時短勤務者の有給取得は損になる?日数や賃金の計算方法を解説
更新日: 2026.5.29 公開日: 2021.10.3 jinjer Blog 編集部

育児や介護と仕事の両立を支える「時短勤務制度」ですが、担当者が悩みがちなのが有給休暇の取り扱いです。時短勤務者であっても、有給休暇を正しく付与し、賃金を支払う義務があります。
本記事では、時短勤務者における有給休暇の付与日数や賃金の計算方法、運用上の注意点をわかりやすく解説します。正しくルールを理解し、トラブルを未然に防ぐための就業規則整備や、適切な勤怠管理にぜひお役立てください。
▼時短勤務についてより詳しく知りたい方はこちら
時短勤務(短時間勤務制度)とは?制度の概要やメリット・デメリット、法改正内容を解説
目次
人事担当者の皆さまは、労働基準法における休日・休暇のルールを詳細に理解していますか?
従業員に休日労働をさせた場合、代休や振休はどのように取得させれば良いのか、割増賃金の計算はどのようにおこなうのかなど、休日労働に関して発生する対応は案外複雑です。
そこで当サイトでは、労働基準法にて定められている内容をもとに、振休や代休など休日を取得させる際のルールを徹底解説した資料を無料で配布しております。
「休日出勤させた際の対応を知りたい」「代休・振休の付与ルールを確認したい」という人事担当者の方は、ぜひこちらから資料をダウンロードしてご活用ください。
1. 時短勤務制度とは


時短勤務制度とは、特定の条件を満たしている従業員が労働時間を短縮したり残業免除の申請をしたりできる制度です。
時短勤務者の有給休暇について理解するには、時短勤務制度の内容をしっかり把握しておかなければなりません。まずは時短勤務制度の概要や給与計算方法を確認していきましょう。
1-1. 所定労働時間の短縮や残業の免除が認められる
育児・介護休業法が定める時短勤務制度とは、育児が必要な子供や要介護者の家族を抱える従業員に対し、所定労働時間の短縮や残業の免除を認める取り組みのことです。
要件を満たした従業員が時短勤務を申請した場合、事業主は該当従業員の1日の所定労働時間を「原則6時間」に短縮しなければなりません。加えて、残業の免除申請があった場合は残業を命じることはできなくなります。
有給休暇の付与日数は、所定労働時間の短縮に伴い変動する可能性があります。そのため、制度を適切に運用するには、単に労働時間を短くするだけでなく、時短勤務時における所定労働時間の取り扱いについて、就業規則に明確に定めておくことが大切です。
参考:短時間勤務等の措置|厚生労働省
参考:所定外労働の制限(残業免除)|厚生労働省
1-2. 時短勤務時の給料計算方法
時短勤務時の給料は労働時間の短縮に応じた減額が可能です。これは給料計算の「ノーワーク・ノーペイの原則」に則るものであり、違法ではありません。ただし、必要以上に多く減額することは従業員の不利益に該当するため禁止されています。
時短勤務時における給料の計算式は次の通りです。
時短勤務時の給料 = 基本給 × 時短勤務の所定労働時間 ÷ 通常の所定労働時間
通常の所定労働時間が8時間、時短勤務時の所定労働時間が6時間である場合、労働時間は25%短縮されます。給料も同じく25%以内の減額であれば違法性はありません。このような考え方は、有給休暇の賃金算定方法を理解するうえでも基本的な前提となります。
関連記事:時短勤務の給料計算方法は?2025年の減額率の考え方
2. 時短勤務者の有給付与日数の計算方法


時短勤務者であっても、法令で定められる要件を満たしている場合は有給を付与しなければなりません。
ここでは有給付与の対象となる従業員の要件と、時短勤務者に対する有給付与日数の考え方を解説します。
関連記事:有給休暇の日数を雇用形態別に解説!発生条件や付与タイミング、最大日数は?
2-1. 有給付与の要件
有給付与の対象となる従業員の要件は次の通りです。
【新規採用の従業員の場合】
- 雇入れ日から起算して6ヵ月以上勤続していること
- 雇入れ日から6ヵ月間の全労働日数の8割以上出勤していること
【雇入れ日から6ヵ月以上経過した従業員の場合】
- 1年間(※)の全労働日数の8割以上出勤していること。
※雇入れ日から6ヵ月経過した日を毎年の区間の起算日とする。
有給休暇の付与対象か否かの判断には雇用区分や1日の所定労働時間は考慮されません。そのため、時短勤務者はもちろん、パートタイマーやアルバイトも有給付与の対象です。
2-2. 週5日勤務であれば通常正社員と同日数を付与
週5日間勤務する時短勤務者に対しては、通常勤務の従業員と同じ日数を付与します。ただし、付与日数は勤続年数によって異なります。
法令で定められる、勤続年数ごとの有給付与日数は次の通りです。
|
勤続年数(年) |
付与日数(日) |
|
0.5 |
10 |
|
1.5 |
11 |
|
2.5 |
12 |
|
3.5 |
14 |
|
4.5 |
16 |
|
5.5 |
18 |
|
6.5以上 |
20 |
2-3. 週4日以下30時間未満の勤務では比例付与
週の所定労働日数が4日以下かつ週の所定労働時間が30時間未満の時短勤務者は、パートタイマーやアルバイトと同様に出勤頻度に応じた比例付与をおこないます。
出勤日数・勤務時間に応じた有給付与日数は次の通りです。
|
– |
週所定労働日数 |
1年間の所定労働日数 |
継続勤続年数(年) |
||||||
|
0.5 |
1.5以上 |
2.5以上 |
3.5以上 |
4.5以上 |
5.5以上 |
6.5以上 |
|||
|
付与日数 |
4日 |
169日~216日 |
7 |
8 |
9 |
10 |
12 |
13 |
15 |
|
3日 |
121日~168日 |
5 |
6 |
6 |
8 |
9 |
10 |
11 |
|
|
2日 |
73日~120日 |
3 |
4 |
4 |
5 |
6 |
6 |
7 |
|
|
1日 |
48日~72日 |
1 |
2 |
2 |
2 |
3 |
3 |
3 |
|
2-4. 【具体例】週4日・1日6時間労働の時短勤務者における有給付与日数は?
週4日・1日6時間勤務の従業員は、「週所定労働日数が4日以下かつ週所定労働時間が30時間未満の労働者」に該当するので、通常の労働者とは異なる基準で年次有給休暇が付与されます。
このケースでは週所定労働日数が4日であることから比例付与の対象となり、例えば勤続6.5年以上であれば年次有給休暇は「15日」が付与されます。
正しい知識を持っていなければ、「所定労働時間5時間だけだし、有給付与する必要ないのでは?」「8時間勤務の日がないから有給の日数が変わるのでは?」と勘違いしてしまう可能性も考えられます。
そこで当サイトでは、労働基準法に則った有給休暇の付与ルールを、表を用いてわかりやすくまとめた資料を無料で配布しております。自社の有休付与ルールに問題がないか確認したい方は、こちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
3. 時短勤務者の有給休暇の賃金の計算方法


労働基準法では、有給休暇1日あたりの賃金の計算方法として、次の3つが定められています。
- 平均賃金を基に支払う方法
- 所定労働時間に応じた通常の賃金を支払う方法
- 標準報酬日額を基に支払う方法
ここからは、これらの計算方法を時短勤務者への対応も含めて詳しく解説します。
関連記事:有給休暇取得日の賃金計算方法と正しく計算するための注意点を解説
3-1. 平均賃金で計算する
有給休暇中の賃金は、労働基準法第12条に基づく平均賃金で支払うことが可能です。時短勤務者の場合も、この平均賃金を基に計算できます。
ここでいう平均賃金とは、労働基準法において各種手当や補償、減給制裁などの算定基準となる金額のことを指します。原則として、直近3ヵ月間に支払われた賃金総額を、その期間の暦日数(休日を含む)で割って算出します。
ただし、平均賃金が不当に低く算出されないよう、産前産後休業や育児休業の期間の日数・賃金は控除して計算する必要があります。また、賃金締日や最低保障額の扱いなども関わるため、平均賃金の計算は複雑になる場合がある点にも注意が必要です。
3-2. 所定労働時間働いた場合の賃金で計算する
有給休暇中の賃金は、所定労働時間働いた場合と同じ額を支払うケースが多く見られます。これは、出勤したものとみなして計算できるため、給与計算の手間が少ないという利点があります。
ただし、給与形態が日給制以外の場合は、1日分の賃金を個別に算出する必要があります。時短勤務者の場合は、短縮後の所定労働時間に応じた金額を支払うのが適切です。
例えば、所定労働時間が8時間で日給1万円の従業員が、時短勤務で1日の所定労働時間を6時間に短縮した場合、有給休暇1日分の賃金は次の計算式で求められます。
7,500円 = 1万円 × 6時間 ÷ 8時間
このように、時短勤務後の労働時間に比例して賃金を計算することで、公平かつ合理的な有給休暇の賃金設定が可能です。
3-3. 標準報酬日額で計算する
標準報酬日額とは、健康保険の標準報酬月額を30で割った金額であり、年次有給休暇中の賃金計算方法のひとつとして用いることができます。標準報酬月額は毎年の定時決定や随時改定で把握されているので、計算が簡便で事務負担が少ない点がメリットです。
ただし、標準報酬日額はあくまで社会保険料算定のための金額であり、「所定労働時間に基づく通常賃金」と比べると、支払額が低くなる場合があります。
さらに、時短勤務者は、所定労働時間の短縮に伴って基本給が減額されるので、産休・育休明けには「産前産後休業終了時報酬月額変更届」や「育児休業等終了時報酬月額変更届」を提出し、給与水準に比して過大な社会保険料負担が生じないよう、実際の給与額に応じて標準報酬月額を見直すことがあります。
そのため、この方法を有給休暇中の賃金計算に用いる場合、時短勤務者の有休取得日の賃金が想定より低くなる可能性に注意が必要です。また、この方法を採用するには、あらかじめ労使協定の締結が必要です。
関連記事:育児休業等終了時報酬月額変更届とは?提出方法やデメリットをわかりやすく紹介
3-4. 【ポイント】時短勤務者の有給消化時の賃金計算は就業規則で明記しておくことが重要
有給休暇の賃金については、労働基準法で複数の算定方法が認められています。そのため、企業は採用する算定方法を就業規則で明確に定めておく必要があります。
一方、時短勤務者に特化した有給休暇取得時における賃金の計算方法が法律で明示されているわけではありません。とくに時短勤務者は通常の労働者と所定労働時間が異なるので、「1日分の賃金」の考え方や算定方法が曖昧なままだと、計算ミスや認識のズレが生じるおそれがあります。
そのため、有給休暇の賃金算定方法および時短勤務者への適用ルールを、規程上で具体的に定めておくことが望ましいでしょう。
4. 時短勤務者の有給休暇を付与・計算する際の注意点


ここでは、時短勤務者の有給休暇を付与・計算する際に押さえておくべきポイントを、実務上の留意点も含めて詳しく解説します。
4-1. 産前産後休業や育児休業を取得した期間は出勤したものとみなす
労働基準法第39条に基づき、産前産後休業および育児休業の期間は、年次有給休暇の付与要件である出勤率の算定において「出勤したもの」として取り扱われます。
そのため、これらの休業期間があっても出勤率の計算上不利になることはなく、年次有給休暇の付与要件を満たすかどうかの判断においてマイナスにはなりません。
なお、要件を満たした場合には年次有給休暇は通常どおり付与され、復職後に時短勤務へ移行した場合でも、その有給休暇を取得することは可能です。
関連記事:有給休暇の労働基準法における定義|付与日数や取得義務化など法律を基に解説
4-2. 勤務実態を基準として計算する
雇用契約上の所定労働時間と時短勤務時で実際に働く時間が乖離している場合、勤務実態に合わせた賃金を支給することが適切な対応です。
企業によっては、雇用契約上の所定労働時間を変更せずに時短勤務を実施しているケースもあります。例えば、所定労働時間は従来通り8時間とし、時短勤務で早く退勤した分は早退扱いとして給与から控除するような方法です。
この場合、所定労働時間を基準に有給休暇の賃金を支給してしまうと、通常の給料との整合性や一般従業員との公平性が保てません。法令違反ではありませんが、労使トラブルに発展するおそれもあります。
無用なトラブルを避けるため、勤務実態に沿った所定労働時間への契約改定も検討しましょう。
4-3. 時間単位の有給休暇の上限は時短勤務に合わせる
時間単位の有給休暇制度を採用している企業の場合、有給の取得上限も時短勤務の所定労働時間に合わせて考えましょう。
労働基準法が規定する時間単位有給休暇の取得上限は、「年5日以内」です。1日の所定労働時間が8時間の場合、40時間(8時間×5日間)まで時間単位の有給が取得できます。
一方、時短勤務で1日の所定労働時間を6時間とする場合、取得上限は30時間(6時間×5日間)です。
このように、所定労働時間によって取得上限が異なるため、有給休暇の残日数の管理を間違えないようにしましょう。
関連記事:時間単位の有給休暇とは?導入や計算方法、メリット・デメリットを解説
4-4. 時短勤務者の有給取得を制限することは違法
時短勤務であることを理由に年次有給休暇の取得を制限したり、取得を困難にするような取扱いをおこなったりすることは、法令上問題となる可能性があります。
例えば、育児・介護休業法では、育児短時間勤務制度の利用を理由として、労働者に対して不利益な取扱いをすることが禁止されており、制度利用を妨げるような対応は適切ではありません。
また、年次有給休暇は労働基準法により労働者に保障された権利であり、労働者は原則として希望する時季に取得できます。ただし、使用者には事業の正常な運営を妨げる場合に限り時季変更権が認められています。
そのため、時短勤務であることを理由に一律に「取得できない」「取得を後回しにする」といった取り扱いをおこなうことは、適切な運用とはいえず、場合によっては法令違反となるおそれがあるので注意しましょう。
参考:育児休業、介護休業等育児又は家族介護を行う労働者の福祉に関する法律第23条の2|e-Gov法令検索
関連記事:時季変更権とは?行使するための条件や注意点を徹底解説
5. 時短勤務者の有給に関連するよくある質問


ここでは、時短勤務者の年次有給休暇に関するよくある質問とその回答を紹介します。
5-1. フルタイムから時短勤務に変更すると有給が減る?
フルタイムから時短勤務に変更した場合でも、すでに付与済みの年次有給休暇の日数が減ることはありません。
ただし、次回の有給休暇の付与については、付与時点(基準日)の労働契約内容に基づいて算定されるので、時短勤務へ変更している場合には付与日数が変わる可能性があります。
例えば、フルタイムから時短勤務へ移行し、週所定労働日数や週所定労働時間が減少した場合には、次回付与される有給休暇の日数が減少することがあります。
関連記事:有給休暇義務化における「基準日」とは?5日間の取得義務についても解説
5-2. 時短勤務者の給与減少を補うために活用できる給付金制度はある?
2歳未満の子を養育するために時短勤務をおこない、その結果として育児時短就業前と比べて賃金が低下するなどの要件を満たす場合、「育児時短就業給付金」を受給できます。
給付額は原則として、育児時短就業中に支払われた賃金の10%相当額です。ただし、支給額と賃金の合計が育児時短就業開始時の賃金水準を超えないように調整されます。また、各月の賃金と給付額の合計が支給限度額を超える場合には、その超過分が減額されるので注意が必要です。
給付金を受けるためには、原則として事業主が、育児時短就業開始時賃金の届出、受給資格確認および支給申請をおこなう必要があります。これらの手続きは、初回申請時にまとめておこなうことも可能です。
支給申請は通常2ヵ月ごとにおこないますが、被保険者本人が希望する場合には、本人が申請をおこなったり、1ヵ月ごとに申請したりすることも可能です。
参考:2025年4月から「育児時短就業給付金 」を創設しました|厚生労働省
5-3. 時短勤務中に消化できなかった有給は繰り越せる?
有給休暇には、労働基準法第115条により「付与から2年間で時効になる」というルールがあり、その期間内であれば翌年度へ繰り越すことが可能です。そのため、時短勤務であっても、使い切れなかった有給休暇は基本的に翌年に持ち越されます。
ただし、繰り越しできるのは未取得分に限られ、2年を経過した有給は消滅します。時短勤務であること自体が繰り越し条件に不利に働くことはありませんが、勤務日数や取得状況によっては消化しきれない場合もあるので、計画的に取得させることが重要です。
関連記事:【図解】有給休暇の繰越とは?上限やルール、計算方法をわかりやすく解説
6. 時短勤務者への有給休暇は日数や賃金に気を付けて処理しよう


時短勤務者であっても、法令の要件を満たせば有給休暇を付与する必要があります。付与日数は週の所定労働日数などに応じて決まり、週5日勤務ならフルタイムと同日数、週4日以下かつ30時間未満なら比例付与となります。
また、有給取得日の賃金算出方法は平均賃金や所定労働時間分など複数ありますが、時短勤務者の場合は短縮後の労働時間に応じた計算が適切です。計算ミスやトラブルを防ぐため、これらのルールを就業規則で明確に定めることが重要です。企業は正しい知識を持ち、従業員が安心して制度を利用できる環境を整えましょう。



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