資本的支出とは?収益的支出との違いや判定方法を紹介
更新日: 2024.1.15
公開日: 2022.10.17
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長く利用している固定資産を修理または修繕し、その結果価値や機能などが向上した際、修理や修繕にかかった費用のことを「資本的支出」と呼びます。
資産を修理・修繕する際にかかった費用には、「収益的支出」と呼ばれる支出もありますが、両者は若干ニュアンスが異なります。
かかった費用がどちらに該当するかを正しく判断できなければ、会計上や税務上適切な処理を行うことができません。
本記事では、資本的支出とはどのような支出か、資本的支出と収益的支出の違い、資本的支出と収益的支出の判定方法について説明します。
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1. 資本的支出とは?
資本的支出とは、「建物や備品などの資産の修理を行う際に、改良を加えてその価値や機能を向上させたときにかかった費用」のことを指します。
たとえば、自社ビルの外壁が少し剥がれているため修繕を行うとします。
この際、経年劣化を少しでも抑えられるように断熱効果や防水効果のある塗料を利用した場合、これまでよりも自社ビルの価値が向上したと考えられます。
そのため、外壁を塗装するのにかかった費用は資本的支出と判断される可能性が高いです。
国税庁では、資本的支出の具体例として以下のような例を挙げているので、費用が資本的支出に該当するかどうかの判断材料にしていただくとよいでしょう。
・建物の避難階段を取り付けるなど、物理的に付加した費用
・用途を変えるために模様替えするなど改装に要した費用
・機械の部品を品質または性能の高いものに交換し、通常に取り替えた場合を超える費用
資本的支出と判断された場合、その費用は固定資産の取得原価に加算されます。
その後は減価償却費として、耐用年数にしたがって毎年の費用に計上していくことになります。
2. 資本的支出と収益的支出の違い
資本的支出と混同しやすい概念に、「収益的支出」があります。
収益的支出とは、「会社が経営に必要とする建物や備品などの資産について、修理を行った際にかかった費用」のことを指します。
「資産の修理にかかる費用」という内容だけをとらえると、資本的支出と収益的支出はほぼ同じ費用に思われるかもしれません。
ただし、資本的支出が修理や修繕によって「価値や機能を向上」させているのに対して、収益的支出ではただ修理・修繕を行うのみです。
先ほど例に挙げた外壁塗装の例で考えると、塗装が剥げてきた際に、これまで利用していた塗料と同じものを利用して塗り直しても、価値や機能を向上させたとは言えないでしょう。
このような場合の費用は、資本的支出ではなく収益的支出と判断されます。
費用が収益的支出と考えられる場合は、資産の価値は上がりません。
そのため、一般的には修繕費などの勘定科目を用いて仕訳が行われ、その金額は全額当期の費用として計上されます。
「収益的支出として計上すると節税上有利になる」とよく言われますが、それはかかった費用を一括で計上することで、利益を圧縮することができるからです。
なお、本来であれば資本的支出の要件を満たしている費用でも、以下のような条件を満たす場合は収益的支出として経費に計上することが可能です。
・1件あたりの修理にかかった金額が60万円未満である
・1件あたりの修理にかかった費用が、前期末における取得価額のおよそ10%相当額以下である
経費計上できるかどうかは重要なポイントなので、この条件を満たしていないかどうかはきちんと確認しましょう。
3. 資本的支出と収益的支出の判定方法
資本的支出と収益的支出に関しては、上掲したような例であれば判断しやすいですが、すべての費用が分かりやすく分類できるわけでは必ずしもありません。
資本的支出と収益的支出の判断に迷った場合は、以下に挙げる5つの質問に対して、上から順にYesかNoかで分類していくことで、どちらかを判定することができます。
1. 修繕や改良などのために要した費用1件あたりが20万円に満たない
2. おおむね3年以内の期間を周期として行われることが定例化している
3. 明らかに維持管理・原状回復のための支出である
4. 資産の価値を高めて使用可能期間を延ばすための支出である
5. 1件あたり60万円未満、もしくは前期末における取得価額のおよそ10%相当額以下である
1~3の質問に関しては、「No」であれば次の質問に進んでいき、「Yes」であればその時点で収益的支出と判断することができます。
4の質問は、「Yes」であれば資本的支出と判断できますが、「No」の場合は5の質問に進みます。
5の質問は「Yes」であれば収益的支出、「No」であれば資本的支出となります。
この質問の流れに関しては、フローチャート化しておくと分かりやすいでしょう。
先ほど、資本的支出の要件を満たしている場合でも収益的支出として計上できる例外として、「1件あたりの修理にかかった金額が60万円未満である」という条件を挙げました。
1の質問を見ていただくと分かると思いますが、実は「60万円」という金額以外に「20万円」という金額も、資本的支出と収益的支出を分けるためのひとつの目安となっています。
20万円に満たない修理や改良に対する支出について、国税庁は「少額または周期の短い費用」であるとし、収益的支出として経費計上できるとしているからです。
20万円および60万円という金額は、資本的支出と収益的支出を分類する際に重要になる金額なので、ぜひ把握しておきましょう。
4. 資本的支出と収益的支出は適切に分類されることが重要
資本的支出とは、「建物や備品などの資産の修理を行う際に、改良を加えてその価値や機能を向上させたときにかかった費用」のことです。
「資産の修理にかかった費用」という部分で、収益的支出と混同されることも多いですが、分類においては「価値や機能の向上」という点が重要な要素になります。
資本的支出と収益的支出はきっちり分けて仕訳を行わなければならないので、どちらに該当するか迷った場合は、フローチャートに沿って判断しましょう。
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