年末調整における控除額の変更点や計算方法について知りたいという方は多いのではないでしょうか。それもそのはず、控除額の計算方法は時期によって異なるため、非常に複雑となっています。
そこで本記事では、年末調整における年収による控除額や計算方法について解説します。最後までご覧になることで、面倒な年末調整をスムーズに終わらせることができるはずです。
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システム化で変わる年末調整の2つのポイント解説BOOK!
年末調整をはじめとする必ず発生する業務の効率化は、企業全体の効率化に最も早く繋がります。
しかし、効率化といっても、これまでのやり方と異なることでイメージが湧きにくかったり、効率化が成功するのか不安なご担当者様も多いのではないでしょうか。
今回は「システム化で変わる年末調整の2つのポイント」を資料にまとめました。
年末調整をペーパーレス化した際の業務を具体的にイメージしたい方は、ぜひご覧ください。
1. 年末調整における年収の見方
年末調整における年収は「源泉徴収票」で確認することができます。
源泉徴収票とは、その年に会社から支払われた給与や賞与などの総額や、収めた所得税の金額などが記載されている用紙のことです。この源泉徴収票を受け取れるのは、年末調整の計算が完了した際と退職時の2つです。
なお、源泉徴収票はいくつかの項目に分かれており、年収に関連することは以下の4つから確認できます。
1.支払金額
2.給与所得控除後の金額
3.所得控除の額の合計額
4.源泉徴収税額
一年間に会社から受け取った金額の合計は「支払金額」に記載されています。基本給やボーナスはもちろんのこと、各種手当などのすべてが含まれていることから、「支払金額」は一般的な年収を示しています。
2. 年末調整における年収による控除額の計算方法
年収による控除額の計算方法をみていきましょう。給与所得控除額は収入の総額によって異なり、計算方法として「給与所得額=年間収入額-給与所得控除額」で算出することができます。
なお、令和2年分以降の給与所得控除は下記のとおりです。
3. 年末調整における年収による控除額の変更点
年収による控除額は時期によって大きく変更されています。時期ごとの控除額は下記をご覧ください。
平成29年分~令和元年分
平成28年分
4. 年末調整における所得控除額の差し引き
従業員が提出した「控除申告書」をもとに所得控除額を差し引き、課税所得を計算します。
計算方法は「課税所得=給与所得額-所得控除額」となります。年末調整で差し引かれる所得控除の種類は下記をご参考ください。
・基礎控除
・配偶者控除
・配偶者特別控除
・扶養控除
・雑損控除
・医療費控除
・社会保険料控除
・寄附金控除
・生命保険料控除
・地震保険料控除
・寡婦・寡夫控除
・勤労学生控除
・小規模企業共済等掛金控除
これら該当する項目を申告書の内容を元に算出します。
5. 年末調整における所得税率の掛け算と控除額
1年間の所得税額は、課税所得に税率をかけて控除額を差し引くと算出されます。
よって計算方法は「所得税額=課税所得x税率-控除額」となります。平成27年分以降の所得税の速算表は下記のとおりです。
6. 2020年に変更された年末調整の新たな項目
最後に、2020年に変更された年末調整の新たな項目を解説していきます。
2020年の年末調整では、以下4つの項目に変更点が加えられました。
1. 基礎控除額の引き上げ
2.給与所得控除額の引き下げ
3.「ひとり親控除」の新設・寡婦(寡夫)控除の見直し
4.年末調整書式の大幅改訂
1つずつ確認していきましょう。
6-1. 基礎控除額の引き上げ
これまでの基礎控除額は、収入や所得金額に関係なく一律で38万円でした。しかし、平成30年度の税制改正により、2020年からは一律48万円に基礎控除額が引き上げられています。
また、合計所得金額が2,400万円を超える場合は、基礎控除額が段階的に引き下がっていきます。
詳しい基準については下記をご参考ください。
なお、住民税についても33万円から43万円に変更されました。
6-2. 給与所得控除額の引き下げ
基礎控除額の引き上げに伴い、2020年からは給与所得控除額も見直されています。給与所得控除額は一律で10万円引き下げられました。
なお、収入の合計が850万円を上回る場合は給与所得控除の上限が195万円となります。
参考:給与所得控除「税務庁」
6-3. 「ひとり親控除」の新設・寡婦(寡夫)控除の見直し
2020年の年末調整からは、従来の寡婦(寡夫)控除に近い制度「ひとり親控除」が設けられました。ひとり親控除とは、納税者の親が母親か父親のどちらか1人であるときに、一定の所得控除を受けられる制度のことです。
つまり、シングルマザーとシングルファザーのどちらにも対応しているほか、婚姻歴に関係なく制度の対象となります。
6-4. 年末調整書式の大幅改訂
年末調整書式の大幅改訂によって、「給与所得者の基礎控除申告書」と「所得金額調整控除申告書」が新しく加わりました。
これらの申告書は従来の「給与所得者の配偶者控除等申告書」と一体化しており、「給与所得者の基礎控除申告書兼給与所得者の配偶者控除等申告書兼所得金額調整控除申告書」という新しい様式が設けられました。
7. 年末調整における控除額について事前に理解しておこう
本記事では、年末調整における年収による控除額や計算方法について解説しました。年末調整における年収は「源泉徴収票」の「支払金額」に記載されています。
基本給やボーナスはもちろんのこと、各種手当などのすべてが含まれているため、一般的な年収を把握することが可能です。なお、年収による控除額は「給与所得額=年間収入額-給与所得控除額」で算出できます。
年末調整における控除額の計算で苦戦しないためにも、控除額について事前に理解しておくことをおすすめします。所得税率の掛け算と控除額なども本記事で解説しているため、年末調整の前にぜひご参考ください。