後発事象の分類や監査上の取り扱いについて徹底解説
更新日: 2024.1.15
公開日: 2022.12.19
jinjer Blog 編集部
企業の決算書には、該当する年度に起こったさまざまな出来事の内容が含まれています。
株式会社であれば、株主に事業内容などについて説明する必要があるからです。
とはいえ、ある年度の決算書を公開してからキャッシュフローなどに大きな影響を与える出来事が生じたらどうすればよいのでしょうか。
当記事では、そのような後発事象の分類や監査上の取り扱いについて詳しく解説します。
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1. 後発事象とは?
後発事象は会計事象のことなので、会社に良い影響を与えるものもあれば悪い影響を与えるものもあります。
では、良い後発事象と悪い後発事象の例や、開示する意義について見ていきましょう。
1-1. 良い後発事象の例
後発事象の中には、会社に良い影響を与えるものがあります。
会社の財政状態や経営成績を向上させる出来事は会社に有利な後発事象と考えられるでしょう。
たとえば、決算日以降に重要な事業を譲渡されたり、業績が良好な企業を買収したりした場合は、後発事象に該当すると考えられます。
重要な新株の発行、多額の社債の発行、新たな多額の融資の実行なども、会社に有利に働く後発事象の一つです。
その他にも、自己株式の取得や処分、子会社等の株式の売却、重要な係争事件の解決など、ケースによって会社に有利になる後発事象もあるでしょう。
あまり重大な出来事には思えなくても、決算日以降に新しい出来事が行ったなら決算書に注記として記載しておく必要があることを覚えておきましょう。
1-2. 悪い後発事象の例
後発事象には、会社に有利に働くものもありますが、不利なものも多くあります。
会社に不利に働く後発事象であっても、開示する責任があることを覚えておきましょう。
企業会計原則注解1-3によれば、「財務諸表には、損益計算書及び貸借対照表を作成する日までに発生した重要な後発事象を注記しなければならない」からです。
悪い後発事象の例としては、自社に不利な形での会社分割や合併、資本金や準備金の減少、子会社の株式の売却、子会社の解散や倒産などが挙げられます。
さらに、地震や火災、洪水などによる資産の喪失や重大な損害、外国で戦争が発生した場合の損失、近年では感染症の急激な拡大による被害も後発事象に含まれるでしょう。
こうした重要な後発事象を隠さずに開示することで、企業として信頼を勝ち得ることもできるので非常に重要です。
1-3. 後発事象の開示意義
決算日以降に起こった後発事情を公開することには、会社の評判を守ること以外にも意義があります。
それは、投資家に向けて判断基準となる指標やデータを公表することです。
投資家は、企業の発表するデータに基づいて資金を投入する価値があるかを判断します。
もし企業が嘘のデータを開示していたり、重大な後発事象を隠したりしていた場合、投資家は正確な判断ができなくなる恐れがあります。
とくに上場企業では、投資家が適切な判断ができるよう、各種の書類を開示することが義務付けられています。
上場企業でない場合も、株主や投資家に対して必要な情報を開示する責任があるといえるでしょう。
投資家や関係者が誤った、もしくは不十分な情報に基づいて投資判断を下すことがないよう、後発事象について詳しく開示する必要があるのです。
2. 後発事象の分類
会社の財務状況に影響を与える後発事象には大きく分けて2つの分類があります。
1つ目は修正後発事象、2つ目は開示後発事象です。
それぞれ、後発事象が起こった後の処理方法が変わるため、どのような処理を行うべきか覚えておく必要があります。
では、修正後発事象と開示後発事象について詳しく見ていきましょう。
2-1. 修正後発事象
修正後発事象とは、決算日以降に発生した会計事象であるものの、その原因が決算日時点ですでに存在しているケースです。
すでに後発事象が決算日に存在しているため、決算日現在の会計上の判断を下すために追加の証拠を提出する必要があると考えられます。
決算日時点での正確な財務状況を投資家や株主に知らせる必要があるので、財務諸表を修正すべき後発事象となります。
たとえば、会社がある訴訟に関係していて係争中であったとしましょう。
しかし、決算日後に勝訴、敗訴もしくは和解によって訴訟が解決し、決算日に債務が存在していたことが確定したとします。
決算日後に訴訟が解決したとしても、債務自体は決済日より前に存在していたので、財務諸表の修正が必要です。
損益計算書や賃借対照表に引当金や債務を計上しなければならないでしょう。
もしくは、決算日よりあとに取引先が倒産してしまったケースでは、決算日に計上していたその取引先への売掛金を貸倒引当金に計上しなければなりません。
このケースもまた、修正後発事象となります。
2-2. 開示後発事象
開示後発事象とは、決算日以降に発生した会計事象で、当該事業年度には財務諸表への影響がない会計事象のことです。
当該事業年度には影響がなかったとしても、よく事業年度以降に影響を与える会計事象なので財務諸表に注記を行わなければなりません。
会社の財政状態や経営成績、キャッシュフローに影響する事象であれば、将来的に投資家や株主が適切な判断を下すために注記する必要があるのです。
たとえば、重要な事業の譲渡や企業同士の合併・分割、資産の譲渡、大量の希望退職者の募集、多額の設備投資、新規事業などの情報は投資家や株主にとって非常に重要なものといえます。
3. 後発事象の監査上の取り扱い
後発事象が発生した場合、監査上の取り扱いについても知っておく必要があります。
どのような情報を修正すべきなのか、あるいは注記に記載すべきなのか知っておかなければならないでしょう。
たとえば、火災や地震などの自然災害が発生して大きな損害を受けた場合には、いくつかのポイントを注記に記載しておきましょう。
まず自然災害の被害を受けたこと、被害状況、被害額、どの程度の期間で復旧するか、企業活動に与える影響などです。
とくに被害額や復旧の目途については、客観的な証拠や調査に基づいて記載する必要があります。
あるいは、何らかの訴訟が提起された、もしくは解決した場合にも注記が必要です。
訴訟が提起された、もしくは解決したこと、訴訟内容と相手の企業名や個人名、訴訟で争点となっている損害賠償額など、それぞれの主張内容、訴訟の進捗状況、解決した場合にはその内容などです。
4. 後発事象の種類と取り扱いには十分な注意が必要
後発事象は、決算日後に発生した重大な出来事で、とくに財務状況やキャッシュフローに影響を与えるものです。
投資家や株主は後発事象を含めた業績を見たうえで投資の方針を決定するので、必要に応じて財務諸表を修正したり注記を行ったりしなければなりません。
決算日よりも前に後発事象の原因がある場合には財務諸表の修正、そうでない場合には注記が必要です。
正確な情報を投資家に知らせることで企業としての信頼を勝ち得ることができるので、後発事象についてもきちんと開示するようにしましょう。
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