労働基準法で規定されている生理休暇の期間と賃金の考え方
更新日: 2023.9.1
公開日: 2021.10.4
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生理休暇は女性従業員特有のものであり、さらに各個人で症状もさまざまなので、企業としては取り扱いが非常に難しい制度の1つです。また労働者にとってもあまり浸透していないのが事実で、「男性の上司には言いにくい」「生理を理由に休むのは気が引ける」と感じているケースも少なくありません。
ただし生理休暇は労働者の権利なので、できるだけ自由に取得できる体制を整えることが必要です。そこで今回は労働基準法で定められている生理休暇について、企業として把握しておきたい基本的な考え方を解説していきます。
▼そもそも労働基準法とは?という方はこちらの記事をまずはご覧ください。
労働基準法とは?雇用者が押さえるべき6つのポイントを解説
目次
1.労働基準法では生理休暇は請求があれば取得させなければならない
生理休暇とは労働基準法第68条に規定されている法定休日で、「どうしても勤務するのが難しい」との申告があった場合には、必ず取得させなければなりません。当然ながら無理に出勤させたり、請求を認めなかったりするのは違法です。
なお生理休暇の取得にあたっては、特に診断書の提出などの手続きは必要なく、例えば口頭で伝えられただけでも速やかに応じる必要があります。生理休暇は、あくまで体調不良時におけるやむを得ない状況での対処と考えられているため、手続きの方法などによる制限もできません。
1-1.生理休暇は就業規則になくても労働基準法で認められる
各企業で会社の制度として休暇を設けている場合には、必ず就業規則にて定める必要があります。ただし生理休暇については、先ほども出てきたように労働基準法によって規定されている制度です。そのため仮に就業規則に記載していなくても、従業員から生理休暇の請求があれば応じなければなりません。
要するに「就業規則に生理休暇の項目を載せていないから取得させない」といった対応は違法です。いずれにしても、いつどんな状況であっても生理休暇の取得は認可すべきであり、もし違反すれば30万円以下の罰金が科せられます。
1-2.半日や時間単位の取得を認める必要がある
労働基準法においては、生理休暇については暦日でなくても問題ないとされています。もし従業員側から、半日や時間単位での取得の申し出があれば、それに応じた生理休暇を認めることが必要です。
例えば「痛み止めを飲んで時間が経てば症状が落ち着くから、午前だけ休みたい」などの取得方法もできます。その逆に「急に生理が来て体調が悪くなってきたから早退したい」といった場合も、生理休暇として対応しなければなりません。
2.労働基準法では生理休暇の上限はない
月経の症状には個人差があるため、労働基準法では生理休暇の上限は設けられていません。そのため会社としての就業規則でも、「生理休暇の取得は月○日まで」というように、制限をつけることは当然ながら不可です。
生理休暇は仕事にならないほどの症状が出ている際に取得するもので、人によって体調不良の度合や種類も異なります。何日か休まなければならない場合も少なくないため、まずはこの点について理解しておくと良いでしょう。
3.労働基準法では生理休暇は無給でも問題はない
生理休暇は産休や育休と同様に、有給にするのか無給にするのかについては、各企業の判断に任されています。当然ながら有給休暇と同じような扱いでも、一定の割合に限定して有給とすることも可能です。
無給でも問題はなく、厚生労働省の調べでは、実際に2015年時点で74.3%の企業が「無給」という結果が出ています。ここからも分かるように、現行の労働基準法では、今のところ生理休暇は確保するのが目的ともいえるでしょう。
関連記事:無給休暇とは?欠勤・有給休暇との違いや給料の有無を分かりやすく解説
4.生理休暇は欠勤扱いでも違法ではない
労働基準法において、生理休暇の賃金に関する定めはないので、欠勤としても特に違法にはなりません。就業規則にて上限が設定できない上に、症状が本人にしか分からない部分もあるため、無給の欠勤にして不当な取得を防止している例もあるようです。
ただし出勤率に影響するため、有給休暇の付与時などには注意する必要があります。ちなみに有給休暇の算定では、欠勤の生理休暇を含んだ出勤率にしても問題はありません。
5.生理休暇の取得の妨げになるルールは原則不可
生理休暇については無給・欠勤でも問題はありませんが、取得によって不利になるような扱いは望ましくありません。生理休暇は基本的に請求があれば応じるべきものであり、そもそも使用者側が取得を抑制するような仕組みにするのは、違法と考えられる可能性があります。
例えば賞与額を算定する際に、生理休暇を欠勤にすることで従業員側に不利益が生じている場合など。生理休暇そのものを欠勤扱いにするのは問題ありませんが、取得を妨げるような運用は認められないのが原則と考えておくと無難でしょう。
明確にどこまでが違反というわけではありませんが、仮に従業員に提訴された場合には、裁判所に判断が委ねられます。もし不適切とされた場合には、結局は対象の従業員に相当額を支払わなければなりません。そのため生理休暇による欠勤は、各労働条件に深く関わるものには適用できないと認識しておくほうが良いでしょう。
6.生理休暇の適切な取得を促すためのポイント
ここまでに見てきたように、生理休暇の的確な運用のためには、十分な策を練る必要があります。場合によっては生理だからといって、不当に休暇の申請が行われるケースも考えられるでしょう。そうなってしまうと、本当に生理休暇を取るべき従業員が取得しづらくなってしまう状況もできてしまいます。
こうした事態を防ぐためにも、各企業の取り組みとしてよく見られるのが、休暇の一部のみを有給とする方法です。取得数の上限自体は設けられないので、例えば「生理休暇の○日までは有給」というように、賃金が発生する枠組みを制限するなど。そのほかにも「生理休暇は事後申請にて有給休暇にすることも可」など、あくまで従業員に不利益にならない手段で、制限をつけることも考慮しておくのがおすすめです。
7.生理休暇の取得率は非常に低いのが現状
そもそも労働基準法にて、生理休暇が規定されていることを知らない労働者は少なくありません。また女性特有の制度で、まだまだ浸透していないのが現状です。実際に厚生労働省の調べでは、2015年時点において生理休暇の取得があった企業の割合は2.2%、さらに請求した労働者の割合でいえばわずか0.9%に留まっています。
女性の活躍が進んでいる中、生理休暇に対する注目度は低く、もっと働き方を多様化していくためには企業側からの喚起はまだまだ必要でしょう。
8.生理休暇の制度をきちんと整えて時代を先取りした企業に
生理休暇は労働基準法に定められた労働者の権利であり、使用者側が取得を拒否できないのは大原則です。しかしながら法律的には、規定によって労働者を守っているといえる部分は少なく、各企業として独自に整備するのがベストでしょう。
また生理休暇が浸透している会社は現時点では非常に珍しく、きちんと制度を整えることで、より適切な労働環境に向けて先駆けた動きができます。女性従業員のさらなる躍進を支える意味でも、ぜひ一度、自社の生理休暇の取り扱いについて見直してみてはいかがでしょうか。
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