざまな対応が発生します。退職時の手続きに不備があると雇用保険法に抵触する可能性があるため、漏れのないように適切な対応をおこないましょう。
この記事では、退職手続きにおける雇用保険の対応フローのほか、提出物や手続きの注意点などについても解説します。退職に伴う雇用保険の手続きをスムーズに進めたい人事労務担当の方は、ぜひこの記事を参考にしてください。
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1. 退職手続きに伴う雇用保険の対応フロー


退職手続きに伴う雇用保険の対応フローを次の手順で解説します。
- 退職前に従業員の情報を集めておく
- 退職後速やかに必要書類をハローワークに提出する
- 退職する従業員に必要な書類を発行する
それぞれの手順について、詳しく解説します。
1-1. 退職前に従業員の情報を集めておく
退職前に従業員の情報を集めておくことは雇用保険の手順として必須です。
なぜなら、従業員の退職後の住所や保険の加入状況が不明だと、必要な書類の手続きが進められない可能性があるためです。
例えば、従業員の住所がわからなければ、書類の送付先がわからず手続きが進められません。健康保険についても、国民健康保険かほかの企業の社会保険か、もしくは任意継続かわからないと手続きに漏れが発生することもあり得るでしょう。
また、退職の理由が自己都合なのか会社都合なのかによって、離職票に記入する内容も変わります。
退職事由によって失業保険をもらえるまでの待機期間や受給期間が変わるため、事前に退職する従業員への聞き取りをおこないましょう。
1-2. 退職後速やかに必要書類をハローワークに提出する
従業員の退職後は速やかに必要書類を管轄のハローワークに提出しましょう。雇用保険の手続きにおいて必要な書類は次の2つです。
- 雇用保険被保険者資格喪失届(以下、「資格喪失届」とする)
- 雇用保険被保険者離職証明書(以下、「離職証明書」とする)
なお、雇用保険被保険者離職証明書は次の場合に作成が不要です。
- 退職者が離職票を希望しない場合
- 従業員が死亡により退職となった場合
上記に該当する場合には離職票の発行が不要となるため、離職票の発行に必要な雇用保険被保険者離職証明書も不要になります。上記に該当する場合は、雇用保険被保険者資格喪失届のみを管轄ハローワークに提出しましょう。
1-3. 退職する従業員に必要な書類を発行する
退職者に必要な書類を発行して従業員の退職に伴う雇用保険の手続きが完了します。
退職者に発行する書類は、主に次の3つです。
- 離職票-1、離職票-2
- 給与や賞与、退職金の記載がある源泉徴収票
- 健康保険被保険者資格喪失確認通知書
健康保険被保険者資格喪失確認通知書は退職者に必ず渡さなければならないものではありません。しかし、退職者が国民健康保険に加入するために必要な場合は、コピーを退職者に送付しましょう。
また、上記の書類のほかにも会社が保管している場合は、雇用保険被保険者証も従業員に返す必要があります。雇用保険被保険者証を従業員が保管しており、万が一紛失した際は再度発行しなければならない点にも注意しましょう。
2. 退職に伴う雇用保険手続きの注意点


退職に伴う健康保険手続きの注意点は、次の4点です。
- ハローワークへの書類の提出は10日以内におこなう
- 退職の手続きは早めに取りかかる
- 社会保険や税金の手続きは別途おこなう必要がある
- 雇用保険未加入の場合は罰則がある
それぞれの注意点について、詳しく解説します。
2-1. ハローワークへの書類の提出は10日以内におこなう
ハローワークへの書類の提出は必ず10日以内におこないましょう。期日を過ぎても必要書類を提出せず、次のようなケースと見なされると法的処分の対象となる可能性があるためです。
- 正当な理由もなく離職票の発行手続きをしていない
- 虚偽の届出をおこなっている
- 退職者からの離職票の発行依頼を意図的に無視している
法令を遵守するためにも、ハローワークへの必要書類の提出は退職日の翌日から10日以内におこないましょう。
2-2. 退職の手続きは早めに取りかかる
退職の手続きは早めに取りかかるようにしましょう。従業員が退職する際には、従業員の対応や必要書類などの準備に手間がかかるうえ、法的に守らなければならない期日があるためです。
例えば、次のような書類の提出にはそれぞれ期日があるため、できるだけ迅速に書類や提出準備をおこなうことが望ましいでしょう。
| 提出書類名 | 提出先 | 期限 |
| 資格喪失届 | 管轄ハローワーク | 退職日の翌日から10日以内 |
| 離職証明書 | 管轄ハローワーク | 退職日の翌日から10日以内 |
| 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届 | 管轄年金事務所 | 退職日の翌日から5日以内 |
| 給与支払報告に係る給与所得異動届 | 市区町村担当窓口 | 退職日を含む月の翌月 10 日まで |
ほかにも退職者が国民健康保険へ加入する場合は、資格喪失後14日以内に手続きが必要なため、会社側が期日に間に合うように書類を送付しなければなりません。
また、任意継続をする場合には資格喪失後20日以内に手続きをしなければならないため、こちらも期日に間に合うように手続きを進めましょう。
2-3. 社会保険や税金の手続きは別途おこなう必要がある
退職時に伴う雇用保険の手続きのほかに、社会保険や税金の手続きは別途おこなう必要があります。
健康保険や厚生年金保険などの社会保険については、以下の書類を適切な提出先へ届け出が必要です。
- 健康保険・厚生年金保険被保険者資格喪失届
- 本人と被扶養者分の健康保険被保険者証(全国健康保険協会の場合)
- 高齢受給者証
- 健康保険特定疾病療養受給者証
- 健康保険限度額適用・標準負担額減額認定証
- 健康保険被保険者証回収不能・滅失届(紛失などで本人から回収できない場合)
各書類は全ての退職者に対して提出を求められるものではありませんが、当該退職者に交付されている場合は忘れずに提出しましょう。
住民税の徴収方法を給与天引きから変更する場合は、給与支払報告に係る給与所得異動届を市区町村に提出しましょう。
退職日によって住民税の残りの支払い方法が異なるため、退職する従業員に次のような支払い方法について事前に伝えておくと親切です。
| 退職月 | 支払い方法 |
| 1月~4月 | 残りの分を最後の給与や退職金から一括で徴収する |
| 5月 | 最終給与から通常通り徴収する |
| 6月~12月 | ・残りの分を最後の給与や退職金から一括徴収する
・普通徴収に切り替えて従業員で支払いをおこなう |
従業員の退職に際しては雇用保険の手続きとは別に、上記のような社会保険・税金関係の手続きもしなければならないことを覚えておきましょう。
2-4. 雇用保険未加入の場合は罰則がある
雇用保険に加入する資格がある従業員を未加入としていた場合、罰則を受けることがあります。
雇用保険法83条では、次のような場合に事業主は6ヵ月以下の懲役又は30万円以下の罰金に処すると定められています。
- 従業員が雇用保険被保険者になった届出をしない
- 従業員が雇用保険の資格を喪失した届出をしない
- 虚偽の届出をしている
- 従業員の保険加入状況の確認に応じない
- 正当な理由なく離職証明書の提出をしていない
法令違反とならないように、従業員に対する適切な雇用保険の加入管理と、退職時の期日厳守を徹底しましょう。
3. 退職手続きにおける雇用保険の扱いを理解して正しく対応しよう


従業員が退職する際には、雇用保険に関するさまざまな手続きが必要です。具体的にはハローワークへの必要書類の提出や、従業員への必要書類の交付などがあります。
退職時の書類の作成や発行には手間と時間がかかるため、従業員が退職するとわかった場合にはスムーズに退職手続きを完了させなければなりません。
万が一雇用保険の手続きで不備が発生すると、事業主が罰則を受ける可能性があります。そのような事態にならないように、ぜひこの記事を参考に法令を遵守した正しい退職手続きの対応を心がけましょう。



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