ストレスチェックとは?必要性・メリット・効果を高める方法を解説
更新日: 2024.11.15
公開日: 2024.10.12
OHSUGI
「ストレスチェックとは?」
「ストレスチェックを職場で実施する必要性は?」
上記のような疑問をお持ちではありませんか。
ストレスチェックとは、ストレスに関する質問に回答してもらうことで、従業員のストレスの状況を分析するものです。労働衛生安全法により、一定の従業員数を超える事業所では実施が義務化されています。
職場でストレスチェックを実施することで、従業員のストレスを把握し、労働環境の改善や退職防止に役立てることが可能です。
本記事では、ストレスチェックの概要や必要な理由、労働者・企業側のメリット、効果を高める方法について解説します。最後まで読むことで、ストレスチェックへの理解を深められ、実施を検討する判断材料となるでしょう。
目次
1. ストレスチェックとは?概要を解説
ストレスチェックについて以下の観点から解説します。
- ストレスチェックは従業員のストレスを分析する検査
- 労働安全衛生法で定められた事業者の義務
- ストレスチェックは意味ないと感じやすい
それぞれ詳しく解説します。
1-1. ストレスチェックは従業員のストレス状況を分析する検査
ストレスチェックとは、従業員のストレスの状態を分析する検査です。従業員に選択回答の質問票に回答してもらい、結果を集計・分析することで調べます。
職場のストレス環境や本人の状態を把握することで、職場環境を改善し、従業員のメンタルヘルスの問題を防止することが目的です。
検査の結果に応じて、セルフケアのアドバイスや医師の面接指導を実施することで、従業員のストレス管理をサポートできます。
参考:ストレスチェック等の職場におけるメンタルヘルス対策・過重労働対策等|厚生労働省
1-2. 労働安全衛生法で定められた事業者の義務
ストレスチェックは、2015年12月から労働安全衛生法の改正により義務化されました。従業員50人以上の事業場では、年に1回以上のストレスチェックの実施が必須となっています。
50人未満の事業場では努力義務です。ただし、従業員の健康を守るためにも積極的な実施が推奨されています。
ストレスチェックが義務化された背景には、職場におけるメンタルヘルスの問題の深刻化が挙げられるでしょう。精神障害による労災認定件数が増加傾向にあり、2009年から2012年にかけて3年連続で過去最高を記録したことが大きな要因となりました。
なお、精神障害に関する労災補償状況では、直近5年間で過去最多を更新し続けている状況です。
ストレスチェックを実施する際は、管理者だけでなく産業医などの専門家も介入し、従業員のプライバシーに十分配慮して実施されます。
対象となるのは正社員だけでなく、パートタイマーや契約社員など非正規雇用者も含まれます(労働時間・契約条件によって例外あり)。
参考:2015年12月からストレスチェック制度が義務化されました|滋賀労働局
参考:精神障害の労災認定最多 3年連続、パワハラ深刻 21年度、厚労省まとめ|WEB労政時報
参考:令和5年度「過労死等の労災補償状況」を公表します|厚生労働省
1-3. ストレスチェックは意味ないと感じやすい
従業員の健康を守るためのストレスチェックですが、「意味ない」と感じる従業員も多く、制度の効果に疑問を抱く声も少なくありません。
そもそもストレスチェックの受検は従業員の義務ではないため、参加者が少なくなりがちです。その結果、集団分析の精度が低くなり、職場環境の改善に活かせないため「意味ない」と思われている側面があります。
筆記での回答に関しても、社内評価やほかの従業員への迷惑を考え、本音を書かない従業員も多いです。また産業医との面談をわずらわしいと考え、適当に回答する従業員も珍しくありません。
このような理由から従業員が「意味ない」と感じやすいストレスチェックですが、正しく活用すると、従業員の心身の健康を守る有効な制度になります。
ストレスチェックを受検しやすい雰囲気を作り、受検後のフォローアップ体制をしっかり作ることで、従業員の心身の健康を守れる職場作りをしましょう。
2. ストレスチェックを実施するメリット
ストレスチェックを実施するメリットを以下の流れで解説します。
- 従業員のメリット
- 企業のメリット
2-1. 従業員のメリット
従業員のメリットは、従業員は自身の心の健康状態を客観的に把握し、うつ病・適応障害などストレス要因のメンタル疾患を防止できることです。
またストレスの度合いをもとに、従業員自身がストレス解消法を見つけ、重度のメンタル疾患に陥る前にセルフケアを行えるようにもなります。
さらに、集団分析によって従業員それぞれのストレス度合いを分析することで、職場全体のストレス要因を明らかにすることも可能です。
従業員個人と職場環境の両面から、より働きやすい環境づくりができるでしょう。
2-2. 企業のメリット
ストレスチェックによって従業員の健康管理と職場環境の改善が進み、従業員個々の業務のパフォーマンスが向上します。結果的に、企業としての生産性向上や競争力強化を図れるでしょう。
例えば、従業員のストレス要因を把握することで職場環境や労働条件の改善が可能です。その結果、従業員の離職や休職を回避し、生産性を維持しやすくなります。
また集団分析を通じて、職場全体のストレス・健康状態を評価できることもメリットです。特定の部署での過重労働や人間関係の問題などを発見し、職場環境の改善に乗り出せるためです。
従業員のストレス状態を定期的にチェックし、職場環境を整えることで従業員の生産性を安定させることは重要といえます。
3. ストレスチェックの効果を高める3つのコツ
ストレスチェックの効果を高めるコツは以下の3つです。
- 従業員が受検しやすい状況を作る
- ストレスチェックを職場環境の改善に活かす
- ストレスが大きい従業員へのフォロー体制を整える
3-1. 従業員が受検しやすい状況を作る
1つ目のコツは、従業員が受検しやすい状況を作ることです。より多くの従業員が受験できるようにすることで、集団分析の制度が上がり、職場のストレス要因を明確にしやすくなります。
従業員が積極的にストレスチェックを受検するためには、受検の意義を明確に伝えることが大切です。ストレスチェックには、従業員個人のストレス解消の促進と、職場環境の改善の2つの目的があります。
ストレスチェックの目的を従業員に説明し、フォローアップや職場環境の改善など具体的なメリットを強調することで、受検への理解と協力を得ましょう。
3-2. ストレスチェックを職場環境の改善に活かす
2つ目のコツは、ストレスチェックの結果をもとに集団分析を行い、職場環境の改善に取り組むことです。
集団分析をもとにした職場環境の改善策としては、下記のような方法があります。
改善案 | 概要 |
業務量の改善 | 過大または過小な業務量を避け、適切な作業ペースを確保する |
勤務形態の改善 | フレックスタイム制などの導入により、プライベートとのバランスを取る |
人間関係の改善 | チームビルディングやコミュニケーション研修を通じて、良好な人間関係の構築を促す |
改善計画は従業員と共有し、進捗状況を定期的に確認することで、組織全体で改善に取り組む体制を作るよう心がけましょう。
3-3. ストレスが大きい従業員へのフォロー体制を整える
3つ目のコツは、ストレスが大きい従業員へのフォロー体制を整えることです。
ストレスチェック後、ストレスが強い従業員に対しては個別にフォローアップすることも必要です。そのためには、産業医との連携や外部相談窓口を設け、適切な指導ができるようフォロー体制を整えましょう。
外部相談窓口に関しては、心理カウンセラー・精神科医などの専門家を紹介する体制も準備しておくことで、より専門的なサポートを実施できます。
具体的なフォローアップ方法としては、定期的な面談と健康状態チェック、面接指導後の就業上の措置(勤務時間短縮や配置転換など)などが挙げられるでしょう。
高ストレス者が業務負担の多い部署や長時間労働にならないよう、配置変更や業務量を減らすなど、適宜調整をおこなうことが大切です。
4. ストレスチェックの課題
ストレスチェックの課題として以下の3つが挙げられます。
- ストレスチェックに直接的な罰則はない
- ストレスチェックの対象者にならないケースがある
- ストレスチェック後のフォローが不十分になる
4-1. ストレスチェックに直接的な罰則はない
ストレスチェックは労働衛生安全法により義務づけられているものの、実施を怠った場合の直接的な罰則は設けられていません。
ただし、ストレスチェックの実施を怠ると安全配慮義務違反として労働契約法に違反し、損害賠償に発展する可能性はあります。また結果を労働基準監督署へ報告する義務を怠った場合も、最大で50万円の罰金が課せられるおそれがあるため注意が必要です。
一方、50人未満の事業場においては、ストレスチェックの実施は努力義務とされており、結果の報告義務も課せられていません。
とはいえ、近年のメンタルヘルスや職場環境改善への注目の高まりを考えると、将来的には50人未満の事業場にも実施義務や結果報告義務が課せられる可能性があります。
直接的な罰則がないとはいえ、ストレスチェックを軽視することは従業員の心身の健康を損なうリスクがあるため、注意が必要です。
4-2. ストレスチェックの対象者にならないケースがある
ストレスチェックは、立場や条件によっては対象者にならないケースもあるため、注意が必要です。具体的なケースを以下にまとめました。
パート・アルバイト | 契約期間や労働時間数が一般定期健康診断の基準と同じ条件を満たさない場合は対象外となる |
海外勤務の社員 | 現地法人に雇用されている場合は日本の法律が適用されないため対象外となる |
派遣社員 | 派遣元で実施するため、派遣先では対象外となる。ただし派遣先で派遣社員が多い場合、集団分析のために実施され対象となるケースもある |
出向者 | 労働契約関係により賃金の支払いや指揮命令権などを考慮し、出向元と出向先のどちらが実施するかが決定される |
対象外の従業員がいる場合には注意しましょう。
4-3. ストレスチェック後のフォローが不十分になる
多くの企業で、ストレスチェック後のフォローアップが適切におこなわれていない課題があります。
とくに問題となるのは、ストレスが強いと判定された従業員に対するフォローアップの実施率の低さです。該当の従業員には、産業医との面談や、休職などのケアを実施する必要があります。
企業はストレスチェック後のフォローアップの重要性を認識し、適切なケアがおこなえる体制の構築に努めましょう。
5. ストレスチェックの具体的な流れ
ストレスチェックの具体的な流れは以下のとおりです。
- 事前準備
- ストレスチェックの実施
- 結果の通知と面接指導
- 職場環境の改善
5-1. 事前準備
事前準備では以下のことをおこないます。
- 計画の策定
- 実施を担う担当者の専任
- 従業員への説明
まずは、ストレスチェックを実施する時期、具体的な方法、対象者などの内容を含めてストレスチェックの計画を策定します。実施時期は業務スケジュールを考慮し、できるだけ多くの従業員が参加できるタイミングを選ぶことが大切です。
ストレスチェックを実施する担当者には、産業医や保健師などの専門家を選任しましょう。あわせて調査票の配布や回収、データ入力を担当する事務スタッフも選任します。
ストレスチェックを実施する担当者は人事権を持たない者を選任することが大切です。従業員のプライバシーを守り、安心して回答できる環境にできます。
計画や担当者が決まったら、ストレスチェックの趣旨と目的、受検方法、プライバシー保護について従業員に詳細を説明しましょう。事前に説明をすることで、効果的な実施につながります。
5-2. ストレスチェックの実施
次にストレスチェックの実施です。
最初に従業員に調査票を配布します。調査票の記入は紙かICT(デジタル)で行われ、オンラインでの実施も可能です。
配られた調査票には、ストレス要因・自覚症状・周囲のサポートに関する質問が記載されています。従業員に回答してもらいましょう。
5-3. 結果の通知と面接指導
通知内容には、どのようなストレスを抱えているのか、高ストレス者かどうかの評価、医師の面接指導の対象者かどうかの判定が記載されています。
高ストレス者と判定された従業員には医師による面接指導が推奨されるため、積極的に指導を受けるよう促すとよいでしょう。
面接指導は結果通知から1ヵ月以内に実施する必要があります。産業医などの専門医が従業員のストレス状況を把握し、必要に応じてアドバイスをする内容です。
なお面接指導の結果は、事業場で5年間保管することが義務づけられています。従業員の長期的な健康管理と職場環境改善の効果を検証するためです。
5-4.職場環境の改善
ストレスチェックの結果は集団分析により、職場環境を改善するために必要な具体案の立案・実施に活用します。
例えばコミュニケーション研修を実施して人間関係の改善につなげる、照明・換気など作業環境を改善してより働きやすい環境を再構築するなどです。
定期的にストレスチェックを実施し、継続的に職場環境の改善に努めることで、働きやすい職場が作られるでしょう。
6. ストレスチェックを活かして職場環境を改善するポイント
ストレスチェックを活かして職場環境を改善するポイントは以下のとおりです。
- 社内のストレスの傾向を集団分析する
- 従業員のストレスを経営課題として捉える
6-1. 社内のストレスの傾向を集団分析する
1つ目のポイントは、社内のストレスの傾向を集団分析することです。
部署・職種・年齢など、対照群を変えながら多角的に集団分析をおこなうことで、職場のストレス要因と度合いの詳細な情報を得られます。
職場全体のストレス要因と傾向を把握できると、効果的な改善策を講じられるでしょう。
6-2. 従業員のストレスを経営課題として捉える
2つ目のポイントは、従業員のストレスを経営課題として捉えることです。
ストレスが少ない従業員は集中力が高まりやすく、仕事にやりがいを持って取り組む傾向にあります。ストレス要因を特定し、職場環境を改善することで、従業員個々の業務のパフォーマンスを向上させられるでしょう。
またストレスの少ない職場環境は従業員の定着率の向上にもつながります。快適で健康的な職場環境で働く従業員は、長期的に現在の企業で働きたいと考えるようになるためです。
加えて、職場環境改善の取り組みは社会的責任を果たしていると評価され、企業としてのブランド価値向上にも寄与します。
以上のことから、企業は従業員のストレスを経営課題として捉え、職場環境の改善に努めることが望ましいです。
7. 法令に則ったストレスチェックで働きやすい職場づくりをしよう
ストレスチェックは従業員の心身の健康を守り、より働きやすい職場環境をつくるために必要な制度です。従業員50人以上の事業場は実施する義務があり、従業員50人未満の事業場でも努力義務があるとされています。
効果的なストレスチェックのためには、従業員が受検しやすい環境づくり、結果の適切な分析と活用、高ストレス者へのフォローアップが不可欠です。
定期的なストレスチェックの実施と職場環境の改善により、従業員にとって働きやすく、企業にとっても競争力のある職場づくりを目指せるでしょう。
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