特別損失に該当するものや計上するメリットを解説
更新日: 2024.1.15
公開日: 2022.10.17
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損益計算書には5つの利益が記載されますが、そのうちのひとつである税引前当期純利益は、経常利益に特別損益を加減算して求めます。
この特別差益を構成する要素のひとつが特別損失です。
税引前当期純利益は、その年の会社の成績や業績を表す大切な利益ですので、計算に必要な特別損失のこともしっかり理解しておきましょう。
今回は、特別損失の概要と、特別損失に該当するものの例、特別損失を計上するメリットについて解説します。
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1. 特別損失とは?
特別損失とは、臨時的に発生した一過性の損失のことで、略して「特損」と呼ばれることもあります。
会社経営ではさまざまな損失が発生しますが、当初から想定できるものもあれば、予測不能の突発的なものもあります。
特別損失は後者にあたり、その期に例外的に発生した損失を指します。
ただ、何をもって特別損失とするかについて明確な判断基準がないため、特別損失として計上するか否かは会社ごとに検討する必要があります。
ちなみに、特別損失と対称的な位置にあるのが経常損失で、こちらは毎期間、反復して継続的に発生する損失を指します。
2. 特別損失に該当するもの
特別損失として計上するには、以下の性質を満たしている必要があります。
・来期以降も継続的に発生するものではない、臨時的な損失
・異常な事象によって発生した損失
・多額な損失
これらの性質を満たす主な例を8つご紹介します。
2-1. 固定資産売却損
固定資産売却損とは、土地や建物といった不動産や、車両といった固定資産を売却した際に発生する損失です。
固定資産は通常、購入した価格(取得価額)に一定の償却率を乗じて求めた減価償却費を差し引いた金額を毎年帳簿に記録し、費用(固定資産評価額)として計上する仕組みになっています。
ただ、帳簿に記録した固定資産評価額と、固定資産の売却価額は必ずしも一致しません。
売却価額によっては、帳簿に記録された価額より多くなることもあれば、少なくなることもあります。
そもそも固定資産はそう頻繁に売却されるものではないため、不動産や車両などを売却し、その価格が帳簿価額よりも少なかった場合は特別損失として計上することになります。
ただし、運送業など、毎年のように車両を買い替える業種の場合は特別損失とはみなされず、経常損失として計上されます。
2-2. 固定資産除却損
固定資産除却損とは、事業で廃棄処分した有形固定資産を除却することによって発生する損失のことです。
通常、固定資産は一定期間中、減価償却して費用計上しますが、償却中あるいは償却後に不動産を取り壊したり、車両を廃車にしたりした場合は、その時点での評価額を固定資産除却損として計上する必要があります。
固定資産除却損を計上する際は、除却時期が明記された稟議書や、廃車にしたときの引取証明など、除却の流れがわかる資料を保存しておきましょう。
2-3. 固定資産圧縮損
固定資産圧縮損とは、国から助成金を受け取って固定資産を取得した際、助成金に税金が課されないように計上する損失のことです。
受け取った助成金に税金が課税されると、助成金そのものの額が減ってしまうため、助成金を一度収益として処理した後、同額を固定資産圧縮損として計上します。
なお、ここでいう「助成金」とは、国庫補助金のほか、工事負担金や保険差益などが該当します。
2-4. 投資有価証券売却損
投資有価証券売却損とは、投資用に保有していた有価証券を売却した際に発生する損失です。
有価証券は保有する目的によって、売買目的有価証券や満期保有目的の債権、関係会社株式など複数に区分されますが、それ以外の有価証券、たとえば持ち合い株式や長期的に売約する予定の有価証券は「その他有価証券」に分類されます。
その他有価証券を売却し、損が出た場合は投資有価証券売却損として計上します。
2-5. 減損損失
減損損失とは、減損会計によって計上された損失のことです。
減損会計は、投資に見合う金額の回収が見込めない資産の価値を切り下げる処理方法です。
保有する固定資産の収益性が低下し、帳簿価格を下回る場合、減損会計によって下落した分を損失として計上します。
2-6. 盗難損失
盗難損失とは、会社が保有するものが盗難被害に遭った場合に発生する損失です。
被害が少額の場合は雑損失として計上しますが、被害が大きい場合は特別損失として処理します。
なお、盗難被害に遭ったものに保険が掛けられていた場合は、同じ期中に集計として計上します。
保険金と被害額の差分を損失として計上するわけではない点に注意しましょう。
2-7. 災害損失
災害損失とは、台風や地震といった災害が原因で発生した損失です。
たとえば地震によって建物や車両が全壊した場合、帳簿価格と同額を特別損失として計上します。
盗難損失同様、火災保険や地震保険などが下りた場合は、保険金は損失とは別に収益として処理します。
2-8. 前期損益修正損
前期損益修正損とは、前期や、それ以前の決算期で見つかった収益の間違いを当期中に修正した際に計上する損失です。
実情に基づいて正しく計上した結果、新たに計上すべき多額の損失が見つかった場合は、特別損失として処理し、調整を行います。
前期損益の修正はいわばミスへの対応なので、経常的なものではなく、臨時の出費とみなされます。
3. 特別損失を計上するメリット
特別損失を計上した場合に得られるメリットは大きく分けて2つあります。
3-1. 経常利益が増加する
経常利益とは、その名のとおり、企業が通常行っている事業から経常的に得ている利益のことです。
経常利益は、営業利益に営業外収益を加え、営業外費用を差し引いて計算されます。
営業外費用とは本業以外の活動で発生する費用のことですが、条件を満たすものの中には特別損失として計上できるものもあります。
臨時的に発生した特別損失は経常利益の計算に用いませんので、営業外費用の一部を特別損失として計上した場合、経常利益が増えることになります。
経常利益は企業が本業から得た収益力を測る指標になるため、経常利益が改善されると金融機関から融資を受ける場合に有利になる可能性があります。
3-2. 有姿除却の利用で節税できる
前の項目で、特別損失のひとつとして固定資産除却損をご紹介しましたが、一部の固定資産は廃棄処分せずに除却することが可能です。
有姿除却が可能な固定資産は以下の条件を満たしている必要があります。(※注1)
・その使用を廃止し、今後通常の方法により事業の用に供する可能性がないと認められる固定資産
・特定の製品の生産のために専用されていた金型等で、当該製品の生産を中止したことにより将来使用される可能性のほとんどないことがその後の状況等からみて明らかなもの
通常、固定資産除却損を計上するには取り壊しや廃棄などの処分が必要となるため、相応のコストが発生します。
有姿除却で計上すれば、廃棄処分のコストをかけずに固定資産除却損失を計上できるため、節税効果が高くなります。
4. 要件を満たすものは特別損失として計上しよう
経常的に発生する損失とは別に、臨時的に発生する一過性の損失は「特別損失」として会計処理できます。
特別損失として計上すると、経常利益が増加するほか、有姿除却の利用で節税効果も期待することが可能です。
特別損失として計上するにはいくつかの要件を満たす必要がありますが、要件に該当するものは営業外費用ではなく、特別損失として計上することをおすすめします。
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