休職とは?休職中の賃金や税金の取扱い、種類や各種手当の申請方法を解説
更新日: 2025.7.11 公開日: 2024.10.24 jinjer Blog 編集部

「従業員の休職対応に悩んでいる」
「休職中の手続きや手当を知りたい」
「復職までの流れを把握して、適切な対応をおこないたい」
上記のように感じている労務担当や経理担当の方も多いのではないでしょうか。
従業員が休職する際には、手続きや手当の申請、そして復職まで丁寧なサポートが求められます。
本記事では、休職制度の基本と各種手当、そして復職までの流れについて解説します。
休職者をサポートする立場にある方は、ぜひご一読ください。
目次
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勤怠、給与、評価…それぞれのシステムに散在する従業員データを一つに集約し、「戦略人事」に活用する企業が増えています。
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1. 休職とは


休職とは、職場に戻ることを前提に、従業員が一定期間業務を離れる状態を指します。
休職理由は、健康上の理由や家庭の事情などさまざまです。心身の健康を回復したい、家庭の問題に対処したいなど、一時的に業務を離れて問題を解決する時間を得るために、休職制度は存在しています。
例えば、病気やけがで長期間働けない場合、傷病手当金を受けながら休職が可能です。家庭の事情や家族の介護が必要な場合にも、休職制度を活用して一時的に業務を離れられます。
休職は、従業員がそれぞれの事情に対応しながらも、職場に復帰するための重要な制度です。
1-1. 休業との違い
休業は、企業側の都合によって従業員が一時的に業務を停止する状態です。例えば、工場の生産ラインが止まった場合や、経営上の理由で業務が停止される場合が該当します。休業中の従業員は給与の支払いが停止されることが多いですが、労働基準法に基づき、企業は休業手当を支払う義務が発生する場合もあります。休業は、企業が業務停止を決定した場合に適用されるため、従業員の健康状態や個人的な事情に基づくものではありません。
1-2. 欠勤との違い
欠勤は、従業員が個人的な事情で一時的に業務を休む状態を指します。例えば、急な体調不良や家庭の事情などが理由で、数日間の欠勤をすることが該当します。欠勤の場合、通常は給与が減額されることが多いですが、企業によっては欠勤理由によって有給休暇を適用することもあります。欠勤は基本的に短期的なものであり、長期にわたる場合には休職に該当します。
1-3. 休暇との違い
休暇は、従業員が自己の意思で取得するもので、業務の負担が少ない期間に利用されます。例えば、有給休暇や夏季休暇、年末年始休暇などが該当します。休暇は、通常、給与が支払われることが前提で、企業が予め定めた期間や従業員の希望に応じて取ることができます。休職とは異なり、休暇中は従業員の状態に応じた健康面での配慮や業務からの解放が目的ではなく、単に休息を取るための時間として設けられています。
2. 休職の種類


休職は従業員が業務を離れる理由に応じて以下のように分かれます。
- 私傷病休職(傷病休職)
- 自己都合休職
- 事故欠勤休職
- 留学休職
- 公職就任休職
- 起訴休職
- 組合専従休職
- 出向休職
2-1. 私傷病休職(傷病休職)
私傷病休職とは、業務や通勤以外の原因で発生した病気やケガを理由に、従業員が一定期間仕事を離れるための休職です。
労災や業務上のケガとは異なり、プライベートな場面で発生した健康上の問題に対応するために申請します。
例えば、従業員が休日の登山中にケガを負って長期入院が必要となった場合や、家庭内のストレスからうつ病を発症し、治療と休養を要する場合などが該当します。
従業員は私傷病休職を利用して治療に専念し、復職を目指すための時間を得ることが可能です。
私傷病休職には、企業ごとに休職期間や給与支払いのルールが異なります。企業によっては、休職期間中に給与が一部支給される場合もあれば、完全に支給されない場合もあります。また、休職期間が終了した後、復職する際には医師の診断書や復職可能であることを証明する書類が必要となることが一般的です。
2-2. 自己都合休職
自己都合休職は、従業員が個人的な理由で業務を一時的に休むことを指します。多くの場合、健康問題や家族の事情などが理由です。この場合、従業員は一定期間業務を離れますが、雇用契約は維持されます。給与の支払いについては企業の方針に依存し、通常は無給となることが一般的です。自己都合休職には、法的な規定がなく、企業側が承認することで成立します。
2-3. 事故欠勤休職
事故欠勤休職は、従業員が自己都合によって一時的に業務を休むことを指します。事故という言葉に反して、事故欠勤は交通事故や業務外の病気によるものではなく、何らかの容疑にかけられ逮捕・勾留された場合に該当するのが一般的です。このため、事故欠勤は法的な問題が絡む場合に適用される休職事由です。
例えば、従業員が犯罪容疑で逮捕され、その後勾留されるといった事態が発生した場合、この期間は事故欠勤として取り扱われます。この場合、従業員は業務を休むことになりますが、企業はその従業員が復職するかどうか、また復職までの対応を慎重に検討する必要があります。
実際の事故で欠勤となる場合は、勤務中の事故であれば労災として扱われ、企業側は労災保険の適用を受けます。個人の時間に起きた事故であれば、傷病による休職として、従業員は傷病手当金を受け取ることができます。
2-4. 留学休職
留学休職は、従業員が自己啓発や専門知識の向上を目的として留学するために業務を休む制度です。この場合、企業との契約が維持されるものの、給与の支払いは休職期間中に行われないことが一般的です。従業員が留学を通じて得た知識や経験は、企業にとっても価値のあるものと見なされるため、企業によっては一定期間の休職を認める可能性があります。
2-5. 公職就任休職
公職就任休職は、従業員が選挙に当選した場合や公的職務に就任した際に適用される休職制度です。例えば、地方議員に当選し、一時的な休職では対応しきれない場合、従業員の職務復帰を前提とした契約が結ばれます。
2-6. 起訴休職
起訴休職は、従業員が犯罪で起訴された場合に適用される休職です。従業員の職種や立場によっては起訴されたことで、対外的な信頼が低下する可能性があります。そのため、企業は刑事裁判の確定まで一時的に労働者を起訴休職として休職させます。
2-7. 組合専従休職
組合専従休職は、労働組合の活動に従事するために休職する制度です。組合専従休職は、労働組合との契約に基づいて行われることが多く、その期間中は組合活動に専念することが求められます。復職後には、従業員の業務内容に変更がないのが一般的です。
2-8. 出向休職
出向休職は、従業員が他の会社に出向することにより業務を休むことを休職です。出向した場合、従業員は自社ではなく、出向先の企業で業務を行います。出向期間中の給与や福利厚生については、出向元企業と出向先企業の契約に基づきます。出向が終了すると、従業員は元の職場に復帰することになります。
3. 休職期間中の給与や社会保険料の扱い


自社の従業員が休職した際に備えて、給与や社会保険料の取扱いについて把握しておきましょう。
ここでは、休職期間中の給与や賞与(ボーナス)、社会保険料、税金の取扱いについて解説します。
3-1. 給与や賞与(ボーナス)
休職期間中の給与の支払いについては、企業ごとの就業規則や契約に基づき異なります。一般的に、私傷病での休職期間中に給与が支払われないことが多いですが、短期間の休職であれば給与が支払われる場合もあるため、自社の就業規則を確認して対象の従業員に伝えましょう。
賞与(ボーナス)と同様に休職中の従業員へは支払われないのが一般的です。しかし、就業規則に記載されたボーナスの支給基準に合致している場合、支払いが発生する可能性もあります。
3-2. 社会保険料
社会保険料のなかでも、健康保険料と介護保険料、厚生年金保険料は給与が発生していなくとも支払い義務があります。一方、雇用保険と労災保険は給与額に応じて納付額が決まるため、給与を支払っていないのであれば発生しません。
3-3. 税金
給与に対してかかる税金は所得税と住民税に大きく分けられます。このうち、所得税は給与から源泉徴収されるため、休職中で給与を支払っていないのであれば発生しません。
一方、住民税は前年度の収入によって納税額が決まるため、休職中に給与の支払いがなくとも、従業員は納税の義務があります。
4. 休職・休業中に受給できる手当


休職、休業中に従業員が受け取れる手当金は次のとおりです。
- 健康保険の傷病手当金
- 労災保険の休業補償等給付
- 健康保険の出産手当金
- 雇用保険の育児休業給付金
- 雇用保険の介護休業給付金
- 企業独自の休職手当
休職や休業を控えている従業員に説明できるようにしておきましょう。
4-1. 健康保険の傷病手当金
傷病手当金とは、業務外の病気やケガで働けなくなり、会社から十分な報酬が受けられない場合に、健康保険から支給される生活保障制度です。
傷病手当金は、以下の条件を満たすことで支給されます。
| 条件 | 説明 |
| 業務外の病気やケガであること | 業務上の事故やケガは労災保険が適用されるため、傷病手当金の対象外 |
| 仕事ができない状態であること | 病気やケガにより医師が「就業不可」と診断した場合に限り支給される |
| 連続して3日間の待機期間があること | 病気やケガで仕事を3日以上連続して休んだ場合、その4日目以降から支給される(待機期間は土日や祝日、有給休暇も含む) |
| 給与の支払いがないこと | 休業中の給与が支払われている場合は、傷病手当金は支給されない。ただし、給与が傷病手当金より少ない場合、その差額が支給される |
傷病手当金の1日あたりの支給額は、過去12カ月間の平均給与の2/3で計算され、最大1年6ヵ月間支給されます。
4-2. 労災保険の休業補償等給付
労災保険の休業補償給付とは、従業員が業務上での怪我や病気により休業した場合に、労災保険から支給される給付金です。休業開始から4日目以降に、給付基礎日額の60%に相当する額が支給され、さらに特別支給金として、給付基礎日額の20%が別途支給されます。つまり、給付基礎日額の80%が支給されることとなります。
4-3. 健康保険の出産手当金
健康保険の出産手当金は、出産のために仕事を休む被保険者に対し、出産予定日以前42日、多胎妊娠の場合は98日から出産後56日までの期間に支給される手当です。支給額は、出産手当金の支給開始日以前の継続した12か月間の標準報酬月額を基に計算され、1日あたりの支給額はその標準報酬月額の3分の2相当です。
4-4. 雇用保険の育児休業給付金
雇用保険の育児休業給付金は、育児休業を取得した被保険者に支給される手当です。支給額は、育児休業開始から180日目までは休業開始前賃金の67%、その後は50%となります。上限額や下限額は、支給率に応じて異なり、例えば、上限額は休業開始前賃金月額の80%を超えないよう調整されます。
4-5. 雇用保険の介護休業給付金
雇用保険の介護休業給付金は、家族の介護を理由に休業した被保険者に支給される手当です。支給額は休業開始前賃金の67%が保証されます。
介護休業は条件を満たすことで最大93日を、最大3回までの分割して取得できる休業です。
4-6. 企業独自の休職手当
企業によっては福利厚生の一環として休職手当や補償金制度を導入しています。自社が独自の手当を用意しているのであれば、休職する従業員が支払いに該当するのか確認しましょう。
しかし、独自の手当を導入するかどうかは任意のため、導入していない企業もあります。まずは自社が独自の休職手当を導入しているのかの確認が必要です。
5. 休職までの流れと必要な手続き


病気や事故、育児、介護などによって従業員が休職する場合、企業側は休職の申請を受け付けます。
まず、従業員から休職の申し出があった場合、企業はその理由を確認し、必要に応じて医師の診断書や証明書を求める必要があります。例えば、病気や怪我による場合は、医師の診断書が必要です。また、育児や介護を理由に休職する場合、適用される法律や社内規定に基づいた手続きが必要です。
企業は、従業員が提出した書類を基に、休職を認めるかどうかを判断します。休職期間の設定については、企業の就業規則や労働契約書に基づいて決定され、必要に応じて労働基準監督署への届出をおこなうことが求められます。
6. 休職から復職までの流れと必要な手続き


休職後、従業員が復職を希望する場合も、一定の手続きが必要です。まず、従業員が復職を希望する場合には、本人から復職申請を受け付けるのが一般的です。復職からの復職願いに対して企業側はその内容を確認した後に復職を許可するかどうかを判断します。
復職にあたって、必要書類としては、医師の診断書や健康状態を証明する書類が必要となることがあります。特に、病気や事故による休職から復職する場合には、医師の診断書を提出することで、従業員が復職に適した健康状態であることを確認可能です。
復職の際、企業は従業員に対して復職面談を実施することが推奨されます。復職面談では、従業員の体調や仕事の再開に向けた調整事項を確認し、必要に応じて職務内容の変更や勤務時間の調整を行うことがあります。また、復職後のサポート体制として、必要に応じて柔軟な勤務形態を提供することも考慮されます。
7. 従業員が休職を希望した場合の対応


従業員が休職をした場合は次のような対応を心がけましょう。
- 定期的に連絡を取る
- 復職に向けた相談をする
- 休職期間や退職の調整
7-1. 定期的に連絡を取る
休職中の従業員との連絡は、孤立感を防ぎ、復職への意欲を維持するために重要です。月に1~2回程度の頻度で、体調や治療の進捗、生活リズムなどについて確認しましょう。連絡手段は、従業員の負担にならないよう、メールや電話など柔軟に対応し、業務に関する話題は避けるのが一般的です。
7-2. 復職に向けた相談をする
復職を希望する従業員には、主治医の診断書や産業医の意見書を基に、復職面談を実施します。面談では、従業員の体調や業務遂行能力、職場環境への適応状況などを総合的に判断し、復職の可否を決定しましょう。また、必要に応じて、業務内容の調整や勤務時間の短縮など、柔軟な対応が求められます。
7-3. 休職期間や退職の調整
休職期間が満了しても復職が困難な場合、就業規則に基づき、退職や解雇の手続きを検討する必要があります。ただし、業務上の疾病による休職の場合、療養期間中やその後30日間に退職や解雇を促すことは、労働基準法違反となるため注意しましょう 。また、退職勧奨を行う際は、従業員の意思を尊重し、強要と受け取られないよう配慮することが重要です 。
8. 従業員の休職をサポートできる環境を整えよう


休職は、従業員にとって心身の健康や家庭の事情に対処するための大切な制度です。
休職中の従業員に対しては給与や賞与が支払われないのが一般的なものの、企業の規程によって異なるため、自社の状況を確認しましょう。給与の支払いが発生していないため、所得税は発生しません。一方、健康保険料と介護保険料、厚生年金保険料、住民税の支払い義務はあるため、休職する従業員が混同しないように案内しておきましょう。
休職制度や手当についてしっかりと理解し、従業員一人ひとりの状況に応じた柔軟な対応をおこなうことが、企業の健全な運営につながります。
休職者が円滑に復職し、再び業務に貢献できるよう、サポート体制を整えましょう。



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