リース会計基準とは?2019年の改正による変更点や仕訳方法を解説
更新日: 2024.5.8 公開日: 2022.11.30 jinjer Blog 編集部
コピー機やビジネスフォンなど、企業で使用したい機械設備は数多くあります。しかし、まとめて取り揃えようとするとどうしても費用がかさんでしまうのがネックです。そこで検討されるのが、必要な機械設備などをリース会社を介して貸借するリース取引です。
2008年4月1日、リース取引に関する取り決めであるリース会計基準が適用されました。その後、2019年には国際財務報告基準(IFRS)にてリースに関する取り決めの変更があり、現在ではそれを含む新リース会計基準が適用されています。
本記事では、リース会計基準について、改正のポイントと合わせて詳しく解説いたします。
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1. リース会計基準とは?


日本で最初にリース会計基準が設けられたのは、2008年の4月1日です。それまで、日本のファイナンス・リースにおける取引手法が国際的な手法と比較して異なっていました。そこで、国際的な基準に日本のリース取引を近づけるために、リース会計基準が設けられたのです。
リース会計基準は、以下に該当する会社に適用されます。
- 金融商品取引が適用される会社
- 上記に該当する会社の子会社および関連会社
- 会計監査人を置いている会社
- 上記に該当する会社の子会社および関連会社
- 中小企業の会計に関する指針の対象にならない会社
2. リース取引とは?


リース取引について、詳しく見ていきましょう。リース取引とは、リース会社を介して必要な機械設備などの資産を貸借する取引のことです。
資産を貸借するとなると、レンタルと似ているように思えるかもしれません。しかし、レンタルとリース取引は明確に異なります。わかりやすく異なっているのは、契約期間でしょう。
レンタルの場合、その期間は1日から1週間程度、それより長いとしても月単位での契約となるのが一般的です。一方でリース取引は、最低でも半年程度から長くて10年近い契約期間です。
また、リース料の支払いは分割払いとなるのが一般的です。レンタルは、物品や資産を借りる際、先に料金を支払いますが、リース取引の支払いは借りてからの後払いとなる点も異なります。
必要な設備などを導入したいものの、資金の面で課題がある場合、後払いできるリース取引の利用が検討できます。新規で購入するよりもずっと初期費用を抑えられるのがポイントです。
資金繰りとなると金融機関の融資が思い浮かびますが、リース取引は金銭を借りるわけではないので融資枠を使うわけでもありません。
ただし、リース料金は総額で見てみると購入するよりも高くなってしまうのがネックです。また、契約の内容にもよりますが、リース期間終了後には資産の所有権は貸主にあるため、返却する必要もあります。
リース料金には、その資産の購入費だけでなく、手数料や保険料といった部分も含まれているため、結果的には費用がかかってしまうのはどうしようもありません。
先述のように、リース取引にはファイナンス・リースとオペレーティング・リースの2種類があります。それぞれについて、細かく見ていきましょう。
2-1. ファイナンス・リース
ファイナンス・リースとは、リース取引のうち以下の条件に該当するものをいいます。
- 借主がその取引の対象物を選ぶ
- その取引にかかる費用は貸主がリース料として回収する(フルペイアウト)
- 途中で解約ができない
- その品物についての保守や修繕義務は借主が負う
- 貸主が瑕疵担保責任を負わない
- 滅失や毀損といった危険負担は借主が負う
このように、ファイナンス・リースではリース会社からその資産を貸借しているものの、保守や修繕義務などは借主が負うことから、実質的には売買取引に近いのが特徴です。
2-2. オペレーティング・リース
オペレーティング・リースとは、リース取引のうち以下の条件に該当するものをいいます。
・リース期間の終了後に貸主がその資産の残存価額を見積もる
・契約期間は借主が設定できる(ノンフルペイアウト)
・取引の資産計上は貸主が行う(オフバランス)
ファイナンス・リースと比較すると、借主の判断で契約期間を決められたり、資産計上は貸主がおこなったりする点から、好きなタイミングで相手の資産を貸借できるといったイメージです。
3. リース会計基準の2019年改正の変更点


3-1. 区分の廃止
2019年の改正により、ファイナンス・リースとオペレーティング・リースという区分は廃止されました。これにより、リース取引の大半が売買契約となり、オンバランス処理をおこなう必要があります。
3-2. 少額リース資産の判定基準
変更されたリース会計基準においても、少額または短期間のリースにおいてはオフバランスの処理が認められています。以前は、300万円以下が少額リースと判定されていましたが、改正後のリース会計基準では明記されていません。
国際会計基準審議会では、オフバランス処理が可能になる基準として5,000米ドルと定めています。日本基準でも同様の基準となる可能性が高いでしょう。5,000ドルは、1ドル140円で換算すると70万円です。
4. リース会計基準の改正による影響と仕訳方法


また、ファイナンス・リースやオペレーティング・リースといった区分がなくなったことで、例外を除いてほとんどのリース取引は、その資産を借主の側で資産計上する必要が出てきます。
オペレーティング・リースの場合、これまでは以下のような仕訳をおこなっていました。
例として、機械設備を1年で20万円の支払い条件で5年間のリース契約をしたとします。オペレーティング・リースの場合、資産計上をおこないませんので、開始時の仕訳はありません。リース料金を支払う際に、以下のような仕訳をおこなうのみです。
| 借方 | 貸方 | ||
| 勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
| 支払リース料 | 200,000円 | 現金 | 200,000円 |
4-2. 改正後の仕訳方法
これからはファイナンス・リースのように基本的にはすべて全てのリース契約において資産計上しなければいけません。資産計上は、その金額に利子を含めるか含めないかによって異なってきます。
例として、機械設備を1年で20万円の支払い条件で5年間のリース契約をしたとします。購入した場合の見積価額は90万円です。
4-2-1. リース資産に利子を含む場合
まず、利子込み法の場合、開始時と支払い時、減価償却は以下のように仕訳をします。
開始時
| 借方 | 貸方 | ||
| 勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
| リース資産 | 900,000円 | リース債務 | 900,000円 |
支払い時
| 借方 | 貸方 | ||
| 勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
| リース債務 | 200,000円 | 現金 | 200,000円 |
減価償却(5年、関節法)
| 借方 | 貸方 | ||
| 勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
| 減価償却費 | 200,000円 | リース減価償却累計額 | 200,000円 |
年額の20万円には利子が含まれているため、5年間のリース契約であることを踏まえてリースの資産を100万円として計上します。このとき、今後支払う金額については負債の勘定科目「リース債務」を使用します。
4-2-2. リース資産に利子を含まない場合
リース資産に利子を含まない場合、開始時と支払い時、減価償却は以下のように仕訳をします。
| 借方 | 貸方 | ||
| 勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
| リース資産 | 900,000円 | リース債務 | 900,000円 |
支払い時
| 借方 | 貸方 | ||
| 勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
| リース債務 | 180,000円 | 現金 | 200,000円 |
| 支払利息 | 20,000円 | ||
減価償却(5年、関節法)
| 借方 | 貸方 | ||
| 勘定科目 | 金額 | 勘定科目 | 金額 |
| 減価償却費 | 180,000円 | リース減価償却累計額 | 180,000円 |
利子を含まない場合、購入した場合の見積価額をリース資産として計上します。この場合、支払いの際に「支払利息」も計上しなければいけません。
また、リース資産は90万円で計上しているため、減価償却費もそれに基づいた金額となります。
リース会計基準が変わったことで、リース資産の計上が必要になれば「リース債務」を計上しなければならなくなるため、負債が増えてしまいます。結果的に総資産額が増え、自己資本比率が低くなるかもしれません。
5. リース会計基準の改正によって資産計上は必須になる


リース会計基準が改正されたことでリース取引の区分がなくなり、例外を除いて資産計上が必須になりました。これまではおこなっていなかった計上が必要になったり、負債が増えてしまうことでさまざまな影響が出てきたりするかもしれません。ポイントを的確に押さえておきましょう。



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