労働基準法に定められた育児時間の考え方と計算方法を解説 - ジンジャー(jinjer)|人事データを中心にすべてを1つに

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労働基準法に定められた育児時間の考え方と計算方法を解説

育児時間

育児時間は労働基準法で定められている制度です。

生後1年未満の乳児を持つ母親でも働きながら育児をできる制度ですが、取得できる条件や時間は働き方によって変わります。

この記事では、労働基準法では育児時間についてどのように定められているのか、労務管理上のポイントや育児時間の計算方法などを解説していきます。

▼そもそも労働基準法とは?という方はこちらの記事をまずはご覧ください。
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例外や特例なども含めて法律の内容を理解しておくと、従業員に何かあったときに、人事担当者として適切な対応を取ることができます。

今回は、労働基準法の改正から基本的な内容までを解説した「労働基準法総まとめBOOK」をご用意しました。

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1. 育児時間とは

育児時間の考え方

労働基準法第67条には、「育児時間」という制度が定められています。

(育児時間)

第六十七条 生後満一年に達しない生児を育てる女性は、第三十四条の休憩時間のほか、一日二回各々少なくとも三十分、その生児を育てるための時間を請求することができる。

② 使用者は、前項の育児時間中は、その女性を使用してはならない。
引用:労働基準法|e-Gov法令検索

育児時間とは、文字の通り育児をするための時間です。

条文にあるとおり、労働基準法第34条に規定されている休憩時間のほか、1歳未満の子どもを育てながら働く女性労働者は、30分の育児時間を1日2回、合計1日1時間の育児時間を取得することができます。

1-1. 育児時間の使い方

制定当初の「育児時間」は、母親が乳児に授乳する時間とされていましたが、現在では子どもの送り迎えなども含まれています。

つまり対象となる労働者は、授乳だけでなく自由な用途に使用することができるのです。

そのため、使用者が育児時間の用途を制限することはできないので、忘れずに覚えておきましょう。

1-2. 育児時間の申請があった場合拒否できない

育児時間は働きながら乳児を育てられる制度で、労働基準法にも定められています。そのため、労働基準法では事業主などの使用者は育児時間を拒否できません。

申請があったのに育児時間を拒否した場合は、罰則が科せられる場合もあるので注意が必要です。事業主などの使用者は、労働者から申請があった場合は対象者に対して育児時間を必ず付与しましょう。

拒否した場合は、労働基準法第119条1号に規定されている通り、6ヶ月以下の懲役または30万円以下の罰金に処せられるおそれがあります。

ただし、この罰則は申請があったのにも関わらず拒否した場合で、育児時間の申請がない労働者に対しては、使用者から育児時間を与えなくても罰則はありません。

2. 育児時間に関する労務管理上のポイント

key points

育児時間を請求された際、使用者はどのような点に気をつけて付与するべきなのでしょうか。

ここでは育児時間に関する労務管理上のポイントについてご説明します。

2-1. 育児時間取得の対象者

育児時間の制度は、雇用形態にかかわらず満1歳未満の子供を育てる女性労働者が対象になります。

育児休業制度等とは異なり、なぜ男性労働者が対象とならないのかというと、育児時間の本来の制度趣旨は、授乳の機会確保や母体保護だったからです。

ただし、条文にある「育児をおこなうための時間」は授乳以外の世話も含まれています。

そのため、男性労働者も育児時間制度に含めるべきという主張があり、会社によっては男性労働者も育児時間を取得できることがあります。

2-2. 育児時間の取得可能な時間帯と回数

育児時間を取得する時間帯は、原則として請求者の自由です。そのため、使用者が一方的に「育児時間」として指定した時間帯以外での育児時間の取得を拒否することは違法となります。

実際の育児時間の取得方法として一般的なものは以下の通りです。

  • 出退勤前後に30分の育児時間を取得する
  • 始業時または終業時に1時間まとめて取得する

育児時間の取得可能な回数は、原則として1日2回、各30分以上と定められています。しかし、必ずしも2回に分けて取得させなければならないわけではなく、1回にまとめて1時間取得させる等、柔軟な運用が可能です。

さらに事後申請が可能な場合、子供が体調不良になときときや授乳等で少し遅れそうなときに育児時間をそこに充てることができます。そのため、育児時間の制度を効果的に運用すれば、会社の魅力的なポイントとして採用活などに活かすことも可能です。

2-3. 育児時間の給与について

育児時間について規定する労働基準法やその他の法律には、育児時間中の賃金の取扱いに関する定めは特にありませんが、育児時間は、1歳未満の子どもの世話をするために加算された休憩時間と考えられているため、育児時間分は無給になります。

これは「ノーワーク・ノーペイ」という、働いていない時間は賃金を支払わないという原則に基づいています。ただし、会社の就業規則によっては育児時間も労働時間に含まれる場合があります。

労働基準法では育児時間の賃金は無給となっていますが、就業規則に準じるため、申請があった場合は、自社の就業規制を確認しましょう。

3. 育児時間の計算方法

育児時間の計算方法

育児時間は労働者の勤務時間によって決まります。

育児時間は8時間労働を予想しているのであるので、4時間労働の場合には1日1回の育児時間で足りるとされています。また、育児時間は休憩時間とは別物です。

例えば、1日の労働時間が8時間を超える場合は1時間以上の休憩を取得することが労働基準法で定められています。そのため、1時間の休憩後に続けて30分の育児時間を取ることも可能です。

8時間以上の勤務をする場合、30分の育児時間を2回申請できます。30分を合算して1時間取得するか、分けて取得するかは労働者が自由に選べます。30分を合算して1時間取得するか、分けて取得するかは労働者がえらべるということを覚えておきましょう。

3-1. 育児のための往復時間も含める

育児時間は授乳のためだけの時間ではなく、子育てに必要なことをこなす時間であるため、子どもの送迎や子育てに必要な物の準備なども含まれます。

例えば、9時始業の場合、育児時間を9時から1時間取得することで、毎朝余裕をもって子どもの送迎ができるようになるといった使い方もできます。

4. 雇用形態や勤務時間が異なる場合の育児時間

育児時間の変化

1歳未満の子どもを持つ女性労働者は、育児の時間を確保するために勤務時間があまり長くない場合があります。

ここでは、勤務時間が短い「パートタイム労働者」「変形労働時間制の労働者」「育児時短勤務中の労働者」、それぞれの育児時間について解説します。

4-1. パートタイム労働者

育児時間は、雇用形態や労働時間を問わず申請できます。

しかし、勤務時間によって育児時間が変わるため、8時間以上の勤務をするフルタイム労働者よりも、勤務時間が短い場合は育児時間も短くなってしまうかもしれません。

基本的にはフルタイム労働者向けに作られた制度であるため、目安として4時間勤務の場合はフルタイム勤務の半分の30分となる、というように考えましょう。

4-2. 変形労働時間制の労働者

変形労働時間制とは、業務量に合わせて労働時間を決められる制度のことです。

「1日8時間勤務」と決まっているのではなく、週単位・月単位・年単位で労働時間を設定し、1日の勤務時間を自由に決められます。季節によって繁忙期が変わる会社や、時差出勤を推奨している企業などは始業時間と終業時間が決まっていない場合があります。そのため、変形労働時間制の労働者は、取得時間の幅が広がると理解しましょう。

フルタイムの労働者は、出勤の前か後、勤務途中などの所定労働時間内に取得することが一般的ですが、変形労働時間制は上記の通り、始業時間と終業時間が決まっていない場合があるので、早朝や深夜などで自由に育児時間を申請できます。

関連記事:1年単位の変形労働時間制の定義やメリット・デメリット

4-3. 育児時短勤務中の労働者

育児時間と育児時短勤務の違いは2点あります。

1点目は、子供の年齢による違いで、育児時短勤務は3歳に満たない子供を養育しているということです。
2点目は、休憩を増やすか所定労働時間を減らすかという違いで、育児時短勤務は子供を養育している労働者の所定労働時間を6時間に変更するという内容になります。

育児時間の制度は、育児短時間勤務の制度と趣旨が異なるため併用することが可能です。

そのため、例えば2歳の子どもと、生後7ヶ月の乳児を養育する女性労働者は、通常よりも短い労働時間で働きながら育児時間も申請できます。

関連記事:時短勤務はいつまで取れる?気になる基準と就業規則の決め方

5. 育児時間の取得促進で自社の魅力を高めよう

育児

育児時間は満1歳未満の子どもを持つ母親でも働きながら子育てできるように、労働基準法で定められている制度です。

そのため、労働者から育児時間の申請があった場合、事業主などの使用者は拒否できません。

育児時間の申請を拒否すると、罰則が科せられてしまいます。そもそも、育児時間を取らせないような会社は時代錯誤という印象を与えてしまいます。

逆に、積極的に育児時間取得を薦めれば、「子育てに理解のある会社」「子供がいても働きやすい会社」という印象になるので、育児時間の取得促進で自社の魅力を高めて、優秀な人材確保につなげてみてください。

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人事担当者など従業員を管理する役割に就いている場合、雇用に関する法律への理解は大変重要です。
例外や特例なども含めて法律の内容を理解しておくと、従業員に何かあったときに、人事担当者として適切な対応を取ることができます。

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OHSUGI

OHSUGI

クラウド型勤怠管理システムジンジャーの営業、人事向けに採用ノウハウを発信するWebメディアの運営を経て、jinjerBlog編集部に参加。営業時代にお客様から伺った勤怠管理のお悩みや身につけた労務知識をもとに、勤怠・人事管理や給与計算業務に役立つ情報を発信しています。

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