法人税の計算方法を確認!計算後の仕訳方法や納付書の書き方も紹介
更新日: 2025.1.31
公開日: 2022.8.2
jinjer Blog 編集部
企業が収益を上げたときにはいくつかの税金の支払いが必要となります。中でも法人税は税負担が大きいため、適用条件や計算方法を詳しく把握しておきたい部分です。
企業の資本金や課税所得の金額によっては、法人税の税負担が軽減されることもあります。この記事では、法人税の計算方法について詳しく解説していきます。
また、法人税の支払いの際に必要となる仕訳方法や、納付書の書き方についても確認していきましょう。
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1. 法人税とは
まずは法人税の基本的な部分を再確認していきましょう。課税対象になる法人の種類も知っておくと、この後の解説がよりわかりやすくなります。
1-1. 法人の所得に対して課される税金
法人税とは、法人が事業をおこなったことで得た所得に対して課される税金です。
税金には国に納付する「国税」と、都道府県や市町村に納付する「地方税」がありますが、法人税はこのうちの国税に該当します。また、同じく法人に課される税金の「法人住民税」「法人事業税」は地方税に該当します。
このように法人が納めるべき税金には複数の種類がありますが、これらをすべてまとめて「法人税」と呼ぶことが多いですが、本頁では、国税の法人税について解説をしています。
なお、株式会社・有限会社などの普通法人と、生活協同組合や農業協同組合のような協同組合の法人には基本的に法人税が発生します。より細かい課税対象については、次の項目で解説していきます。
1-2. 課税対象となる法人の種類
法人税の課税対象は、事業で利益を得ている法人に限られます。基本的には、普通法人と協同組合が主な課税対象です。
普通法人 | 株式会社、有限会社、医療法人、相互会社、合資会社、労働組合、日本銀行など |
協同組合 | 生活協同組合、農業協同組合、漁業協同組合、労働者協同組合、信用金庫など |
ただし、普通法人の中でも中小企業にあたる企業と協同組合等には軽減税率が適用されます。
利益を得ることを目的としていない法人には法人税が課税されないのが一般的です。例えば地方公共団体や国立大学法人、日本道路公団などの公共法人は法人税の対象外となります。
また、社団法人や財団法人、学校法人などの公益法人等、実行委員会やPTAといった人格のない社団にも、法人税が課税されることはありません。
ただし、形式的には公益法人であった場合でも、収益事業で利益を上げたときには法人税が課税されます。
関連記事:法人税とは?特徴や対象となる法人、種類や計算方法を紹介
2. 法人税の計算方法
法人税の計算方法は、どの数字を使うのか分かれば簡単に算出できます。具体的な計算方法を見ていきましょう。
2-1. 「利益」ではなく「所得」を確認する
よくある誤認に「法人税は企業の利益に対して課される」というものがあります。利益と所得は似ているようで異なるものです。
利益は会計上の儲けのことで「収益ー費用」で算出します。一方で所得とは、税法上の儲けのことで、「益金ー損金」で算出されます。会計上と税務上では収益とみなす項目と費用とみなす項目が異なるため利益と所得は区別して考えなければいけません。
法人税は「所得」に対して課されるものであるため、留意しておきましょう。
2-2. 具体的な計算方法
法人税は、各事業年度に得た課税所得に対して、規定の法人税率をかけることで法人税の額を計算できます。
法人税の計算式は「課税所得×税率=法人税」です。
算出した課税所得に対して法人税率をかけ合わせれば、法人税の税額を算出できます。具体的な計算例を用いて計算方法を確認していきましょう。
例えば資本金が5,000万円の普通法人で益金が3,000万円、損金が1,000万円あったとします。この場合、益金から損金を差し引いた課税所得は3,000万円ー1,000万円=2,000万円となります。課税所得2,000万円のうち800万円の部分までの法人税率、800万円を超える残りの1,200万円の法人税率は次のとおり異なります。
課税所得の範囲 | 法人税率 | 法人税額 |
800万円まで | 15% | 120万円 |
800万円超 | 23.2% | 278.4万円 |
そのため、法人税額が次の算出可能です。
- 120万円+278.4万円=398.4万円
2-3. 法人税計算時の端数処理とは
法人税の計算の際に発生した端数処理については、法人税法119条で下記のように規制されています。
国税の確定金額を算出する過程におけるその算出額に、1円未満の端数があるときは、その端数金額を切り捨てるものとする
上記のとおり法人税の計算時に端数は発生した際は1円未満であれば切り捨て可能です。
ただし、中小通算法人の軽減税率対象所得金額の端数については、1,000円未満を切り捨てます。算出した課税所得が856,799円であった場合、799円は切り捨てて課税所得を856,000円として計算することになります。
いずれの場合も切り捨てであり、四捨五入ではありません。勘違いをしやすい部分であるため、十分に注意しましょう。
3. 法人税計算の3つのポイント
企業に課税される法人税は複雑な仕組みになっています。特に大きな特徴は、固定税率が適用されることです。基本的には、所得が増えるほど法人税の額も増していきます。
法人の資本金によっては軽減税率が適用になるケースもあるため、自社の正しい課税額をうまく把握できないこともあるかもしれません。
まずは、法人税の計算ステップをチェックしていきましょう。法人税の計算は3つのステップに分けることができます。
①課税所得を算出する
②適用される法人税率を把握する
③中間申告が必要か確認する
それぞれのポイントごとに詳しく解説していきます。
3-1. 課税所得を算出する
法人税の計算方法でも触れましたが、計算をする際は課税所得が重要です。必ず正確に計算しておきましょう。
課税所得は「益金ー損金」で算出することができます。益金として参入できるのは債券や株式投資の譲渡益、サービス提供の収益などです。益金の加算調整では、役員報酬や寄付金など損金不算入となる項目に注意しましょう。
損金に算入するのは販売費や一般管理費、商品の原価などです。減算調整の際には、益金不算入となる税金の還付金、保有資産の評価益などを加味する必要があります。
収入または支出ごとに、益金算入や益金不算入、損金算入や損金不算入を判断していきましょう。
3-2. 適用される法人税率を把握する
自社に適用される法人税率の確認も忘れてなりません。法人税率は比例税率(固定税率)が適用されるため、企業の財政状況や事業内容、どれだけ利益を上げたかによって異なります。
平成31年4月1日以降に事業を開始した事業者に対する主な税率区分は下記の通りです。
事業者区分 | 年間課税所得が800万円以下の部分 | 年間課税所得が800万円超の部分 |
普通法人 | 15% | 23.20% |
上記以外の普通法人 | 23.20% | |
協同組合 | 15% | 19% |
普通法人場合、資本金が1億円を超えていれば法人税の税率は23.2%となります。ただし、中小企業には法人税の軽減措置が適用となります。軽減措置の適用例は、資本金が1億円以下の場合や、資本や出資を有していない場合、資本金が5億円以上の法人との支配関係がないことなどです。
所得金額が年800万円を超える部分に対して法人税率23.2%、それ以外の部分に対して15%で計算します。なお、適用除外事業者については法人税率が19%となっています。
普通法人以外の法人は法人税の税率がやや低くなります。例えば協同組合等や医療法人では、所得金額が年800万円を超える部分で19%、それ以下の部分で15%となっています。ただし、協同組合等や医療法人が連結親法人の場合には税率が異なります。
どの税率が適用となるか判断できないときには、国税庁のサイトで調べたり、税務署に問い合わせたりするとよいでしょう。
3-3. 中間申告が必要か確認する
法人税は特定の条件を満たしている企業を除き、中間納付が必要です。法人税中間納付が不要になる条件は以下のとおりです。
- 前年度の法人税額が20万円以下である場合
- 創立して1年目の法人である場合
- NPO法人に該当する場合
これらのいずれかに該当する場合を除き、法人税は中間納付をしなくてはなりません。中間納付を忘れてしまった場合は、追徴課税が発生する恐れがあります。前年度は中間報告の対象外であっても、本年度は対象になっていることも珍しくありません。
特に創立して間もない会社や、利益が増えてきた会社は法人税は途中で中間納付が必要になる可能性が高いです。必ず自社の状態を確認し、中間納付が必要な場合は手続きを進めましょう。
4. 法人税計算後の仕訳方法
法人税を計算したあとには取引の仕訳を反映する必要があります。
企業によって仕訳を反映させるタイミングは異なります。中間報告・決算・確定申告の3つのタイミング別に仕訳内容を確認していきましょう。
4-1. 中間申告
中間申告時の仕訳は、確定申告前のため納税額が確定していません。そのため、使うのは「仮払法人税等」という勘定科目です。
例:法人税中間納付で45万円を当座預金から納付した
借方 | 貸方 | ||
仮払法人税等 | 450,000円 | 当座預金 | 450,000円 |
納付した45万円は確定債務ではないため、負債の部には形状しません。資産の部で仮払いとして処理をしておき、決算まで清算待ちの状態でおいておきます。後述する決算時と確定申告時の仕訳とは性質が大きく違うため、誤った処理をしないように注意しましょう。
4-2. 決算
決算時の仕訳は、株主総会での決算確定後におこなうものです。すでに中間申告で一部の法人税を納付しているため、それも併せて処理をすることになります。
例:法人税の確定年税額が120万円だった
借方 | 貸方 | ||
法人税等 | 1,200,000円 | 仮払法人税等 | 450,000円 |
未払法人税等 | 750,000円 |
法人税中間納付で45万円をすでに納付しているため、それを貸方の仮払法人税等で処理をし、残りの75万円を未払法人税等として処理をしています。中間納付をしていない場合は仮払法人税等の処理は不要ですが、している場合は忘れずに入力しましょう。
4-3. 確定申告
確定申告をおこなうことで、初めて法人税を納税することになります。中間納付をしている場合は、残りの法人税を納税します。その場合の仕訳は以下のとおりです。
例:仮払法人税等として計上していた法人税の残り75万円を当座預金から納付した
借方 | 貸方 | ||
未払法人税等 | 750,000円 | 当座預金 | 750,000円 |
中間申告の時と似ていますが、未払法人税として処理する点に注意が必要です。この確定申告時の納付・仕訳で1年分の法人税をすべて納税したことになります。
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関連記事:法人税の勘定科目とは?ケースごとの仕訳ルールや注意点を解説
5. 法人税計算後が終わったら納付書も準備しよう
法人税を納付するときには、納付書とよばれる書類を提出します。法人税納付の際には、手間のかかる申告書の作成に注力しがちですが、納付書も忘れずに用意しましょう。法人税の納付期限は申告期限と同様に事業年度の終了日(期末)から2ヵ月以内です。
ただし、法人税には中間申告といって納付額の半分を前払いする制度があります。中間申告は前年の納税額が20万円以上である企業が対象です。事業年度の開始日から6ヵ月が経過した日(期首)から2ヵ月以内に前期の納税額に応じて納付します。
法人税をいつ払うのかは、自社の事業年度によって異なるため、把握しておきましょう。
法人税の納付書は、法人税申告前に税務署から郵送されてきます。書類がない場合には税務署で入手できます。
法人税納付書は複写の構造になっており、既に事業者名が記載されています。本税や重加算税、加算税、利子税、延滞税、合計額などを記入する金額欄は空欄となっています。この部分には必要となる金額を記載しましょう。期限内に提出や納税ができれば、加算税や利子税、延滞税などはかかりません。
納付書の整理番号の欄には、確定申告書などに記載されている整理番号を転記します。また、申告区分の欄には、中間申告なのか確定申告なのかを記載します。
関連記事:法人税申告書とは?提出に必要な明細書や作成方法、提出方法を紹介
6. 法人税の計算を正しくおこなって期日を守った正確な納付をしよう
法人税は基本的には、課税所得に所定の税率をかけることで求められます。ただし、法人税の税率は法人の種類や条件によって大きく変わります。
税務署や国税庁のホームページを確認すれば、自社にどの法人税率が適用されるかを把握できます。具体的な税率を把握し具体的な税額を計算しておけば、効果的な税金対策につなげることができるかもしれません。
法人税の納付や申告には複雑な手順が必要となります。余裕のあるスケジュールで手続きを進めていくよう意識しましょう。
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