年末調整における年収と所得の違いは?控除や計算方法も解説
年末調整の時期になるとよく耳にするのが、年収や所得といった言葉です。年末調整の計算では非常に重要な要素となりますが、この両者の違いがイマイチ分からないという方も少なくないでしょう。
そこで本記事では、年末調整における年収と所得の違い、さらに控除や計算方法についても解説します。
年末調整は、従業員の家族構成やライフステージ、副業の有無、控除対象となる保険類への加入状況など、人によって複雑な分岐や異なる計算方法のルールがあるため、とても複雑な業務です。
給与計算を担当する方にとって、計算結果を統合する一年の集大成とも言える業務ですが、
「結婚・離婚・定年・退職・死亡など、様々なケース別の年末調整に対応する際の注意点が知りたい」
「障害者や勤労学生、共働き、遺族年金がある場合など家族構成に関する控除のポイントを押さえておきたい」
「記載ミスや、申告内容・扶養の変更、税務署からやり直し通知を受けた際などの対応方法が知りたい」
このようなイレギュラーケースの対応について不安を抱えている担当者の方に向けて、当サイトでは「Q&A形式でわかる年末調整と源泉徴収」という資料を無料配布しています。
資料では、一問一答形式でケース別の具体的な年末調整の対応方法を解説していますので、すぐに使える年末調整のガイドブックが欲しいという方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 年末調整における年収とは?
年末調整をおこなう上で、年収と所得の違いを押さえておくことは重要です。両者の意味を取り違えてしまうと、年末調整時に計算ミスをする恐れがあります。ここでは、混同しやすい年収と所得の違い、さらに年収の確認方法についてもご紹介します。
1-1. 年収と所得との違い
年収とは、1月1日~12月31日までの1年間に得た収入のことを指します。会社員の場合は、社会保険料や源泉所得税、住民税などが差し引かれる前の給与の総額が年収です。
一方、所得は年収から収入を得るためにかかった必要経費を引いた額を指します。会社員の場合、この必要経費に該当するのが給与所得控除です。給与所得控除は年収に応じて額が決められており、国税庁のホームページで確認することができます。
このほかにも、総支給額や手取り額といった言葉もよく耳にしますが、総支給額は年収と同じ意味です。また、手取り額は、社会保険料や各種税金が引かれた後の額を指します。
1-2. 年収の確認方法
ご自身の年収がいくらか分からないという方は、「源泉徴収票」で確認することができます。
源泉徴収票とは、その年に会社から支払われた給与や賞与などの総額や、収めた所得税の金額などが記載されている用紙のことです。この源泉徴収票を受け取れるのは、年末調整の計算が完了した際と退職時の2つです。
なお、源泉徴収票はいくつかの項目に分かれており、年収に関連することは以下の4つから確認できます。
- 支払金額
- 給与所得控除後の金額
- 所得控除の額の合計額
- 源泉徴収税額
一年間に会社から受け取った金額の合計は「支払金額」に記載されています。基本給やボーナスはもちろんのこと、各種手当などのすべてが含まれていることから「支払金額」は一般的な年収を示しています。また、「給与所得控除後の金額」は、先に説明した所得に該当します。
2. 年末調整で年収から所得を計算する方法
年末調整で所得税の計算をおこなうには、年収から給与所得だけでなく課税所得についても求める必要があります。ここでは、給与所得と課税所得それぞれの計算方法について解説します。
2-1. 年収から給与所得控除を差し引く
まずは、年収から給与所得を求める計算方法をみていきましょう。給与所得控除額は収入の総額によって異なり、次の計算式でで算出することができます。
給与所得額=年間収入額-給与所得控除額
なお、年末調整に記入する年収は、書類提出段階では受け取っていない12月の給与も含まれるため、見込み額で記入します。
なお、令和5年分以降の給与所得控除は下記のとおりです。
給与収入金額 | 給与所得控除額 |
162万5,000円以下 | 55万円 |
162万5,001円~180万円 | 年収×40%-10万円 |
180万1円~360万円 | 年収×30%+8万円 |
360万1円~660万円 | 年収×20%+44万円 |
660万1円~850万円 | 年収×10%+110万円 |
850万1円以上 | 195万円 |
関連記事:給与所得控除とは?間違いやすい他の控除との違いや計算方法をわかりやすく解説
2-2. 給与所得額から所得控除を差し引く
年末調整では、納税者の生活事情に応じて一定の金額を控除することができます。それが、所得控除です。従業員が提出した「控除申告書」をもとに、給与所得額から所得控除を引いて課税所得を計算します。計算式は次のとおりです。
課税所得額=給与所得額-所得控除額
年末調整で差し引かれる所得控除の種類は下記をご参考ください。
- 基礎控除
- 配偶者控除
- 配偶者特別控除
- 扶養控除
- 雑損控除
- 社会保険料控除
- 生命保険料控除
- 地震保険料控除
- 寡婦・寡夫控除
- 勤労学生控除
- 小規模企業共済等掛金控除
3. 年末調整の対象となる年収は?
年末調整は年収によっては対象とならない人もいます。1年の主たる給与の収入の合計が2,000万円を超える従業員は、年末調整の対象となりません。また、年収以外にも次のような従業員も年末調整の対象外です。
- 災害減免法の規定により、その年の給与に対する所得税および復興特別所得税の源泉徴収について徴収猶予や還付を受けている
- 給与所得者の扶養控除等(異動)申告書を提出していない
- その年の12月31日に会社に在籍しておらず退職している
3-1. 年収に含めるもの・含めないもの
年末調整で年収に含めるものは賃金や給与以外にも、残業手当や休日出勤手当、職務手当、家族(扶養)手当、住宅手当などです。一方、次のようなものは課税対象とはなりません。
- 通勤手当のうち、一定金額以下のもの
- 転勤や出張などのための旅費のうち、通常必要と認められるもの
- 宿直や日直の手当のうち、一定金額以下のもの
年末調整の計算で年収が算出できたら、その後は給与所得控除などの各種控除を差し引くなどして最終的な年末調整に必要な年調年税額を算出します。
人事担当者様の中には、この計算方法や控除の種類があいまいだという方がいらっしゃるのではないでしょうか。
当サイトでは、そのような方に向けて、年末調整で年収から差し引く控除の種類・金額、年末調整の計算の手順を解説した資料を無料でお配りしています。年末調整の計算に不安がある方は、こちらから「年末調整ガイドブック」をダウンロードして、参照しながら計算をしてみてください。
4. 特定支出控除が認められるケースもある
業務にかかった支払いが多い場合、特定支出控除として控除が認められるケースがあります。特別支出控除が認められる支出は次のとおりです。
- 通勤費(交通費)
- 転居費
- 研修費
- 資格取得費
- 帰宅旅費
- 勤務必要経費
なお通勤費は会社が通勤手当を支給している場合、特定支出控除は認められません。
従業員は会社に対して、特定支出の証明依頼書を提出します。経理担当者は業務との関連性を確認する必要があります。申請に問題がなければ、証明欄に記入と捺印をしましょう。
5. 2020年に変更された年末調整の新たな項目
最後に、2020年に変更された年末調整の新たな項目を解説していきます。
2020年の年末調整では、以下4つの項目に変更点が加えられました。
- 基礎控除額の引き上げ
- 給与所得控除額の引き下げ
- 「ひとり親控除」の新設・寡婦(寡夫)控除の見直し
- 年末調整書式の大幅改訂
ひとつずつ確認していきましょう。
5-1. 基礎控除額の引き上げ
これまでの基礎控除額は、収入や所得金額に関係なく一律で38万円でした。しかし、平成30年度の税制改正により、2020年からは一律48万円に基礎控除額が引き上げられています。
また、合計所得金額が2,400万円を超える場合は、基礎控除額が段階的に引き下がっていきます。
詳しい基準については下記をご参考ください。
合計所得金額 | 基礎控除額 |
2,400万円以下 | 48万円 |
2,400万1円~2,450万円 | 32万円 |
2,450万1円~2,500万円 | 16万円 |
2,500万1円以上 | 0円 |
なお、住民税についても33万円から43万円に変更されました。
5-2. 給与所得控除額の引き下げ
基礎控除額の引き上げに伴い、2020年からは給与所得控除額も見直されています。給与所得控除額は一律で10万円引き下げられました。
なお、収入の合計が850万円を上回る場合は給与所得控除の上限が195万円となります。
合計所得金額 | 給与所得控除 |
850万円以下 | -10万円 |
850万円以上 | -10万円以上(累進課税) |
5-3. 「ひとり親控除」の新設・寡婦(寡夫)控除の見直し
2020年の年末調整からは、従来の寡婦(寡夫)控除に近い制度「ひとり親控除」が設けられました。ひとり親控除とは、納税者の親が母親か父親のどちらか1人であるときに、一定の所得控除を受けられる制度のことです。
つまり、シングルマザーとシングルファザーのどちらにも対応しているほか、婚姻歴に関係なく制度の対象となります。
5-4. 年末調整書式の大幅改訂
年末調整書式の大幅改訂によって、「給与所得者の基礎控除申告書」と「所得金額調整控除申告書」が新しく加わりました。
これらの申告書は従来の「給与所得者の配偶者控除等申告書」と一体化しており、「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」という新しい様式が設けられました。
6. 2023年から寡婦又はひとり親欄が設置された
令和5年分の給与所得者の扶養控除等(異動)申告書から寡婦又はひとり親欄が設置されています。寡婦、ひとり親に該当するのは次のようなケースです。
寡婦 |
夫と離婚した後に婚姻をしておらず、扶養親族がいる人で、合計所得金額が500万円以下のケース 夫と死別した後婚姻をいない人もしくは夫の生死が明らかでない一定の人で、合計所得金額が500万円以下のケース |
ひとり親 |
本人と事実上の婚姻関係と同様の事情にあると認められる人がいない 生計をともにする子がいる 合計所得金額が500万円以下 |
寡婦、ひとり親の欄の記載が漏れないように、対象となるケースについて従業員に周知しておきましょう。
7. 年末調整における年収や所得の違いを理解しよう
本記事では、年末調整における年収と所得の違い、計算方法について解説しました。年末調整における年収は「源泉徴収票」の「支払金額」に記載されています。
基本給やボーナスはもちろんのこと、各種手当などのすべてが含まれているため、一般的な年収を把握することが可能です。なお、所得は「給与所得額=年間収入額-給与所得控除額」で算出できます。
年末調整の際に所得税を求める計算で苦戦しないためにも、年収と所得の違いはもちろん、年収から給与所得と課税所得を求める計算についてもしっかり押さえておきましょう。
年末調整は、従業員の家族構成やライフステージ、副業の有無、控除対象となる保険類への加入状況など、人によって複雑な分岐や異なる計算方法のルールがあるため、とても複雑な業務です。
給与計算を担当する方にとって、計算結果を統合する一年の集大成とも言える業務ですが、
「結婚・離婚・定年・退職・死亡など、様々なケース別の年末調整に対応する際の注意点が知りたい」
「障害者や勤労学生、共働き、遺族年金がある場合など家族構成に関する控除のポイントを押さえておきたい」
「記載ミスや、申告内容・扶養の変更、税務署からやり直し通知を受けた際などの対応方法が知りたい」
このようなイレギュラーケースの対応について不安を抱えている担当者の方に向けて、当サイトでは「Q&A形式でわかる年末調整と源泉徴収」という資料を無料配布しています。
資料では、一問一答形式でケース別の具体的な年末調整の対応方法を解説していますので、すぐに使える年末調整のガイドブックが欲しいという方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
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