法人における帳簿の正しい保存期間や適切な保存方法とは
更新日: 2022.12.9
公開日: 2022.5.10
目黒颯己
法人が取り扱う帳簿書類は適切な方法で保存をしなくてはいけません。
保存がされていないと、税務調査の際にペナルティを受ける場合があります。
本記事では、帳簿書類の保存期間や適切な保存方法について解説します。
1. 法人の帳簿書類の保存期間について
帳簿書類について法人は確定申告書の提出期限から7年間保存しなければいけないと法律で定められています。[注1]
ここでの帳簿とは、総勘定元帳、仕訳帳、現金出納帳、売掛金元帳、買掛金元帳、固定資産台帳、売上帳、仕入帳などです。
書類とは帳簿を作成する際に使用したものになるので、棚卸表、貸借対照表、損益計算書、注文書、契約書、領収書などが該当します。
これらを保存しなければいけない理由は、法人税が正しく納付されているかを確かめることにあります。
帳簿は数字の入力を手作業で行なっているケースも多く、ミスをゼロにすることはできません。
意図的でなくても、誤った内容で確定申告をしてしまうケースはあります。
税務署は会社がどれくらいの税金を納めているかを把握し、内容に不審な点があった際には、税務調査を行い正しく税金が納付されているかを確認しなくてはいけません。
その際にチェックされるのが帳簿書類です。
つまり、帳簿書類は会社が正しく法人税を納付していることを証明するために欠かせない書類ということです。
保存期間内に破棄してしまうと、帳簿を破棄したのか、それとも最初から作成していなかったのかを判断できません。
税務署側からすれば、虚偽の申告をしている可能性があると思われてしまいます。
全ての会社に税務調査が入るわけではありませんが、税務調査が入った際に税金額が正しいかを税務署が判断できるように法律で保存期間が定められています。
関連記事:帳簿を作成する理由や各種の特徴・違いをやさしく解説
2. 帳簿書類の適切な保存方法
帳簿書類の保存方法についてですが、大きく2つあります。
1つは書類として保存する方法、もう1つは電子データで保存する方法です。
今までは会社に適した方法で保存をすれば問題ありませんでした。
しかし、法改正によってその常識は変わりつつあります。
ここでは帳簿書類の適切な保存方法について解説致します。
2-1. 電子データでの保存が義務化
今までは国税関連の書類は紙で保存するというルールの会社は珍しくありませんでした。
しかし、デジタル化が進むにつれて電子データで保存をしている会社も増えつつあります。
そんな中で課題となっていたのが電子帳簿保存法でした。
これは帳簿を電子データで保存する際のルールを規定した法律です。
帳簿は税金に関係する書類のため、電子データで保存をする際のルールも制定しなければいけません。
デジタル化に伴い、この法律が生まれたのですが、電子データで保存をするにはいろんな手間がありました。
そのため、電子データで保存することが認められていても、紙で保存をするという会社は多くありました。
しかし、2022年1月の法改正によって、電子帳簿保存法は大きく変化しました。[注2]
今までは電子データで作成した帳簿を印刷して保存をすることが可能でした。
例えば、取引先から請求書がデータで送られてきた際に、それを印刷して保存すれば税務上問題なかったのです。
極端な話をすれば、電子データで作成されたすべての関連書類を印刷することで、すべて紙媒体で保存することも可能でした。
しかし、2022年の法改正によって、取引先から電子データで送られてきた請求書などに関しては出力保存が原則不可になりました。
そのため、電子データで保存をする必然性が生まれました。
現代では取引先とメールでやり取りするのが一般的です。
書類の郵送でやり取りをしていると、相手に書類が届くまでに時間がかかってしまいます。
1つの取引をスムーズに進めることができません。
このメールに添付されている資料に関しては、法改正によってすべて電子データで保存をしなくてはいけなくなっています。
そのため、現在の適切な保存方法は状況によって異なります。
自社で作成した帳簿に関しては、書類で保存をしても問題ありません。
しかし、相手から受け取った請求書等に関しては、電子データでの保存が必須です。
書類での保存と電子データでの保存が混在する可能性があるということを認識しておいてください。
また、電子データで保存する際は、電子帳簿保存法に則り、タイムスタンプを付したり、保存した内容を改ざんできないシステムを利用したりしなくてはいけません。
このシステムの準備ができていない会社は、電子帳簿保存法の改正に対応できていないので注意してください。
3. それぞれの保存方法のメリットやデメリット
最後に書類での保存と電子データでの保存のメリット、デメリットについて解説します。
電子データでの保存にもデメリットはあります。
しかし、法律で電子データで保存することが定められている内容に関しては、デメリットがあっても対応をしなくてはいけません。
保存方法別の特徴を理解し、保存の際に問題が起こらないように注意をしてください。
3-1. 書類で保存するメリット
書類で保存するメリットは、システムの導入に費用がかからないことです。
会社のすべてのデータを電子で保存しようとすると、多くのルールを制定しなくてはいけません。
外部からの電子データを保存するツールだけではなく、他のシステムの導入の検討も必要です。
電子データでの保存は、システムさえ導入すれば簡単に利用できますが、システムを導入するまでに時間と費用がかかってしまいます。
そのコストを削減できるのが、書類での保存のメリットです。
3-2. 書類で保存するデメリット
書類で保存をすると、保存場所が必要です。
ファイルを保管しておく棚や倉庫が必要になります。
これらに収納できる書類の数には上限があるので、物理的に保存ができない書類ができてしまうかもしれません。
そうなると空いているスペースに書類を保存することになり、結果として会社内が煩雑となってしまいます。
これが書類での保存のデメリットです。
3-3. 電子データで保存するメリット
電子データで保存をすると保管コストがかかりません。
また、データを相手に送付する必要がある場合、輸送コストも発生しません。
さらに書類での保存と比べると、紛失や滅失などのリスクを減らすことも可能です。
さらに電子データの場合は、社員に閲覧されたくないデータに関してロックをかけることができます。
情報管理をする際に、電子データは便利です。
また、ファイル名を入力するだけで検索ができるため、目当ての情報を得ることも簡単です。
3-4. 電子データで保存するデメリット
システム上にデータを保存しているため、トラブルが起こってすべてのデータが抹消された際に、重要なデータが紛失してしまう可能性があります。
そのため、常にバックアップを取得しなければいけません。
電子データでもデータが消えてしまうリスクはゼロではありません。
4. 法人の帳簿は7年間の保存期間が必要
電子データでの保存が一部の請求書等に関して義務付けられたことで、すべての会社が電子データでの保存に対応したシステムを導入しなければならなくなりました。
法改正されてから日が浅いため、対応できていない会社があるかもしれません。
データの数が増えてくると、後から電子データで保存をし直すのが大変になります。
早めに電子データで保存できる仕組みを整えておくのがおすすめです。
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