労働基準法とは?法律の要点や人事が必ず押さえたい基本をわかりやすく解説 - ジンジャー(jinjer)|統合型人事システム

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労働基準法とは?法律の要点や人事が必ず押さえたい基本をわかりやすく解説

労働基準法のブロックとガベル

労働基準法とは、労働者の権利を守るために労働条件の最低基準を定めた法律です。人事担当者など労務管理に関わる人は、内容を正しく理解し、適切な雇用管理に活かすことが重要です。しかし、労働契約、賃金、労働時間、就業規則などその内容は非常に多岐にわたり、複雑なため、すべてを網羅して把握することは容易ではありません。

本記事では、雇用実務において人事が必ず押さえておくべき労働基準法の全体像や重要ポイント、最新の法改正動向までを初心者にもわかりやすく徹底的に解説します。

【最新版】改正ポイントもまとめて解説 労働基準法違反にならないための必須知識まとめ

人事担当者であれば、労働基準法の知識は必須です。しかし、その内容は多岐にわたり、複雑なため、全てを正確に把握するのは簡単ではありません。

◆労働基準法のポイント

  • 労働時間:36協定で定める残業の上限時間は?
  • 年次有給休暇:年5日の取得義務の対象者は?
  • 賃金:守るべき「賃金支払いの5原則」とは?
  • 就業規則:作成・変更時に必要な手続きは?
  • 40年ぶりの大改正:人事担当者が押さえておきたい項目は?

これらの疑問に一つでも不安を感じた方へ。

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1. 労働基準法とは

吹き出しのはてな

労働基準法(労基法)とは、労働者の労働条件の最低基準を定め、労働者の生活と権利を守ることを目的とする日本の法律です(一部の国家公務員などを除く)。労働時間、休憩、休日、賃金、解雇など、労働者が働くうえで必要な基本的ルールを規定しています。

1-1. 目的条文

労働基準法には、その法律が制定された目的を説明する、「第○条(目的)」という見出しの付いた条文は存在しません。

しかし、「第1条(労働条件の原則)」が実質的に目的条文の役割を果たしています。

第一条(労働条件の原則)労働条件は、労働者が人たるに値する生活を営むための必要を充たすべきものでなければならない。

② この法律で定める労働条件の基準は最低のものであるから、労働関係の当事者は、この基準を理由として労働条件を低下させてはならないことはもとより、その向上を図るように努めなければならない。

引用:労働基準法|e-Gov 法令検索

労働基準法の目的として、労働者の人間らしい生活の保障と最低基準の設定という法律全体の基本方針が示されています。特に雇用契約の実情として、企業が有利になる内容で締結されるケースが多いため、「労働者保護」という立法目的がここに集約されています。

1-2. 適用される事業と労働者の定義

労働基準法は原則としてすべての事業、すべての労働者に適用されます。

ここでいう「労働者」とは「事業に使用され賃金を支払われている人」のことで、正社員・契約社員・アルバイトなどの雇用形態や、職種を問わず該当します。例えば、日本で働くパートタイマーや外国人労働者であっても労基法の保護を受けることができ、雇用形態に関係なく最低基準が保障されます。

ただし、一部には労働基準法が適用されない事業や労働者も存在します(「適用除外」とよばれます)。詳しくは次項で説明します。

関連記事:労働基準法第9条に規定された労働者について詳しく解説

1-3. 労働基準法の適用除外

労働基準法の規制が適用除外となる主なケースには次のようなものがあります。

  • 同居の親族のみを使用する事業
  • 家事使用人
  • 公務員(全面適用除外と一部適用除外あり)
  • 船員(船員法の適用対象者、一部適用除外)

例えば、国家公務員や地方公務員には公務員制度の法律が優先し、船員には船員法という別の法律が適用されるため、労基法の適用範囲外となるケースがあります。

1-4. 労働基準法は強行法規

労働基準法は強行法規と位置づけられています(労働基準法第13条)。そのため、事業主と労働者の間で合意された契約内容が法律に反している場合、その契約は原則として無効となります。

これは、労働者が自ら不利益を承知のうえで契約した場合であっても、法律で定められた最低基準を下回る条件は認められないという考え方に基づいています。

例えば、法定労働時間(原則1日8時間、週40時間)を超えて労働させる場合に支払うべき割増賃金の不支給を契約で定めた場合、この契約条項は無効です。つまり、たとえ労働者が同意していたとしても、事業主は法定の割増賃金を支払う義務を免れることはできません。

1-5. 労働基準法には罰則が定められている

労働基準法には違反した場合の罰則が定められています。最も重い罰則は第117条で規定されており、第5条「強制労働の禁止」に違反した場合には、1年以上10年以下の拘禁刑または20万円以上300万円以下の罰金が科される可能性があります。

そのほかにも、違反の重大さに応じて罰則が設けられており、例えば「1年以下の拘禁刑または50万円以下の罰金(第118条)」「6ヵ月以下の拘禁刑または30万円以下の罰金(第119条)」などがあります。

さらに、第121条には両罰規定があり、労働基準法違反をおこなった者(例えば一般従業員)だけでなく、その事業主も処罰される可能性があります。

なお、労働基準法に違反した場合であっても、直ちに刑事罰が科されるわけではありません。労働基準監督署は、事業場への立入調査などを通じて労働状況を確認し、違反が認められた場合には、是正に向けた指導や勧告をおこないます。

このように、労働基準法は単なる行政上のルールではなく、刑事罰を伴う強制力のある法律であり、違反の程度に応じた厳格な罰則体系が設けられています。

関連記事:労働基準法5条による「強制労働の禁止」の意味や違反の罰則

2. 労働基準法の全体像を知ろう

ガベルとコイン

労働基準法の内容は、労働契約、賃金、労働時間、休暇、安全衛生、年少者や妊産婦への配慮、労災補償、就業規則など多岐にわたります。これらを一度に把握することは容易ではありません。

ここからは、特に雇用実務で重要なポイントを中心に整理し、労働基準法の基本理解と法令遵守による安全な職場づくりを目的として解説します。

2-1. 労働基準法の基本7原則とは?

労働基準法には、すべての労働条件や労務管理の基礎となる「基本7原則」が定められています。これらは労働基準法第1条から第7条までに規定されており、「労働憲章」とよばれることがあります。

労働基準法の基本7原則

概要

①労働条件の原則(労基法第1条)

労働条件は、労働者が人間らしい生活を営むことができる水準を確保するものでなければなりません。また、労働基準法の基準は最低基準であり、これを理由に労働条件を引き下げることはできません。

②労使対等決定の原則(労基法第2条)

労働条件は、使用者と労働者が対等な立場で決定し、労使双方が誠実に遵守しなければなりません。

③均等待遇の原則(労基法第3条)

国籍、信条または社会的身分を理由とする労働条件上の差別を禁止しています。

④男女同一賃金の原則(労基法第4条)

性別を理由とした賃金差別を禁止しています。

⑤強制労働の禁止(労基法第5条)

暴行、脅迫、監禁などによって労働を強制することを禁止しています。

⑥中間搾取の排除(労基法第6条)

労働者の就業に介入し、不当に利益を得る中間搾取を禁止しています。

⑦公民権行使の保障(労基法第7条)

選挙権の行使や裁判員への参加など、公民としての権利行使に必要な時間を保障しています。

これらの基本7原則は、労働基準法全体を理解するための出発点です。企業が法令遵守を徹底するためにも、まずはこれらの原則を正しく理解しておくことが重要です。

2-2. 2019年4月施行の働き方改革関連法のポイント

2019年4月から順次施行された働き方改革関連法は、長時間労働の是正や多様な働き方の実現を目的としておこなわれた大規模な法改正です。主な改正ポイントは次の通りです。

働き方改革関連法の項目

ポイント

時間外労働の上限規制

長時間労働を是正するため、時間外労働の上限が法律で定められました。原則として月45時間・年360時間までとし、特別な事情がある場合でも年720時間以内、複数月平均80時間以内などの制限が設けられています。

中小企業の月60時間時超の時間外労働に対する割増賃金率引上げ

中小企業においても、大企業と同様に、月60時間を超える時間外労働について50%以上の割増賃金を支払うことが義務付けられました。

年5日の年次有給休暇取得義務

年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、毎年5日以上の有給休暇を確実に取得させることが義務化されました。

勤務間インターバル制度の普及促進

労働者の健康確保のため、終業時刻から次の始業時刻まで一定時間以上の休息を設ける「勤務間インターバル制度」の導入が推奨されています(現状、努力義務)。

フレックスタイム制の拡充

フレックスタイム制について、労働時間の清算期間を最長1ヵ月から最長3ヵ月へ延長されました。

このほかにも、高度プロフェッショナル制度の創設、産業医・産業保健機能の強化、正規雇用労働者と非正規雇用労働者との間の不合理な待遇差の解消を目的とした「同一労働同一賃金」の推進などがおこなわれました。

働き方改革関連法は単なる法改正にとどまらず、企業に対して労務管理や人事制度の見直しを促し、働く人々がより健康で多様な働き方を選択できる環境の整備を目指すものとなっています。

参考:働き方改革関連法に関するハンドブック|厚生労働省

2-3. 2023年・2024年の労働基準法改正のポイント

働き方改革関連法の施行後も、企業の労務管理に影響を与える法令や制度の見直しが続いています。2023年から2024年にかけては、時間外労働に関する規制の強化や労働条件明示ルールの見直しなど、企業にとって重要な改正が実施されました。

施行時期

改正内容

ポイント

2023年4月

中小企業への時間外労働の割増率50%適用

月60時間を超える時間外労働について、中小企業にも50%以上の割増賃金の支払いが義務付けられました。

2023年4月

賃金のデジタル払い解禁

労働者が同意した場合に限り、一定の条件を満たした資金移動業者の口座を利用して賃金を受け取れるようになりました。

2024年4月

時間外労働の上限規制を一部業種へ適用

建設業、自動車運転業務、医師などに設けられていた猶予措置が終了し、時間外労働の上限規制が適用されました。

2024年4月

労働条件明示ルールの拡充

労働契約の締結時や有期労働契約の更新時に、就業場所・業務内容の変更範囲や無期転換申込権に関する事項などの明示が義務付けられました。

特に2024年の労働条件明示ルールの見直しにより、企業には従業員へ労働条件をよりわかりやすく伝えることが求められています。また、時間外労働規制の適用拡大に伴い、業種を問わず労働時間管理の重要性も高まっています。

関連記事:労働条件明示のルールが2024年4月に改正!企業の対応や注意点を解説

2-4. 【最新動向】労働基準法は今後どう変わる?

2026年時点では、労働基準法そのものの大規模な改正は実施されていません。一方で、厚生労働省では働き方の多様化や過重労働防止への対応などを踏まえ、今後の労働基準法改正に向けた議論が進められています。

現在の検討事項としては、長時間労働の抑制や労働者の健康確保を目的とした連続勤務日数の上限設定や、勤務間インターバル制度の義務化などが挙げられています。

また、勤務時間外のメールやチャットへの対応を抑制し、十分な休息時間を確保するための「つながらない権利」についても議論がおこなわれており、今後の動向が注目されています。

労働基準法は社会環境や働き方の変化に応じて見直しが続けられています。企業の人事担当者は、確定した法改正への対応だけでなく、今後の制度見直しの方向性も踏まえ、就業規則や労務管理体制を継続的に確認していくことが重要です。

参考:「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表します|厚生労働省

関連記事:労働基準法の大改正はどうなる?2026年最新動向と主要論点、企業が今すべき対応とは【社労士が解説】

3. 労働契約関係

握手する男性

労働契約とは、「従業員が企業に労働力を提供し、企業がその対価として給与を支払う」という雇用に関する契約です。労働基準法には、正社員やアルバイトといった雇用形態にかかわらず、労働契約に適用されるルールが定められています。

労働契約を結ぶ際には労働条件を明確に取り決め、労働条件通知書や雇用契約書などの書面で明示する義務があります(労働基準法第15条)。

特に必ず明示しなければならない事項として、次のようなものがあります。

  1. 労働契約の期間
  2. 有期労働契約の場合は、更新する場合の基準・通算契約期間または更新回数の上限がある場合はその上限
  3. 就業の場所と仕事内容(変更のある場合は、変更する可能性のある範囲)
  4. 始業・終業時刻、休憩時間・休日など勤務時間に関する事項
  5. 給与の決定方法・締め切り・支払時期、昇給
  6. 退職に関する事項(解雇事由を含む)

上記に加え、有期労働契約の更新時、無期転換申込権(※)が発生している場合はその旨と無期転換後の労働条件の明示が必要になります。

(※)有期労働契約で通算5年を超えて働いた従業員が企業に申し出をすることで無期雇用に転換できる権利

一方で、退職手当、臨時に支払われる賃金、最低賃金額、食費や作業用品の負担、安全及び衛生、職業訓練、災害補償、表彰や制裁、そして休職に関する事項については、該当する定めがない場合には明示が不要です。

関連記事:労働基準法第15条に基づく労働条件の明示義務とは?ルール改正も解説

4. 労働時間・休憩・休日

時計と働く人

労働時間や休憩・休日に関する定めは、労働基準法の中でも特に重要な基本ルールであり、従業員の健康確保と適正な労働環境の維持に直結します。

なお、労働基準法第41条に定める管理監督者については、労働時間・休憩・休日に関する規定の適用が除外されます。ただし、深夜労働に対する割増賃金や年次有給休暇などの規定は適用されるため、管理監督者に対しても適切な労務管理をおこなう必要があります。

関連記事:労働基準法第41条第2号に規定された管理監督者について詳しく解説

4-1. 法定労働時間と時間外・休日労働

労働基準法が定める法定労働時間は、原則として1日8時間、1週40時間です。企業はこの上限を超えて労働者を働かせてはいけません。また、休日については、少なくとも週に1回、または4週間で4日以上の休日(法定休日)を与えなければなりません。

時間外労働(法定労働時間を超える労働)や休日労働(法定休日の労働)をおこなわせる場合には、あらかじめ36協定を締結し、所轄の労働基準監督署へ届出が必要です。なお、36協定を締結した場合でも、時間外労働には上限が設けられており、原則として月45時間、年360時間以内とされています。さらに、臨時的かつ特別な事情がある場合には、特別条項付き36協定を締結することでこの上限を超えることが認められますが、その場合でも次の条件を満たす必要があります。

  • 時間外労働:年720時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計:複数月平均で月80時間以内
  • 時間外労働と休日労働の合計:単月で100時間未満
  • 月45時間を超える時間外労働:年6回まで

参考:時間外労働の上限規制|厚生労働省

関連記事:法定休日とは?労働基準法のルールや特定義務・割増賃金計算のポイントを解説

4-2. 休憩時間

労働時間が長時間に及ぶ場合、適切な休憩を与えなければなりません。法定の休憩時間は次の通りです。

  • 労働時間が6時間を超える場合:45分以上の休憩を与える
  • 労働時間が8時間を超える場合:1時間以上の休憩を与える

休憩は労働時間の途中で与え、原則として労働者に一斉に付与しなければいけません。また、休憩時間は労働者が自由に利用できることが求められます。

関連記事:労働基準法における休憩時間の定義とは?労働時間に含まれるのか解説

4-3. 労働時間の弾力化

労働基準法では業務の実態に合わせて労働時間を柔軟に配分できるよう、次のような労働時間の制度を認めています。それぞれ適切な手続きを踏めば、法定労働時間の適用を一部変則的に運用することが可能です。

  1. 変形労働時間制
  2. フレックスタイム制
  3. 労働時間のみなし制
  4. 事業場外労働のみなし労働時間制
  5. 裁量労働制
  6. 高度プロフェッショナル制

それぞれの概要を簡単に紹介します。

4-3-1. 変形労働時間制

変形労働時間制とは、1ヵ月や1年などの一定期間を平均して週40時間以内となるよう、あらかじめ労働時間を設定する制度です。

この制度を適法に導入すれば、事前に定められた勤務スケジュールの範囲内であれば、特定の日に8時間を超えたり、特定の週に40時間を超えたりする勤務も可能となります。

なお、導入要件は制度の種類によって異なり、就業規則への規定や労使協定の締結・届出が必要となる場合があります。適切な手続きを踏んだうえで運用することが重要です。

関連記事:変形労働時間制とは?1ヵ月・1年単位の違いや導入方法をわかりやすく解説

4-3-2. フレックスタイム制

清算期間(最長3ヵ月)内の総労働時間を定めておき、各日の始業・終業時刻や労働時間を労働者が自主的に決定できる制度です。コアタイム(必ず働く時間帯)やフレキシブルタイム(出退勤可能な時間帯)を定めるケースもあります。

フレックスタイム制には、仕事と生活の調和を図りながら効率的に働けるメリットがあります。導入には就業規則への規定と労使協定の締結が必要です。清算期間が1ヵ月を超えるときは、労使協定を労働基準監督署へ届け出る必要があります。

関連記事:フレックスタイム制とは?導入手順や企業が知っておくべきメリット・デメリット

4-4. 労働時間のみなし制

みなし労働時間制は、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ決められた労働時間を働いたものとみなす制度です。特に労働時間の管理が難しい業務や、高度な専門性が求められ結果が重視される職種に適用されることが一般的です。

4-4-1. 事業場外労働のみなし労働時間制

「事業場外労働のみなし労働時間制」とは、従業員が事業場の外で業務に従事し、労働時間を算定することが困難な場合に、一定の時間を労働したものとみなす制度です。典型例として、直行直帰で顧客先を訪問する営業職などが挙げられます。

この制度では、原則として所定労働時間労働したものとみなされます。ただし、その業務の遂行に通常所定労働時間を超える時間を要する場合は、「当該業務の遂行に通常必要とされる時間」労働したものとみなされます。

また、労使協定により当該業務に必要とされる時間を定めた場合は、その協定で定めた時間を労働したものとみなすことが可能です。

4-4-2. 裁量労働制(専門・企画)

裁量労働制とは、業務の遂行方法や時間配分について労働者の裁量に委ねる必要がある業務を対象とし、実際の労働時間にかかわらず、あらかじめ労使で定めた時間を労働したものとみなす制度です。裁量労働制には「専門業務型裁量労働制」と「企画業務型裁量労働制」の2種類があります。

専門業務型裁量労働制は、研究開発、情報処理システムの分析・設計、デザイナー、弁護士など、法令で定められた専門性の高い業務を対象とする制度です。導入には、労使協定の締結、労働基準監督署への届出に加え、対象労働者本人の同意が必要です。

企画業務型裁量労働制は、事業運営に関する企画、立案、調査および分析などの業務に従事する労働者を対象とする制度です。導入には、労使委員会の設置および決議、対象労働者本人の同意などの要件を満たす必要があります。

なお、裁量労働制を適用する場合でも、深夜労働や休日労働に対する割増賃金の支払い義務は原則として維持されます。また、みなし労働時間が法定労働時間を超える場合などには、時間外労働に対する割増賃金が必要となることがあるため、適切な労務管理が求められます。

関連記事:裁量労働制とは?労働時間管理における3つのポイントを徹底解説

4-4-3. 高度プロフェッショナル制度

高度プロフェッショナル制度とは、高度で専門的な知識や能力を有し、職務内容や責任の範囲が明確で、かつ一定の年収要件(原則1,075万円以上)を満たす労働者を対象に、労働基準法上の労働時間、休憩・休日・深夜割増賃金に関する規定の適用を除外する制度です。

対象となる業務は、金融商品の開発や資産運用、アナリスト業務、コンサルタント業務、研究開発業務など、高度な専門性を必要とし、業務範囲が明確に区分されるものに限定されています。

この制度を導入するには、労使委員会の決議や本人の同意取得など、法律で定められた手続きを適切に踏む必要があります。さらに、年間104日以上の休日確保措置や、健康管理時間の状況に応じた健康・福祉確保措置を講じることが義務付けられています。

参考:高度プロフェッショナル制度の概要|厚生労働省

5. 賃金

一万円札

労働者に支払う賃金は、労働の対価としての最も基本的な要素であり、労働基準法により厳格なルールが定められています。不適切な運用は重大な労務トラブルにつながる可能性があるので注意が必要です。

5-1. 賃金支払いの5原則

労働基準法第24条では、労働者に対する賃金支払いのルールが定められており、これらは一般的に「賃金支払いの5原則」と呼ばれています。その5つの原則は次の通りです。

  • 通貨払いの原則
  • 直接払いの原則
  • 全額払いの原則
  • 毎月1回以上払いの原則
  • 一定期日払いの原則

関連記事:労働基準法第24条とは?例外や違反した場合の罰則を詳しく解説

なお、仮に所得税など法令に定めるもの以外の特別な控除がある際には、別途、労使協定を結ぶことが求められます。

また、賃金は全額を直接本人に支払うのが原則です。代理人や親権者などへの支払いはできません。

関連記事:労働基準法に定められた賃金とは?定義や給与との違いと5原則を解説

関連記事:労働基準法の平均賃金とは?必要になるケースや計算方法を解説

5-2. 最低賃金

労働基準法第28条では「賃金の最低基準に関しては、最低賃金法の定めるところによる」と規定されており、最低賃金に関する具体的な基準は最低賃金法に基づいて定められています。

使用者は、最低賃金法で定められた最低賃金額以上の賃金を支払わなければなりません。最低賃金には、都道府県ごとに設定される「地域別最低賃金」と、特定の産業を対象として設定される「特定最低賃金」があります。両方が適用される場合には、より高い金額の最低賃金が適用されます。

なお、最低賃金額を下回る賃金を定めた労働契約は、その下回る部分について無効となり、最低賃金額と同額の賃金を定めたものとみなされます。そのため、企業は毎年の最低賃金改定を確認し、法令を遵守した適切な賃金管理をおこなうことが重要です。

関連記事:労働基準法に基づく最低賃金とは?その基準や違反への罰則を解説

5-3. 割増賃金

割増賃金とは、時間外労働や深夜労働、休日労働をおこなった際に、通常の賃金に法律で定められた割増率を上乗せして支払われる賃金のことです。労働基準法で定められる法定割増率は次の通りです。

  • 時間外労働(月60時間以下):25%以上
  • 時間外労働(月60時間超):50%以上
  • 深夜労働:25%以上
  • 休日労働:35%以上

また、時間外労働と深夜労働が重なる場合など、複数の割増事由が同時に発生する際は、それぞれの割増率を合算して割増賃金を算出します。

割増賃金を適切に支払わない場合、労働基準法違反となるだけでなく、未払い残業代請求や労使トラブルにつながるおそれもあります。そのため、労働時間を正確に管理し、法令に基づいて適正な割増賃金を支給する体制の整備が求められます。

関連記事:労働基準法第37条とは?割増賃金の計算方法や適用除外をわかりやすく解説

6. 年次有給休暇

有給のブロックと芝生

年次有給休暇は、従業員が有給で休むことができる権利です。一定の条件を満たした従業員に対して、毎年所定の日数の有給休暇を与えなければなりません。

具体的には「雇い入れの日から6ヵ月継続勤務し、その間の全労働日の8割以上勤務した」従業員に対し、継続勤務6ヵ月時点で最低10日の有給休暇を付与する必要があります。この付与日からさらに1年継続勤務するごとに、労働者の勤続年数に応じて付与日数が増えていきます(最大20日)。

パートタイマーのように労働日が少ない労働者に対しても基準を満たせば付与されますが、付与日数は出勤頻度に応じて按分されます(比例付与)。

関連記事:労働基準法におけるパート従業員の有給休暇の条件と計算方法

6-1. 時季指定権と時季変更権

有給休暇は従業員が請求した時季(タイミング)に取得させることが原則です。これを時季指定権といい、従業員は基本的に自分の取りたい日に年休を取得できます。使用者は請求された有給休暇を拒否することはできません。

ただし、事業の正常な運営を妨げる場合は、使用者が時季を変更することも認められています(時季変更権)。

しかし、正当な理由なく一方的に年休取得を認めないことは違法となります。基本的には労働者の希望日を尊重し、業務に重大な支障がある場合のみ、従業員に変更の相談をすることが望ましいでしょう。

関連記事:時季変更権とは?行使するための条件や注意点を徹底解説

6-2. 年5日の取得義務

2019年の働き方改革関連法の改正により、1年に10日以上の有給休暇が付与される従業員には、年間で最低5日は必ず消化させることが義務化されました。

従業員が自発的に5日以上の有給休暇を取っていれば問題ありませんが、そうでない場合、企業が時季を指定して取得させなければいけません。

関連記事:有給休暇5日の取得義務化とは?時間単位の扱いから対応方法や罰則まで解説

7. 年少者・妊産婦

働く妊婦

労働基準法は、若年者や妊娠中または産後の女性を保護するルールを定めています。

まず、15歳以上に達した日以後の最初の3月31日が終了するまで、児童は従業員として雇用できません。

しかし、映画・演劇の子役や非工業的事業にかかわる場合など、年少者でも働けるケースもあります。その他にも細かい決まりが定められているので、気になる方はこちらの記事をご覧ください。

関連記事:労働基準法に規定された年齢制限とは?注意点や罰則を解説

また、妊娠中または産後の女性については、次のような制度があります。

  • 産前産後休業(産休)
  • 育児時間(授乳時間)の付与
  • 時間外労働・休日労働・深夜業の制限
  • 危険有害業務の禁止
  • 軽易な業務への転換

このように、妊産婦については母性保護の観点から特別な措置が義務付けられています。なお、産前産後休業は「労働基準法」に定められていますが、育児休業は「育児・介護休業法」に定められています。両者は根拠となる法律が異なるので、混同しないよう注意が必要です。

関連記事:労働基準法に定められた産前産後休業の取り扱いや賃金の取り扱いを解説

関連記事:労働基準法で定められている妊婦を保護する制度を分かりやすく解説

関連記事:労働基準法に定められた育児時間の考え方と計算方法を解説

8. 就業規則

書類と虫眼鏡

労働基準法では、常時10人以上の従業員を使用する事業場においては就業規則を作成しなければならないと定めています。就業規則は、労働条件や職場のルールを明確にし、労使トラブルを未然に防ぐために重要な役割を果たします。

例えば、労働基準法には欠勤時の取り扱いに関する詳細な規定がありません。そのため、欠勤した場合の賃金控除の方法や手続きなどを就業規則で定めておくことで、運用上の混乱や労使間の認識の相違を防止できます。

また、就業規則の作成・変更をした際、労働基準監督署に届け出る必要があります。届出の際には、従業員代表の意見書の添付が必要です。これは就業規則の内容について労働者の意見を聞いたことを示すための書面で、もし反対意見であっても就業規則が無効になるわけではありません。

加えて、就業規則は従業員に周知しなければ効力を発しないため注意しましょう。周知とは、従業員がいつでも内容を確認できる状態にしておくことです。具体的には、社内の見やすい場所に掲示・備え付ける、社内のイントラネットで公開する、各従業員に書面配布するなどの方法があります。

関連記事:就業規則とは?人事担当者が知っておくべき基礎知識をわかりやすく解説

9. 解雇・退職

退職届

解雇とは、使用者が労働者の同意を得ることなく、一方的な意思表示によって労働契約を終了させることをいいます。

労働者を解雇する際には、労働基準法に基づき原則として30日前までに解雇の予告をおこなう必要があります。30日前に予告しない場合には、予告期間が不足する日数分の平均賃金を「解雇予告手当」として支払わなければなりません。

関連記事:労働基準法第20条とは?解雇予告の違反を防ぐ適正な手続きを解説

さらに、労働基準法では、業務上の負傷や疾病による休業期間およびその後30日間、ならびに産前産後休業期間およびその後30日間については、原則として解雇を禁止しています。この制限期間中におこなわれた解雇は基本的に無効とされます。

関連記事:労働基準法で定められた解雇のルールとは?条文や解雇予告について解説

退職に関するルールは、労働基準法だけでなく、民法にも定められており、雇用形態や契約期間によって適用される法律の規定が次のように異なります。

無期雇用契約の場合

民法第627条により、労働者はいつでも退職の申入れをすることができ、申入れの日から2週間が経過すると雇用契約は終了します。

有期雇用契約の場合

民法第628条により、原則として契約期間中の一方的な退職は認められません。ただし、やむを得ない事由がある場合には、契約期間中であっても退職できます。

契約期間が1年を超える有期雇用契約の場合

労働基準法附則第137条により、契約開始から1年を経過した後は、民法第628条の規定にかかわらず、労働者はいつでも退職を申し出ることができます。

関連記事:労働基準法における退職の定義と手続き方法を分かりやすく解説

10. 労働基準法施行規則とは?

はてなと手

労働基準法施行規則とは、労働基準法を実際に運用するための具体的なルールを定めた厚生労働省令です。労働基準法では基本的な原則や義務が定められていますが、施行規則では必要な手続きや書類の様式、運用方法などが詳細に規定されています。

例えば、労働者名簿や賃金台帳などの労働関係書類の保存義務や保存期間は労働基準法で定められていますが、保存期間の起算日などの具体的事項は労働基準法施行規則で定められています。

労働基準法施行規則は、労働基準法の委任に基づいて制定された省令であり、企業や使用者はその内容を遵守しなければなりません。適切な労務管理をおこなうためには、労働基準法だけでなく、関連する施行規則についても理解しておくことが重要です。

参考:労働基準法施行規則|e-Gov法令検索

11. 労働基準法を遵守するために人事担当者がすべきこと

はてなと男性

労働基準法は、従業員の労働条件を守るための基本的な法律です。人事担当者は、日常業務から法改正対応まで幅広く関与する必要があります。ここでは、労働基準法を遵守するために必要な具体的な取り組みを、「事前的対応」「平常時の運用」「事後的対応」の3つの観点で解説します。

11-1. 法改正への迅速な対応(事前的対応)

労働基準法は改正が頻繁におこなわれるため、人事担当者は常に最新の法改正情報をウォッチする必要があります。具体的には、厚生労働省の公式サイトや労働組合、業界団体のニュースレター、セミナー情報などを定期的に確認し、改正内容が自社にどのように影響するかを分析することが重要です。

そのうえで、必要に応じて社内規程やマニュアル、就業規則、給与計算システムなどに速やかに反映させる体制を整えることが求められます。また、社内研修や勉強会を通じて、管理職や従業員に新しい法令内容や遵守ポイントを理解してもらう体制を整えることで、トラブルや法違反のリスクを未然に防止できます。

さらに、法改正対応のチェックリストやフローを作成して定期的にレビューすれば、見落としや手続きの遅延を防ぎ、トラブルや法違反のリスクを未然に回避することが可能です。このように、情報収集・分析・反映・教育の一連のプロセスを組織的に運用し、法令遵守の体制を強化できます。

11-2. 労務管理の効率化と精度向上(平常時の運用)

労働基準法を遵守するためには、普段から正確かつ効率的な労務管理が不可欠です。具体的には、勤務時間や残業時間の記録を正確に管理し、従業員の休暇や代休の取得状況を把握することが基本となります。

近年では、勤怠管理システムの導入が労務管理の精度向上に大きく寄与しています。システムを活用すれば、手入力によるミスや不正打刻を防止でき、勤務データを法令遵守の証拠として保存することも可能です。

また、定期的にチェックリストや内部監査を設け、部門ごとの勤怠管理状況を確認することも重要です。これにより、部署ごとの運用のばらつきや管理上の課題を早期に発見でき、迅速に改善策を講じられます。

11-3. 従業員からの相談や労基署からの指摘への適切対応(事後的対応)

労働基準法違反の疑いがある場合や従業員から相談があった場合には、迅速かつ誠実な対応が求められます。まず、従業員からの相談内容や労基署からの指摘事項を正確に把握し、関連する就業規則や勤怠データを確認します。そのうえで、法令に則った改善策や対応方針を決定します。

例えば、残業時間が上限を超過していた場合は、該当部門に指導をおこない、改善計画を作成して労基署に報告します。また、従業員からの相談には丁寧に説明し、再発防止策や社内窓口の案内をおこなうことで、信頼関係を維持しながら法令違反リスクを最小化できます。さらに、過去の事例を整理して社内マニュアルに反映すれば、同様の問題への対応を迅速化することも可能です。

12. 労働基準法の原則を正しく理解しよう

PC作業する女性

最後に、労働基準法の基本原則を改めて確認しましょう。

労働基準法は労働条件の最低基準を定める法律であり、違反する労働契約は無効となります。また、法律で定められた基準は最低ラインであって、企業はそれ以上の労働条件の向上を図ることが望ましいとされています。

労働基準法の違反には罰則が科されることがあります。賃金の未払いや違法な長時間労働などは送検事案にもなりえます。労働基準監督署は随時企業への立入調査や是正指導をおこなっているので、常に社内の労務管理が法令を遵守しているかチェックする習慣をつけましょう。

特に近年は働く人の権利意識も高まっており、ブラック企業と見なされれば人材採用にも支障をきたします。コンプライアンス(法令遵守)は企業経営の大前提です。労働基準法を正しく理解し、働きやすい職場づくりにぜひ役立ててください。

【最新版】改正ポイントもまとめて解説 労働基準法違反にならないための必須知識まとめ

人事担当者であれば、労働基準法の知識は必須です。しかし、その内容は多岐にわたり、複雑なため、全てを正確に把握するのは簡単ではありません。

◆労働基準法のポイント

  • 労働時間:36協定で定める残業の上限時間は?
  • 年次有給休暇:年5日の取得義務の対象者は?
  • 賃金:守るべき「賃金支払いの5原則」とは?
  • 就業規則:作成・変更時に必要な手続きは?
  • 40年ぶりの大改正:人事担当者が押さえておきたい項目は?

これらの疑問に一つでも不安を感じた方へ。

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jinjer Blog 編集部

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