宛名なしの領収書って経理や法律上まずい?ケースごとに解説
更新日: 2024.10.10
公開日: 2020.12.1
OHSUGI
領収書をもらう際、「宛名は書かないで」「上様で」などと依頼するケースを見聞きすることがありますが、宛名が書かれていなかったり受取人以外の名称が書かれていたりした場合、その領収書は有効なのでしょうか。
実は、領収書の扱い方は、経理上と消費税法上で異なっております。
本記事では、宛名なしの領収書の扱い方について解説します。
「経理担当者になってまだ日が浅いため、基本知識をしっかりつけたい!」
「法改正に関する情報収集が大変で、しっかりと対応できているか不安・・・」
「仕訳や勘定科目など、基本的なこともついうっかり間違えてしまうことがある」などなど日々の経理業務に関して不安になることはありませんか?
特に経費精算は毎月頻繁に発生する経理業務ですが、細かいルールや規定があり、注意が必要です。また直近の電子帳簿保存法やインボイス制度など毎年のように行われる法改正に対して、情報を収集し適切に理解する必要があります。
そこで今回は、仕訳や勘定科目などの基礎知識から、経理担当者なら知っておきたい法律知識などを網羅的にまとめた資料をご用意しました。
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1. 宛名なしの領収書は有効?
まず明確にしておくべきことは、宛名なしの領収書が有効となるか無効となるかは、その領収書がどのような場合に使われるのかによって異なるという点です。
ここでは、経理上と消費税法上の2つの場合を見てみます。
1-1. 経理上は領収書に宛名がなくてもよい
「領収書をもらわなければならない」と思うのは、ほとんどが「経費として落とすために必要だ」という考えからでしょう。
実は、経費として計上する場合は、必ずしも領収書は必要ではありません。支払いの事実が明確になるものであれば、通帳上の支払いの記載などでも問題ないのです。
したがって、宛名のない領収書であっても、支払金額や支払日、使途、領収書の発行者情報などが書かれていれば、あまりに高額でない限りは有効とみなされます。
1-2. 消費税法上は宛名記載の領収書が必要
いっぽう、仕入税額控除の要件には「帳簿及び請求書等の保存」が義務付けられています。
この請求書に代わるものとして領収書が該当するのですが、消費税法で以下の項目の記載が規定されています。
- 書類の作成者(金銭を受領し領収書を発行した者)の氏名又は名称
- 課税資産の譲渡等をおこなった年月日(支払年月日)
- 課税資産の譲渡等に係る資産又は役務の内容(商品やサービスの内容など金銭の使途)
- 税率の異なるごとに区分して合計した課税資産の譲渡等の対価の額(支払金額)
- 書類の交付を受ける当該事業者(金銭を支払い領収書を受け取った者)の氏名又は名称
つまり、仕入税額控除の要件としては、原則、宛名のない領収書は認められないということになります。
1-3. 税務調査上は宛名は「あったほうがいい」
税務調査では少しでも疑われる書類はなくしていきたいところです。
実際、経理上認められる領収書だったとしても、税務調査で証拠書類として認められるとは限りません。
税務調査は正確な情報が必要になりますので、宛名は確実に「あったほうがいい」でしょう。
宛名のない領収書で起こりそうな問題として、高額な領収書にもかかわらず宛名が記載なし(もしくは上様など)で、品目が品代となっていれば、もちろん正確な情報とは言えません。そのため、多くの場合は認められないでしょう。
また、宛名がある方が望ましい理由として改ざんの防止も考えられます。宛名を自分で書くと言って悪用されてしまうケースもあります。
関連記事:この領収書の宛名、問題あり?各ケースと訂正方法を解説
1-4. 宛名を記載せずに領収書を発行できる事業
前述のように、仕入税額控除の要件として保存しておく領収書には、きちんと宛名が書かれていなければなりません。
しかし、例外として次の事業者が発行する領収書には、宛先が記載されていなくてもかまいません。前述の1~4が記載されていれば、その領収書は有効とみなされます。
- 小売業
- 飲食店業
- 旅客運送業(タクシー、バス、鉄道、航空会社など)
- 駐車場業
- 旅行業
- その他これらに準ずる事業で不特定多数の者に資産の譲渡等をおこなうもの
例えば、スーパーマーケットは小売業に該当するため、支払い時に受け取るレシートでも領収書として認められます。したがって、改めて領収書を発行してもらう必要はありません。
2. 宛名なしの領収書の経理上の扱い方と注意点
先にも述べましたが、経費で落とす場合は宛名なしの領収書でもかまいません。
しかし、いくつか扱い方に注意が必要となるので、しっかり確認しておきましょう。
【関連記事】経費精算のルール作成で押さえるべき7つのポイント|規定作成の目的や注意点を解説
2-1. 支払い内容(使途)をできるだけ明確にしておく
当然ですが、支払った内容が業務とまったく関連がなければ、経費としては認められません。
つまり、経費として落とすために領収書をもらうのであれば、宛名の有無よりも、何に支払ったのかをきちんと記載してもらうほうが重要です。
「お品代」などのあいまいな書き方では、税務調査が入った際に追及される可能性もあるため、注意しましょう。
2-2. 高額な領収書はできるだけ宛名を書いてもらう
高額な経費は税務署からのチェックが入りやすいものです。領収書に宛名が書かれていなければ、認めてもらえない可能性もあります。高額な支払いをした際に受け取る領収書は、宛名を書いてもらうことを忘れないようにしてください。
2-3. 社内規程に従う
法律上は問題がなくても、社内規程で宛名が必須となっていれば、宛名なしの領収書は認められず、経費として落としてもらえないでしょう。
規模の大きな会社であれば、宛名や内容がきちんと記載されているかだけでなく、飲食代であれば参加者の人数や氏名まで明記しなければならないと定めている場合もあります。
社内規程を確認し、決められたルールに則った記載内容の領収書をもらうようにしましょう。
3. 領収書は支払内容をきちんと証明するためのもの
経理上の領収書は、「会社や仕事で使うものにお金を支払った」ということをきちんと証明するものでなければなりません。
それ以外の支払いを経費で落とすために、宛名を空欄にしたり内容をあいまいに書いたりするケースが後を絶たないこともあり、そのような領収書は税務調査で厳しく追及されるのです。
あらぬ疑いをかけられないよう、 なぜ領収書に宛名が必要なのかを把握して、普段からきちんと必要な内容を領収書に記載してもらい、受け取るようにしておきましょう。
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