ストレッチアサインメントとは?メリットや注意点を詳しく解説
更新日: 2024.7.5
公開日: 2023.12.20
OHSUGI
ストレッチアサインメントとは、社員を成長させるためにあえて実力以上の仕事や課題に取り組ませる手法のことで、人材育成方法の1つとして導入する企業が増えています。
しかし、ストレッチアサインメントの導入を検討しているものの、「ストレッチアサインメントはどうやって取り入れるのか」「導入してどのような効果があるのか」などの疑問を持っている方も多いかもしれません。
本記事では、ストレッチアサインメントの概要やメリット・デメリット、実施するポイント、注意点などを詳しく解説します。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. ストレッチアサインメントとは
ストレッチアサインメントとは、現時点での実力以上の仕事や課題を与えることで、社員の成長を促すマネジメント手法です。
現状では達成することが困難な仕事を与え、社員の潜在能力を最大限引き出し、リーダーシップやチャレンジ精神を伸ばします。
ただし、むやみに困難な仕事や課題を与えるだけではいけません。対象となる社員が過度のストレスやプレッシャーで押し潰されないよう、適切なレベルの仕事を与えることが重要です。
ストレッチアサインメントはタフアサインメントとよばれるケースも多く、社員育成のために導入する企業が増えています。
2. ストレッチアサインメントが注目される背景
ストレッチアサインメントを取り入れる企業は増加していますが、注目される背景としては以下の2点が挙げられます。
- 少子高齢化による人口減少と仕事の高度化
- グローバル化によるリーダー育成の必要性の高まり
ストレッチアサインメントをおこなう目的にもつながるので、ぜひご覧ください。
2-1. 少子高齢化による人口減少と仕事の高度化
ストレッチアサインメントが注目される背景にあるのが、少子高齢化による人口減少と仕事の高度化です。少子高齢化で労働人口が減少し、仕事内容の高度化が進むなかで、企業は質のよい人材を確保しなければいけません。
また企業が生き残るためには、新たに人材を確保するだけではなく、確保した人材の質をさらに高めていく必要性があります。
ストレッチアサインメントは、企業が求めるスキルや能力を持つ人材を増やすための効果的なマネジメント手法です。
2-2. グローバル化によるリーダー育成の必要性の高まり
グローバル化によるリーダー育成の必要性の高まりも、ストレッチアサインメントが注目される背景として挙げられます。海外市場へ参入する企業が増加傾向にあるなか、企業がグローバルに展開するためにはリーダーシップを発揮できる人材が必要であるためです。
海外市場に参入することで、同僚や取引先が外国人となるケースが増えていくでしょう。日本人同士はもちろん、日本人以外の人ともコミュニケーションをとり、かつリーダーシップを発揮しなければいけません。
ストレッチアサインメントは、リーダーシップを身に付けられる代表的な手法です。上手に取り入れることで、次世代リーダーを育成することが求められています。
3. ストレッチアサインメントの3つのメリット
ストレッチアサインメントをおこなうメリットは以下の3点です。
- スキル向上を図れる
- 自信と達成感を獲得させられる
- 責任感を持たせられる
ここでは、これらのメリットについて解説していきます。
3-1. スキル向上を図れる
ストレッチアサインメントの最大のメリットは、社員のビジネススキルの向上を図れることです。
高い能力が求められる立場に置かれることで、必然的にスキルアップしなければならない状況を作り出します。
そのため、課題解決力やリーダーシップ、チャレンジ精神の向上などが期待できるでしょう。個々の成長を積み重ねることで組織全体の成長へとつながり、企業として大きな成果を得られます。
ストレッチアサインメントは、人や企業を大きく成長させるために欠かせないマネジメントともいえるのです。
3-2. 自信と達成感を獲得させられる
ストレッチアサインメントを実施すると、社員に自信と達成感を獲得させられます。実力以上の困難な課題を達成することが、大きな成功体験となるためです。
自信と達成感を得る機会が増えることで自己肯定感が高まり、自主的に難易度の高い仕事や課題に取り組むようになるでしょう。自己肯定感の高い社員が多いほど、企業全体の生産性が高まる傾向にあります。
また、高い目標に挑戦することは、モチベーションを維持するために重要です。若手社員はとくに仕事に対する意欲が高い傾向にあるため、ストレッチアサインメントで経験したことが今後大きな糧となるでしょう。
3-3. 責任感を持たせられる
ストレッチアサインメントをおこなうことで、仕事に対する責任感を持たせられます。普段より上流の立場や裁量権の大きい立場に立つことで、全体像を把握できるようになり、自身の役割を意識しやすくなるためです。
責任感が強い人は向上心が高く、意欲的な傾向にあります。仕事の過程だけではなく結果にもこだわるため、成果を出しやすくなるでしょう。
4. ストレッチアサインメントの2つのデメリット
ストレッチアサインメントをおこなうデメリットは以下の2つです。
- モチベーション低下やメンタル不調のおそれがある
- 与える仕事の難易度を見極めるのが難しい
ここでは、これらのデメリットについて解説していきます。
4-1. モチベーション低下やメンタル不調のおそれがある
社員の能力に対して極端に高度な仕事を与えると、本人のモチベーション低下やメンタル不調を招くおそれがあります。
メンタル不調のまま業務を続けると症状がさらに悪化する可能性があるため、無理をさせることは禁物です。
対象となる社員の行動や言動には注意を払い、以前と比べて明らかに様子が異なるようであれば、管理者や人事担当者が声をかけるなどの心配りも必要になります。
4-2. 与える仕事の難易度を見極めるのが難しい
ストレッチアサインメントのデメリットとして、社員に与える課題や仕事の難易度を見極めることの困難さが挙げられます。難易度が高すぎて過度なストレスを与えると、場合によってはパワーハラスメントと判断される可能性もあります。
上司は必要に応じてフィードバックをおこない、悩みや質問にいつでも相談に乗ることができる環境を整えなければいけません。そのため、社員の能力を適切に判断できる上司の存在が必要不可欠です。
5. ストレッチアサインメントをおこなう際の2つのポイント
ストレッチアサインメントをおこなう際、大事なポイントが2つあります。
- ストレッチゾーンを適切に見極める
- 社員に対し事前に説明する
ストレッチアサインメントを成功に導くために、ぜひ実行してください。
5-1. ストレッチゾーンを適切に見極める
ストレッチアサインメントをおこなうにあたり、適切なストレッチゾーンを見極めることが大切です。
ストレッチアサインメントを実施する環境には、以下の3つのゾーンがあります。
コンフォートゾーン | 一切ストレスが無い領域 |
ストレッチゾーン | 不安やストレスを感じる領域 |
パニックゾーン | ストレスや不安が過多な領域 |
コンフォートゾーンは一切ストレスが無いのに対し、パニックゾーンはストレスや不安が過多な状態を指します。ストレッチゾーンはコンフォートゾーンとパニックゾーンの間にあり、不安やストレスを感じつつも人が最も成長できる領域です。
社員をストレッチゾーンに導くためには上司が部下の能力をしっかり把握し、与える仕事内容や時期を適切に判断しなければいけません。
日頃から部下とコミュニケーションを取り、勝手な思い込みで部下の能力や性格を判断しないようにしましょう。
5-2. 社員に対し事前に説明する
ストレッチアサインメントをおこなう際、社員に対して事前に説明をしてから始める必要があります。
具体的には、以下の点を明確にするようにしてください。
- ストレッチアサインメントをおこなう理由と目的
- ストレッチアサインメントを通じて期待する効果
- 本人の成長課題
- 仕事や課題を達成するための手段や方法
社員の理解が得られなければ、ストレッチアサインメントをスムーズに進めるのは困難です。社員から質問を受けた場合は適切な回答をし、十分に理解してもらったうえで取り組みましょう。
6. ストレッチアサインメントをおこなう際の3つの注意点
ストレッチアサインメントをおこなう際の注意点は以下の通りです。
- 課題を与える時期や難易度を適切に判断する
- 課題の途中で必要以上の手助けをしない
- 適切なフィードバックをおこなう
3つの注意点をチェックすることで、適切なストレッチアサインメントを実施できます。
6-1. 課題を与える時期や難易度を適切に判断する
ストレッチアサインメントでは、課題を与える時期や難易度を適切に判断しなければいけません。判断を誤ると、ストレッチアサインメントの十分な効果を得られないためです。
目標が低すぎると成長が見込めず、高すぎると過度のストレスでパニックゾーンに陥り、心身に悪影響を与える恐れがあります。ストレッチアサインメントは、与える仕事や課題が簡単すぎても難しすぎても成功しないため、上司の見極めが非常に重要です。
適切な見極めをおこなうために、普段から社員の働きぶりを観察し、結果だけではなく発言や行動も見るようにしましょう。
また、トラブルが発生したときはすぐに相談できる信頼関係を築き上げておくことも大切です。
6-2. 課題の途中で必要以上の手助けをしない
社員が与えられた課題をやり遂げようとしているとき、上司を含む周りの人が途中で必要以上の手助けをすることは避けましょう。困難な課題を自分の力でやり遂げなければ、ストレッチアサインメントによる効果が薄れるためです。
期限が迫っていたとしても、今のままでは失敗しそうであっても、辛抱強く見守ってあげてください。自分の力で困難な課題を無事達成できたとき、対象となる社員は大きな自信と満足感を感じられるでしょう。
6-3. 適切なフィードバックをおこなう
ストレッチアサインメントでは、部下の行動や判断に対し、適切なフィードバックをしましょう。フィードバックをすることで、反省や次回の改善につながるためです。
部下が成果を上げられた場合、良かった点はしっかり褒めることで自己肯定感を高めます。さらなるステップアップを視野に入れ、新たな課題点を伝えることが必要です。
思った成果を上げられなかった場合、批判ばかりだと自己肯定感を下げ、今後の成長にはつながりません。具体的な改善点など、次回の仕事に活かせるようなアドバイスをしましょう。
7. 適切なストレッチアサインメントで人材育成を図ろう
ストレッチアサインメントを取り入れることで社員の成長を促進できますが、誤ったやり方をすると逆効果になりかねません。特に、対象となる社員の上司には多くの能力が求められます。
部下の能力を正確に判断するには、日頃から十分なコミュニケ―ションを取ることが重要です。コミュニケーションが取れていないまま、ストレッチアサインメントを実施してしまうと、従業員の能力や適応性を的確に判断できず失敗してしまう可能性もあるので注意しましょう。
しかし、適切なストレッチアサインメントを実行できれば、人材育成の効率化につながるので、しっかりと事前準備をおこなって実施してみてください。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
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