労働基準法におけるパート従業員の有給休暇の条件と計算方法
更新日: 2026.3.30 公開日: 2021.10.4 jinjer Blog 編集部

労働基準法では、雇用形態に関わらず、雇い入れから6ヵ月が経過し、出勤率が8割以上であれば、パートやアルバイトとして働く従業員にも有給休暇を付与することが義務付けられています。
2019年の法改正以降は、年10日以上の付与対象者に対して年5日の取得が義務化されるなど、管理側の責任もより重要となりました。本記事では、パート・アルバイトへの有給付与条件や具体的な日数・賃金の計算方法をわかりやすく解説します。
▼そもそも労働基準法とは?という方はこちらの記事をまずはご覧ください。
労働基準法とは?法律の要点や人事が必ず押さえたい基本をわかりやすく解説
パート・アルバイトであっても、雇い入れから6ヶ月が経過し、その間の出勤率が8割以上であれば有給休暇を付与しなくてはなりません。
とはいえ、「本社からアルバイトにも有休を与えるよう指示されたが、どうやって対応すればいいか分からない…」という方も多いでしょう。
そのような方に向け、当サイトではパート・アルバイトへの有給休暇の付与方法や、有給休暇をめぐるトラブルを防ぐ取得ルールの例などをまとめた資料を無料で配布しております。
アルバイトへの有休付与のルールや管理の方法、「休まれたら困る!」という時の対応まで、アルバイトの有休管理ですべきことを確認したい方は、ぜひこちらからダウンロードして資料をご覧ください。

目次
1. パート・アルバイトが有給休暇をもらえないのは労働基準法違反!


有給休暇は雇用形態に関係なく、条件を満たしたすべての従業員が取得できるものです。
正社員はもちろんですが、パートやアルバイト従業員のような時間単位で働いている従業員も取得できます。そのため、「パート・アルバイトだから有給休暇はない」「人手不足だから取らせられない」といった扱いをしている場合、労働基準法違反となる可能性が高いです。
ただし、正社員とパート・アルバイト従業員では有給休暇の取得ルールに違いがあるため、この点にだけは十分に注意しましょう。
なお、パート・アルバイト従業員の有給休暇に対しても、理由によって取得を拒否する、賞与を減らすなどといった不利益を与える行為は禁止されています。また、会社独自のルールで就業規則による定めがある場合は、有給休暇を時間単位でも取得できます。
有給休暇はすべての従業員が自由に取得できるものであるため、シフト制で働くパート・アルバイト従業員に対しても正社員と同じ対応が求められます。取得ルールの違いはありますが、雇用形態による対応の差をつけないように十分に理解しておきましょう。
1-1. いつから有給休暇を取得できる?
年次有給休暇は、労働基準法により「雇入れ日から6ヵ月以上継続して勤務し、かつ出勤率が80%以上であること」を条件に付与されます。例えば、4月1日に入社したパート・アルバイトの場合、原則として10月1日から有給休暇を取得できます。
なお、「入社から6ヵ月後に初めて有給休暇が付与される」という点は、あくまで法律で定められた最低限の基準です。そのため、会社の判断により、初回付与の時期を前倒しすることも可能です。
実際に、福利厚生を重視する会社では、入社直後から有給休暇を付与するケースもあります。ただし、法定の最低基準が守られていない場合には、労働基準監督署から指導を受ける可能性があるので、制度を設計する際は法令遵守を意識することが重要です。
関連記事:有給休暇義務化における「基準日」とは?5日間の取得義務についても解説
1-2. 退職時の有給消化を認める必要がある
退職時に残っている年次有給休暇について、労働者は有給休暇の取得(いわゆる有給消化)を請求できます。年次有給休暇は、労働者が時季を指定して取得できる権利であり、会社は原則としてこれを認めなければなりません。
したがって、退職の申し出があったパートやアルバイトに対し、「退職するなら有給は使えない」「業務が忙しいため有給を使わずに退職してほしい」といった対応は不適切です。有給休暇を取得させないまま退職させる行為は、違法と判断される可能性があります。
なお、年次有給休暇の買取は原則として認められていませんが、退職時に未消化となった有給休暇については、例外的に買取が認められています。ただし、有給を買い取ることを理由として、退職時の有給休暇の取得そのものを拒否することはできない点に注意が必要です。
関連記事:有給休暇の買い取りは違法?退職時の対応やトラブル事例を解説
2. 労働基準法におけるパート・アルバイトの有給休暇の条件


パート・アルバイト従業員に年次有給休暇を付与する条件は次の通りです。
- 雇入れの日から6ヵ月継続勤務している。
- 全労働日の8割以上出勤している。
これらの条件は、正社員かパート・アルバイトかといった雇用形態による違いはありません。それぞれの条件について詳しく解説していきます。
2-1. 6ヵ月の継続雇用があること
労働基準法におけるパート・アルバイトの有給休暇の条件として、6ヵ月の継続雇用が重要となります。有給休暇は、雇用開始日から6ヵ月間継続して勤務した場合に初めて付与されます。その後も、継続して1年間勤務するごとに有給休暇が付与されることが法律で定められています(労働基準法39条1項~3項)。
パートタイム労働者やアルバイトであっても、この継続勤務期間の要件は正社員と同様です。つまり、6ヵ月以上の継続勤務が認められれば、パートやアルバイトでも一定日数の有給休暇を取得する権利があります。このため、会社の人事担当者や管理者は、有給休暇の付与条件や計算方法について正確に理解し、適切に管理することが求められます。従業員の労働環境の改善と共に法的義務の履行を確実におこなうことが重要です。
2-2. 基準期間内の全労働日に対して8割以上出勤していること
有給休暇が付与されるための要件のもう一つは、基準となる期間の全所定労働日の8割以上出勤していることです。この場合の出勤率は、実際に出勤した日数に加え、年次有給休暇を取得した日も出勤日として算入して判定します。
初回の年次有給休暇付与における出勤率の判定期間は、雇入れの日から6ヵ月間です。2回目以降の年次有給休暇付与においては、付与日の直前1年間を基準期間として、同様に出勤率8割以上であるかを確認します。
例えば、パート・アルバイトとして週3日勤務し、年間の所定労働日数が156日である場合、その8割にあたる125日以上出勤していれば、法定の要件を満たすことになります。
関連記事:有給休暇の計算方法とは?出勤率や付与日数、取得時の賃金をミスなく算出するポイントを解説
2-3. 【ポイント】業務上の負傷・疾病による休業期間は出勤したとみなす
業務に起因する怪我や病気により止むを得ず仕事を休んだ場合、有給休暇の取得条件のうえでは欠勤扱いにはなりません。また、法令に基づいて育児休業・介護休業・産前産後休業を取得した場合も出勤したとみなします。
初回付与が完了すると、次回の付与は1年後です。その後も1年経過するごとに新たな有給を付与していきます。有給を付与するタイミングは全社員一律ではなく、入社日(入社月)によって異なるため注意しましょう。
パート従業員の有給取得に関しては組織内でルール化されていなかったり管理方法がきちんと決まっていなかったりするケースもしばしば見受けられます。当サイトではパート従業員の有給管理の方法や取得方法、定めるべきルールの例などをまとめた資料を無料で配布しております。店舗内でパート従業員の有給管理をしっかりとおこなっていきたい方は、こちらから資料をダウンロードしてぜひご覧ください。
3. パート・アルバイトの有給休暇の日数の計算方法


パートに付与する有給休暇の日数は「雇用継続期間」と「週の所定労働日数」を基に算出します。週の所定労働日数とは雇用者と労働者の間で取り決めた「1週間のうちにシフトに入る日数」のことです。
ここでは、フルタイムで働く従業員とパートタイムで働く従業員に分けて、有給休暇の付与日数の計算方法を解説します。
3-1. フルタイムで働く従業員の有給休暇計算方法
フルタイムと定義される従業員の条件は次の通りです。
- 週の所定労日数が5日以上、または年間の所定労働日数が217日以上
- 週の平均所定労働時間が30時間以上
上記のうちいずれかの条件を満たしていれば非正規社員であってもフルタイムの従業員に該当し、正社員と同様の基準で有給休暇を付与します。フルタイム従業員の場合、有給休暇付与日数に影響するのは雇用継続期間のみです。
【フルタイム従業員の有給付与日数】
|
勤続年数 |
付与日数 |
|
0.5年 |
10日 |
|
1.5年 |
11日 |
|
2.5年 |
12日 |
|
3.5年 |
14日 |
|
4.5年 |
16日 |
|
5.5年 |
18日 |
|
6.5年以上 |
20日 |
参考:年次有給休暇とはどのような制度ですか。パートタイム労働者でも有給があると聞きましたが、本当ですか。|厚生労働省
3-2. パートタイムで働く従業員の有給休暇計算方法
労働基準法では次のいずれもの条件に該当する従業員をパートタイムとして定義しています。
- 週の所定労働日数が4日以下、または年間の所定労働日数が216日以下
- 週の平均所定労働時間が30時間未満
パートタイムの場合、週の所定労働日数に応じて有給休暇の付与日数が変動することが特徴です。そのため、フルタイムに比べて有給休暇の付与日数自体は少なくなります。
【パートタイムの有給付与日数】
|
週の所定労働日数 |
年間の所定労働日数 |
勤続年数 |
||||||
|
0.5年 |
1.5年 |
2.5年 |
3.5年 |
4.5年 |
5.5年 |
6.5年 |
||
|
4日 |
169~216日 |
7 |
8 |
9 |
10 |
12 |
13 |
15 |
|
3日 |
121~168日 |
5 |
6 |
6 |
8 |
9 |
10 |
11 |
|
2日 |
73~120日 |
3 |
4 |
4 |
5 |
6 |
6 |
7 |
|
1日 |
48~72日 |
1 |
2 |
2 |
2 |
3 |
3 |
3 |
3-3. 年の途中で所定労働日数が変更された場合
年次有給休暇は、雇用から6ヵ月経過した日を「基準日」として付与します。基準日時点の状況に基づいて判断されるため、年の途中で契約により所定労働日数などが変更となった場合でも、すでに付与した年次有給休暇の日数はそのまま有効です。次回の基準日に到達した時点で、その時の契約状況により付与日数が変更されます。
例えば、雇用から半年経過時点の労働者で、所定労働時間は1日7時間、週4日出勤だったとします。この条件の場合、有給休暇は「7日分」付与されます。
続いて、同じ労働者が2回目の付与の予定日である雇用から1年半後の時点で、所定労働時間が1日8時間、週4出勤に変更していた場合、週の労働時間が30時間以上に該当するため、フルタイム、正社員と同じ日数である「11日分」付与されます。
有給の付与日数を確認する際は、基準日時点での所定労働時間をもとに考えましょう。
関連記事:有給休暇の日数を雇用形態別に解説!発生条件や付与タイミング、最大日数は?
4. パート・アルバイトで有給休暇の取得義務が発生する場合


2019年4月施行の労働基準法改正により、事業者はパートやアルバイトを含む、年10日以上の年次有給休暇が付与される労働者に対し、年5日については確実に取得させる義務が課されました。労働者が自ら取得しない場合には、事業者が時季を指定して取得させる必要があります。
4-1. 有給休暇の取得義務がある従業員の条件
有給休暇の取得が義務化されるのは「年間の有給休暇付与日数が10日以上の全従業員」です。パートを始めとする非正規社員も例外ではなく、条件に該当する従業員は全て有給休暇の取得義務が生じます。
一方、年間の付与日数が9日以下の従業員については、取得義務の対象外となりますが、有給休暇を与えなくてよいという意味ではありません。有給休暇は労働者に認められた権利であり、従業員から申請があった場合には、原則としてその希望に沿って休暇を付与する必要があります。
4-2. 時季指定のうえで最低5日間の有給休暇取得が必要
法令により、年10日以上の年次有給休暇が付与されている労働者については、使用者に対し、付与日から1年以内に5日間の年次有給休暇を確実に取得させることが義務付けられています。そのため、労働者に付与されているすべての年次有給休暇を取得させなければならないわけではありません。
また、労働者が自ら年次有給休暇の取得時季を指定しない場合には、使用者は労働者の意見を聴取したうえで、5日分について取得時季を指定する必要があります。これは、年次有給休暇の取得を確実なものとするための制度です。
したがって、労働者が自らの申し出により5日以上の年次有給休暇を取得している場合には、使用者による時季指定は不要となります。各事業所においては、業務への影響にも配慮しながら、年次有給休暇の取得が特定の時期に偏らないよう、計画的かつ分散的な取得を促進する工夫が求められます。
関連記事:有給休暇5日の取得義務化とは?時間単位の扱いから対応方法や罰則まで解説
4-3. 年次有給休暇管理簿の作成・保管が必要
年次有給休暇管理簿とは、従業員ごとの年次有給休暇の付与状況や取得状況を記録・管理するための帳簿です。2019年に施行された改正労働基準法により、作成および保存が義務化されました。
この義務は、年間10日以上の年次有給休暇が付与されるすべての従業員が対象となり、パートやアルバイトなどの非正規雇用者も含まれます。年次有給休暇管理簿の保存期間は、有給休暇を付与している期間中およびその期間満了後5年間(当分の間は3年間)です。
管理簿の様式に決まりはありませんが、「基準日」「付与日数」「取得時季」の3点は必ず記載する必要があります。紙だけでなく、データ形式での作成・保管も認められています。
なお、年次有給休暇管理簿の作成・保存義務に違反しても、直接的な罰則は設けられていません。ただし、労働基準監督署から是正勧告を受ける可能性があるほか、有給休暇を適切に取得させていたことを証明できない場合、労使トラブルに発展するおそれもあるので注意しましょう。
関連記事:年次有給休暇管理簿の作成が義務化!作成方法と保管期間を解説
5. パート・アルバイトの有給休暇の賃金算出方法


パートの有給休暇の賃金算出方法には次の3つがあります。
- 労働基準法で定める平均賃金
- 所定労働時間働いた場合に発生する賃金
- 健康保険の標準報酬月額の30分の1
いずれの方式を採用する場合でも、経営者は就業規則や社内規定にその内容を明記する必要があります。
5-1. 労働基準法で定める平均賃金
労働基準法第12条で定める平均賃金とは、「過去3ヵ月間の平均賃金」のことです。解雇予告手当や休業手当、年次有給休暇の賃金などを算定尺度として使われるのが「平均賃金」で、従業員の生活賃金をありのままに算定することが基本原理となっています。
計算方法はいくつかありますが、基本は直近3ヵ月間に支払われた賃金総額をその3ヵ月間の総日数で割って算出します。
計算式は次の2つがあり、より金額が高い方が適用されます。
- 過去3ヵ月間にその労働者へ支払われた賃金の総額 ÷ その期間の総日数
- 過去3ヵ月間にその労働者へ支払われた賃金の総額 ÷ その期間の実労働日数 × 60%(最低保障額)
5-2. 所定労働時間働いた場合に発生する賃金
雇用契約書において、1日当たりの所定労働時間が定められている場合は、「所定労働時間×時給」で賃金を算出することも可能です。実際に勤務した場合に支払われる賃金を計算する形です。
完全固定シフトの場合は、その日の労働予定時間を基に算出するケースもあります。
この方法による有給休暇の賃金計算は、1日の労働時間が一定の場合に多く採用される方法です。
5-3. 健康保険の標準報酬月額の30分の1
標準報酬月額とは、健康保険料や厚生年金保険料を算出するために、毎月の報酬額を一定の等級幅に区分した金額のことです。
年次有給休暇の賃金については、労働基準法に基づき労使協定を締結した場合、健康保険法上の標準報酬日額(標準報酬月額を30で除した額)を用いて支払うことができます。
なお、標準報酬月額は、原則として毎年4月から6月までの3ヵ月間に支払われた報酬の平均額を基に決定されます。
5-4. 【労基法改正】有給休暇の賃金計算方法が統一される?
年次有給休暇の賃金計算方法には、労働基準法に基づき、「平均賃金」「通常の賃金(所定労働時間働いた場合の賃金)」「標準報酬日額(標準報酬月額を30で除した額)」の3つの方法があります。
しかし、パートやアルバイトなど時給制・日給制で働く労働者については、平均賃金や標準報酬日額を用いた場合、有給休暇取得日の賃金が、通常出勤した場合の賃金を下回るケースが生じやすいとの指摘があります。
こうした状況を踏まえ、有給休暇取得時の賃金については、実際に勤務した場合と同程度の水準となる「通常の賃金」を基準とする算定方法に統一すべきではないか、という検討がおこなわれています。
現時点では、年次有給休暇の賃金計算方法に関する労働基準法の具体的な改正は決定していませんが、今後の制度見直しの動向次第では、算定方法が変更される可能性もあります。
そのため、最新の法改正や行政の動きを継続的に把握するとともに、将来的な変更にも柔軟に対応できるよう、社内制度や運用の見直しを検討しておくことが重要です。
参考:「労働基準関係法制研究会」の報告書を公表します|厚生労働省
関連記事:有給休暇取得日の賃金計算方法と正しく計算するための注意点を解説
6. パート・アルバイトの有給休暇に関連するルール


パート・アルバイトの従業員の有給休暇を管理するうえで押さえておくべきルールも把握しておきましょう。
6-1. 有給休暇の有効期間(繰り越しできる期間)は2年間
1年間で消化しきれなかった有給休暇は次の1年間に繰り越せます。ただし、有給休暇の有効期限は付与日から2年間までです。次の1年間でも消化しきれなかった有給休暇は自動消滅してしまいます。
パート従業員に限らず、有給休暇の繰り越しや有効期限について従業員自身が正確に把握していないケースもあります。その場合、「有給休暇が知らないうちに消滅していた」ことをきっかけに、トラブルへ発展する可能性もあります。
こうしたトラブルを防ぐためにも、新たにパート従業員を雇い入れる際には、入社時に年次有給休暇の制度や有効期限について、あらかじめ丁寧に説明しておくことが重要です。
関連記事:有給休暇は消滅する?時効や未消化分の取り扱いの注意点
6-2. 半休・時間休などが認められる場合がある
通常、有給休暇は1日単位で付与されるものですが、労働契約や就業規則で半日単位の取得が明記されていれば、午前休や午後休として半休が認められます。
また、労使協定を締結することで、年5日以内の範囲で時間単位での有給休暇(時間休)の取得も可能となります。これにより、個別の事情に応じた柔軟な働き方を実現できるため、会社としても従業員の働きやすさを確保し、労働環境の向上につなげることができます。
6-3. 年5日を超える部分の有給は計画的付与が可能
年次有給休暇の付与日数のうち、年5日を超える部分については、労使協定を締結すれば、使用者が計画的に取得日を割り振ることができます。これにより、業務の平準化や計画的な休暇取得の促進、長時間労働の抑制を図ることが可能です。
例えば、年14日の年次有給休暇が付与されるパート・アルバイト労働者の場合、年5日分については労働者の時季指定を原則とし、労働者が指定しない場合には、使用者が時季を指定して確実に取得させる必要があります。
一方、残りの9日分については、労使協定によって計画的付与の対象とすることが可能です。計画的付与を実施する方法としては、会社や事業所全体を一斉に休業日とする「一斉付与方式」や、グループごとに交替で有給休暇を付与する「交替制付与方式」などがあります。
6-4. 有給休暇請求に対する時季変更権とは
有給休暇は、従業員本人が任意のタイミングで取得することが原則です。しかし、従業員の有給休暇の取得によって正常な業務が遂行できない場合に限り、雇用主には休暇の取得時期を変更する権利が認められています。これは時季変更権というもので、従業員の雇用形態がパートやアルバイトの場合にも適用される使用者側の権利です。
ただし、使用者側は有給休暇の日程を変更できますが、有給休暇の取得そのものを認めないとすることは禁じられています。また、単に「忙しい」「代わりの人がいない」という理由だけでは変更できないため注意が必要です。
時季変更権が認められない事例
このほか、時季変更権が行使できない事例には次のようなものがあげられます。
- 退職前に有給休暇を消化する場合など、その日でないと取得が不可能な場合
- 変更により、取得日が産後休業・育児休業の期間にかかる場合
- 計画的付与に指定されている日
- 有給休暇の権利が時効により消滅する場合
これらに該当する場合、使用者側は時季変更権を行使できず、従業員の権利が優先されます。繁忙期のタイミングがわかっている労務担当の方は、早めに従業員へ相談し、繁忙期に有給休暇の取得は難しいと働きかけることがトラブルを未然に防ぐことにつながるでしょう。
関連記事:時季変更権とは?行使するための条件や注意点を徹底解説
6-5. 労働基準法に違反すると罰則が適用されるおそれがある
年次有給休暇に関するルールに違反した場合、労働基準法第39条違反となります。代表的なケースとして、次のような例が挙げられます。
- パート・アルバイトに対して法定どおりの有給休暇日数を付与していない
- 有給休暇取得日に支払う賃金の計算方法が適切でない
- 年10日以上の年次有給休暇が付与される従業員について使用者が年5日分の時季指定をおこなっていない
労働基準法に違反した場合、労働基準監督署による調査がおこなわれ、是正指導・勧告を受ける可能性があります。さらに、是正がなされない場合には、労働基準法第119条・第120条に基づき、「6ヵ月以下の拘禁刑」「30万円以下の罰金」の罰則が課されるおそれもあります。
このようなリスクを回避するためにも、労働基準法を正しく理解し、パート・アルバイトを含むすべての従業員について、適切な年次有給休暇の管理をおこなうことが重要です。
参考:労働基準法第39条、第119条、第120条|e-Gov法令検索
7. パート・アルバイトの有給休暇に関連するよくある質問


ここでは、パート・アルバイトの年次有給休暇について、実務上よく寄せられる質問とその回答を紹介します。
7-1. パート・アルバイトは有給休暇を自由に取得できる?理由の申告は必要?
パート・アルバイトでも有給休暇は原則として自由に取得できます。有給休暇は労働基準法で保障された権利であり、正社員・非正規雇用の区別はありません。また、有給休暇の取得にあたって、労働者がその理由を使用者に申告する義務はないとされています。
使用者が取得理由を尋ねたこと自体が直ちに違法となるわけではありませんが、取得理由の申告を強く求めたり、回答を事実上強制したりすることは、労働者に心理的な負担を与え、ハラスメントに該当するおそれがあるため注意が必要です。
なお、事業の正常な運営に著しい支障が生じる場合に限り、使用者は時季変更権を行使し、有給休暇の取得時期を変更することができます。
時季変更権を行使するにあたっては、法的義務ではないものの、労働者の事情を可能な範囲で確認し、配慮した対応をおこなうことが、円滑な運用の観点から望ましいといえるでしょう。
7-2. パート・アルバイトの所定労働日数が年48日に満たない場合は有給の付与は不要?
パート・アルバイトの年間の所定労働日数が48日未満の場合、原則として年次有給休暇を付与する義務はありません。
ただし、年間の労働日数が48日未満であっても、週の所定労働日数が1日と定められている場合には、有給休暇の付与義務が生じます。この場合、雇い入れ日から6ヵ月経過後に、1日の年次有給休暇を付与する必要があります。
このように、パート・アルバイトを雇用する際には、所定労働日数を明確に設定したうえで、有給休暇の付与日数を正確に算定できる体制を整えることが重要です。
7-3. パート・アルバイトの有給を効率よく管理する方法は?
パート・アルバイトの有給休暇を効率よく管理するためには、まず取得ルールを明確にすることが重要です。期限や申請・承認のフローを整理し、全従業員に周知することで、有給休暇をスムーズに取得できる環境が整います。
また、パート・アルバイトであっても、年10日以上の有給休暇が付与される場合は、年5日の取得義務が発生します。有給取得を促進するためにも、残日数を定期的に従業員へ知らせると効果的です。
さらに、有給休暇の付与日や日数は、雇用日や労働条件によって異なるので、手作業での管理では手間がかかるうえ、ミスが起こりやすくなります。
そのため、年次有給休暇の管理に対応した勤怠管理システムの導入が有効です。勤怠管理システムを活用すれば、有給の申請から承認までを一元管理でき、付与日数や残日数、取得期限なども自動で管理できます。
8. パート従業員にも有給休暇を正しく取得させて会社の義務を果たそう


有給休暇は、従業員の心身の疲労を回復し、充実した生活を送るために設けられた制度です。経営者には、パート・アルバイトを含むすべての従業員の有給休暇を、適切に管理・運用する責任があります。
従業員が心身ともに健康であることは、業務効率の向上や良好な職場環境の維持につながります。そのため、年次有給休暇制度について十分に説明し、取得を積極的に促すことが重要です。
有給休暇を適切に付与・運用することは、従業員からの信頼を高めることにもつながります。労働基準法を遵守し、誰もが休暇を取得しやすい労働環境を整えていきましょう。
パート・アルバイトであっても、雇い入れから6ヶ月が経過し、その間の出勤率が8割以上であれば有給休暇を付与しなくてはなりません。
とはいえ、「本社からアルバイトにも有休を与えるよう指示されたが、どうやって対応すればいいか分からない…」という方も多いでしょう。
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