社会保険の氏名変更が必要なケースとは?手続きの流れや必要書類を解説
更新日: 2025.6.17
公開日: 2022.4.3
jinjer Blog 編集部
結婚または離婚によって従業員の氏名に変更があった場合、社内の手続きだけでなく、社会保険の氏名変更も必要になります。
社会保険制度では、氏名の変更は速やかに届け出なければならないため、手続きが必要な社会保険の種類や手続きの方法をしっかり確認しておきましょう。
今回は、氏名変更が必要となる社会保険制度や、事前に確認すべき事項、氏名変更の具体的な手続きについて解説します。
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しかし、一定の加入条件があったり、従業員が入退社するたびに行う手続きには、申請期限や必要書類が細かく指示されており、大変複雑で漏れやミスが発生しやすい業務です。
さらに昨今では法改正によって適用範囲が変更されている背景もあり、対応に追われている労務担当者の方も多いのではないでしょうか。
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1. 社会保険は氏名が変わったら氏名変更が必要
会社勤めをしている人が加入する社会保険制度には、健康保険・厚生年金保険があります。
結婚や離婚によって氏名に変更があった場合は、どちらも氏名変更の手続きが必要です。
また、氏名が変わる理由によって付随する手続きも変化するため、結婚・離婚によってどんな項目に変更があるのか、事前に確認しておきましょう。
1-1. 従業員の結婚や離婚時に確認すべき事項
社会保険の氏名変更をするにあたって、事前に確認すべき事項は以下の通りです。
- 姓の変更の有無
- 住所変更の有無
- 被扶養者の有無(変更含む)
- 給与の変更の有無
結婚・離婚したからと言って、必ずしも姓や住所が変更されるわけではありません。結婚前から同棲していた場合は結婚後も引き続き同じ場所に住む可能性があり、離婚後に結婚時の姓をそのまま使用するケースもあります。
日本では、結婚後は男性側の姓に統一し、離婚後は旧姓に戻るのが一般的です。しかし、人によって事情は異なるため、必ず従業員本人に姓・住所の変更があるかどうか確認しましょう。
また、社会保険には扶養制度があります。結婚・離婚によって新たに扶養する家族ができた場合や、逆に扶養する家族がいなくなった場合は、氏名変更と共に「健康保険 被扶養者(異動)届」や「国民年金第3号被保険者関係届」などを事実発生から5日以内に提出しなければなりません。
さらに、会社で通勤手当や扶養手当を支給している場合、新居への引っ越しや扶養家族の増加によって給与の額が変更になることがあります。
社会保険の保険料は、月額賃金を区切りの良い幅で区分した「標準報酬月額」に基づいて決まるため、通勤手当・扶養手当などの固定的賃金の変動によって標準報酬月額の区分が2等級以上変わる場合、「健康保険・厚生年金保険被保険者報酬月額変更届」も提出する必要があります。
こうした手続きは、変更の事由が発生したら速やかにおこなうこととされているため、従業員から結婚・離婚の報告を受けた場合は必要な情報を確認し、迅速に手続きを開始することが大切です。
参考:従業員(健康保険・厚生年金保険の被保険者)が家族を被扶養者にするとき、被扶養者に異動があったときの手続き|日本年金機構
参考:随時改定(月額変更届)|日本年金機構
1-2. 氏名変更をしていない社会保険書類は使用できない
社会保険の氏名変更をおこなわないと、社会保険が利用できなくなる可能性が高くなります。また、源泉徴収簿や労働者名簿などの書類は戸籍名で管理されているため、正しい氏名に変更する必要があります。
氏名変更をしていない旧姓のままの健康保険証は、病院で確認を要するため時間がかかることがあります。正しい手続きをおこなわないと、社会保険制度を適切に利用できなくなってしまうため注意しましょう。
近年は従業員のプライバシーを守るためや、働きやすい環境づくりの一環として、結婚や離婚で氏名が変化した場合でも会社では旧姓を使い続けるケースが増えています。名刺やメールアドレス、社員証は旧姓でも問題ありませんが、社会保険に関連する書類は必ず新しい氏名に変更することを忘れないようにしましょう。
2. 社会保険の氏名変更手続きが不要なケース
2-1. マイナンバー制度に対応していれば手続きは不要
マイナンバー制度導入前は、社会保険に加入している被保険者の氏名または住所を変更する場合は、すべて日本年金機構にて各種届出をする必要がありました。
しかし、マイナンバー制度の導入にともない、平成30年3月からは日本年金機構への被保険者の氏名変更届・住所変更届は原則不要となりました。
被保険者の氏名・住所の変更情報は、日本年金機構がマイナンバーを活用して地方公共団体システム機構に変更情報(結婚・離婚など)の照会をおこなうことで取得する流れになっています。
2-2. 被扶養者や一部の被保険者は手続きが必要
社会保険の氏名変更が不要になるのは、マイナンバーの届出を済ませており、かつ基礎年金番号との紐付けが完了している被保険者のみです。被扶養者については、氏名変更の届出省略ができないため、従来同様に被扶養者(異動)届による手続きが必要になります。
また、被保険者であっても、以下の条件に該当する方は原則として氏名および住所変更の届出を省略できないため、あらかじめ注意が必要です。
①健康保険のみに加入している方
②マイナンバーの届出が済んでいない方(マイナンバーを持たない海外赴任者含む)
③マイナンバーと基礎年金番号の紐付けをしていない方
③に関しては、日本年金機構から郵送される「マイナンバー未収録者一覧」で確認できるため、あらかじめ氏名変更の手続きの要・不要をチェックしておきましょう。
参考:健康保険・厚生年金保険の被保険者氏名変更届・住所変更届の手続が変わりました|全国健康保険協会(協会けんぽ)
参考:被保険者の氏名に変更があったとき|日本年金機構
3. 社会保険の氏名変更の手続きと必要書類
社会保険の氏名変更をおこなう場合は、健康保険・厚生年金保険 被保険者氏名変更(訂正)届を作成し、必要書類を添付して提出します。健康保険・厚生年金保険 被保険者氏名変更(訂正)届の書き方や添付書類を確認していきましょう。
3-1. 社会保険の氏名変更をする流れ
マイナンバーによる手続き省略の対象とならない方は、従来通り「健康保険・厚生年金保険被保険者氏名変更(訂正)届(以下、被保険者氏名変更届)」で届出をする必要があります。
被保険者氏名変更届は、日本年金機構の窓口のほか、同機構の公式サイトからダウンロードすることで入手できます。
届出には、以下の情報をもれなく記載します。
①事業所整理記号
②被保険者整理番号
③個人番号(または基礎年金番号)
④生年月日
⑤被保険者の氏名
⑥事業所の情報
③にて個人番号(マイナンバー)を記載する場合は、「行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律(番号法)」第16条に基づき、本人確認の措置をとることが義務づけられています。
具体的には、以下2つの確認をすることが必要です。
- 正しい個人番号であることの確認
- 提供者(従業員)が個人番号の正しい持ち主であることの確認
上記2つの確認手段としては、通知カードまたは個人番号付きの住民票に、運転免許証やパスポートといった顔写真付きの本人確認書類を合わせて提出してもらうなどの方法があります。
一方、基礎年金番号を記入する場合は上記の確認は不要で、従業員に提出してもらった年金手帳等に記されている10桁の番号を左詰めで記入します。
⑤は変更後の氏名と、変更前の氏名の両方を記載します。
⑥には、事業所の所在地や名称、事業主の氏名、電話番号を記載します。
なお、届出の提出方法は事業所の所在地を管轄する年金事務所の窓口に持参するほか、郵送や電子申請でも受け付けています。
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参考:行政手続における特定の個人を識別するための番号の利用等に関する法律|e-Gov法令検索
参考:国税分野における番号法に基づく本人確認方法|国税庁
3-2. 必要な添付書類
社会保険の氏名変更手続きをする際は、被保険者氏名変更届と共に、各保険者が定める書類を添付する必要があります。
たとえば全国健康保険協会(協会けんぽ)の場合は、以下の書類を用意します。
①健康保険被保険者証
②高齢受給者証
③健康保険特定疾病療養受療証
④健康保険限度額適用認定証
⑤健康保険限度額適用・標準負担額認定証
⑥被扶養者の健康保険被保険者証
②~⑤に関しては交付されている場合のみ、6に関しては被扶養者がいる場合のみ、それぞれ添付が必要となります。いずれも写しでよいため、従業員に必要書類の提出を求めておきましょう。
参考:健康保険・厚生年金保険 被保険者氏名変更(訂正)届|日本年金機構
4. 社会保険の氏名変更は忘れずに手続きをして適正に運用しよう
結婚・離婚によって氏名が変わる従業員がいる場合は、変更の事由が発生した後、速やかに氏名変更の手続きをする必要があります。
ただし、当該従業員の基礎年金番号とマイナンバーが紐付けされている場合は、日本年金機構が地方公共団体システム機構に変更情報の照会をした上で、各保険者に情報提供するため、事業者や従業員本人が手続きをする必要はありません。
一方で、マイナンバーの届出が済んでいない方や、基礎年金番号との紐付けがされていない方、健康保険にのみ加入している方は、従来通り被保険者氏名変更届の手続きをする必要があります。
また、結婚・離婚によって住所や扶養者の有無に変更があった場合も、会社を通じて被保険者住所変更届や被扶養者(異動)届の手続きをする必要があるため(マイナンバーと紐づいている場合には住所変更届は不要)、氏名変更があった従業員には、あらかじめ住所変更や扶養者の有無なども確認しておきましょう。
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