正常営業循環基準とは?意味や考え方をわかりやすく解説
更新日: 2024.1.15
公開日: 2022.10.21
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正常営業循環基準とは、貸借対照表において、資産や負債を「流動」「固定」に分類する際のベースとなる基準です。
貸借対照表は、企業の1年間の経営状態を客観的に把握するための手掛かりとなる財務諸表の一つです。資産・負債の分類は非常に重要なポイントとなるため、区分を間違えないように注意しなければなりません。
本記事では、正常営業循環基準の意味や考え方・1年基準との違いを紹介します。流動・固定に分類される項目についてもまとめているため、分類に迷う人はチェックしてみてください。
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1. 正常営業循環基準とは?
正常営業循環基準は、貸借対照表を正しく作成する上で知っておくべき基準です。意味や1年基準との違いについて理解しましょう。
1-1. 流動・固定の区分を判断するための基準
正常営業循環基準は、貸借対照表の資産・負債について「固定区分か・流動区分かを判断する際の基準です。
正常営業循環基準では、通常の「営業サイクル」に属する資産や負債は全て「流動区分」に振り分けます。
ここで言う営業サイクルとは、企業が利益を作り出すための、通常の事業サイクルのことです。例えば製造業なら、「仕入→製造→在庫→販売→回収」という流れで収益を上げていると考えられます。
このサイクルの途中で海だされる資金や負債は、ひとまず流動と考えればよいでしょう。
1-2. 1年基準(ワンイヤー・ルール)との違い
貸借対照表で資産や負債を固定・流動に分類するとき、正常営業循環基準と同様に基準とされるのが1年基準(ワンイヤー・ルール)です。
正常営業循環基準と1年基準の違いは、1年基準が「1年」を基準に資産や負債を分類する点です。
1年基準では、「決算日(貸借対照表作成日)の翌日から、1年以内で現金化・収益化・決済されるもの」を流動区分として分類します。
1-3. 流動・固定区分では正常営業循環基準が優先される
貸借対照表で流動・固定の分類を行う場合は、1年基準よりも正常営業循環基準が優先されます。1年基準が適用されるのは、正常営業循環基準に分類できなかった資産や負債です。
なぜ正常営業循環基準が優先されるのかというと、企業の営業活動サイクルは業種や規模などで異なるためです。
企業によっては年をまたいで決済したり収益化したりが珍しくないケースもあります。このような企業に1年基準を適用すると、企業経営の実態に即した財務諸表を作成できません。営業活動サイクルが長い企業なら、「経営状態に不安がある」と判断されるケースもあるでしょう。
貸借対照表では正常営業循環基準・1年基準を併用し、なるべく現状に近い数値を帳簿に反映させています。
2. 流動区分に計上される項目
貸借対照表では、借方に資産・貸方に負債と純資産を記載します。資産と負債は流動・固定に分類され、まとめて記載されなければなりません。
正常営業循環基準・1年基準で流動区分に分類されるのは、どのような項目なのでしょうか?具体的に見ていきましょう。
2-1. 流動資産
流動資産は、短期間で現金化できる資産です。流動資産に該当する主な勘定科目を紹介します。
2-1-1. 現金
企業活動に関わる現金は、流動資産として分類されます。硬貨や紙幣はもちろん、他人振り出しの小切手・送金小切手など、「現金と同様」と考えられるものは現金として計上しましょう。
2-1-2. 普通預金
一般口座に入れている普通預金は、いつでも引き出しが可能です。流動資産として処理を行っても問題ありません。なお定期預金は「固定資産」ですが、満期が到来する時期に注意が必要です。
満期まで1年を切った場合は、定期預金でも流動資産として処理しなければなりません。
2-1-3. 受取手形
受取手形とは、以下のような手形です。
・約束手形
・割引手形
・為替手形
・先日付小切手など
受取手形は、「一定の期日後に手形の額面を支払う」と約束のもと振出された手形です。
手形の期日手形の支払期日は振り出す側・受け取る側で協議しますが、上限は120日とされています。1年以上持ち越すことはあり得ないため、流動資産として計上しましょう。ただし相手が倒産するなどをした場合は、受け取り不能となるケースもあります。
2-1-4. 売掛金
売掛金とは、商品・サービスの対価として、将来的に金銭を受け取れる権利です。企業の営業活動サイクルの中で生じる「未回収の債権」という扱いとなるため、流動資産に分類されます。
1年以内に回収できるケースがほとんどですが、取引相手が倒産した場合は、債権を回収できません。
2-1-5. 有価証券
国債・社債の債券、企業株式の株券といった有価証券も、流動資産です。ただし、対象となるのは「売買や保有を目的とするもの」で、「満期日が1年以内のもの」に限定されます。
2-1-6. 流動負債
1年以内に決済される負債は、流動負債として処理します。流動負債に該当するのは、以下のような科目です。
2-1-7. 買掛金
買掛金とは、仕入に関わる費用を「後払い」で支払う時に発生する負債です。債務が消滅するのは支払が終わった時点となります。
一般的な企業間取引で、買掛金の支払に1年以上の猶予が与えられるケースはほぼありません。流動負債として分類しましょう。
2-1-8. 短期借入金
金融機関からの借入金で、返済期日が1年以内に設定されているものです。決済までの期間が短いため、流動負債に含まれます。
また返済期日が1年以上の「長期借入金」でも、返済期日が1年以内に迫っている場合は「短期」と同じです。流動負債として処理してください。
2-1-9. 前受金
商品やサービスを販売する際、商品代金の一部あるいは全部を前もって受け取った際のお金です。「内金」や「手付金」とも呼ばれ、商品やサービスを受け渡すまでは流動負債となります。
2-1-10. 未払金
営業活動以外の「非継続的取引」で発生する負債です。消耗品を後払いで購入した時などに発生します。仕入に関するものは買掛金となるため注意しましょう。
3. 固定区分に計上される項目
固定区分に計上されるのは、正常営業循環基準・1年基準にも該当しない資産や負債です。どのようなものがあるのか、詳しく見ていきましょう。
3-1. 固定資産
固定資産とは、1年以上の長期にわたって保有される資産・資金です。ただし「土地、減価償却資産、電話加入権その他の資産で政令で定めるもの」は、法人税法で固定資産として扱うことが決まっています。
固定資産に該当する、主なものを紹介します。
3-1-1. 有形固定資産
その名のとおり、形のある固定資産です。土地・建物・車両・機器などが該当します。土地以外は決算ごとに「減価償却」を行う必要がある「減価償却資産」です。一方土地は月日がたっても価値は変わらないため「非減価償却資産」となります。
3-1-2. 無形固定資産
特許権、商標権、営業権などは、形を持たない「無形固定資産」に分類されます。特許権などは時がたてば時代遅れとなり得るため、計上する際は減価償却処理が必要です。
3-1-3. その他の資産
流動資産に属さない有価証券やその他の固定資産は、「その他の資産」として処理されます。満期まで1年以上ある長期預金や満期保有目的の債券、長期貸付金などがある場合は、固定資産として計上してください。
3-2. 固定負債
固定負債とは、決済までに1年以上猶予がある負債のことです。正常営業循環基準と1年基準によって「固定負債」と分類されるものを見ていきましょう。
3-2-1. 長期借入金
返済日までの猶予が1年以上ある借入金です。ただしそのうちの一部について返済期限が1年を切った場合は、「返済日が1年以上先」「返済日が1年以内」のものに分けて記載しなければなりません。
3-2-2. 社債
社債は、企業が資金を集めるために発行する債券です。支払期限は1年以上で設定することがほとんどのため、固定負債として計上します。
その後、支払期限が1年を切った場合は、流動負債に仕訳しましょう。
3-2-3. 預り保証金
賃貸借契約などで、担保として受け取る保証金です。契約が終了した時点で返済の義務があるため、負債として計上しなければなりません。「将来返済しなければならないお金」として固定負債に含めるのが一般的です。
4. 正常営業循環基準について正しく理解しよう
正常営業循環基準とは、通常の営業活動サイクルで生じる資産や負債を「流動」に分類するとする基準です。貸借対照表で資産と負債を分類する際、優先度の高い基準として活用されます。
同じく貸借対照表の分類には1年基準も使われます。こちらは「決済や現金化が1年以内かどうか」で判断する基準です。貸借対照表の分類に迷ったら、まず正常営業循環基準、次に1年基準を適用しましょう。
貸借対照表は、企業の1年の経営状態を数値で可視化した重要な財務諸表の一つです。仕明を正しく行い、現状に即した資産・負債を計上してください。
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