欠勤とは?休職との違いや欠勤控除の方法を解説
更新日: 2024.12.21
公開日: 2024.12.21
OHSUGI
「欠勤はどのような扱いにすればいい?」
「欠勤と休職や有給休暇の違いがわからない」
上記のお悩みをお持ちの方は多いのではないでしょうか。欠勤は、本来出勤すべき日に従業員の自己都合で出勤しないことです。法的に定義されている休みではありませんが、社内で規定を明記しなければ労使トラブルに発展するリスクがあるため、注意が必要です。
本記事では、欠勤の意味や似ている用語との違い、欠勤した場合の控除の計算方法などを解説します。欠勤の適切な処理方法を知りたい方はぜひ参考にしてください。
1. 欠勤とは
欠勤とは、本来出勤すべき日に従業員の自己都合で出勤しないことです。自己都合には健康上の理由や私事などが含まれます。
企業は従業員に対し労働の対価として給料を支払うため、欠勤すると原則給料は発生しません。
欠勤には明確な法的定義はないものの、労使トラブルを避けるため、就業規則に欠勤の扱いを明記する必要があります。具体的な記載事項は以下のとおりです。
- 届出の期限
- 提出する書類や勤怠の申請方法
- 欠勤時の給料の有無、計算方法
- 無断欠勤時の処分内容
- 正当な理由のない欠勤が続く場合の処分内容
- 欠勤から有給休暇への変更条件・方法
- 欠勤から休職・休業への変更条件・方法
雇用するうえで、従業員が欠勤することはあるため、あらかじめ規程を設けておくことが大切です。
2. 欠勤と似ている用語4つとの違い
ここでは、欠勤と似ている4つの用語との違いを解説します。
- 欠勤と有給休暇の違い
- 欠勤と公休の違い
- 欠勤と休職の違い
- 欠勤と休業の違い
2-1. 欠勤と有給休暇の違い
欠勤と有給休暇の違いは、給料が発生するかどうかです。欠勤は原則無給であるのに対し、有給休暇は休んでいても給料が発生します。
また、有給休暇は労働基準法第39条で保障されている労働者の権利です。6ヵ月以上務めており、全労働日の8割以上出勤している従業員に対して、企業は有給休暇を付与しなければいけません。
一方、欠勤は法律で決められている休みや権利ではなく、従業員側の一方的な労働義務の不履行です。したがって労働の対価である給料は発生しません。
2-2. 欠勤と公休の違い
欠勤と公休の違いは、企業が定めた休日かどうかです。欠勤は従業員の自己都合であり、多くの場合急な休みであるのに対し、公休はあらかじめ企業側が設定している休日を指します。
公休日は一般的に土日や祝日、その他企業が定めた日に適用され、労働の義務がありません。基本的に給料が発生しない点では欠勤と同じですが、そもそも働く必要のない日である点で欠勤と大きく異なります。
2-3. 欠勤と休職の違い
欠勤と休職の違いは、正式な手続きを経て労働義務を免除されているかどうかです。欠勤は多くの場合突発的に発生しますが、休職は企業側と相談したうえで申請・適用されます。
休職は、一般的に病気やケガなどにより長期間の休みが必要な際に申請されるものです。雇用契約を維持したまま、従業員が回復するために数ヵ月や数年の療養期間を与えます。
一方、欠勤は多くの場合事前に相談や申請なく発生し、基本的に1日単位です。欠勤は従業員の労働義務の不履行なのに対し、休職は企業側が正式に労働を免除しています。
2-4. 欠勤と休業の違い
欠勤と休業の違いは、法律で認められた制度かどうかです。休業は会社都合、または自己都合により、働く意思があるのに働けない場合に適用されます。
事業の一時停止など会社都合による休業は、労働基準法第12条により平均賃金の60%以上の休業手当が必要です。
また、育児や介護など自己都合による休業は育児・介護休業法により取得が認められており、手当金や給付金もあります。
参考:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律| e-Gov法令検索
3. 欠勤に関する制度
欠勤に関する法的な制度はありませんが、欠勤の扱いには法律を根拠にしたノーワークノーペイの原則が適用されています。
ノーワークノーペイの原則とは、労働が発生しなければ給料も発生しない考え方のことです。ノーワークノーペイの原則により、欠勤した従業員に給料を払わなくても、原則企業は罪に問われません。
ノーワークノーペイの原則の根拠は労働契約法第6条や民法624条です。
労働契約法第6条によれば、労働者は労働を、使用者は賃金を払うことにより労働契約が成立します。また、民法第624条によれば、労働者は労働を終えてからでなければ報酬を請求できません。
つまり、賃金は労働が前提であり、労働を終えなければ賃金を受け取れないため、従業員が欠勤した場合企業は給料を払う義務がないのです。
4. 欠勤控除の計算方法
欠勤控除の基本的な計算方法は以下のとおりです。
欠勤控除額=1日あたりの賃金×欠勤した日数
欠勤控除とは、欠勤した分の賃金を給料から引くことです。1日あたりの賃金は、月給を1ヵ月の所定労働日数で割れば求められます。
例えば、月給が20万、所定労働日数が20日で欠勤が1日あった場合、欠勤控除額は下記のように計算可能です。
(20万÷20日)×1日=1万円
したがって、欠勤控除額は1万円です。給料を支払う際は、月給の20万円から欠勤控除額の1万円を差し引いた19万円に各種手当などを加算して支給します。
ただし、欠勤控除に法的なルールはないため、企業により計算方法が異なることがあります。
5. 欠勤控除の3つの注意点
欠勤控除の注意点は以下の3つです。
- 欠勤控除の計算方法を明記する
- 完全月給制や裁量労働制は欠勤控除がない
- 欠勤を代休や残業と相殺はできない
5-1. 欠勤控除の計算方法を明記する
欠勤控除の計算方法は就業規則や給与規定などに明記しましょう。
欠勤控除がどのように計算されるのか周知できていないと、給与に関するトラブルや不満の原因になります。
欠勤控除の計算方法は法律による定めがないものの、社内できちんとルール化し、就業規則や給与規定などに明記して周知しましょう。
5-2. 完全月給制や裁量労働制は欠勤控除がない
完全月給制や裁量労働制で雇用している場合、欠勤控除がないことがあります。
一般的に完全月給制は毎月固定の給与を支払う契約となっており、労働時間の変動により給与が増減することはありません。
また、裁量労働制では労働時間は重視されないため、そもそも欠勤の概念がない傾向があります。
契約形態によっては欠勤控除できないため、従業員それぞれの契約形態を把握しておきましょう。
5-3. 欠勤を代休や残業と相殺はできない
原則として、欠勤を代休や残業と相殺してはいけません。
代休は本来休日である日に労働した際に付与される休日であり、残業は本来の労働時間を超えて働くことです。一方、欠勤は労働しなければいけない日に労働者の自己都合で出勤しないことであり、代休や残業とは本質が異なります。
本質の異なる要素を相殺すると、労働者の権利や労働時間の管理があいまいになり、健全な労働環境を保てません。欠勤は欠勤として、代休や残業とは別に処理しましょう。
6. 欠勤した従業員への企業の対応
企業によっては、欠勤から有給休暇や休暇への変更を認めています。
有給休暇は本来事前申請するものであり、原則事後申請は認められません。しかし、病気などでやむを得ず欠勤する場合、後日申請すれば有給休暇への変更を認めることも可能です。
また、欠勤が続く場合、企業側が休職命令を出して休職に変更することもあります。
どのような場合に欠勤を有給休暇や休職に変更できるのか、社内で検討したうえで就業規則に記載しましょう。
7. 欠勤を理由とした減給・解雇は可能
特別な事情のない欠勤が続く場合や無断欠勤が多い場合、減給や解雇の理由にできます。
とくに無断欠勤が続く場合、労働契約違反として正当な解雇理由です。ただし、解雇はすぐにできるものではなく、事前に複数回の警告や従業員への事情聴取などの段階を踏む必要があります。
欠勤は減給や解雇の理由にできますが、トラブルにならないよう従業員への説明を忘れないようにしましょう。
8. 欠勤した従業員には適切に対応しよう
欠勤とは従業員の自己都合で出勤しないことです。有給休暇と異なり給料は発生しませんが、企業によっては後日申請することで有給休暇への変更を認めている場合があります。
欠勤した場合は一般的に欠勤控除により給料を減額しますが、完全月給制や裁量労働制では欠勤控除を適用しないことが多いので注意しましょう。
欠勤は減給や解雇の理由にもできますが、処分を下す前に警告や説明が必要です。トラブルにならないよう、欠勤の扱いに対する従業員の理解を促進しましょう。
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