贈答品は経費になる?勘定科目に迷うケースと仕訳の注意点
更新日: 2024.5.8
公開日: 2023.5.14
jinjer Blog 編集部
相手への感謝の気持ちを込めて贈られる贈答品は、経費として扱うことができます。しかし、渡す相手、渡す品物によっては経費計上できないものもあるため注意が必要です。
そこで今回は、贈答品の対象となる品物や、経費として計上する場合の勘定科目と仕訳方法、注意点について解説します。贈答品の勘定科目にはいくつか種類があり、計上できる金額に上限が設けられている場合もあるので、勘定科目ごとに仕訳条件をチェックしておきましょう。
86個の勘定科目と仕訳例をまとめて解説
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1. 贈答品とは
贈答品とは、「行事やお祝い事の際に贈られる品物」を指します。一般的には「感謝や祝福の気持ちを込めて贈られる品物」と認知されています。
企業においては、主に、取引先などの社外の事業関係者に対する贈り物を指す言葉として扱われますが、場合によっては従業員や一般消費者への贈り物も含まれます。ただし、一口に贈答品とはいっても、経費計上の対象となる品物には条件があります。
ここでは経費計上可能な贈答品の種類と、計上できないケースについて紹介します。
1‐1. 経費として計上できる品物
経費として扱われる品物は、大きく分けて「手土産」「謝礼品」「お中元、お歳暮」「お祝い品、返礼品」の4つです。
手土産
取引先を訪問する場合や、来客をもてなす際に用意する手土産は経費として扱われます。
関連記事: お土産代とは?経費として仕訳する場合の勘定科目と注意点
謝礼品
自社サービスや製品の販売に協力を得た得意先に対して、あるいは営業先で相手の時間をいただいたことに対して、感謝の気持ちを込めて贈る贈り物も経費で落とせます。
お中元、お歳暮
取引先との良好な関係性構築や、円滑な事業推進を目的に、お中元、お歳暮を贈る場合も経費計上が可能です。
お祝い品、返礼品
取引先や得意先の冠婚葬祭に持参する贈り物も経費として扱えます。結婚祝いや引っ越し祝いなどの際に花を贈ったり、葬儀に香典を持参する場合、それにかかる支出は経費計上できます。
反対に、会社関係者の冠婚葬祭を執り行うときには、取引先から贈答品を受け取ることがあるでしょう。このような場合、多くはお返しとして返礼品を贈りますが、この返礼品も経費として扱えます。
1‐2. 経費として計上できないケース
「手土産」「謝礼品」「お中元、お歳暮」「お祝い品、返礼品」の役割を持つ贈答品であっても、次のような場合には、経費として認められません。
事業に関係のない人に贈る場合
贈答品が経費として扱われるのは、贈り先が取引先や得意先などの事業関係者である場合に限ります。そのため、家族や同僚などの事業に関係のない相手に向けて購入した贈答品は、経費扱いにはならないため注意が必要です。
贈答品として購入したのに自分で使用する場合
取引先や得意先に渡すことを前提に、贈答品の経費計上が認められているため、自分で使ってしまった場合には経費にはなりません。贈答品として購入した場合であっても、例外なくNGです。
個人事業主や役員のみで構成された企業の場合(福利厚生費として処理する場合)
後ほど詳しく紹介しますが、贈答品の勘定科目の一つに「福利厚生費」があります。
これは従業員の慰労目的で飲食物をふるまった際などに発生する経費ですが、個人事業主であったり、従業員が経営者一人だけという場合には、贈答品の使用目的において公私の区別がつきにくくなるため、経費計上の容認が難しいケースがほとんどです。
2. 贈答品の勘定科目は「接待交際費」「広告宣伝費」「福利厚生費」の3つ
贈答品の購入にかかる費用を経費として仕訳する場合、勘定科目は「接待交際費」として計上するのが基本です。ただし、中には「広告宣伝費」「福利厚生費」で処理する方が適切なケースもあるので、細かい条件をチェックして仕訳を間違えないようにしましょう。
2‐1. 接待交際費
取引先や得意先などに贈ることを目的とした、ビジネスに関係する贈答品は、原則「接待交際費」として計上します。
取引先へのあいさつ回りや会食の際に持参する手土産、トラブルに対するお詫びの品のほか、株主総会で渡す自社製品外の手土産も、接待交際費に含まれます。ただし、企業規模やビジネス形態によって、接待交際費の上限金額は異なります。
大企業…接待飲食費*の50%
中小企業(資本金1億円未満)…接待飲食費*の50%または800万円まで(どちらかを上限として選択できる)
個人事業主…上限なし
*接待飲食費…接待交際費のなかでも、特に事業に関係する取引先などを接待した際に発生する飲食代。
<例>得意先の役員が来社するため、手土産として6,000円の菓子折りを用意した。6,000円は現金で支払った
借方 | 貸方 | ||
接待交際費 | 6,000 | 現金 | 6,000 |
2‐2.広告宣伝費
不特定多数の一般消費者に無償で配布する、宣伝目的の品物の購入費用は「広告宣伝費」として計上が可能です。具体的には企業名をプリントしたカレンダーやうちわ、タオルなどが挙げられます。
<例>事業所の近隣に配布するオリジナル卓上カレンダーを500部制作、費用の140,000円を現金で支払った
借方 | 貸方 | ||
広告宣伝費 | 140,000 | 現金 | 140,000 |
2‐3.福利厚生費(従業員に贈る場合)
贈答品の贈り先が従業員である場合には、「福利厚生費」として処理できます。
たとえば、会社の創立記念日に従業員全員でパーティーを開く、非売品のオリジナルアイテムを配るなど、プレゼント対象が従業員であることが条件です。
また、「福利厚生費」を用いる場合は必ず従業員全員に贈る必要があります。渡す相手が特定の人のみだと、贈答品の金額分はその人への給与とみなされ、「福利厚生費」として計上できません。
<例>創立記念パーティーを開催し、従業員全員が参加した。飲食やレクリエーション代の70,000円を、現金で支払った
借方 | 貸方 | ||
福利厚生費 | 70,000 | 現金 | 70,000 |
3. 贈答品を経費計上する際の注意点
条件的には経費計上できる贈答品であっても、内容次第で税務署に否認されるケースもあります。
ここでは、贈答品を検討する際の注意点と、贈答品の受け渡しで大事なポイントを紹介します。
3‐1. 高額すぎる品物は経費にできない
贈答品にしては高額すぎる品物の場合は、税務署から否認される可能性が非常に高いです。特に、貴金属やアクセサリーなどは、贈答品であっても、換金目的や自分用へのプレゼントだと疑われやすいので、避けるのが賢明です。贈答品を選ぶ際は、1万円程度が妥当でしょう。
3‐2. 換金性の高い品物も経費にできない
こちらも換金(経費の水増し)目的に疑われやすいという理由から、贈答品には適しません。
換金性の高い品物には、金券・商品券といったチケットやブランド品など、専門ショップで売買した際に等価として金銭を受け取れる品物を指します。こういったものも、税務署から厳しく指摘される要因になるため、贈答品にはおすすめできません。
3‐3. 贈答品の内容と贈り先を記録しておく
税務調査では、誰にどんな贈答品を渡したかを厳しくチェックされるため、内容と贈り先は明確に記録しておく必要があります。不足があった場合は、税務署に否認されてしまいます。
領収書を期限までに必ず回収する、贈り先が多数の場合はリストで内容を把握しておくようにするなど、贈った記録を確かに残しておくようにしましょう。
4. 贈答品は状況に応じて適切な勘定科目で処理しよう
贈答品を経費として計上する場合には、「接待交際費」「広告宣伝費」「福利厚生費」の3つの勘定科目から検討できます。ただし、贈り先と内容に加え、企業規模によっても仕訳方法が異なるため注意が必要です。勘定科目ごとに細かい条件も設けられていることで、混乱してしまいがちですが、状況を冷静に整理して適切な勘定科目で贈答品を処理しましょう。
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