タレントプールとは?人材採用でのメリットや作り方・活用事例を解説
更新日: 2024.10.1
公開日: 2024.2.29
OHSUGI
タレントプールとは、将来的に採用する可能性のある人材を蓄積するデータベースのことです。タレントプールを利用すれば、企業の都合で一度は不採用になった人材にも適切なタイミングで再アプローチできます。
少子高齢化に伴って人材獲得競争が激しくなるなか、タレントプールによる採用活動は有効な手段の一つです。
一方で「タレントプールを活用する主なメリットは?」「タレントプールの運用方法がわからない」と悩む担当者の方もいるでしょう。
本記事では、タレントプールのメリット・デメリットや運用方法をまとめました。タレントプールを運用する際のポイントや活用事例もあわせて紹介するので、ぜひ最後までご覧ください。
目次
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
1. タレントプール(人材プール)とは
タレントプールとは、企業が採用候補となる有望な人材の情報を蓄積し、システム的に構築したデータベースのことです。人材や才能を意味する「タレント」と、蓄えを意味する「プール」を組み合わせた言葉で、人材プールとよばれることもあります。
タレントプールを活用することで優秀な人材とつながりを持てるので、新たな人員確保が必要な場面でアプローチが可能です。
タレントプールの対象者候補は、採用活動やSNSのやり取りを通じて自社と関わりを持ったすべての人となります。具体的な例は以下の通りです。
- 内定を出したが辞退された人
- 自社とのマッチングは高いものの、タイミングが合わず不採用になった人
- 自社で以前に勤務経験がある人
- 自社の就職セミナーや就職イベントに参加したことがある人
- SNSなどで自社とやり取りがあった人
採用の可能性がある人材はできるだけ多くプールしておくと、今後の採用活動がスムーズにおこなえます。
2. タレントプールを導入するメリット
タレントプールのメリットは以下の3つです。
- 効率よく採用活動をおこなえる
- 採用活動にかかるコストを削減できる
- 採用の質が向上する
2-1. 効率よく採用活動をおこなえる
タレントプールを利用した場合、ゼロからの採用活動に比べて効率的に採用活動をおこなえます。人材の性格やスキル、経験値などをあらかじめ把握できているためです。通常の採用活動であれば、書面や複数回の面接を通じて人材のことを理解し、採用候補を絞り込まなければいけません。採用に至るまでのさまざまな工程を大幅に削減できます。また、予想外に発生した人員不足など迅速な人員確保が必要なときに、スムーズな採用にもつながるでしょう。
さらに、タレントプールの活用により、企業は潜在的な候補者との関係を維持しやすくなります。定期的にメルマガやイベントの案内を行うことで、候補者に対して自社の情報を提供し、興味関心を引き続き持たせることができます。これにより、長期的に見ても優秀な人材を確保しやすくなり、企業の成長を後押しする要因となります。また、候補者に自社の文化や価値観を印象づけることで、入社後のミスマッチを減少させることも期待できます。こうした継続的なコミュニケーションは、企業と候補者の信頼関係を築く上で非常に重要です。
2-2. 採用活動にかかるコストを削減できる
タレントプールは採用活動によるコストを削減できます。新たに求人広告を出したりセミナーを開催したりする必要がないためです。求人広告やセミナーの開催は大きな出費となるだけではなく、人事担当者の労力も必要となります。人事担当者の労力が軽減されることで、人件費の削減と生産性の向上につながるでしょう。
また、タレントプールに登録した人材への再アプローチが可能になるため、採用の質も向上します。これにより、過去に自社に興味を持っていた候補者に直接コンタクトを取ることで、即座にリソースを活用し、迅速な採用活動を展開できるのです。さらに、採用につながらなかった人材でも、将来的な候補者としての可能性があるため、こまめなコミュニケーションを通じて関係性を維持できます。このように、総じて採用活動の効率化が図られることが、タレントプールの大きなメリットとなります。
2-3. 採用の質が向上する
タレントプールを活用すると、採用の質が向上します。企業が置かれる状況やニーズに合わせた人材にピンポイントでアプローチできるためです。非常に優秀な人材であっても、予算などの事情でやむをえず不採用になる人も少なくありません。タレントプールであれば、新規事業立ち上げなど状況が変わった際に、一度は不採用にした人材に対しても再アプローチが可能です。また、採用後のミスマッチを減少する効果も期待できます。タレントプールによる中長期的な接触により、企業側と候補者側の相互理解が深まるためです。採用の質の向上やミスマッチ削減は、企業の安定的な成長や離職率低下につながります。
さらに、定期的なコミュニケーションを通じて候補者の状況や興味を把握できるため、企業は柔軟に人材戦略を調整できます。これにより、自社に最適なタイミングで必要な人材を確保することが可能になります。また、タレントプールの活用は、候補者との強固な関係構築にも寄与し、応募者のエンゲージメントを高めることで、応募意欲を維持する効果も期待できます。企業は自身のカルチャーや価値観を積極的に伝えることができ、入社前のミスマッチをさらに防ぐことができます。結果として、長期的な視点で見たときに、タレントプールは優秀な人材の確保だけでなく、企業全体の競争力を高めるための重要な戦略となるでしょう。
3. タレントプールを導入するデメリット
タレントプールのデメリットは以下の2つです。
- データベースの管理に時間と労力がかかる
- 継続的なコミュニケーションが求められる
3-1. データベースの管理に時間と労力がかかる
タレントプールを管理するためには、時間と労力が必要になります。タレントプールを中長期的におこなうことで蓄積する候補者の数が増え、データ入力や情報整理なども膨大な数となるためです。
候補者の情報に変更があった場合は即時に更新するなど、普段から定型的なリスト整理をおこないましょう。
3-2. 継続的なコミュニケーションが求められる
タレントプールを維持するためには、企業と候補者の継続的なコミュニケーションが必要になります。良好な関係を維持することで、企業に対する理解度を深められるためです。
ただし、候補となる人材が必ずしも採用となるわけではありません。コミュニケーションを取るために要した労力や時間が無駄になる可能性があることも理解しておきましょう。
4. タレントプールが注目されている4つの背景
タレントプールが注目されている背景は以下の2つです。
- 少子高齢化による労働人口の不足
- 働き方や雇用形態の多様化
- 転職を潜在的に考えている層にアプローチするため
- 従業員を人的資本を考えるようになりはじめた
4-1. 少子高齢化による労働人口の不足
タレントプールが注目されている背景として、少子高齢化による労働人口の不足が挙げられます。労働人口の不足で人材獲得が厳しくなるなか、多くの人材へアプローチできるタレントプールが有効なためです。
タレントプールは自社とマッチングする人材をプールしておく仕組みなので、状況に応じて効率的に採用活動を進められます。
厚生労働省が推計している日本の人口の推移は以下の通りです。
総人口 | 65歳以上 | 高齢化率 | |
2020年 | 12,615万人 | 3,603万人 | 28.6% |
2040年 | 11,284万人 | 3,928万人 | 34.8% |
2070年 | 8,700万人 | 3,367万人 | 38.7% |
2040年には日本の人口の約35%以上、2070年には39%以上が65歳以上になると推計されています。
さらに深刻化する人材確保を解消するため、タレントプールによる採用活動をおこなう企業は今後も増え続けるでしょう。
4-2. 働き方や雇用形態の多様化
働き方や雇用形態の多様化も、タレントプールが注目される背景の一つとして挙げられます。タレントプールは候補者と中長期的に接触ができるので、個々の価値観やニーズを汲み取りやすくなるためです。
近年はフリーランスや副業、テレワークなど、正社員以外の働き方を選択する人が増えています。自身の価値観ややりがいを求めて転職する人も多いため、従来の採用方法だけでは人材を確保することが難しくなるでしょう。
タレントプールを活用し、相手の置かれる状況や事情を尊重した中長期的なアプローチが求められます。
4-3. 転職を潜在的に考えている層にアプローチするため
タレントプールの導入は転職を潜在的に考えている層へのアプローチとしても機能します。総務省の発表によれば2023年7~9月期の転職希望者数は1,035万人と過去最多でした。この数字はあくまで転職者希望を表明している人の数です。潜在的に転職を考えている人を含めるとより多数の人数となるでしょう。タレントプールを導入することでこのような転職を潜在的に考えている層へのアプローチが可能です。
参考:総務省 | 直近の転職者及び転職等希望者の動向について
4-4. 従業員を人的資本を考えるようになりはじめた
従業員を人的資本として考えるようになりはじめたことも、タレントプールが注目されている要因です。人的資本とは従業員が持つ資質や能力を企業に付加価値を生み出す資本と捉える考え方です。タレントプールによって資本となる優秀な人材を確保することが企業には求められています。
5. タレントプールの作り方と活用手順
タレントプールの作り方と運用方法は以下の通りです。
- 人材の要件を定義する
- データベースを作成する
- コミュニケーションを図る
- 再アプローチをおこなう
5-1. 人材の要件を定義する
最初に、どのような人材が自社にとって必要なのか定義する必要があります。具体的な人材要件を定義しておくことで、採用活動をスムーズにおこなえるためです。プールする人材は、やみくもに確保しても意味がありません。プールする人材の基準を明確にし、高品質なタレントプールを作成しましょう。
さらに、ターゲット設計を行うことで、企業が求める人物像を明確にし、効率的な採用活動を実現するための準備が整います。また、定期的な見直しを行い、業界の動向や自社の戦略に合った人材要件に更新していくことも重要です。これにより、変化する市場に適応しながら、持続可能なタレントプールを育てることができるでしょう。
5-2. データベースを作成する
人材要件が定義出来たら、つぎはデータベースの作成です。データベースに入れる情報は、以下のようなものが考えられます。
- 氏名や住所などの基本情報
- 経歴(勤務していた企業や職種など)
- 保有資格やスキル
また、不採用になった理由や内定辞退の理由についてもデータベースに残しておくと、再アプローチの際に役立つでしょう。
さらに、候補者の志望動機や将来のキャリアプランといった情報も蓄積することで、企業と候補者とのマッチング精度が向上します。こうした情報を整理し、候補者に対する理解を深めることで、適切なタイミングでのアプローチがより効果的に行えるようになります。また、タレントプールを運用する際には、情報の定期的な更新が不可欠です。候補者の状況や関心が変わることがあるため、最新の情報を反映させておくことが重要です。このように、データベースの管理が整うことで、未来の採用活動において競争力を高め、より優秀な人材を確保するための基盤を築くことができます。
5-3. コミュニケーションを図る
データベースが完成したら、データベースに入れた人材と定期的なコミュニケーションを図ります。自社への理解度と関心度を高めるためです。コミュニケーションを取る方法は、候補者の現状を最も把握しやすい電話やメールをおすすめします。電話やメールが難しい場合は、SNSなどで情報を発信してコンタクトを取るのも良いでしょう。自社が開催するセミナーやイベントに招待すれば、企業の魅力をアピールできる絶好の機会になります。
さらに、候補者との継続的なコミュニケーションにおいては、彼らのニーズや業界のトレンドに関する情報を定期的に提供することも重要です。これにより、候補者の関心を引き続き維持し、信頼関係を構築することができます。また、蓄積した情報をもとに個別にカスタマイズしたコンタクトを行うことで、一層深い関係を築くことができ、自社とのマッチングを高めることにつながります。このような取り組みは、将来的な採用活動においても大きな利点となり、優れた人材の確保を可能にします。
5-4. 再アプローチをおこなう
新たな人材が必要になったら、データベースから要件を満たす人材を探し出し、再アプローチをおこないます。通常の採用活動よりさまざまな工程を省けるため、スムーズに採用活動を進められるでしょう。
また、タレントプールを活用することで、過去に自社に興味を示した候補者に対してもタイムリーに接触できるため、優秀な人材を即座に確保するチャンスが広がります。この継続的な関係性の構築により、候補者の企業に対する理解が深まり、相互にメリットのある関係を育むことができるのです。さらに、数回のやり取りを通じて、候補者の最新の業務状況や転職意向を把握しやすくなるため、より的確な提案を行うことが可能になります。
6. タレントプールを効果的に運用する際のポイント
タレントプールを運用する際のポイントは以下の2つです。
- 候補者とのつながりを保つ
- 候補者の転職に対する意欲を把握する
6-1. 候補者とのつながりを保つ
タレントプールを運用する際、候補者とは定期的にコンタクトを取り、つながりを保つようにしましょう。企業と候補者間でしっかりとつながりが保たれていれば、新たな人材を採用したいときにスムーズにコンタクトがとれます。また、採用率のアップも期待できるでしょう。
これに加えて、候補者との関係性を深めるためには、定期的に市場情報や業界のトレンドを提供することが効果的です。そうすることで候補者の企業に対する興味を維持し、信頼を築くことができるでしょう。さらに、候補者のニーズやキャリアプランについてヒアリングし、彼らの期待に応える提案を行うことが、長期的な関係構築に繋がります。このように、双方向の関係を持つことで、タレントプールの効果を最大限に引き出すことができるのです。
6-2. 候補者の転職に対する意欲を把握する
タレントプールを運用するうえで、候補者の転職意欲は必ず把握しておきましょう。転職を考えていない候補者にアプローチをかければ、人材確保につながらず、時間や労力が無駄になるためです。
転職意欲を把握するには、以下の行動をチェックしてみてください。
- メールやメルマガの開封率
- 発信したメッセージに対する返答
- 企業が開催するセミナーやイベントへの参加有無
企業が発信するメールやメッセージに対する反応が良ければ、転職意欲は高いと判断できるので、積極的にアプローチしてみましょう。
また、候補者が興味を持って参加したイベントやセミナーでの反応にも注目しましょう。具体的には、質疑応答の際に積極的に発言をする姿勢や、他の参加者とのネットワーキングの状況などです。これらの要素も転職意欲を示す指標となり得ます。候補者のニーズや期待に沿った情報を提供することで、関係性をさらに深め、候補者が転職を検討する際に自社を第一候補として考えてもらえるよう努めることが重要です。
6-3. 上質な情報を提供する
タレントプールを運用するためには上質な情報を提供することが大切です。タレントプールは候補者に対して定期的なコミュニケーションが必要です。しかし、定期的にコミュニケーションを取るだけではなく上質な情報を提供するように心がけましょう。
例えばメールマガジンの配信やイベント招待など、提供する情報に工夫を凝らすのがポイントです。これに加えて、業界の最新トレンドやキャリアアップに役立つ情報を伝えることで、候補者が自社に対する興味を保持しやすくなります。
また、候補者ごとのニーズを把握し、それに応じたコンテンツを提供することも、彼らとの関係構築において重要な役割を果たします。定期的にフィードバックを求め、提供する情報の質を継続的に改善していく姿勢も欠かせません。これにより、タレントプールがより効果的に機能し、将来的な採用活動において有利に働くことが期待されます。
7. タレントプールの活用事例
アメリカのある大手自動車メーカーは、タレントプールを導入していることで有名です。公式サイト内にタレントプールへ登録できるページが設定されているので、だれでも気軽に登録できます。転職・キャリアに役立つ外部のネットワークサービスのアカウントと連携でき、履歴書も直接アップロードが可能です。
採用活動を全面的に押し出すのでなく、企業に興味のある人たちが気軽に集められるような方法を取ることで、成功を収めています。
この取り組みにより、同社は特に仕事をする女性層の候補者を積極的に取り込むことに成功しています。女性のキャリアに関する独自のプログラムを設けることで、女性が働きやすい環境をアピールし、タレントプールでの登録数を増加させています。自社の多様性や包括性を強調することにより、優秀な女性人材の確保を図っているのです。
8. タレントプールの活用で優秀な人材を確保しよう
タレントプールを活用すると、通常の採用活動よりスムーズな人材確保が期待できます。
今後も少子高齢化が進むと、人材獲得競争がより一層激化するでしょう。優秀な人材を獲得するために、タレントプールの導入を検討してみてはいかがでしょうか。
人事評価制度は、健全な組織体制を作り上げるうえで必要不可欠なものです。
制度を適切に運用することで、従業員のモチベーションや生産性が向上するため、最終的には企業全体の成長にもつながります。
しかし、「しっかりとした人事評価制度を作りたいが、やり方が分からない…」という方もいらっしゃるでしょう。そのような企業のご担当者にご覧いただきたいのが、「人事評価の手引き」です。
本資料では、制度の種類や導入手順、注意点まで詳しくご紹介しています。
組織マネジメントに課題感をお持ちの方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
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