社会保険料を滞納する8つのリスクや支払えないときの対策を解説
社会保険制度は「一人は万人のために、万人は一人のために」という相互扶助の理念に則った制度です。
企業は働く従業員の社会保険料について、従業員が負担する分と会社が負担する分をまとめて公的機関に納付しています。
そして、公的なものであるため、社会保険料を滞納すると大きなリスクがあります。
本記事では社会保険料を滞納してしまった場合のリスクについて解説したうえで、支払えないときの対策について説明していきます。
なお、広義では雇用保険と労災保険も社会保険に含みますが、本記事では健康保険・年金保険・介護保険の3つを対象として説明します。
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社会保険料は従業員の給与から控除するため、ミスなく対応しなければなりません。
しかし、一定の加入条件があったり、従業員が入退社するたびに行う手続きには、申請期限や必要書類が細かく指示されており、大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
さらに昨今では法改正によって適用範囲が変更されている背景もあり、対応に追われている労務担当者の方も多いのではないでしょうか。
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1. 社会保険料を滞納する8つのリスク
1-1. 催促を受ける
社会保険料の納付期限である月末までに未納付の場合、納付期限を過ぎて1週間後くらいに催促状が届くと同時に催促電話がかかってきます。
この時点では実害はまだありませんが、少なくとも社内の関係部署や一部の社員は未納の事実を知ることになります。
1-2. 延滞金が発生する
催促状が届き、電話がかかってきた場合でも、催促状に記載された期限までに支払えば延滞金は発生しません。
しかし、この期限を超えてしまった場合は延滞金が発生します。
延滞金の割合は毎年日本年金機構が公開していますが、令和4年1月1日から令和4年12月31日については納付期限からの日数に応じて、納付期限から3カ月を経過するまでは年2.4%、3カ月を超えた後は年8.7%となっています。[注1]
延滞金の計算方法などの詳細は日本年金機構のホームページで確認することができます。
[注1]遅延金について|日本年金機構
1-3. 財務調査や捜査が行われる
催促を受けても社会保険料を納付しないままの場合、年金事務所や労働局の職員による財務調査が行われます。
財務調査は基本的には個人事業主や企業の代表者への聞き取りで、現金、預貯金、不動産、売掛金といった財産が対象となります。
この財務調査はあくまでも任意で行われますが、この調査で成果が出ない場合には強制力を持った捜査に切り替わります。捜査となると個人事業主や企業の代表者の自宅への立ち入り調査や、取引のある金融機関の残高調査、さらには取引先への訪問などが行われます。
1-4. 財産が差し押さえられる
財務調査により差し押さえられる財産があった場合、差し押さえが執行される前に予告通知が届きます。
この時点で滞納していた社会保険料を延滞金とともに支払うと差し押さえも回避できることもありますが、無視してしまうと財産が差し押さえられます。
差し押さえされてしまうとどうなるのかについては後ほど詳しく紹介していきます。
1-5. 金融機関から融資を受けられなくなる
社会保険料を滞納し、年金事務所などによる財務調査でも成果が得られずに捜査となった場合、金融機関にもその情報が伝わります。
金融機関としては融資をしても将来的に利息と共に返済されることを見込んで融資をしています。
社会保険料を支払えないほど資金繰りが悪化しているような企業に対しては、今後融資をしないという場合も考えられます。
1-6. 従業員の離職
企業に財務調査が入ったり、差し押さえがされたりした場合、多くの従業員もその事実を知ることとなります。
自身の将来にも関わる保険料を未納するような企業にずっと務めたいという人はいませんし、企業への信頼は薄れていきます。結果的に退職を選んでしまう社員も出てくるでしょう。
1-7. 取引先との関係終了
取引先からすれば、信用できる相手と長期的に良好な関係を築いていきたいと願うものです。
社会的な義務である保険料納付を滞納する会社と引き続き取引をするという企業は少ないといえます。
また、場合によっては売掛金などの関係で直接的に取引先の財務に影響を及ぼすこともあるため、以前のように取引をしていくことは難しいこともあるでしょう。
1-8. 世間的なイメージ低下
有名企業や大企業の場合、社会保険料を滞納するといった事実は広く公表されることとなり、世間的なイメージ低下は免れません。
もしも延滞金を支払い、その後経営努力で財務状態が健全に戻ったとしても、以前ほど商品が売れない、顧客離れといった影響は続いていくでしょう。
2. 差し押さえになるとどうなる?
それでは何点か具体的に紹介していきます。
2-1. 自由に商売ができなくなる
差し押さえの対象は預貯金や不動産、動産といったように企業や事業主が保有する財産のほぼ全てが対象といえます。預貯金が無ければ物を購入することができませんし、不動産が利用できなければ働く場所がありません。
動産が無ければ、機械で物を作ったり車で移動することもままなりません。
つまり、差し押さえられると正常な企業活動を行うことは基本的には不可能といえるでしょう。
2-2. 社会的な信用を失う
差し押さえされたという事実は金融機関や取引先、そして働く従業員といった関係する人に広く伝わります。
もしも今回はなんとかなったとしても、一度失った信用を取り戻すことは容易ではありません。
金融機関からは今後の融資を断られたり、取引先との関係が終わってしまったり、優秀な従業員が離職してしまったりといった様に、差し押さえによるさまざまな悪影響を引き起こすでしょう。
3. 社会保険料を支払えないときの4つの対策
具体的にどのようにすればよいのかを説明していきます。
3-1. 早めに相談する
支払えない可能性が出てきたら、まずは年金事務所に相談しましょう。
できるだけ早くが望ましいですが、遅くとも催促状が届いた時点で相談した方がベターです。
3-2. 納付の猶予を申請する
社会保険料の支払いが一時的に困難となった場合には納付の猶予を申請できます。
申請には天災や著しい業績悪化などの条件がありますが、条件を満たせば本来の納付期限から原則として1年以内、最長で2年の猶予が認められます。
3-3. 分納する
納付の猶予が認められると、その分の社会保険料は分納という形で支払います。
猶予期間中に毎月分割して支払いますが、注意点としては通常の社会保険料と両方支払う必要があるということです。
具体的な金額や支払日といった点については年金事務所とよく相談しましょう。
3-4. 破産申請をする
対策を考えてもどうにもならない場合には、破産の検討をすることも重要です。
企業が破産する場合は、仮に滞納金を支払わなくても従業員の厚生年金の加入期間が短縮されることもありません。
今後ますます経営が悪化して給料未払いとなる前に破産を検討することも一つの手段です。
4. 社会保険が払えないときは早めに対策しよう
もしも支払いが困難となりそうな場合、とれる対策がいくつかあります。
万が一差し押さえになった場合は、社会的な信用や大切な社員を失うことになります。
支払えないからと滞納したままにせず、早めに年金事務所に相談し、対策を講じましょう。
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