振替休日とは?定義や代休との違い、付与のルールを分かりやすく解説
更新日: 2023.9.11
公開日: 2021.9.6
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仕事をするうえで、休日に出勤が必要になることは多々あるかもしれません。休日と労働日を入れ替える場合、振替休日に該当して割増賃金の支払いが不要になるケースがあります。
この記事では、振替休日の定義について説明します。要件をしっかりと把握して、正しく運用しましょう。
1. 振替休日とは
振替休日とは、休日と決められていた日をあらかじめ労働日とし、その代わりに他の労働日を休日にすることです。
たとえば、休日と定められていた日曜日をあらかじめ「労働日」として、もともと労働日であった翌日月曜日を休みにするということが、振替休日に該当します。
ポイントは、休みと労働日を入れ替えただけであるため、休日労働に対する割増賃金が生じない点です。休日出勤にならないことを理解しておきましょう。
2. 振替休日の4つの要件
休みの日に出勤してほかの日に休むという働き方は、どのようなケースでも振替休日になるというわけではありません。この休日と労働日の入れ替えを「振替」として扱うためには、3つの要件を満たす必要があります。
ここでは、詳しい要件について見ていきましょう。
2-1. 就業規則に振替休日についての定めがある
就業規則とは、労働者の給与に関する定めや労働時間といった条件、労働者が遵守すべき職場のルールについてまとめた規則です。
従業員を常時10人以上雇用している企業は、就業規則を作成して所轄の労働基準監督署への届出が義務付けられています。
振替休日を利用するためには、そもそも就業規則などで制度の採用やルールについて定めておかなくてはいけません。振替休日を利用する可能性がある企業は、しっかりと就業規則に記載しておきましょう。
2-2. 振替休日にすることを前日までに従業員に伝える
企業は、休日出勤をさせる「前日」の勤務終了までに従業員に休日もしくは出勤を伝えなくてはいけません。
2-3. 振替休日となる日を明確に決める
もっとも大切なのは、休日をあらかじめ決めておくことです。どの休日と労働日を入れ替えるのかを決めてから休日出勤させることで、はじめて要件を満たせます。振替休日にすることだけを事前に決め、実際の日にちを指定しない場合は振替休日とみなされません。事前に振替休日と決めるだけでなく、必ず具体的な日付も指定しましょう。
日にちを決めていなかったせいで代休扱いに合ってしまうと、休日手当が必要になる可能性があり、想定外の人件費の出費が生まれてしまいます。
2-4. 法定休日の要件を満たしている
振替を行なっても、週に1日もしくは4週4日の法定休日の要件を満たしていなくてはいけません。法定休日にのっとり、休みを設定する必要があるため、可能な限り労働日の近くに休みを取ることが理想的です。
3. 振替休日と代休の違い
振替休日と似たような制度として「代休」というものがあります。代休とは、休日労働が行なわれたときに、その代償として以後の労働日を休みとするものです。
一見すると同じに見えるかもしれませんが、両者には決定的な違いが2つあります。ここでは、それぞれの違いについて見ていきましょう。
3-1. 休日を決定するタイミング
両者では、休日を決定するタイミングが異なります。先述したように、振替ではあらかじめ労働日と振り替える休日を決定して、従業員に伝えておく必要があります。
一方で、代休は勤務後に任意の労働日を休みに設定できるため、事前に日程を決めておく必要はありません。計画的に休みと労働日を入れ替えるのが振替、急な休日労働にも対応できるのが代休というイメージです。
3-2. 給料の計算方法
両者では、給料の計算方法も異なります。
振替休日は「休みと労働日を入れ替える」と定義されているため、たとえ本来は法定休日あった日曜などに出勤しても、休日手当の支払いは不要です。
通常の労働と同様の賃金で問題ありません。しかし、代休は「休日出勤をした代わりに休みを取る」と定義されているため、休日手当の支払いが必要です。法定休日に従業員を働かせると、35%以上の休日手当が必要になります*。
発生する給料は従業員にとって重大な問題であるため、企業はあらかじめ「どちらに該当するのか」をしっかりと説明し、従業員に納得してもらうことが大切です。
ここの内容を理解しなければ、給与の支払い不足が発生し多くのトラブルが発生しますので、定義から明確にしなければなりません。
関連記事:振替休日と代休の違いは?設定方法や法律違反になる場合を解説
4. 振替休日を取るときの注意点
最後に、より正しく制度を運用するための注意点について見ていきましょう。
4-1. 就業規則に振替休日について定める必要がある
要件の部分にも記載しましたが、振替休日を導入するときは就業規則への記載が必要です。労働に関する条件には根拠が必要であり、ルールを決めないまま制度を導入すれば、あとからトラブルになってしまうリスクがあります。
最悪の場合、振替が否認されて割増賃金の支払いが求められてしまうかもしれません。労働するうえで運用する制度については、必ず就業規則に記載しておきましょう。
4-2. 振替休日の期限
振替休日はあらかじめ休みとする日を決定してから行なわれるため、取得期限について意識することはあまりないかもしれません。
しかし、通常振替は同一賃金支払期間内で行なわれることが一般的なので、給料の締日よりも前に休みを設定することを意識しましょう。
そもそも労働基準法には、労働によって確定した金額を全額支払わなくてはいけない「賃金全額払いの原則」というものが存在しています。そのため、もし休みを与える時期が締日をまたぐことになってしまうのであれば、一旦は休日出勤に対する給与を支払い、休みを取得してから控除を行なう必要があるのです。
仮に相殺可能であっても「賃金全額払いの原則」のほうが優先されるため、上記の方法で精算することを推奨します。この場合は休日手当の割増賃金は不要ですが、後述する週に40時間を超える分の割増賃金は必要となるため、該当する場合は注意しましょう。
本来支払うべき給与を支払わないことは、法律で定められた義務を果たさないことであり、最悪の場合で信用に関わってくる問題でもあります。慎重に判断しましょう。
4-3. 週を越える振替は割増賃金が必要になる可能性がある
振替休日の給料には休日手当が不要であると紹介しましたが、週を越えて休みと労働日を振り替えたときは、時間外手当として割増賃金が発生する可能性があるため注意しましょう。
労働基準法32条と37条では、1日8時間、週40時間以上の労働を行なったとき、25%の割増賃金を支払う義務があると定めています。
たとえば月曜日から金曜日まで1日8時間、週40時間働いたのち、土曜日を労働日にしたときは週の労働時間は48時間です。このオーバーした8時間に対して、時間外手当として25%の割増賃金が必要になるというわけなのです。知らずに通常通りの給与を支払うと労働基準法に違反してしまうため、労働時間については慎重に管理しましょう。
4-4. 振替休日が累積することは違法
「休日に働いたけど、仕事が忙しくて休みが取れない」というケースは、非常に多いものです。しかし先述したように、振替休日はあらかじめ労働日と休日を決定してから行なわれる必要があります。
そのため、休日の振替が行なわれずに累積してしまうと、要件を満たせなくなってしまう可能性が高いのです。また、休日労働が生じたときは割増賃金が発生します。
振替休日では、労働した分の給料は代わりに休みとする日と相殺され、割増賃金のみが支払われることになります。振替が行なわれない場合、取得してもいない休日と労働した給料が相殺されるため、労働基準法24条の「賃金の全額払いの原則」に違反してしまう点に注意が必要です*。
休日出勤をさせたときは、すみやかに休みと取らせるようにしてください。
*参考:e-Gov|労働基準法
5. 振替休日は要件を満たして適切に運用しよう!
振替休日を導入するときは、あらかじめ就業規則に定めて休日と振り替える労働日を決定し、法定休日の要件を満たしている必要があります。
しっかりとこの3つを押さえて、適切に運用していきましょう。振替は代休と類似しているポイントも多いですが、休みを決定するタイミングと給料の計算方法が異なります。
振替を行なったつもりでも、条件によっては否認されて割増賃金が発生する可能性があります。運用時は十分に注意してください。
関連記事:休日と休暇の違いとは?休みの種類や勤怠管理のポイント
関連サイト:ホワイト企業ナビ
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