試用期間は雇用契約書に記載すべき?書き方のポイントを紹介
更新日: 2026.3.31 公開日: 2022.9.22 jinjer Blog 編集部

会社によっては、本採用の前に「試用期間」を設けることがあります。
試用期間であっても本採用と同じように給料は発生し、残業代も支払わなくてはいけません。本採用後の待遇など多少の違いはありますが、業務も労働条件もほとんど変わらないというのが一般的な試用期間です。
そのため、試用期間は雇用契約書に記載しなくてもよいと思っている担当者の方もいるのではないでしょうか。
ここでは、試用期間を雇用契約書に記載すべきか、また雇用契約書に記載をするときのポイントや注意点などについて解説します。
関連記事:雇用契約書とは?法的要件や雇用形態別に作成時の注意点を解説!
目次
「長年この方法でやってきたから大丈夫」と思っていても、気づかぬうちに法改正や判例の変更により、自社の雇用契約がリスクを抱えているケースがあります。
従業員との無用なトラブルを避けるためにも、一度立ち止まって自社の対応を見直しませんか?
◆貴社の対応は万全ですか?セルフチェックリスト
- □ 労働条件通知書の「絶対的明示事項」を全て記載できているか
- □ 有期契約社員への「無期転換申込機会」の明示を忘れていないか
- □ 解雇予告のルールや、解雇が制限されるケースを正しく理解しているか
- □ 口頭での約束など、後にトラブルの火種となりうる慣行はないか
一つでも不安な項目があれば、正しい手続きの参考になりますので、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 試用期間は雇用契約書に記載すべき?


試用期間を雇用契約書に記載するかどうかは、企業側が決めることができます。法律においても、記載を義務付けてはいません。
しかし、結論からいうと、義務でなくても雇用契約書には試用期間を記載するべきです。試用期間として勤務させた場合、従業員から「契約に書いていない」と言われる可能性があります。従業員が「試用期間がない」という認識であれば、トラブルになる可能性もあるのです。
雇用する際に、口頭で試用期間について説明をしているケースや、他の書類に試用期間について記載しているかもしれません。しかし、労働に関する内容は法的拘束力がある書類に記載しておくことが求められます。そのため、試用期間を設けて従業員を雇用するのであれば、雇用契約書に試用期間について記載をしておくのが望ましいのです。
なお、求人票については、職業安定法により試用期間の有無と内容の記載が義務付けられています。混同しないように注意しましょう。
1-1. 雇用契約書に記載をしなくてもいいケース
雇用契約書に記載をしなくてもいいケースというのは、「就業規則」に試用期間に関する項目がある場合です。
基本的に、試用期間は就業したタイミングから始まります。会社によっては、試用期間が始まるまでの間に就業規則を従業員に配布しているかもしれません。その就業規則に、試用期間について具体的な期間やルールなどが記載されていれば、雇用契約書に記載していなくても法的には問題ありません。
しかし、ここで注意しなければいけないのは、従業員に周知しておく必要があるという点です。従業員に周知していないにも関わらず、就業規則に記載があるという理由で試用期間を設けることはできません。
就業規則には会社の重要な情報が記載されている場合もあるため、就業前の従業員に公開するのは抵抗があるという方もいるでしょう。
就業規則を配布したくないという場合は、雇用契約書に試用期間について記載しておきましょう。試用期間中のルールを記載すればいいだけなので、それほど手間がかかることではありません。
記載する場合は、試用期間がいつまで続くのか、給料や手当の扱いはどうなるかなど、トラブルになりやすい点を明記しましょう。
2.雇用契約書の記載項目


雇用契約書に試用期間の規定について記載する際、記載項目は企業が決めることができます。しかし、ここで項目に漏れがあると、従業員に正確な労働条件を周知することができないので、記載するべき項目をチェックしておきましょう。
|
記載項目 |
内容 |
|
試用期間の長さ |
使用期間に関しては、明確な規定がないので企業が設定できます。ただし、あまりにも長すぎると従業員を不安にさせてしまうので注意しましょう。 |
|
雇用形態 |
雇用形態は、原則として本採用でも試用期間でも変わりません。どのような雇用形態であっても試用期間を設けられるので、正社員なのかパート・アルバイトなのか雇用形態をしっかり明記しましょう。 |
|
本採用の条件 |
「試用期間」は本採用をすることが前提ですが、中には本採用に適さない人材がいるのも事実です。このような場合、トラブルにならないように本採用の条件を明記しておくことが重要になります。 |
|
給与・待遇 |
本採用と試用期間で、給与や待遇に差をつける場合は、必ず「試用期間中の給与・待遇」を明記しておきましょう。ただし、給与の減額率には上限があるので、これに違反しないように設定してください。 |
|
社会保険 |
試用期間中であっても、社会保険加入要件を満たしている場合は、本人の意向に関係なく加入が必要です。しかし、このことを従業員が理解していないこともあるので、社会保険についても明記しておきましょう。 |
|
延長の有無 |
試用期間を延長する可能性がある場合は、雇用契約書に「有」と記載しておかなければなりません。また、延長の正当な理由も必要になるため、あらかじめ記載しておきましょう。 記載していない場合は、労働者の合意や合理的理由がないと延長できないので注意してください。 |
3. 試用期間を雇用契約書に記載するときのポイント


試用期間を雇用契約書に記載する際は、従業員とトラブルにならないようにするのがポイントです。雇用契約書とは契約の内容を書面で残すことで、お互いの認識の食い違いを防ぐために存在しています。つまり、試用期間が設けられているのならば、その内容について雇用契約書を見ればわかるようにしておかなくてはいけません。
雇用契約書に試用期間についての内容が記載されている場合でも、具体的な期間や給料については口頭で説明をしているという会社も存在します。しかし、それでは従業員との意見の食い違いが起こった際に、内容の根拠を説明することができません。
ここでは、記載するときのポイントを紹介します。
3-1. 本採用との給与や待遇の違いを明記する
試用期間中、本採用との給与や待遇に違いがある場合は、必ず明記しましょう。
基本的に、試用期間であっても雇用契約が結ばれるので大きな違いはないかもしれませんが、給与の減給や賞与がないという場合は明記しなければなりません。
他にも、本採用後に配置転換や日勤から夜勤など勤務時間の変更がある場合も、雇用契約書に明記しておくことで「聞いてない」などのトラブルを防ぐことができます。
3-2. 試用期間は適切に設定する
試用期間に関して、法的な決まりはないので、企業側が自由に決められます。しかし、あまりにも長いと従業員のモチベーションを削いでしまう可能性があるため、適切に設定しましょう。
業種によって異なるものの、3~6ヵ月を試用期間として設定する企業が多いようです。
ただし、業務が複雑だったりスキルが必要だったりする場合は、試用期間が長くなってしまうこともあるかもしれません。このような場合は、長期間になる理由を明記することで、従業員の納得が得やすくなるでしょう。
3-3. 延長の有無や本採用になる条件を明記する
試用期間を延長する可能性がある場合は、延長の有無を記載するだけでなく、延長する理由も提示しましょう。いつまでも「試用期間」では従業員の生活が安定しない上、不満の引き金になりかねません。誰がみても納得のいく延長理由を明記することが大切です。
また、本採用の条件も明記しておきましょう。試用期間中は、基本的に「解約権留保付労働契約」を締結します。
そのため、本採用に適さないと判断した場合は、企業は解約権を行使できます。しかし、この契約について理解していない従業員も多いので、スキルや勤務態度など本採用になる条件を記載しておくことも重要です。
4. 試用期間を雇用契約書に記載するときの注意点


試用期間を雇用契約書に記載する際は、試用期間中のルールについてわかるようにしておかなくてはいけません。しかし、試用期間が終わった後に、大きく業務形態が変わるような場合はそれについても明記しておくのが望ましいです。
記載していないと、従業員が納得していない状態で勤務形態や配属先が変わることになります。
ここでは、試用期間を雇用契約書に記載する際の項目の注意点を解説していきます。
4-1. 試用期間後に勤務形態に変更がある場合
試用期間後に勤務形態に変更がある場合は、必ず明記しましょう。
企業によっては、試用期間中は日勤として勤務をおこなうが、試用期間が終わったら三交代制度が始まるといった勤務形態もあるでしょう。その場合は、試用期間についてだけ記載するのではなく、終わったらどんな流れで業務が進んでいくのかについても記載しておいてください。
4-2. 試用期間後に配属先を決定する場合
試用期間中に適正を見て、配属先を決定するという会社もあるでしょう。その場合は、配置変更が試用期間後に起こる可能性があることを明記しておくのが望ましいです。
これらは絶対に記載しないといけないという訳ではありません。しかし、記載をしておいた方が従業員に対して誠実です。
試用期間の項目に関わらず、雇用契約書はそれを見ただけで従業員がどのような雇用内容なのか、どのようにして配属されるのかなどがわかるようにしておきましょう。
さらに、2024年4月より雇用契約の際に、明示すべき労働条件の内容が改正されています。正しい雇入れをおこなうためにも、改正内容は正しく理解しておく必要があるでしょう。 当サイトでは、従業員の雇入れ手続きのポイントから、関連する最新の法改正の内容までを解説したガイドブックを無料配布しています。
法律に則って雇用契約を結びたい人事労務担当の方は、ぜひこちらからダウンロードの上参考にしてください。
4-3. 試用期間中の給与を減額する場合
特に給料の減額が発生する場合は、しっかりと記載をしておきましょう。ただし、試用期間中に給与を減額できる上限が法律によって決められているので、それ以上の減額がないようにしてください。
ただし、給与を減額する場合は最低賃金を下回らないように注意してください。最低賃金の減額特例(※)を受ける場合でも、所轄労働基準監督署長の許可が必要であり、減額率や期間には厳格な審査があります。
減額についての記載がないと、従業員から「雇用契約書の通りに給料が支払われていない」とトラブルに発展してしまいます。万が一、裁判にまで発展した場合は、雇用契約書に減額について記載がないため会社側に責任があるとされる可能性が高くなるので注意しましょう。
減額だけでなく、試用期間と本採用後で何か違いがある場合は、全て記載しておくというのが雇用契約書においては重要になります。「細かすぎる」と感じる場合があるかもしれませんが、記載することでトラブルのリスクを避けられるので、可能な限り詳細に記載してください。
5. 試用期間を雇用契約書に記載しないリスク


試用期間を設けていても、雇用契約書にその内容を記載していなければ、人事が想定していた運用や判断が認められないことがあります。特に本採用の可否や待遇の違いを巡っては、契約内容が曖昧であること自体が企業側のリスクと評価されやすくなるので注意が必要です。
ここでは、試用期間を雇用契約書に明記しなかった場合のリスクについて解説します。
5-1. 採用時の説明内容が証明できずトラブルに発展しやすい
雇用契約書に試用期間の記載がない場合、企業は最初から本採用を前提とした雇用契約を締結していたと解釈されやすくなります。その結果、試用期間を理由に本採用を見送ったとしても、実質的には解雇と同様の扱いを受ける可能性があります。
試用期間は「解約権留保付雇用契約」として一定の判断幅が認められますが、その前提となるのは契約内容の明示です。
記載がない状態では、人事の判断が正当であっても、採用時の説明内容が証明できずトラブルに発展するリスクがあるので注意しましょう。
5-2. 試用期間中の給与・待遇差を正当化できなくなる
試用期間中に給与を低く設定したり、一部手当を支給しなかったりする場合でも、その内容を雇用契約書に明記していなければ、労働条件の相違を正当化することが難しくなります。
書面での合意が確認できない場合、労働者から本採用時と同条件であるべきだと主張される可能性は否めません。その結果、未払い賃金の請求や労使トラブルに発展するリスクも高まります。
試用期間中の待遇差は運用だけで済ませず、契約上の根拠を持たせることが重要です。
5-3. 試用期間の延長や条件変更の根拠が弱くなる
採用時に試用期間について十分説明していたとしても、その内容が雇用契約書に反映されていなければ、後から証明することは困難です。
労務トラブルでは、口頭説明よりも書面の内容が重視されるため、人事の説明が事実であっても評価されないケースがあります。説明したつもりで運用を進めた結果、認識の違いが表面化し、信頼関係の悪化や紛争につながることも少なくありません。
そのため、説明内容と契約書を一致させておくことが必須になるのです。
5-4. 試用期間を理由とした本採用拒否が認められにくくなる
試用期間の延長や、本採用時の条件変更をおこなう場合、その前提となるルールが雇用契約書に記載されていないと、人事の判断が後付けと受け取られやすくなります。特に延長については、労働者の同意や合理的理由が求められるため、契約上の根拠がない状態では正当性を主張しにくくなります。
その結果、試用期間を理由とした本採用拒否が認められず、紛争に発展する可能性があることを把握しておきましょう。このリスクを回避するには、契約段階で想定される運用を見直ておくことが重要です。
6. 「試用期間」で起こるトラブルとは


試用期間を設けていても、トラブルが発生した際に常に問題となるのは制度そのものではなく、人事の対応内容です。説明の仕方や判断のプロセスが不十分である場合、企業側の主張が認められにくくなり、結果として紛争に発展するケースも少なくありません。
ここでは、「試用期間」で起こるトラブルを解説します。
6-1. 説明内容と雇用契約書の記載が一致していない場合
試用期間に関するトラブルで多いのが、採用時の説明内容と雇用契約書の記載が一致していないケースです。
口頭では「試用期間中は本採用と条件が異なる」と説明していても、雇用契約書に具体的な記載がなければ、労務上は書面の内容が優先されます。その結果、給与や待遇の差、試用期間満了後の判断について、労働者側の主張が通りやすくなります。
説明内容と契約書の記載に齟齬がある状態は、人事の説明責任が不十分と評価されることが多いため、事前の整合性確認が不可欠です。
6-2. 判断理由を記録として残していなかった場合
試用期間満了時に本採用を見送る、または条件を変更する判断をおこなう場合、その理由を客観的な記録として残していないこともトラブル要因となります。
評価内容や指導の経過が記録されていないと、判断が恣意的であると受け取られやすく、人事の判断自体が否定される可能性があります。
試用期間は解約権留保付の雇用契約と解釈されるため、一定の合理性と相当性が必要です。その根拠を示せない状態では、人事の対応が不適切と評価されやすく、紛争時に企業側が不利な立場に置かれるので判断理由の記録は必ずのこしておきましょう。
7. 試用期間は雇用契約書に明記してトラブルを回避しよう


試用期間を、雇用契約書に記載しなくてはいけないという義務はありません。しかし、就業規則を周知していない限りは、雇用契約書への記載なしで試用期間を実施することはできません。
そのため、試用期間を設けたいと考えているのならば、雇用契約書にその内容を記載しておく必要があります。雇用契約書は、あくまでも労働者とのトラブルを防ぐためのものです。
労働者から「想像しているよりも試用期間が長かった」「試用期間でも手当の支給があると思っていた」「使用期間中に給料の減額があるとは知らなかった」などと言われることがないようにしましょう。
また、雇用契約書には、試用期間以外にもトラブルを防ぐために詳細に記載をしなくてはならない箇所はたくさんあります。雇用契約の内容に間違いがあると、それだけで雇用後の紛争に発展しかねません。
ミスなく作成をするためには、人事の労働環境を整える必要があります。そのためにおすすめなのは管理システムの導入です。管理システムを導入すれば、労務管理を効率よくおこなえるので、業務負担が軽減され書類作成のミスも回避できます。
人事の労働環境についてお悩みの方は、ぜひ管理システムの導入を検討してみてください。



「長年この方法でやってきたから大丈夫」と思っていても、気づかぬうちに法改正や判例の変更により、自社の雇用契約がリスクを抱えているケースがあります。
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