インボイス制度は個人事業主に関係ある?気になる対策も徹底解説
更新日: 2024.1.17
公開日: 2021.11.24
jinjer Blog 編集部
2019年10月の消費税増税と軽減税率の導入を受け、2023年より導入が予定されている「適格請求書等保存方式(インボイス制度)」は、個人事業主やフリーランスといった小規模事業者に大きな影響を与えるとされています。
ここでは、インボイス制度が個人事業主に与える影響を解説するとともに、個人事業主が取るべき対策やあらかじめ注意しておくべき点について紹介していきます。
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1.2023年からはじまるインボイス制度とは?
2023年10月1日からインボイス制度が施行されます。簡単に概要を説明していきます。
インボイス制度(適格請求書等保存方式)とは、「インボイス(適格請求書)」を用いて、仕入税額控除を受けるための制度です。
2023年(令和5年)10月1日より導入されることになっており、インボイスを交付できるのは、税務署長の登録を受けたインボイス発行事業者(適格請求書発行事業者)のみです。
また課税事業者でなければ、インボイスの発行事業者への登録は出来ません。
2.インボイス制度は個人事業主(フリーランス)に大きな影響を及ぼす
インボイス制度の導入は、個人事業主やフリーランスに大きな影響を及ぼすとされています。
個人事業主の中でも、取引先が企業などの課税事業者にあたり、年間の売上が1,000万円以下とされる「免税事業者」は、特に大きな影響を受けるとされています。
では、その理由にはどのようなことが考えられるのでしょうか。
2-1.個人事業主(フリーランス)などの免税事業者が影響を受ける理由
免税事業者が影響を受ける主な理由として、適格請求書の発行が可能なのは、「適格請求書発行事業者」として登録を受けた課税事業者だけであることが挙げられます。
2023年に導入が予定されているインボイス制度では、あらかじめ税務署に登録・申請をおこなっている「適格請求書発行事業者」のみが発行できる適格請求書がない場合、仕入れ税額控除を受けることができません。
請求書や納品書を発行する際にも、適格請求書に記載された「適格請求書発行事業者の登録番号」を記載できないため、仕入れ税額控除を受けることができないのです。
そのため、免税事業者である個人事業主(フリーランス)は、仕事上さまざまな場面で影響を受ける可能性があると考えられています。
3.インボイス制度は個人事業主の廃業にもつながる
上記の理由よりインボイス制度が個人事業主(フリーランス)に及ぼす影響は大きく、廃業につながる恐れもあるといわれています。
インボイス制度が個人事業主(フリーランス)に与える影響には、次の3つが挙げられます。
- 消費税分の減額を要求され、売上が減る
- 取引先が減る可能性が高くなる
- 課税事業者登録を提案される可能性がある
以下、具体的にこれら3つの影響について確認していきましょう。
3-1. 消費税分の減額を要求され、売上が減る
インボイス制度が適用されると、課税事業者が個人事業主やフリーランスなどの免税事業者と取引した場合に支払う消費税の控除は対象外となります。
その結果として、個人事業主に対し消費税分の減額を要求する課税事業者が出てきます。消費税分が支払われないことで、個人事業主側の売上も減少する恐れが出てくるのです。
3-2. 取引先が減る可能性が高くなる
取引先から課税事業者への登録や単価の減額を求められた場合、個人事業主側が応じなければ、取引するメリットがないとされ、契約を打ち切られてしまう可能性も出てきます。
そのため、インボイス制度が導入されることで、個人事業主の取引先が減少してしまう事態も発生します。
3-3. 課税事業者登録を提案される可能性がある
場合によっては、免税事業者である個人事業主が、取引先から課税事業者登録を提案されることも考えられます。
課税事業者になるには、「適格請求書発行事業者の登録申請書」を作成して、税務署に提出しなければなりません。同時に消費税の納税義務が発生すること、また課税事業者になったのち2年間は納税事業者に戻れないことから、慎重に検討をおこなう必要があります。ただし、2023年10月1日に課税対象者となっていた場合は、2年経過する前に納税事業者に戻れる場合があります。2023年10月2日から課税対象となった場合は、2年間待たなければならないため、注意しましょう。
4.インボイス制度に個人事業主が取るべき対策
インボイス制度に個人事業主(フリーランス)が取るべき対策には、次の4つが挙げられます。
- 適格請求書発行事業者に登録する
- 会計ソフトの見直しを行う
- 新たな制度に合わせた請求書フォーマットを用意する
- 免税事業者の場合課税事業者になるか検討する
以下、具体的にこれら4つの対応について確認していきます。
4-1. 適格請求書発行事業者に登録する
2023年10月のインボイス制度開始までに適格請求書の発行開始が可能となるようにするには、制度開始前までに適格請求書発行事業者に登録をおこなわなければなりません。
インボイス制度開始以降に登録をおこなった場合は、制度の開始直後から適格請求書を発行することはできませんので注意しましょう。
4-2. 会計ソフトの見直しをおこなう
会計処理に会計ソフトを利用している場合には、インボイス制度に対応したソフトであるか確認しておく必要があります。制度に対応していないソフトを利用している場合は、インボイス制度に対応した製品を導入するなど、見直しをはかっておくようにしましょう。
4-3. 新たな制度に合わせた請求書フォーマットを用意する
インボイス制度の内容に合わせた請求書のフォーマットを準備しておくと、制度開始後の移行がスムーズに進みます。
新たなフォーマットには、適格請求書等保存方式に必須とされる要件を記載するようにし、漏れがないかあらかじめ確認をしておくとよいでしょう。
4-4. 免税事業者の場合課税事業者になるか検討する
インボイス制度が開始されると、課税事業者が免税事業者と取引をおこなった際に仕入税額控除ができなくなってしまうため、免税事業者との取引を不利と考えるケースも出てきます。
実際に、取引先から課税事業者になるよう働きかけを受ける可能性も出てくるでしょう。そこで、適格請求書発行事業者に登録して、課税事業者となることを検討してみる必要があります。課税事業者になると、適格請求書の発行ができるようになるため、インボイス制度の適用対象となります。
5.インボイス制度で個人事業主が注意すべきこと
インボイス制度の開始に伴い、個人事業主が注意しておくべき点には、次の3点が挙げられます。
- 利益が減少する可能性があるため、資金繰りに気をつける必要がある
- 適格請求書の書き方を理解しておく
- 証憑書類の書き方をインボイス制度に対応したものにする
以下、これら3つの注意点について確認します。
5-1. 利益が減少する可能性があるため、資金繰りに気をつける必要がある
インボイス制度導入により、益税分の利益が減少することが考えられます。収入額が減少するため、今まで以上に資金繰りに注意する必要が出てきます。
5-2. 適格請求書の書き方を理解しておく
インボイス制度で重要となる適格請求書を作成するためには、書き方のポイントをおさええる必要があります。登録番号のほか、税率ごとの商品価格の合計金額や消費税金額など、必須となる項目についてはもれなく記載しておかなければなりません。
5-3. 証憑書類の書き方をインボイス制度に対応したものにする
インボイス制度が開始されると、インボイス制度に対応した証憑書類を保存しておかなければなりません。そのためには、インボイス制度に沿った証憑書類となるよう、書き方の見直しをおこなっておくとよいでしょう。
6.インボイス制度を正しく理解し、適切な準備を進めよう
現状、取引先が課税事業者となっている年間売上1,000万円以下の個人事業主やフリーランスにとって、インボイス制度は大きな影響を及ぼします。個人事業主が受ける影響を最小限に留めるためには、制度の概要を正しく理解し、早めに必要な対策をとっておくことが大切です。
個人事業主(フリーランス)といっても、美容師やデザイナー、エンジニア、一人親方など多種多様な業界があるので、インボイス制度の影響は様々です。
幸い、インボイス制度の導入までにはまだ時間があります。制度が開始までの間にしっかりと準備しておきましょう。
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