代休の取得期限はどのくらい?管理のポイントと併せて紹介
更新日: 2022.12.8
公開日: 2021.9.6
目黒颯己

休日出勤した労働者に対し、代わりの休みを与えることを「代休」といいます。従業員の健康管理のためにも、代休は休日出勤日の直後に与えることが望ましいです。
しかし、業務が忙しくてなかなか代休が取れない状態の人は、決して珍しくありません。それでは、取得することができない代休はいつまで有効なのでしょうか。この記事では、代休の取得期限と管理のポイントを紹介します。
関連記事:代休の定義や振休との違い・運用のポイントを詳しく解説
1. 代休取得期限はある?

さっそく、代休の取得期限について見ていきましょう。ここでは、法律上の代休の取得期限と、実務上の代休の取得期限について紹介します。
1-1. 労働基準法上の期限は2年間
労働基準法上では、代休についての具体的な規定はありません。しかし、同法115代条には「賃金その他の請求権の時効」が2年であると記載されているため、代休の請求権も2年で時効を迎えると考えて差し支えないでしょう*。
そもそも、労働基準法では労働者に代休を取らせることを義務付けてはいません。休日と勤務日をあらかじめ入れ替えて休日に勤務させる「振替休日」や、一定の条件を満たす従業員に対して付与することが義務付けられている「有給休暇」とは違い、代休は必ず取得させなくてはいけないものではないのです。
したがってたとえ休日出勤をしても、会社の就業規則などに代休についての規定がない場合、労働者は代休を取得することはできません。
反対に、就業規則に代休についての規定があり、そこに自社ルールとして取得期限が記載されている場合は、そのルールが適用されることになります。
*参考:e-Gov|労働基準法
1-2. 実務上では休日出勤の直後が望ましい
労働基準法における代休の取得期限は2年ですが、実務上でこの期限を採用している企業はなかなかありません。休日出勤をした1年6か月後にさかのぼって代休を請求することは、本来の目的に反するためです。
そのため、企業は自社で代休についてのルールを設定し、そのルールにのっとって制度を運用していくことが一般的です。
代休の取得期限は1か月や2か月といったように自由に設定できますが、可能な限り直後に設定することが望ましいでしょう。そもそも、代休は休日出勤をした従業員の体を休めることが目的の制度であるため、1週間以内の取得がもっとも適しています。
ただし、忙しい時期では休日出勤の直後に代休を取ることは難しいケースも多いため、余裕をもたせて1か月や3か月といった期間を設定する企業も少なくはありません。
代休の取得期限は企業が自由に設定できますが、従業員の健康管理を考慮のうえ、しっかりと代休を取得できるルールを規定することが大切です。
2. 代休と振替休日の違い

前章で代休の取得期限について記載しましたが、代休と区別が必要なものに振替休日があります。
代休と振替休日とでは、申請方法や割増賃金の違いなど明確な違いが存在します。
本章では、人事担当者が対応を間違えやすい代休と振替休日の違いについて説明します。
2-1. 代休と振替休日の違いとは
「代休」とは、休日労働が行われた場合に、その代償として以後の特定の労働日を休みとするものであって、前もって休日を振り替えたことにはなりません。
一方で「振替休日」は、休日と勤務日をあらかじめ入れ替えることを指します。そのため、休日と勤務日を入れ替えて出勤させた従業員には、必ず入れ替えた勤務日に休みを取らせる必要があります。
つまり、代休は「休日労働が行われた事後に申請するもの」であるのに対して、振替休日は「休日労働が行われる前に、休日と勤務日を事前に入れ替えて行われるもの」という違いがあります。
2-2. 代休と振替休日の割増賃金の違い
代休と振替休日とでは、同じ法定休日に労働したとしても割増賃金に違いが生じます。
たとえば、普段、木曜日が勤務日で日曜日が休日の従業員がいるとします。
振替休日によって、従業員の勤務日と休日を事前に入れ替えて、従業員が日曜日に働き、木曜日を振替休日とした場合、従業員は労働時間に働いたという扱いになるため、休日労働の割増賃金は発生しません。
一方で、日曜日に休日出勤をさせた後に、代休で木曜日を休日とした場合、従業員は休日労働をしたことになるため、割増賃金が発生します。
割増賃金について、労働基準法32条と37条では、1日8時間、週40時間以上の労働を行なったとき、25%の割増賃金を支払う義務があると定めています。
また、法定休日に従業員を働かせたときは35%以上、所定休日に働かせたときは25%以上の割増賃金が発生することが規定されています。
代休制度を利用するときは、こういった割増賃金を正しく計算して支給する必要があります。賃金については自社のルールで運用することはできませんので、十分に注意しましょう。
2-3. 代休の未消化分の精算方法
給与の支払い方法についても、適切なルールで運用することが求められます。同じ日に労働したとしても、振替休日を取得するか代休を取得するかによって給与の支払い方法が異なるため、必ず正しい処理方法を押さえておきましょう。
代休の取得期限によって給与の支払い方法が異なります。
代休の取得期限が同一賃金支払期間内であれば、休日出勤と代休で賃金を相殺できます。そのため給与計算の際は、休日労働割増賃金や時間外労働割増分の賃金を支払えば問題ありません。
しかし締日をまたいで代休を取得させる場合、一度休日出勤の給与を支払い、代休を取ったのちに割増賃金を除いた基礎賃金を控除する必要があります。
したがって、代休をすみやかに取ることは、給与計算の手間を減らすという意味で非常に有効なことです。可能であれば、同一賃金支払期間内で代休を取得させるようにしましょう。
これに対して、振替休日で「あらかじめ休みと勤務日を入れ替える」制度であるため、事前に休日と入れ替える労働日を決めておかなくてはいけません。
具体的には、「今週の日曜日に出勤する代わりに、来週の火曜日は休む」といったように決めてから、勤務させる必要があるのです。したがって、長期間振り替えた休日を取らせないことになれば、そもそも制度の要件を満たせなくなってしまうので注意が必要になります。
当サイトでは、本章で解説した代休と振替休日の定義の違いから、割増賃金の考え方までを解説した資料を無料で配布しております。給与の支払い不足等トラブルが起きやすい内容になるので、不安な方はこちらから資料をダウンロードしてご確認ください。
3. 従業員の代休取得を管理するポイント

最後に、従業員の代休取得を正しく管理するためのポイントを2つ紹介します。
3-1. 代休の取得までが長期化しないようにする
企業は、従業員の未消化の代休が累積しないように気をつける必要があります。
企業には代休を取得させる義務はないと紹介しましたが、就業規則に代休が取得可能なことを規定しているにもかかわらず適切に代休を取得させない場合、従業員の健康やメンタルヘルスに悪影響を与えてしまう危険性が高まります。
法律上、代休の取得期限を延長したり代休の日程を再設定したりすることは問題ありませんが、長期間代休が取れない環境は問題です。
従業員の休日確保や健康管理のためにも、業務量を調整したり上司が声かけをしたりするなど、代休が累積・長期化しない取り組みをすることが大切です。
3-2. 代休ではなく振替休日で対応する
代休の取得を促進したり管理の手間を減らしたりしたい場合は、代休ではなく振替休日で対応することが有効です。
振替休日とは「休日と勤務日を入れ替える制度」のことで、あらかじめ休日労働の代わりに休む日程を決定して運用する点が大きな特徴です。
いつ休みをとってもいい代休とは異なり、振替休日では必ず決められた日に休みを取ることが義務付けられるため、振休が取得できずに累積することはありません。
また、あらかじめ誰がいつ休むのかを把握しやすくなるので、企業が管理する手間も省けます。振替休日は休日手当の支払いも不要であるため、コスト面の恩恵も受けられます。
当サイトでは、休日出勤時の正しい対応(振替休日・代休)についてまとめた資料を、無料で配布しております。労働基準法に沿ってそれぞれの要件を解説しているため、正しい対応ができているか不安な方は、こちらから資料をダウンロードしてご覧ください。
関連記事:振替休日とは?定義や代休との違い、付与のルールを分かりやすく解説
4. 代休の取得期限は短めに設定しておこう!

代休の法律上の取得期限は2年ですが、実務上ではなるべく休日出勤の直後に代休を取らせることが望ましいとされています。
取得期限を短くすることで労働者の休日確保や健康管理ができるだけではなく、給与計算や代休日数の管理にかかる手間を減らせるというメリットがあります。
代休に関するルールは、基本的に企業で決めて独自に運営することが可能です。
ただし、法定休日や割増賃金、給与支払いなど一部のルールは遵守しなければいけないため、運用時は十分に注意しましょう。
関連記事:休日と休暇の違いとは?休みの種類や勤怠管理のポイント
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