電子帳簿保存法に基づくタイムスタンプを付した契約書作成方法
更新日: 2023.3.2
公開日: 2021.1.25
FURUYA

契約書や帳簿、領収書など、企業は非常に多くの書類を保存することが法律で義務付けられています。
こういった書類は年々増加していくので、企業によっては保管のために多くのスペースが費やされているかもしれません。
そんな莫大な量の書類も、実は電子帳簿保存法にのっとった手続きを取れば、データで管理できるようになります。
今回は、電子帳簿保存法に基づいた契約書の作成・保管方法について解説していきます。
「23年度の税制大綱の内容について知りたい」
「契約書を電子データで保存するにあたり必要な要件を確認したい」
電子帳簿保存法では、国税関係書類の一つとして、契約書のデータ保管の方法についても定めています。 そのため、契約書を扱う法務部門や営業部門の担当者も理解しておく必要があると言えるでしょう。
とはいえ「保存要件が複雑かつ改正も多く、内容をなかなか理解できない」という方も多いのではないでしょうか。 そこで今回、電子帳簿保存法の概要や令和5年度の税制大綱で発表された変更点など網羅的にまとめた資料を用意しました。
契約書を電子化したい、電子帳簿保存法に正しく対応したいという方には大変参考になる内容となっておりますのでぜひご覧ください。

目次
1. 電子帳簿保存法におけるタイムスタンプの意義

電子帳簿保存法にのっとって契約書を保存するには、正しい知識を身に着けておくことが大切です。
まずは、電子帳簿保存法とタイムスタンプについて知識を深めていきましょう。
1-1. 電子帳簿保存法とは
電子帳簿保存法とは、国税帳簿書類の電子データでの保存を認める法律です。
1998年7月に制定されたもので、2015年には3万円以上の契約書や領収書のスキャナ保存も対象になり、翌年にはスマートフォンで撮影した領収書も電子保存が可能になりました。
ちなみに電子帳簿保存法の導入は企業の一存では行えず、管轄の税務署長の事前承認が必要です。
また、指定の申請書を国税庁に提出することが求められています。
こういった手続きの煩雑さから、電子帳簿の保存はなかなか普及が進んでいないのが現状です。
実際、約8割以上の企業が未だ電子帳簿保存法に対応したシステムを導入できていなことがわかっています。
企業の「脱”紙・はんこ問題”」に一役買ってくれることを期待されている電子帳簿保存法。今はまだ普及が進んでいませんが、今後の働き方改革やテレワークの普及で業務のクラウド化が進むことが予想されています。
そういった事態に備えるためにも、企業の担当者は早い段階からと電子帳簿保存法の知識を持っておくことが大切になります。
1-2. 電子帳簿の運用に欠かせないタイムスタンプの意義
電子帳簿の運用をする上で欠かせないのが、タイムスタンプです。
タイムスタンプは、電子化した文書が「原本」であることを証明するために使用されるマークで、電子データと時刻を組み合わせて構成されるものです。
タイムスタンプを付す目的としては、以下の2つが挙げられます。
- 入力日の特定
- 改ざんの検知
タイムスタンプは、ある時刻にその電子データが存在していたことを証明する効果があることに加え、データが変更や改ざんを受けていない原本であることを証明するときに役立ちます。
1-3. タイムスタンプが必要な書類
タイムスタンプが必要だとされている書類は、電子帳簿保存法で「スキャナ保存」が認められている書類となります。
具体的にタイムスタンプが必要な書類としては、以下のようなものが挙げられます。
- 資金や物の流れに関わる、とくに重要な書類
契約書や領収書など - 資金や物の流れに関わる、直結する書類
小切手や約束手形請求書や納品書など - 資金や物の流れに関わらない書類
研修所や見積書、注文書や契約の申込書など
電子帳簿を正しく運用するには、タイムスタンプが求められる書類の種類を正しく知っておくことが大切です。
運用前は、電子帳簿保存法についての知識をしっかりと身につけるようにしましょう。
関連記事:【令和3年】電子帳簿保存法とは?基礎知識・改正点・対応方法を解説
2. 電子帳簿保存法に基づくタイムスタンプを付した契約書作成方法

それでは、実際に電子帳簿保存法にのっとってタイムスタンプを付した契約書を作成する際は、どのように手続きを進めいていけばいいのでしょうか。
ここでは、タイムスタンプを付した契約書の作り方を3ステップで解説していきます。
2-1. 契約書の作成
まずは契約書を作成していきます。紙媒体の契約書の場合、スキャンしたデータだけではなくスマートフォンやデジタルカメラの撮影による電子化も可能です。
ただし、タイムスタンプの付与が完了しても、電子帳簿保存法の適用事務処理用件である「定期的な検査」が終わるまでは原本を捨てることはできません。
間違えて破棄してしまわないように、十分注意しましょう。
2-2. タイムスタンプの発行
契約書が用意できたら、契約書の信頼性を保つために第三者機関にタイムスタンプの発行を依頼しましょう。
タイムスタンプの発行依頼をすると、保存したい電子書類の情報(ハッシュ値)と時刻情報が合成され、「その時刻のこの内容で書類が存在した」ことを証明する「タイムスタンプトークン」が依頼者に返されます。
これが「タイムスタンプの発行」で、依頼者はこのタイムスタンプトークンと契約書の原本をともに保管しておくことが求められます。
2-3. タイムスタンプを保存する
発行されたタイムスタンプは、大切に保管して運用していきましょう。
原本の照明が必要になったときは、タイムスタンプ局から鍵を受け取り、タイムスタンプトークンとハッシュ値を照合して内容が合致しているかを確認します。
このとき内容が合致しなければ、原本が改ざんされてしまっていることになります。
関連記事:電子帳簿保存法のタイムスタンプって何?利用方法や要件も解説
3. 電子帳簿保存法に基づくタイムスタンプを付した契約書作成の注意点

最後に、タイムスタンプを付した契約書を作成するときの注意点について解説していきます。正しく運用するためにも、必ず確認しておきましょう。
3-1. 原本の復元はできない
タイムスタンプを発行すれば、電子書類の信頼性を確保することが可能です。
しかし、タイムスタンプは原本を保管するものではないため、原本を紛失してしまえば当然復元することはできません。
定期的な検査をおこなう際に、画像データと原本を見比べる作業が必要となります。それまでは、原本を破棄することがないように注意しましょう。
3-2. データの重複を防ぐ
タイムスタンプを付せばさまざまな書類が電子保存できて便利ですが、事務処理上の不正やデータの重複が起きてしまうリスクがある点に注意しましょう。
たとえば、同じ契約書や領収書を別の2人が撮影して、それぞれが提出してタイムスタンプを付与してしまえば、同じ契約書や領収書が2通存在してしまうことになります。
こういったことを防ぐためにも、書類に自署で記名してから書類をデータ化することが求められているのです。
3-3. 年に1回の定期検査をおこなう
スキャナ保管制度では、1年に1回以上の定期的な検査が義務付けられています。
検査の目的は、前回の検査以降に行われたすべての作業が適性事務処理要件に沿っておこなわれていたかどうかを確認すること。
おこなった検査は実施記録に残し、「誰が、いつ、どのような検査をしたか」を確認できるようにしておく必要があります。
この定期的な検査が終わったあとは紙の原本を破棄することが認められていますが、それまでは紙の原本を破棄することはできないため、注意が必要です。
検査の際は紙の原本とデータを見比べて内容に相違がないか確認する必要があるので、それまでは原本を捨てないようにしておきましょう。
4. タイムスタンプを活用して電子帳簿を正しく運用

タイムスタンプを付与することで、莫大な量の領収書や契約書をデータで保管することができるようになります。
まだまだ浸透していない書類の電子化ですが、企業にとっては事務手続き負担の軽減や省スペースの実現など、メリットが豊富に存在しています。
一度導入しておけばその後の処理の簡易化や高速化が叶うため、ぜひ書類の電子保存も視野に入れてみてください。
また、書類のデータ化と合わせて経費精算システムを導入すると、日々の経理処理の業務が簡易化されます。
より効率的な経理作業のためにも、経費精算システムの導入も検討してみましょう。
関連記事:電子帳簿保存法のタイムスタンプ、費用ってどのくらい?導入手順も解説
関連記事:電子帳簿保存法におけるタイムスタンプの仕組みを徹底解説
「23年度の税制大綱の内容について知りたい」
「契約書を電子データで保存するにあたり必要な要件を確認したい」
電子帳簿保存法では、国税関係書類の一つとして、契約書のデータ保管の方法についても定めています。 そのため、契約書を扱う法務部門や営業部門の担当者も理解しておく必要があると言えるでしょう。
とはいえ「保存要件が複雑かつ改正も多く、内容をなかなか理解できない」という方も多いのではないでしょうか。
そこで今回、電子帳簿保存法の概要や令和5年度の税制大綱で発表された変更点など網羅的にまとめた資料を用意しました。 契約書を電子化したい、電子帳簿保存法に正しく対応したいという方には大変参考になる内容となっておりますのでぜひご覧ください。



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