貸借対照表で使われる勘定科目の意味や覚えるコツも紹介
更新日: 2023.9.1
公開日: 2022.6.10
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貸借対照表に表示されるひとつひとつの項目を勘定科目と言います。勘定科目は事業活動における日々の取引を分類したものです。それぞれの勘定科目の意味を理解することで、より具体的なイメージを持って貸借対照表に臨めるようになるでしょう。
この記事では貸借対照表で使われる代表的な勘定科目と、それぞれの勘定科目を仕分けるコツを紹介します。
1. 貸借対照表の基本構成

貸借対照表とは、ある一定時点における企業の保有資産とその資産に対してどのように資金を調達したのかを示す表です。まずは勘定科目の解説の前提となる貸借対照表の基本構成を押さえておきましょう。
1-1. 左側が資産の部、右側が負債の部・純資産の部
貸借対照表は大きく左右2列で構成されており、右列は更に上下2つに区分されます。各区分の名称と表示される内容は以下の通りです。
- 左側:資産の部(企業の保有資産)
- 右側上部:負債の部(返済義務がある他人資本)
- 右側下部:純資産の部(企業の自己資本)
「資産の部」には、その名の通り企業が保有する資産の勘定科目が表示されます。一方、右側は資金の調達方法を示す区分です。「負債の部」には返済義務がある他人資本の勘定科目、「純資産の部」には企業の自己資本の勘定科目が表示されます。
1-2. 左側と右側それぞれの合計は必ず一致する
複式簿記では勘定科目を「借方」と「貸方」の2つに仕分けており、財務諸表の表示は原則として左側が借方、右側が貸方です。つまり、貸借対照表では資産の勘定科目は借方、負債と純資産の勘定科目は貸方に仕分けされます。
<貸借対照表における勘定科目の仕分け>
資産の勘定科目:借方(左側】
負債・純資産の勘定科目:貸方(右側)
また、貸借対照表では左側と右側それぞれの勘定科目の合計額が必ず一致します。これは保有する資産には必ず対応する元手資金があるためです。これを「貸借一致の原則」と言います。
<貸借一致の原則>
左側(資産)=右側(負債+純資産)
なお、上記のことから貸借対照表は「バランスシート(BS、B/S)」とも呼ばれています。
関連記事:貸借対照表(バランスシート)とは?読み方・作り方をわかりやすく解説
2. 資産の部の勘定科目

ここからは貸借対照表を構成する各部ごとに代表的な勘定科目を紹介していきます。
まずは貸借対照表の左側(借方)に仕分けされる資産の勘定科目を見ていきましょう。資産の勘定科目は「流動資産」「固定資産」「繰越資産」の3つに区分されます。
2-1. 流動資産
流動資産は通常の事業活動から生じる資産や、決算日から1年以内に現金化される資産です。主な勘定科目としては現金や預金、売掛金などが挙げられます。また、販売目的で仕入れた商品などの棚卸資産も流動資産です。
<流動資産の主な勘定科目>
- 現金:企業の手元にある現金
- 預金:常時引き落とし可能な口座の資金
- 当座預金:手形や小切手の支払に使われる預金
- 売掛金:後日納められる売上金
- 受取手形:売掛金のうち手形として保有しているもの
- 短期貸付金:1年以内に回収される貸付金
- 投機有価証券:短期売買による利益を得る目的で所有する有価証券
- 棚卸資産:販売目的で在庫する商品・製品など
2-2. 固定資産
固定資産は1年以上の長期にわたって保有する資産です。建物や土地、車両などの有形固定資産と、ソフトウェアや権利などの無形固定資産に分けて計上される場合もあります。
なお、無形固定資産で見られる「のれん」は、企業買収を行った際に買収価格が相手企業の純資産を上回ったときにその差額を計上するための勘定科目です。買収企業のブランドや技術力、顧客ネットワークなど目に見えない概念的な資産(超過収益力)を表しています。
<有形固定資産の主な勘定科目>
- 土地:企業が保有する土地の価格
- 建物:企業が保有する建物の価格
- 建物付属設備:空調設備など建物に付属する設備
- 車両:事業用に保有する車両の価格
<無形固定資産の主な勘定科目>
- ソフトウェア:業務で使用するソフトウェアのうち高額なもの
- 借地権:土地を借りる権利
- 知的財産権:企業が保有する著作権など
- のれん:買収した企業の超過収益力
2‐3. 繰越資産
繰越資産は、その効果が長期的に影響すると見られる費用を表す勘定科目です。具体的な勘定科目として創立費や開業費、開発費が挙げられます。
<繰越資産の主な勘定科目>
- 創立費:会社の設立にかかった費用
- 開業費:会社の設立から事業開始までにかかった費用
- 開発費:新製品の開発や新規得意先の開拓などにかかった費用
3. 負債の部の勘定科目

続いて貸借対照表の貸方、右側上部の「負債の部」に表示される勘定科目を紹介します。負債とは企業が返済義務を負う他人資本です。その勘定科目は「流動負債」と「固定負債」に区分されます。
3-1. 流動負債
流動負債は通常の営業活動で生じる負債や、決算日から1年以内に返済しなければならない負債です。主な勘定科目として短期借入金や買掛金、未払金などが挙げられます。
<流動負債の主な勘定科目>
- 短期借入金:金融機関からの借入金のうち1年以内に返済するもの
- 買掛金:後日支払う仕入れ費用
- 支払手形:買掛金のうち手形として発行されているもの
- 未払金:株主への配当や税金、利息のうち未払いのもの(※)
※未払の対象により名称が異なる。未払配当金、未払利息、未払法人税など。
3-2. 固定負債
固定負債は1年以上の長期に渡って返済義務を負う負債です。勘定科目としては長期借入金や社債などがあります。
<固定負債の主な勘定科目>
- 長期借入金:返済期限が1年以上の借入金
- 社債:資金調達のために発行する債券
- 退職給付引当金:会社が負担する退職給付金の見込み額
- 資産除去債務:有形固定資産の将来的な原状回復などの見込み額
4. 純資産の部の勘定科目

貸借対照表の貸方、右側下部には企業の自己資本である純資産の部が奉持されます。純資産は株主からの出資金やこれまで積み上げてきた利益の蓄積などです。資本金や利益剰余金など主要な勘定科目は「株主資本」とも呼ばれます。
4-1. 株主資本
株主資本とは、株主からの出資金や、それを元手とした授業活動で得られた利益などを指す言葉です。純資産を構成する主要な勘定科目である資本金、利益剰余金などが該当します。
<株主資本の主な勘定科目>
- 資本金:株主からの出資によって得られる事業活動の元手資金
- 資本剰余金:株主からの出資金のうち、資本金に充当しなかった資金
- 利益剰余金:事業活動で得られた利益の蓄積
- 自己株式:会社が保有する自社株
4-2. 株主資本以外の勘定科目
株主資本以外の純資産勘定科目には以下のようなものがあります。
新株予約権:企業が発行する株式を一定の価格で取得する権利
評価換算差額等:有価証券や土地などの購入価格と時価総額の差額
関連記事:貸借対照表における純資産とは?経営状況を判断する方法も紹介
5. 貸借対照表の勘定科目を覚えるコツ

最後に、貸借対照表の勘定科目を覚えるコツを紹介します。貸借対照表では様々な勘定科目が使用され、また企業ごとに表記が異なる科目もあるため、一度にすべてを覚えるのは困難です。まずは頻出する勘定科目から徐々に覚えていくとよいでしょう。
5-1. 勘定科目の特性から表示場所を特定する
勘定科目の表記場所に迷ったときは、その勘定科目の特性から考えてみましょう。
例えば、資本の勘定科目である現金や受取手形、建物、土地などは企業にとって価値のあるもの、持っていると嬉しいものです。一方、負債の勘定科目は借入金や買掛金、未払金などは企業の財政状況を圧迫し、経営の負担となります。
勘定科目の表示場所に迷った際はその科目が企業にとってプラスに作用するか、マイナスに作用するかを考えてみるのも有効です。
- 資産の部:企業が保有する資産。企業にとって価値があるもの。
- 負債の部:企業に返済義務があるもの。企業にとって負担となるもの。
- 純資産の部:企業の自己資本。
5-2. 勘定科目をペアにして覚える
勘定科目の中にはその内容からペアになる勘定科目があるものがあります。例えば売掛金と買掛金です。売掛金は資産の部で未収の売上金を示す科目、買掛金は負債の部で未払いの仕入れ費用を示す科目です。
貸借対照表では、主に資産の部と負債の部で反対の意味を示す勘定科目が多く見られます。このような特徴を把握しておくと、勘定科目の表記や表示場所に困ることも少なくなるでしょう。
<貸借対照表でペアとなる勘定科目の例>
- 売掛金⇔買掛金
- 受取手形⇔支払手形
- 貸付金⇔借入金
- 前払金⇔前受金
- ※右側が資産の部、左側が負債の部
6.勘定科目の意味を把握して貸借対照表を分析しよう

今回は貸借対照表の各区分で代表的な勘定科目を紹介しました。勘定科目はひとつひとつに意味があり、企業がどのような取引を行ったのかを示しています。各勘定科目が示す内容を把握することで、貸借対照表に対する理解も深まるでしょう。
関連記事:貸借対照表の見方とは?基本的な見方や分析のポイントを初心者向けに解説
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