有給休暇取得の義務化とは?企業がおこなう対応について解説

働き方改革によって労働関連法が大幅に改正され、企業は有給休暇の取得を義務化されました。義務化の背景は、おもに度を越した長時間労働や連日の残業による過労死などの問題を防ぎたいという政府の思惑です。

実際に法律が改正され、労働基準法を守らないと処罰されるという状況ができてしまった以上、年5日以上の有給休暇取得の義務化を企業側が拒否することはできません。しかし、現実的に考えて、有給休暇の消化を進めるのは企業にとっては非常に大変です。

今回は、有給休暇取得の義務化とは何なのか、どういった背景でこの制度がつくられたのか、そして会社としてどのような対応を取るべきなのかをお伝えしていきます。

「3分でわかる有休管理の工数削減方法」

働き方改革が始まり、「有給休暇の日数管理や従業員からの有休残日数の問い合わせ対応の工数を削減したいけど、どうしたらいいかわからない・・」とお困りの人事担当者様も多いでしょう。

そのような課題解決の一手として検討していきたいのが、Excelの活用術と勤怠管理システムです。

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1. 年5日以上の有休取得が義務化された

有給休暇の取得義務化とは、労働基準法の改正にともなって新しく設定された労働ルールのひとつです。政府が進める働き方改革の一環として、「長時間残業の禁止」「客観的な労働時間の把握」などと同じく、会社員の深刻な労働環境を整備するために用意されました。

具体的な内容は、「年に10日以上の有給休暇を付与する社員に対して、企業は1年以内に5日以上の有給休暇を付与する義務を課す」というものです。有給休暇が発生する条件は、半年以上勤めていること・全労働日のうち80%以上出勤していることです。

有給が発生する条件も労働基準法で設定されているため、「自分の会社では就職・転職してから1年目は有給休暇が発生しない」といった独自のルールは通用しません。

正社員はもちろん、派遣社員やアルバイト、パートタイム労働者も、有給休暇をもらえる条件を満たしていれば、年に5日以上の有給休暇を与える必要があります。

1-1. 有給休暇の取得義務は全社員が対象

有給休暇の取得義務化において、企業や企業の人事担当者が把握しておきたいのが、有給休暇の消化義務は全社員が対象になるということです。たとえば、社員の内半数は年5日以上の有給休暇を取得できている状態なら、義務化された有給休暇の対策ができていることにはなりません。

ただし、有給休暇が発生するのは、あくまで企業と雇用契約を交わして指揮命令下に置かれている労働者です。取締役や常務・専務といったいわゆる役員に関しては、そもそも労働者ではなく使用者側にあたり、自分で労働時間をコントロールする権限を持っています。

必要に応じて休みを取ることができる立場なので、役員に関しては有給休暇の取得義務化を心配する必要はありません。

1-2. 大企業は2019年4月、中小企業は2020年4月から取得が義務化

年5日以上の有給休暇取得が義務化されるタイミングは、大企業は2019年4月以降、中小企業は2020年4月以降です。

有給休暇の取得義務化は、基本的に会社員の立場や労働条件を向上するために制定されました。しかし、事業規模も経営体力も多い大企業に比べて、資金力に不安の残る中小企業は、急激な変化に即応できません。

日本の経営基盤を支えているのは、企業の大半を占める中小企業です。中小企業の現場に不必要な混乱が起きないようにするため、改正労働基準法の適用時期は大企業と中小企業とで1年間ずらされています。

ただし、法律の適用時期に1年猶予があるということは、「法改正の内容を知らなかった」「有給休暇の取得義務化に対応するための準備が整っていない」という言い訳ができなくなることもでもあるので、注意が必要です。

1-3. 有休取得の義務化に対応できない場合は…

有給休暇の取得義務化が導入されたあと、有給休暇を付与された全社員に年5日以上の有給休暇を取らせることができなかった場合、企業は労働基準法違反で処分を受けます。

ほとんどの場合は、最初から実刑へ進むというより、労働基準監督署からの勧告などを受けることになるでしょう。

関係者からの度重なる通報などで何度も勧告や指導を受けているにも関わらず対応しない、悪質な労働基準法違反をしていると判断された場合は、30万円以下の罰金か、半年以下の懲役のどちらかが科せられます。

それだけでなく、「労働基準法改正後の不正摘発事例」としてニュースなどでも取り上げられてしまう場合もあるでしょう。法律の改正に対応できなかった場合に企業が受ける社会的なリスクや被害は、想像以上に大きいです。

有給休暇の取得義務化に対応できなかった場合のリスクを考えると、企業や企業の人事担当者は、期限までに勤怠管理を改善する必要があります。

関連記事:有給休暇義務化における「基準日」とは?従業員管理の重要性を解説

2. 有給休暇の取得が義務化されたのはワークライフバランスを改善するため

そもそもどうして有給休暇の取得が義務化されたのかというと、会社員のワークライフバランスを整えるためです。

2-1. 法改正以前は有休消化率が低かった

有給休暇という制度自体は、正式な労働者の権利として労働基準法に明記されています。しかし、制度があっても、長年日本では有給休暇の消化率が一向に改善しないという事実がありました。

2-2. 長時間労働では仕事の結果を出すことが難しくなった

世界の先進国と比較しても、日本人は休みを取っておらず働きすぎだと指摘されます。もともと、戦後の復興から高度経済成長まで、日本は勤勉さを活かした「長時間労働」で経済や業績を高めてきました。

ただ、技術の発展や仕事そのものの複雑化・高度化にともなって、「長時間働いていればよい」「結果が出なければ結果が出るまで努力すればよい」といった精神論では結果を残せなくなってきているのです。

実際、日本は長期間の不況に悩まされていますし、大卒者の初任給や最低時給は10年以上ほとんど上昇していません。国民の気質や国ごとの制度の違いもあるとはいえ、日本人よりも平均労働時間が少ない諸外国が緩やかに経済を成長させつづけているのです。

結果の出ない長時間労働は、過度の疲労とストレスをかけつづけるだけで生産性の向上や経済の発展に結びつきません。晩婚化や少子高齢化にも拍車をかけてしまうでしょう。

慣習的につづけてきた長時間労働のデメリットが広く認知されたからこそ、国が動いて「有給休暇を増やす」というルールの制定につながったのです。

3. 有休取得で企業が取るべき対応とは

有給休暇取得義務化への対応として、企業は

・客観的かつ正確な勤怠管理の実施
・いつでも有休取得を進められるように、組織に対して適切な人員配置をおこなう

上記2点をおこないましょう。

3-1. 有休管理をおこなうためには勤怠管理が必要不可欠

有給休暇が付与される社員の全員に、漏れなく年5日以上の有給休暇を取得してもらうためには、当然のことながら精密な勤怠管理が必要不可欠です。

勤続年数年間を通しての有給休暇の取得、消化率部署ごとの有給休暇の取得率などを管理側が把握していないと、公平に有給休暇を取得させることが難しくなってしまうでしょう。

しかし、会社として問題なく日々の営業活動をつづけるためには、個々人やチームの能力、抱えている納期や仕事の難易度などと照らし合わせて、各部署のリーダーや上司と連携しながら有給休暇の消化を進める必要があります。

3-2. 勤怠管理システムを導入して従業員の労働時間を把握しよう

ただし、客観的かつ正確な勤怠管理を手作業でできるのは、あくまでも社員が数人程度の小規模企業だけです。社員数が十数人を越えてくると、人事担当の手だけでは正確に勤怠状況を管理できません。

そこで役立つのが、社員の出退勤をはじめ、さまざまな勤務状況を一括管理できる「勤怠管理システム」の導入です。システムの導入に合わせてICカードやスマホなどを使った打刻機能を取り入れれば、出退勤の抜け・漏れにも対策をすることができます。

3-3. 勤怠時間を理解して有給休暇の取得を推奨しよう

勤怠管理システムを導入する大きなメリットは、情報共有しやすくなることです。紙のタイムカードなどを使った勤怠管理では、本人・直属の上司・人事といったさまざまな人間に、勤怠情報が分散してしまいます。

有給休暇の取得義務化に対応できない場合、罰を受けるのは企業です。有給を取るか、何日使うかをすべて社員任せにしていると、思っている以上に有給休暇の消化は進まないでしょう。

しかし、普段から人事や上司が密に連携を取っていれば、業務の負担などに合わせて、計画的に有給休暇の取得を部下へ打診できます。

勤怠管理をシステム化すると、パソコンやスマホを通じていつでも必要な情報をチェックできるため、有給休暇の消化に必要な情報共有も短時間で終わらせることができるでしょう。

関連記事:有給休暇義務化にともなう管理簿とは?作成方法と保存のポイントを解説

4. 有給休暇の義務化に対応する際の注意点

有給休暇の取得義務化に対応するうえで、企業が注意すべきポイントは次の3つです。

4-1. 給付日から1年以内に5日消化する必要がある

働き方改革で実現した有給休暇の取得義務化は、有給休暇を与えてから1年以内に5日以上の休みを与えることを求めています。1年のカウントは、有給休暇の発生日から翌年の発生日までです。

給付から1年経過した時点で、まだ4日分の有給休暇しか取得させられていない場合は、法律違反となってしまいます。

4-2. 有休取得日から2年が経過する取得権利が失われる

有給休暇は、そもそも給付されてから2年で時効を迎え、使えなくなってしまうという点にも注意が必要です。余った有給休暇の繰り越そうと思っても、2年で消滅してしまいます。

4-3. 雇用形態に関わらず全従業員に有休の付与が必要

有給休暇の給付条件は、正社員も非正規雇用も同じです。勤続半年を越えていて、労働日数の80%以上働いていれば、アルバイトも有給休暇の取得義務化の対象です。

就業規則で「アルバイトなどに有給休暇を与えない」というルールをつくっても、労働基準法違反の項目として取り消されてしまいます。立場を問わず雇用契約を結んだ相手に対しては、正確な勤怠管理を心掛けましょう。

5. 有休取得率が向上することで企業が得られるメリット

基本的に、有給休暇の取得義務化は、企業側の負担を増やす制度です。少なくないコストと手間をかけてまで、義務化の対応を優先したくないと考える経営層もいるでしょう。

【有休取得率が向上することで得られるメリット】
・休日が増えることで従業員の疲労やストレスが抜けて生産性が高まる
・休みやすい職場になることで従業員の定着率が向上する
・有給休暇をそれぞれが取得できるように、協力しあうことで業務の効率化が進む
・生産性の向上により労働時間が短縮し、人件費を節約できる
有休管理をより手軽にするために、勤怠管理システムを導入することで、『勤怠管理や給与計算といった人事・経理担当者の業務工数が削減される』『出退勤時の打刻がすぐに終わるため打刻の手間が減る』などのメリットがあるでしょう。

6. 有給休暇の取得義務化に対応して働きやすい環境を実現しよう

法改正の影響によって、有給休暇の取得義務化が決まりました。法律で決まったルールである以上、企業が有給休暇の取得義務化を拒否することはできません。

費用も手間もかかる面倒な手続きですが、積極的に勤怠管理システムを導入し、効率のよい勤怠管理と有給休暇の消化促進を進めていけば、仕事の生産性や企業の評判を底上げできるでしょう。

勤怠管理システムの導入によって、人事担当者の仕事が楽になるのも事実です。有給休暇の取得義務化以外にも、働き方改革で人事に求められる仕事は増えていきます。

既存の勤怠管理で対応できないと感じている場合は、勤怠管理システムを使って社内の労働環境を改善しましょう。

 
勤怠管理システムの導入で工数削減を実現

近年、人手不足などの背景から、バックオフィス業務の効率化が多くの企業から注目されています。

タイムカードの集計は、集計時にExcelに入力する工数がかかりますし、有給休暇の管理は、従業員ごとに管理することが煩雑で、残有給日数を算出するのにも一苦労です。

どうにか工数を削減したいけど、どうしたらいいかわからないとお悩みの方は、勤怠管理システムの導入を検討してみましょう。

勤怠管理システムとは、従業員の出退勤をWeb上で管理できるシステムのことです。勤怠管理システムの導入を検討することで、

・多様な打刻方法により、テレワークなどの働き方に柔軟に対応できる
・リアルタイムで労働時間を自動で集計できるため、月末の集計工数が削減される
・ワンクリックで給与ソフトに連携できる

など、人事担当者様の工数削減につながります。

「導入を検討するといっても、何から始めたらいいかわからない」という人事担当者様のために、勤怠管理システムを導入するために必要なことを21ページでまとめたガイドブックを用意しました。

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