交通費精算DXは、交通費の精算をデジタル化し、業務効率の向上やコスト削減を期待できる取り組みです。こうしたメリットは多いものの、交通費精算DXの課題や注意点がわからず、導入してもよいのか不安に感じる方も少なくありません。

そこでこの記事では、交通費精算DXの概要や課題、導入するメリット、導入する方法、注意点を解説します。交通費精算DXについて詳しく知りたい方は、ぜひ参考にしてください。

1. 交通費精算DXとは

交通費精算DXは、交通費の精算に対して徹底的にITを活用します。ここでは、交通費精算DXの概要やDXの意味について解説します。

1-1. 交通費精算をデジタル化して便利にする取り組み

交通費精算DXとは、紙を利用した交通費精算をデジタル化し、業務負担の軽減や生産性の向上を目指す取り組みのことです。

従来のやり方は、精算処理までに時間がかかり、計算ミスや紙代の発生など、業務やコスト面で負担が大きい傾向にありました。

交通費精算DXでは、ペーパーレス化や精算ツールの導入などにより、業務効率向上や人為ミスの防止、コスト削減を実現できます。

1-2. そもそもDXとは

DXは、デジタルトランスフォーメーション（Digital Transformation）の略称です。デジタルトランスフォーメーションを日本語にすると「デジタルによる変容」を意味します。

具体的には、デジタル技術やITツールを用いて業務改善を目指すだけではなく、新しい価値の創出なども意味に含まれています。

国内では、経済産業省が中心となってDX推進に力を入れ、多くの企業がDX化を進め経営改革に取り組んでいる状況です。

参照：総務省｜デジタル・トランスフォーメーションの定義

2. 交通費精算DXにおける3つの課題

交通費精算DXには、以下のような課題が考えられます。

1. 全社でルールを共有することが難しい
2. システムが古い場合は連携できない
3. 一時的に業務効率が落ちる

ここでは、それぞれ順に交通費精算DXにおける課題の詳細を解説します。

2-1．全社でルールを共有することが難しい

交通費精算DXのルールやフローを、全社で連携するのは難しいかもしれません。部署によって、利用しているシステムが異なっていたり、対応に時間がかかったりするためです。

部署ごとに状況が違えば、全社で同じルールやフローを共有できず、かえって交通費精算DXが効率を下げる可能性があります。

交通費精算のルール設定についてより詳しく知りたい方は下記の記事もご確認ください。

関連記事：交通費精算とは？精算書の書き方やルールをくわしく解説

2-2．システムが古い場合は連携できない

新しいシステムと既存システムを連携できない可能性があることも、交通費精算DXの課題です。特に今のシステムが古い場合は、新システムとの連携できないケースがあるため、注意が必要です。

システムの刷新を考えている状況であれば、交通費精算DXの導入も検討しましょう。

2-3．一時的に業務効率が落ちる

交通費精算DXの導入によって、短期間のみ業務効率が低下する可能性があります。DXでシステムが大きく変更すれば、業務効率にも影響が出ると考えられます。

交通費精算DXを導入するときは、移行するための準備期間を長く設定するなど業務効率を下げない工夫が大切です。

3. 交通費精算DXの4つのメリット

交通費精算DXの導入には課題があるものの、以下のようなメリットも得られます。

1. ペーパーレス化を実現できる
2. 業務効率を上げられる
3. コストを削減できる
4. 業務の引継ぎを簡単におこなえる

交通費精算DXのメリットを把握し、導入すべきなのか本格的に検討しましょう。

3-1．ペーパーレス化を実現できる

交通費精算DXの導入により、ペーパーレス化を進められます。ペーパーレス化により、保管場所が不要になり、印刷費を削減できるメリットがあります。

また、ペーパーレス化になれば、データで検索できるため目的の書類をすぐに探し出せるでしょう。

領収書を電子化する方法や、ペーパーレス化を推し進める方法については下記の記事で詳しく解説しています。合わせてご確認ください。

関連記事：経費精算で領収書を電子化する方法は？法律や疑問点をくわしく解説

関連記事：今から始める、経費精算のペーパーレス化！やり方と導入方法を徹底解説

3-2．業務効率を上げられる

交通費精算DXには、業務効率を向上できるメリットもあります。これまで手動でおこなっていた作業をすべて自動化できるので、精算の処理に手間がかかりません。

ヒューマンエラーも減少できるため、ミスのない正確な交通費精算も実現可能です。重要度の高い経費精算は、DXによって業務効率を高めましょう。

3-3．コストを削減できる

交通費精算DXの導入で得られるメリットには、コスト削減も挙げられます。交通費精算を自動化すれば、そこに必要だった人件費をカットできます。

ペーパーレス化も同様に、紙代や印刷代の削減、保管場所がなくなりオフィス面積の縮小につなげられるでしょう。余計なコストをかけたくない場合も、交通費精算DXはおすすめの方法です。

3-4．業務の引継ぎを簡単におこなえる

交通費精算DXの導入によって、業務を簡単に共有できます。オープンな状態で業務のマニュアルを作成すれば、業務の引継ぎも難しくありません。

交通費精算をおこなえる従業員が限定されている場合、その人が不在のなか問題が発生すると対応できない可能性があります。業務の属人化を防ぐためにも、交通費精算DXを検討しましょう。

4. 交通費精算DXを実現する方法・手順

交通費精算DXを実現するためには、経費精算システムを導入しましょう。経費精算システムがあれば、経費精算関連書類の保存や領収書のアップロードなども手軽におこなえます。

経費精算システムの導入によりペーパレス化を実現した後は、出張手配システムとの連携もおこないましょう。出張手配システムがあれば、従業員の立替精算の負担や経理部門の申請・確認作業をなくせます。

関連記事：経費精算で領収書を電子化する方法は？法律や疑問点をくわしく解説

5. 交通費精算DXに取り組む際の3つのポイント

交通費精算DXを成功させるためには、以下の方法がおすすめです。

1. 業務の見える化をおこなう
2. 全社でDX推進を把握する
3. 利用明細データと連携できるシステムを利用する

それぞれの詳細を紹介するので、交通費精算DXの導入に失敗したくない方は参考にしてください。

5-1．業務の見える化をおこなう

まずは、交通費精算における業務の見える化をおこなうことが重要です。社内の業務を整理すれば、精算処理に必要だった工数や人材が明確になり、システム化できる部分を把握できます。

また、シミュレーションを重ねることで、システム化による削減できるコストや改善点も見えてくるでしょう。

DXを進めるためには、一度にデジタル化・システム化するのではなく、段階的に導入することが大切です。

5-2．全社でDX推進を把握する

交通費精算DXに取り組むためには、全社に共有することも欠かせません。経費精算に誤りは許されないため、社内に周知し、部署間で連携できる仕組みを整備しましょう。

精算システムを導入するときは、社員教育も必要です。ITリテラシーは従業員によって異なるため、各従業員に合わせて使い方をレクチャーしましょう。

5-3．利用明細データと連携できるシステムを利用する

利用明細データと連携できるシステムを活用することも、交通費精算DXの取り組みに必要です。

交通系ICカードやクレジットカードなどの利用明細データと連携できれば、領収書不要で経費を精算できます。

交通費は領収書が発行されないケースもあるため、データと連携できるシステムの導入により、計算の手間がかからないでしょう。

6. 交通費精算DXの注意点

交通費精算DXの導入には、以下の注意点も押さえておく必要があります。

• 行先などの記録を残さないと不正と判断される
• 最安ルートで申請されているか確認する

ここでは、各注意点を順に解説します。

6-1. 行先などの記録を残さないと不正と判断される

交通費の申請では、行先や目的、経路も記録することが大切です。これらのメモがあれば、従業員の不正防止や税務調査の対策につながります。

税務調査がおこなわれるのは、不正な交通費精算によって経費が水増しされると納税する金額が減るためです。

交通費の領収書がもらえなくても、行先や目的を記録して、節税目的の不正と判断されないようにしましょう。

6-2. 最安ルートで申請されているか確認する

交通費精算では最安のルートで計算します。従業員によっては、最安ルート以外や常識外れなルートで申請してくる可能性もあるため、注意が必要です。

申請した後にトラブルに発展しないためには、事前に規則を定めて従業員に周知しましょう。

7. 交通費精算DXで業務効率を改善

交通費精算DXの導入によって、業務効率改善やコスト削減を実現できるほか、業務の属人化を防止できます。

ただし、はじめて導入するときは、全社でルールを共有することが難しく、一時的に業務効率が落ちるデメリットもあります。

交通費精算DXに失敗しないためには一度にすべてデジタル化・システム化するのではなく、段階的に導入しましょう。