労働基準法による解雇の方法や種類、円満解雇するための秘訣を解説 - ジンジャー(jinjer)| クラウド型人事労務システム

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労働基準法による解雇の方法や種類、円満解雇するための秘訣を解説

円満

使用者(事業主)からの一方的な申し出により、雇用契約を解消することを「解雇」といいます。

労働者を解雇する理由はそれぞれですが、いつでも自由に行使できるわけではなく、労働基準法に基づく一定のルールを遵守していなければ不当な解雇となってしまいます。
場合によっては訴訟に発展することもありますので、解雇を検討する際は基本的なルールをしっかり把握しておきましょう。

今回は、労働基準法による解雇のルールや、円満解雇するための秘訣について解説します。

▼そもそも労働基準法とは?という方はこちらの記事をまずはご覧ください。
労働基準法とは?雇用者が押さえるべき6つのポイントを解説

従業員の解雇は慎重に行う必要があります

労働者保護の観点から、解雇には様々な法規定があり、解雇の理由に合理性が無ければ認められません。

当サイトでは、解雇の種類や解雇を適切に進めるための手順をまとめた資料を無料で配布しております。合理性がないとみなされた解雇の例も紹介しておりますので、法律に則った解雇の対応を知りたい方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。

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1. 労働基準法による従業員の解雇の方法

解雇された様子

何日前までに解雇を言い渡せばいいか分からない人もいるでしょう。会社が従業員を解雇する場合は、労働基準法第20条の規定により、下記のいずれかの方法が必要です。

  1. 30日以上前に労働者に解雇の予告をする
  2. 1.ができない場合、30日分以上の平均賃金を支払う

また、1日分の平均賃金を支払えば、予告日数の短縮も可能です。このように解雇にあたって支払う賃金(費用)は解雇予告手当として知られています。
なお、例外的に解雇予告が不要となるケースは、下記のとおりとなります。

  • 天災事変などのやむを得ない理由により事業の継続が困難なとき
  • 労働者に落ち度や過失などがあるとき

とはいえ、会社が労働者を解雇するには、社会通念に照らし合わせて正当な理由がある時に限られます。

また、解雇が必要な行為を、あらかじめ就業規則に明記することも求められます。
労働者の立場は法律により手厚く保護されているため、万が一解雇を検討する際は、関連法規まで確認した上で、慎重に進めることが必要です。

解雇は試用期間であっても申し伝えることが可能です。試用期間スタートから14日間であれば即時の解雇ができます。しかし、14日を超えると30日前の解雇予告が必要です。

関連記事:労働基準法第20条に定められた予告解雇とは?適正な手続方法

参考:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号) |e-Gov法令検索

2. 労働基準法による解雇の種類

ルール

解雇の事由は、基本的にその会社で定めた就業規則や労働条件通知書に明記された要件に準じます。しかし、労働契約法では以下のとおり定めています。

第十六条 解雇は、客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合は、その権利を濫用したものとして、無効とする。
引用:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号) |e-Gov法令検索

たとえ就業規則や労働条件通知書に明示されていたとしても、「客観的に合理的な理由」があり、かつ「社会通念上相当である」と認められるだけの事由がなければ、解雇は無効とされてしまいます。
「客観的に合理的な理由」や「社会通念上相当」に関しては、これという明確な基準はありませんが、解雇の事由によってその種類は大きく3つに区分されます。

参考:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号) |e-Gov法令検索
参考:しっかりマスター労働基準法-解雇編-|厚生労働省

2-1. 普通解雇

後述する整理解雇・懲戒解雇以外の解雇のことです。
労働契約を継続することが困難な事情がある場合に行使されるもので、一般的には以下のようなケースがあります。

  1. 勤務成績が悪く、かつ指導をおこなっても改善の見込みがない場合
  2. 健康上の理由により、長期間にわたって職場復帰が見込めない場合
  3. 業務に支障を来すほど協調性に乏しく、指導をおこなっても改善の見込みがない場合

①、③については客観的に、誰が見ても勤務態度に問題がある場合に限られており、かつ使用者が改善のための指導をおこなっていたかどうかが焦点となります。
例えば、外回り営業中にサボってパチンコ通いを続けており、上司の指導および研修を実施したが、その後も態度が改められなかった…といった場合には、普通解雇が認められます。

一方②のケースですが、業務上の負傷や疾病については、その療養期間およびその後30日間は、解雇することができません。

ただし、事故の後遺症によって簡易な職務にも就けない場合や、長期の入退院を繰り返すような精神疾患にかかり、かつ回復の見込みがないと判断された場合などは、普通解雇が正当とみなされる場合もあります。

以上、普通解雇の代表的な事例をご紹介しましたが、正当な理由があった場合でも、使用者は労働者に対し、少なくとも30日前には解雇を予告しなければなりません。
天災事変などやむを得ない事情によって事業継続が困難になった場合はこの限りではありませんが、それ以外で解雇予告をおこなわなかったときは、労働者に対して30日分以上の平均賃金を支払う必要があります。

参考:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号) |e-Gov法令検索

2-2. 整理解雇

会社の経営悪化によって人員整理をおこなわなければならない場合の解雇です。
いわゆるリストラのことで、事業を継続するためのやむを得ない措置となりますが、整理解雇をおこなうには以下4点のいずれも満たすことが条件となります。

  1. 整理解雇することに客観的な必要性が認められること
  2. 解雇を回避するため、最大限の努力をおこなったこと
  3. 解雇の対象となる人選の基準、運用が合理的であること
  4. 労使間で十分に協議をおこなったこと

つまり、整理解雇は最終手段であり、企業側はそこに至るまでに八方手を尽くしたかどうかが重要なポイントになります。

2-3. 懲戒解雇

従業員がきわめて悪質な規律違反、非行をおこなった場合に、懲戒処分の一環としておこなう解雇のことです。

例えば、会社の名誉を著しくおとしめるような重大な犯罪行為をおかした場合や、長期間の無断欠勤、重大なハラスメント、度重なる懲戒処分などが認められた場合は、懲戒解雇が正当とみなされます。

なお、懲戒解雇をおこなうためには、就業規則や労働条件通知書にその要件を明示しておく必要があります。

3. 労働基準法における不当解雇の例

不当解雇

前節でも説明した通り、たとえ就業規則や労働条件通知書に要件が記載されていても、場合によっては「不当解雇」とみなされるケースもあります。
不当解雇の事例は、大きく分けて「解雇制限に該当するケース」と「客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められないケース」の2つがあります。
以下では、それぞれのケースごとに不当解雇の例について解説します。

3-1. 解雇制限に該当するケース

労働基準法第19条では、「解雇制限」として、以下のケースでは労働者を解雇してはならないと定めています。

  1. 労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後30日間
  2. 産前産後の女性が第65条の規定によって休業する期間及びその後30日間

②のケースは、同法第65条によって定められた産前産後休業のことで、6週間以内に出産する予定の女性が休業を請求した場合および産後8週間を経過しない女性を就業させることは法律で禁じられています。
産前産後の休業取得を拒否するのはもちろん、その期間中に女性労働者を解雇することも労働基準法違反となりますので注意が必要です。

また、同法104条では、労働者が労働基準法または法に基づいて発する命令に違反する事実があることを行政官庁または労働基準監督官に申告した場合、その報復行為として解雇を言い渡すことを禁じています。

参考:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号) |e-Gov法令検索

3-2.客観的に合理的な理由がなく、社会通念上相当と認められないケース

労働契約法第16条にある「客観的に合理的な理由を欠き、社会通念上相当であると認められない場合」に該当するケースです。具体的には以下のものが該当します。

  • 国籍や信条、社会的身分を理由とする解雇
  • 労働組合の結成や加入を理由した解雇
  • 女性労働者の婚姻・妊娠・出産を理由とした解雇
  • 育児休業・介護休業の申請や利用を理由とした解雇
  • 労働基準法違反などを労働基準監督署などに申告したことを理由とした解雇

上記のような不当な解雇は、労働基準法だけでなく、労働安全衛生法、労働組合法、男女雇用機会均等法、育児・介護休業法などにより認められません。トラブルを回避するためにも、事前に把握しましょう。

その他に、例えば経営不振にともなう整理解雇であっても、何の説明もなしに突然リストラされたり、整理解雇中なのに引き続き求人をおこなったりしているケースは、整理解雇で必須とされる「解雇を回避するために最大限の努力をおこなったこと」および「整理解雇することに客観的な必要があること」の要件を満たさないため、不当解雇となります。

特に普通解雇のケースは線引きが難しく、労働者が解雇事由に納得しない場合は訴訟に発展する可能性があります。
そのため、企業が労働者を解雇するためには、できるだけ円満に解決するよう努力する必要があります。

関連記事:労働契約法16条に規定された「解雇」の効力と無効になるケース

4. 解雇が有効と認められるための条件

条件

従業員を円満に解雇するためには、次の解雇が有効と認められる条件を満たさなければなりません。

①法律で解雇禁止事項に該当しないこと
②法律に則って解雇予告をおこなうこと
③就業規則の解雇の事由に該当していること
④解雇に正当な理由があること
⑤解雇の手順を守ること

上記の条件はくまなく理解しなければならないため、次から1つずつ解説していきます。

4-1. 法律で解雇禁止事項に該当しないこと

1つ目の条件は、「3.労働基準法における不当解雇の例」で解説した項目に該当しないことです。

第十九条 使用者は、労働者が業務上負傷し、又は疾病にかかり療養のために休業する期間及びその後三十日間並びに産前産後の女性が第六十五条の規定によつて休業する期間及びその後三十日間は、解雇してはならない。ただし、使用者が、第八十一条の規定によつて打切補償を支払う場合又は天災事変その他やむを得ない事由のために事業の継続が不可能となつた場合においては、この限りでない。
引用:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号) |e-Gov法令検索

労働基準法に規定されている内容になるので、違反した場合、解雇が無効になるだけでなく、労働基準法違反として6ヵ月以下の懲役、または30万円以下の罰金も科されるので注意が必要です。

4-2. 法律に則って解雇予告をおこなうこと

2つ目の条件は、「1.労働基準法による従業員の解雇の方法」にもある通り、労働基準法第20条の規定に則って解雇予告をおこなわなければなりません。

具体的には、30日以上前に労働者に解雇の予告をすること、ただし、もし予告ができない場合、30日分以上の平均賃金を支払うとうことが条件となります。

例えば、8月31日付けで解雇をする場合は、少なくとも8月1日までには解雇の予告をしなければなりません。もし8月10日(解雇日の21日前)に解雇予告をする場合は、9日分の平均賃金を支払えば、8月31日に解雇することが可能になります。

関連記事:労働基準法第20条に定められた予告解雇とは?適正な手続方法

4-3. 就業規則の解雇の事由に該当していること

労働基準法第89条にて、従業員が常時10名以上使用している場合は、就業規則を作成して労働基準監督署に届け出ることが義務付けられています。その就業規則の内容の中に、必ず記載しなければならない事項として「解雇の事由」があります。

就業規則は就労前に社員は必ず目を通すため、こちらの解雇の事由に、どのような場面において解雇される可能性が生じるのかということを明記しておくことで、労使間での認識の齟齬が起きづらく、トラブルは少なくなります。

10名以下の事業所の場合は、就業規則の提出は任意となっておりますが、明確な基準がないためトラブルへと発展するケースが多いです。

そのため、事業所の人数には関係なく、就業規則にて解雇の事由を明記しておくことが重要でしょう。

関連記事:労働基準法第89条で定められた就業規則の作成と届出の義務

4-4. 解雇に正当な理由があること

解雇には、普通解雇・整理解雇・懲戒解雇の3種類あることを上述しましたが、それぞれの解雇理由が正当であるかどうかが重要になります。

これら3つの中でも普通解雇の理由は判断が難しく、あるAという業態では正当な解雇理由となる行動があったとしても、同様の行動をしてもBという業態では解雇に該当しないと判断されるケースも少なくありません。

そのため、解雇はあくまで最後の手段であることを忘れることなく、万が一解雇をおこなう場合には、弁護士などに相談した上で判断するようにしましょう。

4-5. 解雇の手順を守ること

解雇の手順についての明確なルールは「1.労働基準法による従業員の解雇の方法」で説明しましたが、解雇予告をおこなうまでの手順に気をつけなければなりません。

解雇についてのトラブルでよく起きるのが、「明確な理由もなしに、いきなり解雇された」というものです。こちらは、労使間の認識の齟齬が起きてしまっているため、その解雇とった事由がどれほどいけないことであったのか、労使間ですり合わせなどをおこなう必要があるでしょう。

このように、いきなり解雇予告をおこなうのではなく、口頭での注意と観察を定期的におこない、その行動に問題があるということを認識させることが重要です。それでも問題行動を繰り返しおこなう場合において、解雇という選択肢が生じます。

一見手間が多く見えますが、解雇というのは従業員からすれば非常に重たい処分であるため、細心の注意を払ったうえで対応するようにしましょう。

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5. 労働基準法に沿った円満解雇の秘訣

秘訣

労使間でトラブルをおこさず、労働者を円満に解雇するために押さえておきたいポイントを3つご紹介します。

5-1. 十分な協議の場を設ける

解雇をめぐってトラブルが発生するのは、ひとえに「労働者が解雇の事由について納得していないため」です。
解雇を予告するにあたって十分な説明をおこなわなかったり、労働者の言い分を全く聞かなかったりすると、労働者の不満が募って訴訟に発展する可能性が高くなります。
解雇する場合は、まず該当の労働者と十分に話し合える場をセッティングし、相手が納得できるよう、しっかり説明することを心がけましょう。

5-2. 就業規則・労働条件通知書を見直す

就業規則や労働条件通知書には、解雇の事由を含む退職に関する事項を明示することが義務づけられています。[注6]
労働者を解雇するにあたっては、就業規則や雇用契約書にそのルールを明記し、労働者に周知させておかなければなりません。
解雇事由の説明が複雑だったり、わかりづらかったりすると、人によって解釈の違いが生まれてしまい、無用なトラブルを引き起こす原因となります。
就業規則や労働条件通知書に不備があると考えられる場合は、解雇する場合に備えて、あらかじめ見直しや変更をおこなっておきましょう。

関連記事:労働条件通知書とは?必要な理由や項目別の書き方について

参考:労働基準法(昭和二十二年法律第四十九号) |e-Gov法令検索

5-3. 専門家に相談する

労働基準法における「客観的に合理的な理由」は線引きが難しく、解雇事由が正当なのかどうか見極めるのは困難です。
そんなときは、労働関係に強い弁護士や社会保険労務士などの専門家に相談し、アドバイスを仰ぐようにしましょう。
専門家なら、法に関する知識はもちろん、これまでの判例に関する知識も豊富に持ち合わせているため、解雇事由に正当性が認められるかどうかを客観的に判断してくれます。
円満解雇に導くためのアドバイスも提供してくれますので、労働者の解雇に決まったらプロの意見を聞くことも検討してみましょう。

6. 労働者を解雇するときは、労働基準法をしっかり理解することが大切

理解

企業は就業規則や労働条件通知書で「解雇」に関する規定を設けることができますが、労働基準法における「客観的に合理的な理由に欠き、社会通念上相当と認められない」ときは、たとえ就業規則に定められている事項でも、解雇が無効となる場合があります。
それ以外にも、法律で解雇を禁じられているケースがいくつかありますので、労働者を解雇するときは、労働基準法や労働契約法などにおける解雇のルールをしっかり理解しておくようにしましょう。

従業員の解雇は慎重に行う必要があります

労働者保護の観点から、解雇には様々な法規定があり、解雇の理由に合理性が無ければ認められません。

当サイトでは、解雇の種類や解雇を適切に進めるための手順をまとめた資料を無料で配布しております。合理性がないとみなされた解雇の例も紹介しておりますので、法律に則った解雇の対応を知りたい方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。

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OHSUGI

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クラウド型勤怠管理システムジンジャーの営業、人事向けに採用ノウハウを発信するWebメディアの運営を経て、jinjerBlog編集部に参加。営業時代にお客様から伺った勤怠管理のお悩みや身につけた労務知識をもとに、勤怠・人事管理や給与計算業務に役立つ情報を発信しています。

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