社会保険料の納付方法や滞納するリスクについて
更新日: 2023.3.17
公開日: 2022.4.1
YOSHIDA
社会保険制度は日常生活での病気や退職後の生活を支える公的保険制度です。企業は働く従業員の社会保険料について、従業員が負担する分と会社が負担する分をまとめて公的機関に納付しています。とはいえ、納付に慣れていないとどのようにすればよいかわからない担当者もいるのではないでしょうか。
本記事では、社会保険料の納付方法や納付時期、納付期限、滞納してしまった場合のリスクについて解説しています。
なお、一般的に社会保険というと健康保険と年金保険、介護保険の3つを指しますが、場合によっては雇用保険と労災保険を含むことがあります。本記事では健康保険と年金保険、介護保険の3つを対象に説明します。
1. 社会保険の納付方法4つを解説
まず最初に社会保険の納付方法を解説します。自社に合った方法を選ぶためにも、それぞれの特徴をおさえておきましょう。
1-1. 金融機関の窓口で支払う
日本年金機構は毎月保険料の納入告知書を各事業所に郵送します。その告知書を金融機関に持参することで支払う方法です。
1-2. 指定口座から口座振替により納付する
忙しいなかで毎月金融機関に支払いに行くのはなかなか大変です。そこで多くの企業では支払い手続きを簡略化するために指定の口座から自動で口座振替をするようにしています。口座振替にすることで手間が減るのはもちろん、支払い忘れを防止して確実に納付することが可能です。
口座振替では、「健康保険厚生年金保険 保険料口座振替納付(変更)申出書」を年金事務所に直接、または郵送にて提出します。様式の裏面に記入例があるので参照すればよいでしょう。
なお、この書類には金融機関の確認印が必要となるため、まずは金融機関の窓口で手続きをおこないます。
1-3. 電子納付を利用する
口座振替よりも更に便利に納付する方法として電子納付という手段があります。
電子納付の方法は、以下の4つです。
1つ目はインターネットバンキングを利用する方法です。あらかじめ利用する金融機関と契約を結び、インターネット経由で納付することが可能です。銀行の営業時間に関わらず、自宅や外出先で処理をおこなうことができます。
インターネットバンキングは社会保険料の支払い以外でも利便性のうえで色々なメリットがあります。一度確認してみてもよいでしょう。
2つ目はモバイルバンキングです。こちらも金融機関との契約は必要ですが、携帯電話を使ったインターネットバンキングです。
3つ目はテレフォンバンキングです。多くの場合はインターネットバンキングを利用している場合にテレフォンバンキングを利用しますが、電話の音声案内などを利用して払い込み手続きをおこないます。
4つ目は「Pay-easy」の表示があるATMでの納付手続きです。ATMの画面に従い、キャッシュカードや現金で支払います。感覚的に簡単に支払うことが可能となっています。
関連記事:雇用保険料の基本的・例外的な納付方法と納付時の仕訳について解説
2. 社会保険料の納付額の確定時期や納付期限
社会保険料は毎月支払いが発生しますが、毎月10日ごろに前月分が確定となります。10日ごろに確定した保険料については「保険料納入告知書」に記載され、20日前後に送付されます。そして期限はその月の末日です。
つまり、前月分が翌月の10日ごろ確定、20日前後に通知され、月末までに納付という流れです。もしも納付期限までに保険料が納付されない場合、年金事務所から催促状が送付されてきます。
なお、社会保険料には日割り計算は適用されません。たとえば7月31日に入社した社員に対しても社会保険料の計算としては7月分も1ヵ月分支払う必要があります。
また当サイトでは、納付する際に必要となる社会保険料の算出方法について解説した資料を無料で配布しております。
本資料にて、確定時期や納付期限についても、図を用いてわかりやすく解説しておりますので、不安な点があるご担当者様は、こちらから「社会保険料の給与計算マニュアル」をダウンロードしてご確認ください。
3. 社会保険料の納付を滞納するリスク
決まった額の社会保険料を期限内に納付することは、企業が果たさなければならない義務です。もしも納付を延滞してしまった場合はさまざまなリスクを負うことになります。具体的なリスクを以下の通り6つ説明します。
3-1. 延滞金が発生する
仮に納付期限を過ぎてしまい催促状が届いた場合でも、催促状に記載された期限までに支払えば延滞金は発生しません。しかし、この期限を超えてしまった場合は延滞金が発生します。
なお、延滞金の割合は時期によって異なります。
2022年1月1日から2022年12月31日については納付期限からの日数に応じて、納付期限から3ヵ月を経過するまでは年2.4%、3ヵ月を超えた後は年8.7%となっています。
3-2. 財産が差し押さえられる
社会保険料を支払わないと、年金事務所や労働局の職員による財務調査がおこなわれます。そして財務調査により差し押さえられる財産があった場合、差し押さえが執行される前に予告通知が届く流れです。
この時点で滞納していた社会保険料を延滞金とともに支払うと、差し押さえも回避できることもあります。しかし、そのまま放置すると財産が差し押さえられるリスクがあるため、要注意です。
差し押さえの処分を受けると、銀行に預けている資金を自由に使えなくなってしまったり事務所に入れなくなったりと、事業の継続が困難になる可能性があります。
3-3. 金融機関から融資を受けられなくなる
社会保険料を滞納し、預貯金などの財産が調査されたり差し押さえを受けてしまったりした場合、当然ながら金融機関にもその情報が伝わります。
金融機関は将来的な利息と返済を見込んで企業に融資しています。したがって、社会保険料を滞納するほど財務状況が厳しい企業に対しては、融資自体を断る可能性が高まります。
3-4. 従業員の離職
会社に財務調査が入ったり、差し押さえられたりした場合、従業員の離職も招きかねません。保険料は従業員自身の将来に関わる大切な要素です。未納状態であるということは、従業員にとっても大きなマイナスイメージとなるでしょう。
3-5. 取引先との関係終了
取引先からすれば、信用できる相手と長期的に良好な関係を築いていきたいと願うのは当然です。社会的な義務である保険料納付を滞納する会社と引き続き取引をするという企業は少ないかもしれません。また、場合によっては売掛金などの関係で直接的に取引先の財務に影響を及ぼすこともあります。
3-6. 世間的なイメージ低下
特に大手企業の場合、世間的なイメージ低下は免れません。延滞金を支払い、財務状態が健全に戻ったとしても、商品が売れないなどの影響は続いていくでしょう。
関連記事:社会保険料を滞納する8つのリスクや支払えないときの対策を解説
4. 社会保険料は滞納せず正しく納付しよう
社会保険料は企業が必ず支払わなければならないものです。もし支払わなかった場合は催促状が届き、そのまま放置すると財産差し押さえなどのリスクを負うことになります。
社会保険料の滞納については、基本的に時効で消滅するということもありません。きちんと支払うとともに、もしも難しい場合は分納や支払日延期について年金事務所などに相談しましょう。
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